銀河系円盤面では最近の赤外サーベイにより以前は知られていなかった数千万の天体が カタログ化された。この劇的増加の原因は、感度増加、分解能向上、減光低下の3つが 考えられる。それらの制限に応じ、異なる観測は異なる要素、バルジ、円盤、バー等 に敏感になる。 | それらの観測の拘束とモデルを理解して、銀河系パラメタ―の解釈に必要である。 以下の章では様々な探査観測を探り、最近の成果を議論する |
可視探査と赤外探査の比較 SEGUE = Sloan Extension for Galactic Understanding and Exploration は赤外観測で見つかる天体より暗い星を検出している。しかし、減光の結果 可視観測は主にハロー、衛星銀河、厚い円盤である。薄い円盤の構造は D < 2 kpc の近傍 Juric et al. (2008) に限られ、バルジやバーでは銀河面から数度離れた少数の低減光域に限られる。 驚くべいたことには、深い可視探査が銀河面を横切る際には、赤外探査 には見つからない多くの近傍矮星が検出される。赤外探査の減光はずっと 小さいので、遠方の巨星が多数検出され、それらがより明るい輝きをもたらすために これらの暗い近傍矮星は失われてしまうのである。赤外探査の限界等級は この混み具合で決まり、感度では決まらない。混み具合限界は各分解能、減光、 天体密度に依存する。 なぜ巨星ばかり? 現在の銀河面赤外探査は主に色々な種類の赤色巨星の探査である。このことは 図 9-4 を見ると分かる。この図は TRILEGAL = TRIdimensional model of the Galaxy シミュレーション Girardi et al. (2005) による内側銀河系モデルからの結果である。 図から巨星と矮星の境界 MK = -1 で光度関数が減少することが判る。 最近の近・中間赤外探査の混み合い/感度限界の m = 14 mag (2MASS, GLIMPSE) は これらの探査で検出される天体の大部分が巨星であることを意味する。 より深い探査、UKIDSS-GPS, GLIMPSE360 は混み合い限界にならない領域では多数の 矮星を検出するはずである。 星計数法と標準光源法 点源カタログから銀河系パラメタ―を導くには二つの方法がある。 (1)星計数法 角分解能が不十分なサーベイ COBE/DIRBE は星計数法を取らざるを得ない。 この方法の利点は全ての天体を用いるので統計が良好になる点である。不利な点は Mihalas, Binney 1981 が広範に論じたように、銀河系のパラメタ―を導くために、 銀河系の位置の関数としての密度と、光度関数を決める必要があることである。 光度関数が幅広な為、ある見かけ等級の天体は様々な距離にある可能性がある。 このため、銀河系の密度関数を一意に絞ることは困難となる。 その上、予想していない構造やパラメター間に縮退が存在すると、ベストフィット でも誤った方向に導きかねない。 |
(2)標準光源法 巨星光度関数には特徴的な構造があり、標準光源として利用可能である。 それらは、 TRGB = tip of the red giant branch MK = -6.85, RC = red clump MK = -1.54, RGB bump = red giant branch bump MK = -1.0, AGB bump = asymptotic giant branch bunmp MK = -3.3 である。これらの特徴は球状星団、散開星団、局所群 銀河で見出される。レッドクランプ星の光度はメタル量や年齢にあまり影響を 受けないと考えられ、その等級幅は最大で 0.4 mag 程度である。この巾は 距離精度に影響する。しかし、メタル量や種族構成の勾配が大きくない場合に は銀河系構造をマップする際の相対距離はより安全である。他の特徴はおそらく メタル量、種族により影響されるだろう。図9-4を見ると、円盤星の TRGB が より古くて低メタルのバルジ星に比べ約2等明るいことが判る。 (向こう側円盤ではそう見えるが、 こちら側ではそれが見えない。) 他の標準星 他の標準光源としては、炭素星 Cole, Weinberg (2002), OH/IR 星 (Sevenster 1999), AGB 星 Weinberg (1992), ミラ型星 (Groenewegen, Blommaeert 2005) がある。