2MASS データを用いて、銀河面近くの古い星種族を解析するのに二つの異なる 方法を調べた。第1の方法は色等級図上でレッドクランプ星を分離し、その 星計数を逆変換して、視線に沿った密度分布を求めるというものである。第2の 方法は、 820 領域で星計数を円盤モデルにフィットしてパラメタ―を定める というものである。この二つの独立な方法からの結果は互いに合致した。 定性的な結論は、円盤は動径方向にも垂直方向にも指数関数でよく表現される というものである。 R < 15 kpc では円盤の突然の終端はない。 強い円盤フレアが検出された。それは太陽円の内側で始まる。したがって スケール高は内側に向かって減少する。 |
もう一つの著しい特徴は星種族にもワープが存在することである。その
振幅はガスのワープと一致する。 R > 6 kpc で低高度、平均 |z| ∼ 300 pc, の星に関して、 (1)太陽円でのスケール高 hz(Ro) = 3.6 10-2 Ro (2)表面密度スケール長 hR(Ro) = 0.42 Ro (3)銀河面密度スケール長 H = 0.25 Ro |
二つの方法を試す。
(1)2MASS CMD から RC を抜き出し、減光と距離を決める。 (2)2MASS の星計数で円盤パラメタ―を決める。 |
使用したのは 2MASS 第2公開データで、外側銀河系 l = [45, 315] である。
( バルジは含まない。) |
指数関数円盤 銀河円盤を次のように仮定する。
ここに、ρo は太陽近傍での密度である。スケール高 hz(R) は R に依存する。Ro = 7.9 kpc とした。上の式を変形すると、
となる。 |
銀河面上の密度 銀河面上の密度分布は
である。後に述べるように星円盤のカットオフは検出されなかった。 腕は無視 渦状腕はモデルに入れなかった。外側腕では貢献度が低いからである。 厚い円盤も無視 解析した領域が銀河面近くなので、厚い円盤もモデルに入っていない。 |
3.1.巨星の選択CMD図1に 2MASS (J-K,K) CMD を示す。K 区間ごとに J-K ヒストグラム を作り、ガウシャンフィットを行った。レッドクランプの左側にあるのは 矮星である。右側の K < 13 の明るい星は M-型巨星と AGB 星であろう。 MK = -1.65 を仮定する。軌跡を追えるのは K < 13 の 区間である。それより暗いと矮星が多くなりレッドクランプを分離 できない。 レッドクランプ星の計数 図1にはレッドクランプのピークをつないだ線が描きこんである。 レッドクランプ星は、J-K でピークの 0.2 以内と決める。そしてそれらを 星計数する。 3.2.星密度。円盤スケール長星計数の基本式A(m) = 立体角 ω 内で、1等級当たりの星の数。 φ(M) = 光度関数。M で積分して 1 に規格化。? D(d) = 星数密度、として計数基本式は、 A(m) = ω ∫r2D(r)φ(M)dr この論文で用いる等級区間は K = [8.5, 13] を 0.1 mag 刻みにした。 レッドクランプの絶対等級、固有カラーは一定、MK = -1.65, (J0K)o = 0.75 と仮定する。 なので、光度関数はデルタ関数である。 減光は次の式で決まる。 AK = [(J-K) - (J-K)o]/1.52 1.52 は Rieke, Lebofsky 1985 から採った。 以上の式から視線方向に沿った、減光と、密度分布が決まる。 |
![]() 図1.二つの領域での CMD. 銀河面領域の強い減光は K-巨星の帯の巾を少し 広げる。尾根の極大はガウシャンフィットで決まる。実線はフィットの軌跡。 破線はレッドクランプ区間の境界。 |
![]() 図2.mK = 11 における、反中心方向視線上での K 絶対等級と (J-K)o の分布、SKY モデルによる。変動は巨星タイプの違いによる。 プロットの極大がレッドクランプに対応する。 3.3.1.レッドクランプ分布とディラックデルタ関数との差レッドクランプの固有等級カラー分布を調べるために、図2には "SKY" モデルを使って求めた K 等級と (J-K)o の分布を示す。 |
![]() 図3.実際の密度 ρ = exp(-d/H) と方程式(12)と ディラックデルタ関数仮定した光度関数との折りたたみとの比較。 ![]() 図4.赤破線: R=12.9 kpc でカットされた円盤密度分布。黒実線 星の半数は MK = -1.65 で半数は MK = [-1.4. +2] に分布しているとした時、それらをレッドクランプと看做して得た分布。 3.3.2.カットオフはレッドクランプカラーの低光度巨星混入で隠されるか?図3に見るように、クリアカットにはならないが、カットオフの存在は 確認される。3.3.3.矮星の混入3.3.4.レッドクランプ星の赤化とメタル量効果のあいまいさ |
2MASS から表1にある 12 領域が選ばれた。領域は 2 - 5 deg2 の大きさで、十分な数が確保できている。その銀経は l = [150, 225] |
![]() 表1.選択領域。 |
![]() 図6.モデル(6)上でのレッドクランプ密度フィットの H と χ,sup>2 の関係 フィットの手続きは以下の如く行った。 (1)b = 0 データを用いてスケール長 H を決める。 K < 13, l = 155, 1165, 180, 220 データを用い。指数型円盤 をフィットした。データ点の数 N = 184 に対して H = 2.1 kpc で χ,sup>2 が最小値 143.2 を取った。図6を見よ。 (2)太陽近傍密度 その時のレッドクランプ星太陽近傍密度は ρo, red clump = 1.31 10-5 stars pc-5 である。 ( ヒッパルコスと較べどうか? あれは完全でないか?) |
