K バンドと 240 μm における銀河面の輝度分布を示す。渦状腕の 接点を示す特徴が同定された。K バンドは恒星放射を表し、吸収の影響は ほとんど受けないが、腕の接点に伴う特徴から2本の対数螺旋が天の川 銀河の非軸対称構造で支配的であると示唆される。 | それに反し、星間ガスに含まれるダストからの 240 μm 放射は 4 本 腕を支持し、電波及び可視光での渦巻き構造と合っている。これはガスの 4本腕構造を引き起こす非軸対称質量摂動は4本でなく、2本腕であること を示唆する。 |
腕の出現形態 Georgelin,Georgelin 1976 は明るい HIIR をトレーサーとして, 運動距離の助けを借りて、我々の 銀河系の主要腕をマップした。 星間物質に対する類似のマップが HI, CO, 磁場方向などで作られた。 それらの研究からは通常巻き込み角 12° 付近の 4 本腕が示唆された Vallee 1995 には最近のレビューが載っている。 そのような空間マップとは別に、 渦状腕の内 3 本はその接線方向での特徴から、銀河面放射プロファイルに 自らの姿を現している。 |
古い種族の腕か、若い種族の腕か もし渦構造が円盤質量の大部分を占める恒星分布の非軸対称成分により形成 されるなら、観測されるガスや可視の追跡天体は渦構造に伴う質量のほんの 一部を代表するに過ぎない。この場合、渦構造に直接伴う質量を観測するには 古い種族の星を、彼らが最もよく追跡される K バンド(Rix, Zaritsky 1995) で観測しなくてはいけない。一方、微分回転する円盤上の自己伝播星 形成によって渦構造が作られる(Seiden et al 1979, Jungwiert,Palous 1994) 可能性もある。この場合、K-バンド渦状構造は星形成領域の若い星のみで 作られ(Rhoads 1998)、可視トレーサの描く腕と一致するだろう。 (これどういう意味だ?どちらの腕で も K では見え、第1の実腕(?)は 可視、遠赤で見えないってことか? なんか変だなあ。) |
COBE/DIRBE から作成 COBE/DIRBE の "Zodi-Subtracted Mission Average" (ZSMA) マップは 分解能 0.35° である。それを |b| < 3° で銀緯方向に積分して K, 240 μm 銀河面プロファイルが作られた。|l| < 90° 範囲 を図1に示す。 |b| > 3° のK-バンドプロファイルでは -90 < l < -60 を除く と渦状腕の構造が見えない。 バルジとオリオン腕 |l| < 15° の放射はバルジ星が支配的である。240 μm で見える l = 80° の盛り上がりはオリオン腕による。この腕は局所性で 銀河面全体の中では小さな構造 Georgelin,Georgelin 1976 である。l = -100° にはその対応構造があるが図の範囲から外れている。 (オリオン腕と呼んでいる l = 80 ° 構造はシグナス腕のことで、 l = -100° = 260° 構造は ベラ腕を指すと思われる。) これらが明るいのは単に近いからに過ぎないのでこれ以上は触れない。 主要腕の構造 主要腕に伴うプロファイル上の構造が期待されるのは l < 60, l > -80 である。そこに 3 つの構造が同定され、図1に示されている。 第4象限を見ると、 K バンドでは l = -20, -50 の太い構造と l = -70 に二本の細い構造が見える。 一方、240 μm プロファイルにははっきりした鋸歯構造が見える。 第1象限では腕構造はあまり強く見えない。l = 30 には K, 240 μm 双方に 双峰構造が現れる。ただし、240 μm ピークがある l = 31 が K の谷間に相当 しており、K の双峰性は減光によるものであろう。 ピークのグループ化 ピークのグループ化は負銀経では T, S2, C2, 正銀経 では S1, C1 とした。もっとも、C1 はピーク 1つである。l = 42° のピークは他のグループから離れているので名前なし のままにした。C1 以外のグループは K, 240μm 双方で見え、銀経 巾 10° もしくはそれ以上に及ぶ。 他のバンド COBE の 100, 140 μm プロファイルは 240 μm のと非常によく似ている。 近赤外 J, L, M には問題がある。M は黄道、J は星間減光の影響を強く受けている。 L は K より透過度がよいのだが、PAH 放射が強い。 |
![]() 図1.|b| < 3 の銀河面放射プロファイル(対数表示)。四角(上)= K バンド。 三角(下)= 240 μm. 上図ダイヤ=|b| < 9 の積分。縦実線= K バンド での太く明るい出っ張り。一点鎖線= K バンドでやや細く強い出っ張り。 破線= 240 μm の太い出っ張り。出っ張りのグループにはラベルを付けた。K バンド図の上に置いたエラーバーは2本対数螺旋モデルで S1 と S2 の接線方向 のエラーによるエラー範囲。 240 μm の下のエラーバーは 4本腕の接線位置。 銀河中心から 15° 以内の放射はバルジが支配的である。240 μm の l = 80° の放射出っ張りはオリオン局所腕である。 |