それらの有益な表が Binney, Merrifield 1998 の第3章にある。これらの星は数が少ないので 統計精度は低い。しかし、普通の巨星では消されてしまう年齢やメタル量情報 を含むので銀河系構造に貴重な拘束を与える。その上、等級巾が狭いので、 構造がよく決まる。ただし、若い種族の星は銀河系の密度構造でなく、星形成 構造を与える。 全部載せ手法 使用可能な星の種類が沢山あることから、赤外色等級図の全ての特徴を 満足させるモデルを作る方法(van Loon et al 2003)が考えられる。 この方法は局所群銀河では成功したが、パラメタ―が多いので挑戦課題である。 レッドクランプ星の識別 ここで議論した巨星光度関数の4つの特徴の内、レッドクランプが最も よく使われてきた。それは数が多く、等級巾が狭く、かつ絶対等級の較正が 行われていたからである。星団や局所群銀河に比べフィールド星からレッドク ランプ星を区別するのは難しい。カラー情報を使うべきである。 |
カラーを用いたレッドクランプの分離 中間赤外データだけではレッドクランプの分離は無理である。中間 赤外波長はレーリージーンズ領域になるため、矮星も巨星もカラーはゼロと なる。しかし、レッドクランプ星の近赤外カラーは J-Ks = 0.70 で赤色巨星 の大部分より青く、かつ大部分の矮星よりずっと赤い。従って、適切なカラー 補正があれば、レッドクランプをカラーで選別可能である。レッドクランプ星 の数と総質量との比を一定と仮定すると、密度分布が得られる。 等級ヒストグラムのコブ カラー選別無しにレッドクランプ星が得られる状況が一つある。銀河系に 相対的な密度超過がある時は等級分布の密度超過までの距離に対応する等級 にコブができる。図 9-5 は m4.5 ヒストグラムのコブがロングバー に対応して出現する Benjamin et al (2005) ことを示す。もしもコブの見かけ等級が銀経に沿って変化するなら、 コブは銀河の密度超過を追跡する標準光源によるものであろう。 近赤外色等級図はそれを確認する。 atai |
等級ヒストグラムの勾配 図9−6には GLIMPSE [4.5] 対 銀経 l 面上に点源ヒストグラム勾配 を示す。勾配変化は銀河構造に対応する。 様々な手法 様々な種類の星が使われる。もっともウェイトが大きいのは、 (1)全天探査に基づき、 (2)種族に分解され、 (3)減光の影響が少なく (4)標準星でよく較正されている ものであろう。 |
2.2.1.銀河中心距離 RoIAU 公式値は Ro = 8.5 kpc であるが、その後の値はやや低い。 レッドクランプに基づいた値 (Nishiyama et al 2006) はさらに低く、 7.52 kpc である。最も信頼できる二つの方法の第1は Sgr A* の周りを 巡る S2 の軌道パラメタ―からの値で Ro = 8.4 kpc (Ghez et al 2008), あるいは 8.33 kpc (Gillessen et al 2009) を与えた。電波干渉計による Sgr B2 の歳差は Ro = 7.9 kpc (Reid et al 2009) であった。2.2.2.スケール長これまでの値Robin et al 1992 はそれまでの薄い円盤スケール長の測定をまとめ、Rd = 3.5 - 4.5 kpc を得た。その後の研究は Sackett 1997 がまとめ、 2.5 - 3.0 kpc を与えている。このまとめ以降6つの可視光研究がスケール長を 2.55 - 4.0 kpc Juric et al. (2008) と与えている。 赤外データの利用 赤外観測は遠方まで届くので、より信頼できる値を与えるはずである。 |l| < 90° の内側銀河に関しては、銀河中心の両側で、バーの影響 のない領域で決めたスケール長が同じ値になるかどうかで信頼性チェック が可能である。外側銀河系ではフレアリングの結果スケール長が伸びるので 測定は込み入ったものとなる。COBE/DRIBE の低角分解能観測からの結果は 2.4 - 2.6 kpc (Freudenrich 1998), 2.3 kpc Drimmel, Spergel (2001) であった。 |