![]() 図7.モデル(6)面上でのフィット。 図7に、この値を用いた円盤モデルを示す。3.2.節で述べた方法で 得たレッドクランプ星の密度も図に示した。視線方向毎に密度が少し 異なるのは、主に、減光のむらが原因である。全体としては、 フィット解はデータによく合っている。 (3)スケール高の決定 l = 180, 220 での銀河面から離れた領域のデータを用い、先に決めた H と併用して、スケール高の入った密度分布とフィットすると、 スケール高 Hz(Ro) = 310 pc フレアスケール長 HR, flare が決まる。 |
![]() 図8.レッドクランプ星密度の銀河面高度による変化。モデルは H = 2.1 kpc, Hz(Ro) = 310 pc, HR, flare = 3.4 kpc. R 大になると密度勾配が緩くなることに注意。 (12 領域でこんなに多数の R, z 組み合わせ のデータが取れるのだろうか? ) フレアの証拠 図8と図9様々な銀河面高度での観測密度をモデルと較べた。どちらの 図からも、銀河中心距離と共にスケール高が増加することが判る。 これはフレアの明らかな証拠である。 |
![]() 図9. l = 220 b = 0, 3, 6, 9, 12 方向での密度変化。 モデルは前と同じ。 カットオフ? もう一つ図7と図9から、密度は分布は R = 15 kpc まで指数関数型 を維持している。従って円盤のカットオフはあるとしてもその先である。 |
使用可能なデータは? これまで調べた範囲は |l| > 90 で、得られたフレアスケール長も R > 10 kpc について得られた結果である。l = [45, 90] の範囲 では R = [8, 9] kpc の範囲についての情報しか得られない。 従って、|l| < 45 のデータが必要である。その上、|l| < 30 は 面内バー Hammersley et al. 1994, Lopez-Corredoira et al. 2001, の影響が大きいので除くべきである。現在、使用可能な 2MASS データは限られて いるので、 (l, b) = (30, 6) 領域を用いる。 内側銀河のスケール高 図10はその方向での視線に沿った密度の変化である。 図には様々なモデルの予想も描きこまれた。これを見ると、 H = 2.1 kpc, hz(Ro) = 310 pc の 円盤を記述するにはフレアが人ようなことが判る。しかし、フレアの スケール長は 3.6 kpc という短さではあり得ず、 9 kpc 程度は必要である。 内側銀河のスケール高は確かに、太陽近傍より短いが、 hz(5 kpc) = 0.73 hz(Ro) である。この結果は、 Kent et al. 1991 の hz(5 kpc) = 0.67 hz(Ro) とも合致する。 |
![]() 図10.レッドクランプ密度分布。曲線は式(3)の H = 2.1 kpc, hz(Ro) = 310 pc で、異なるフレアスケール長 hR, flare に対応。図から内側銀河でフレアが必要と分かる。そのベスト スケール長は 9 kpc である。 |
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![]() 図11.K 光度関数。Eaton et al 1984 による。 |
![]() 図12.モデル(6)の面上での星計数フィット χ2 |
![]() 図13.面上での星計数フィット。破線=非ワープベストモデル(H=1.91 kpc). 実線=ワープベストモデル(H = 1.97 kpc, εw = 5.25, φw = -5°, Aw = 2.1 10-19 pc) |
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![]() 図15.positive count / negative count 星. 実線=ワープモデル。 破線=傾いた円盤モデル |
5.1.結果5.2.傾いた円盤? |
![]() 図16ワープの模式図。リングは 1 kpc おき。ワープ最大の線も描いた。 |
5.3.レッドクランプでワープを確認する |
![]() 図17.正銀緯密度/負銀緯密度。(l, b) = (220, ±6) 実線=ワープモデル。破線=太陽高度の影響。 |
5.4.星ワープとガスワープ |
![]() 図18.実線=星ワープの最大高度。破線、点線=ガスワープ。 5.5.ワープを含む円盤によるフィット |
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![]() 図1. |
![]() 図19.振幅 ρo の限界 K 等級による変化。Eaton et al 1984 LF を仮定し、我々のモデルで計算。 |
![]() 図20.mK < 9.0 の星計数データとフィット。 破線=ワープモデル。 |
6.2.高銀緯への応用 |
![]() 図21.高銀緯での星計数。低銀緯をフィットしたデータが高銀緯も カバーしていることに注意。 |
![]() 図22.銀河系XZ面でのカット。 |
![]() 図23.最終モデルの ρ = 0.005 star pc-3 等密度面。 縦方向縮尺5倍。 |