サジタリウスーカリーナ腕が K で弱い 銀河面プロファイル上のグループを腕の接線と考える。 S1, S2 は盾座腕の接点である。T は 3 kpc 腕の接点にあたる。 C1, C2 はサジタリウス・カリーナ腕の接点であるが K バンドでのその性質には前三者と大きな違いがある。 (1)C2 は2本の細い放射峰に分かれる。この2本を合わせてもまだ 細い。とくにその太陽からの距離を今の 0.4 - 0.5 kpc から他の接点までの距離 0.8 - 1.0 kpc に移せば差は一層大きくなる。 (2)l ∼ 50° 付近に K バンドでピークが見られないのはもっと重要である。 この点については、 Ortiz, Lepine 1993 の表1でも注意されている。もしサジタリウス・カリーナ腕が盾座腕と同じくらい 強ければ、そこに S2 と同様の構造が見えても良いが何も見えない。 対数螺旋のパラメタ― 渦状腕の二つの接線方向から対数螺旋 r = Ae-aφ のパラメタ―を 決めることができる。巻き込み角 p は
K バンドの S1 と S2 の接線 (l+, l-) = (27, -53) を使うと、 p = 17.9° を得る。しかし、 S1 の双峰は 吸収によるもので、真の接線は l+ = 30 であろう。この場合 p = 15.5° である。加えて、見かけ接線方向には曲がった構造によるバイアスがかかり、放射ピーク は銀河中心方向にずれる。これにより約 2° の不定性が生じるだろう。 接線方向の予測 こうして決めた巻き込み角 p を用いて、腕の他の接線方向 θ を次の式から 求めることができる: e-aθsin θ = e-a(Δφ - θo sin θo ここに、 θo は与えられた接線方向である。 S2 の位置を θo とし、 Δφ = -π として、盾座腕のもう一つの接線方向 θ は、 -20.3 < θ < -22.8 である。これは 3 kpc 腕の接線方向に一致する。 この腕の第2の接線方向は期待できない、というのはそれは太陽円の先だろうから。 240μm では 4 本腕 240μm では 4 本腕が適用できる。この波長での接線 S2, C2 に 2° の不定性を考えると、巻き込み角は 11.5 と 14.2 の間になる。これは 以前の値と一致する。腕の接線位置の予測値は図1に示した。 |
![]() 図2.太線=可視光で見える HIIR の4本腕。太陽と反対側の象限はデータを 欠くので空いている。実線=巻き込み角最小値 15.5°, 破線=巻き込み角最大値 19° で K-バンド接線方向を通る渦巻き腕。 |
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K と 240 μm 接線の違い K と 240 μm との渦状腕構造には著しい違いがある。K に見える太く明るい 構造は二本腕モデルと合い、240 μm ピーク位置とかなりずれている。一方、 240 μm 構造は伝統的な 4 本腕モデルと合う。具体的に云うと、K バンド には 4 本モデルから期待される l = -35, +50 にピークが見当たらない。サジタ リウスーカリーナ腕の C2 ピークはサイズ、強度の点で S1. S2. T ピークと大きく異なる。 ピーク強度の違いの解釈 240 μm と K バンドのピーク強度の違いは、腕に伴う拡散恒星光の原因が若い 星ではなく、二本腕構造による古い種族の星の非軸対称分布であると考えると自然 に解釈できる。 (理解できず。 ) この解釈は明るい近赤外源の銀河面分布の特徴とも合う。それらは若い星種族の 分布が4本腕に沿っているというモデルで説明できる。最も明るい=最も若い星は HIIR と同じ分布構造を示し、それはもっと暗い拡散近赤外光の分布とは異なる。 図2では拡散 K-バンド光で見える2本腕構造を HIIR から導かれる構造と 比較している。 |
我々の銀河系 K バンド放射光から見える2本腕構造は他の銀河の近赤外観測 で腕が太い対数螺旋で、対応する可視光腕より開いている ( 可視と赤外で違うところ?意味不明。) もう一つ強調したいのは、K バンドで渦状銀河を観測すると、可視の腕の形態に拘わらず、 二本腕が見えるのが普通である。しばしば可視の腕と近赤外の腕の間には相関がない。 (Seigar, James 1998) ( 論文にそんな箇所ないような。) 可能な解釈は、K-バンドで示される質量分布の波にガスが反応して作る腕構造が可視で 観測されるというものである。 サジタリウスーカリーナ腕は二次構造 この解釈ではサジタリウスーカリーナ腕は腕間または二次的腕構造で、多分主要腕から どこかで分岐したものであろう。 |