近赤外スケール長 2MASS, DENIS の近赤外データもスケール長の研究に使われるが、内側銀河 に対してはあまり多くない。Ruphy et al 1996 は l = 217° と 239° の DENIS データから Rd = 2.3 kpc, Reyle et al 2009 は l = 90 - 270° の 2MASS データから Rd = 2 kpc を得た。 Lopez-Corredoira et al (2002) は l = 45 - 315° 範囲内の幾つかの領域で星計数モデルとレッドクランプ を合わせて、二つの方法でスケール長が一致することを見出した。円盤厚みで あるスケール高が半径と共に変化するので、銀河面中央での密度を用いた Rd,0 = 2.0 kpc と 星の表面密度を使った Rd,0 = 2.0 kpc とは異なる。 中間赤外スケール長 中間赤外では減光が小さいため、Wainscoat et al 1992 の光度関数を用いた GLIMPSE 星計数は内側銀河系 |l| = 30 - 65° で Rd = 3.9 kpc Benjamin et al (2005) を与える。 ここに述べた結果を総合的に理解することは大事である。Binney, Tremaine 2008 が述べたように、銀河系ポテンシャルに他の拘束があると仮定して、 スケール長 2 kpc と 3.2 kpc の差は星質量が支配的な重力ポテンシャルと ダークマター支配的な重力ポテンシャルとの差である。研究により異なる 結果を比較する際の問題点は、 (1)他の円盤銀河の観測ではスケール長は波長に依存する。 (2)薄い円盤のスケール長の半径による変化は、異なるスケール高とスケール 長を持つ厚い円盤の影響と縮退する。 (3)他の銀河ではハッブルタイプによって、外側円盤のスケール長に二つの 分離した値を持つ。 (4)測光距離を用いるなら連星の影響を考慮する必要がある。 |
質量腕と星形成腕 円盤銀河の渦状構造はガス密度と星形成のパターンとしてはっきりと見える。 このパターンはグランドデザインとして又は羽状渦として見える。しかし、渦 構造は赤外光で星密度の超過として見える。Schweizer 1976, Zwicky 1955 は、質量渦状腕と星形成渦状腕とは形態と振幅において違いがあることを 指摘した。追跡天体の差による腕の携帯の違いについては Binney, Tremaine 2008 の第6章に述べられている。彼らは質量腕、ポテンシャル腕、ガス腕、 星形成腕などの名前を提案している。一般には近赤外、中間赤外光で検出され る質量分布は青い可視光で追跡されるガスや星形成に比べ平滑で構造が出に くい。質量腕の数が星形成腕の数と異なることさえある。Block et al 2004, Block, Waincoat 1991. Shu et al 1973 は、2本の質量腕が2本以上の星形成 腕を駆動すると提案した。Martos et al 2004 は銀河系にこのアイデアを適用 したモデルを作った。 腕の主構造と副構造 ガス雲と HIIR までの運動距離、明るい星までの測光距離、双方の不確定性 のために、ガスと星形成の追跡天体を用いて銀河系の渦状腕を決定する問題は 難問である。Liszt 1985. 腕の接点方向を定めるのはより確実と考えられるが それでさえも問題がある。一般に受け入れられている4本の腕= ノルマ、サジタリウス - カリーナ、スキュータム - クラックス、ペルセウス は HIIR で決められた。 ( Geogelin, Geogelin (1976) ) そして、近3キロパーセク腕(van Woerden et al 1957)、遠3キロパーセク 腕( Dame, Thaddeus (2008) ) オリオンスパー ( Morgan (1953) ) アウターアーム(Westerhout 1957)、ディスタントアーム (McClure-Griffith et al 2004) は副構造とされている。主構造と副構造の区別は明るい HIIR の数である。この問題を新しいデータに基づいて行うことは非常に有益で ある。残念ながら銀河系渦構造の最近の批判的概説は存在しない。現在の 腕構造の全体像は一時的な仮説と看做すべきであろう。図9−8には 上に述べた特徴をほぼ全て含む想像図を示す。 |
質量腕は単純? 銀河系質量分布の渦構造はもっと単純であろう。近赤外の研究に基づき、 円周に沿った(Rix, Zaritsky 1995)と典型的な断面( 与えられた半径での巾)20 - 40° (Seigar, James 1998) 平均密度に 対して質量腕は 0.2 - 0.6 の超過を示す。 (ここの訳文は怪しい! ) これらの幅は2本腕に対し 単純なサイン関数型の密度変化から予想される FWHM = 60° より狭い。 この矛盾は (1) 渦状構造の単一モードモデルが不十分か、(2) 赤外光 分布が星形成の影響を受けている (Rhoads 1998) かである。 星腕とガス腕の違い COBE/DIRBE K バンド光分布の解析 Drimmel(2000), Drimmel, Spergel (2001) は、星の渦状腕構造は上に述べたガスと星形成のパターンと定性的に 異なることを示唆する。その主な証拠はケンタウルス接点方向で 近赤外光の超過が検出されたのに、l = 50° 付近でサジタリウス 腕接点方向の対応する超過が非検出なことである。この結果は Benjamin et al (2005) による中間赤外星計数でも確認された。それによると、l = 307° で FWHM = 4° の全等級での星計数に 30 % の超過が認められる。 Drimmel, Spergel (2001) モデルは COBE/DIRBE 近赤外データから星質量分布を、遠赤外データ をダスト分布の制限に用い、2本の主質量腕=ペルセウス、スキュータム - クラックス、と4本のガス/星形成腕を与えた。最新の赤外サーベイは レッドクランプか他の標準光源天体を用いて、質量腕を直接導くかも 知れない。図9-6は l = 316 - 326°、[4.5] = 12.3 付近に 中間赤外星計数の超過を示している。この l 領域は Dame (2001) の CO 分布間隙部に当たる。もしこれがレッドクランプによるとするなら、 この構造はスキュータム - クラックス腕までの予想位置に(大体) 一致する。 |
ガスと星のワープの同異 銀河系の縁がどこにあるか、または縁とは何であるかを決めるのは、興味 深くかつ未解決の問題である。銀河系では星とガスのどちらが遠くまで広が っているのかすら未だに分からない。しかしながら、どちらの成分もフレアし、 ワープしていることは確かである。フレアとは垂直方向のスケール高が半径 と共に増加すること、ワープは銀河面中央が方位角と共に変化することを言う。 COBE/DIRBE データの解析から、Freudenreich et al 1994, Freudenreich 1998, Drimmel, Spergel (2001) は星のワープはガスワープ(Burton et al 1992)と位相が揃っているが、 振幅が小さいことを見出した。近赤外、中間赤外の星計数 Lopez-Corredoira et al (2002), Reile 2009, Vig et al 2005 やレッドクランプ(Momany et al 2006) に基づいたより最近の研究は全体的にはこの傾向を確認したが、ワープの振幅 は強い非対称性があることが判った。 |
円盤の端 ガスと星のワープが全体的に一致していることはこの現象がガス流体力学 効果というよりは重力効果によることを示す。しかし、両者の振幅が異なり、 星のワープに非対称性があることの理由は不明である。ガスと星の半径分布 が異なることがその背景にあるのであろう。Erwin et al 2008 の系外銀河 の研究は、外側円盤プロファイルがハッブルタイプによって、内側円盤プロ ファイルより急にまたは浅くなることを示す。しかし、Bakos et al 2008 は それが密度変化ではなくカラー変化によるとした。 遷移点は内側円盤スケール長の4倍のあたりで起きる。歴史的 van der Kruit, Searle 1981 にそこが円盤の端とされてきた。 Robin et al 1992a は その端点が R = 12 kpc にあるとしたが、上述のいくつかの研究はそれより 遠くまで円盤が伸びているとしている。 |
バーの形 内側銀河系のガス運動から銀河系中心部は非軸対称構造があるとされていたが、 それがはっきりしたのは赤外天文学が内側銀河系を調べるようになってからであ る。Kent et al 1991. 初期の結果(Blitz, Spergel 1991) は星のバーの存在を 明らかにした。 COBE/DIRBE の解析はバーの特性を決めた。その結果は Gerhard 2002, Merrifield 2004 に与えられている。それらの多くは バーの半長 Rb = 3.1 - 3.5 kpc, 長軸の角度 φb = 25° としている。 Vanhollebeke et al 2009 にはそれらの値の表がある。バーの軸比は 10:4:3 が平均だが、 10:7:4 から 10:3:3 まで分布する。総質量は 1010 Mo だが、これも 0.5 - 2 1010 Mo に亘る。値に差が出るのは フィットに使う密度関数の形、光度関数、どのパラメタ―を固定するかの 選択、天域の不完全性などによる。 二つの欠点 しかし、二つの欠点が指摘されている。(Dwek et al 1995) (1) 空間分解能の不足の結果輝度分布の解釈に際し、種族を仮定すること。 そのため、バー/バルジの分解が不明瞭になる。 (2) 減光の処理。 2.3.1.ロングバー基本特性 ロングバーがバルジとは異なる構造であることを最初に指摘したのは Hammersley et al (2000) である。 Lopez-Corredoira et al (2007) はその実在性を議論した。当初は近赤外で低減光領域での特性をつないでい たが、中間赤外域の GLIMPSE レッドクランプ観測 Benjamin05 et al (2005) はそれらが l = 29°5 まで続く連続的な構造であることを立証した。 3軸不等バルジと比べると、この構造は Rlb = 3.9 kpc と長い ばかりでなく、スケール高 200 pc と薄く、視線方向の深さで 1170 pc と 細い。この成分の質量は Mlb = 0.6 109 Mo Lopez-Corredoira et al (2007) である。 |
ロングバーとバーの方向に違い ロングバーに関する最大の謎はその方向がバルジバーと異なることである。 それは角度を決める方法の違いのせいではない。UKIDSS-GPS データからの レッドクランプ星を用い、同じ方法が l = [12, 30] で φlb = 42°, l = [5, 12] で φb = 24° を与える。 遷移点で星計数とレッドクランプ星の数は鋭くジャンプする。l < 12° のバルジバー内部でロングバーが独立の構造として存在しているかどうか は全く分からない。系外銀河の幾つかには方向の違う数本のバーが見えるもの もある。 ロングバー端点 ロングバーが意味するのは、非軸対称構造がこれまで考えられていたよりも 遠くまで伸びているということである。特に、 Weinberg (1992) が指摘するように、ロングバーの近方端がスキュータム腕の接点と一致する のは重要である。CO l-v 図ではこの方向が分子リング Dame et al (2001), Jackson et al (2006b) の接点方向に当たる。この交差点は巨大な星形成箇所でもあるようだ。 3つのスーパーバブル(Pidopryhora et al. 2007)が見出されている。 GLIMPSE が見つけた星団 (Mercer et al 2005) の明るい星を分光した 結果、赤色超巨星の星団が幾つか同定された。Clark et al 2009. その 一つは総質量 2 104 Mo と見積もられている。ロングバー の反対側の端 l = 345° でも星形成の定性的証拠 Lopez-Corredoira et al (2001), Sevenster 1999 がある。これはさらに良く調べる価値がある。 パラメタ―法の欠陥 ロングバーの発見は銀河構造をパラメタ―合わせ的な方法で研究する ことの弱点を暴いた。バーの数値計算が示すように、バーは一枚岩の構造 ではなく、星軌道の複雑な集まりで、そのパラメタ―は時間と共に進化 していく。薄いバーから出発した数値モデルはついには厚い内部構造を 生み出す。これが観測される方向の差を説明するかどうか不明である。 分光法 異なるバー成分を区別する方法の一つは個々星の運動要素とメタル量を 得ることである。Zoccali 2010 と Babusiaux et al 2010 がよい レビューを与えている。 |
2.3.2.内側バー?系外銀河には入れ子になった3つのバーが見える。 Erwin et al 2008. 銀 河系にももう一つのバーの余地がある。内側バーは中心核バーとも呼ばれ、 銀河系数度範囲での星の非円周運動 Binney et al 1991, 減光補正した 2MASS 星計数 Alard 2001b, それら二つの合体 Rodriguez-Fernandez, Combes 2008 から示唆された。この最後の仕事では、 Mnb = 0.2 1010 Mo と 運動からバー角 φnb = 60 - 75° が予想された。 内側バーに関しては他に、Launhard et al 2002, van Loon et al 2003, Sawada et al 2004 の仕事がある。さらに、 Nishiyama et al (2005) は l = [-5, 5] レッドクランプマッピングの l - m 図から勾配が平坦化して いることを見出した。以上の証拠から |l| < 2° では質量分布の非対称 性は明らかである。しかしそのパラメタ―はまだ絞り切られていない。2.3.3.内側ホール(とリング?)穴の成因は?銀河系は棒状銀河であるが、それはリング棒状銀河だろうか?円盤とバー の恒星分布を求めた研究の多くが中心部に「穴」を必要とした。厳密に言うと、 これは指数関数型円盤の中心方向への外挿値に比べての欠損である。 Freudenreich 1998 は穴の半径 2.7 - 3.3 kpc, 楕円率 0.8 - 0.9 とした。 Ohta et al 1990 は多くの棒状銀河に穴があることを見出した。そのような銀 河を Freeman 1970 はタイプ II 円盤と呼んだ。バー半径内部で密度が低下 するのはバーが形成された自然の結果と考えられる。しかし我々が知る限り、 現在の力学モデルとバーと穴を含む銀河系データとの間の詳細な比較はなされ ていない。 |
恒星リングはあるか? 更に不確定なのはバーを囲む領域での恒星密度超過=恒星リングが存在 するかどうかという問題である。同じ銀経方向にバーが存在するため、 恒星密度分布にリング状の構造が存在する確実な証拠はまだない。しかし、 星形成リングと考えられる構造が二つある。 分子リング その第一は Burton et al 1975, Jackson et al 2006, Scoville, Solomon 1975 が見出した「分子リング」である。銀河系内の分子ガスと星形成の大部 分が R = 3 - 5 kpc 帯に集中していることは明らかである。しかし、渦状構 造とリングを区別することは非常に困難である。何人かの研究者、Binney, Merrifield 1998, Jackson et al 2008 はこの構造をリングと解釈することに 疑問を呈している。 3kpc腕 もう一つは Dame, Thaddeus (2008) が発見した遠側と近側の 3 kpc 腕である。 Bissantz et al (2003), Englmaier, Gerhard (1999), Fux (1999) によるバーポテンシャル中のガス流シミュレイションはバーの周りに二つの 構造が楕円形状を構成することを示した。Lockman 1980 による星形成活動 の探索は失敗したが、Green et al 2009 によるクラス II メタノールメーザー の探査は各腕に約20のメーザー源を発見している。これは大質量星形成 の指標である。l = 338° では Sevenster 1999 が OH/IR 星の超過を、 Lopez-Corredoira et al (2001) は mK < 9 mag の明るい星の超過を検出している。 どちらの研究者もこの方向が近側 3 kpc 腕の接点方向であることを述べ、 これがリング構造の一部でないかと疑っていた。これは遠側 3 kpc 腕が 発見される以前のことであった!系外銀河でのリング構造 Buta, Combes 1996 との比較を含む、質量および星形成活動観測 からの拘束条件を考慮しつつより包括的なモデルを考えることは重要である。 |