First GLIMPSE Results on the Stellar Structure of the Galaxy


Benjamin + 沢山
2005 ApJ 630, L149 - L152




 アブストラクト

 GLIMPSE の |l| = [10, 65], |b| < 約 三千万の星カタログを用いて、 銀河系 (l, b, m) 分布を調べた。計数対銀経関係はモディファイドベッセル 関数 N = No(l/lo)K1(l/lo) で近似した。ここに lo は限界等級、 バンド、銀河中心のどちら側かにあまり依らない。 4.5 μm で lo = 17 - 30, ベストフィットで lo = 24±4 である。天体分布を指数関数円盤 でフィットした結果、スケール長 H* = 3.9±0.6 kpc を得た。  |l| < 30 には南北非対称が存在し、北側が 25 % 多い。l = [10, 30] では m = [11.5, 13.5] mag に強い個数超過が認められる。軸半径 Rbar = 4.4±0.5 kpc、 太陽・銀河中心線に対する角度 φ = 44±10 の バーが最も単純な解釈である。天体数超過、l = [26, 28], [31.5, 34], [306, 309] が渦状腕に関係するかどうかを調べた。赤い天体 [K-8.0] > 3 の数が多い 所では星計数が減る。これらの領域では減光により星計数が減る。





表1.GLIMPSE カタログとアーカイブソースインフォーメイション

 1.GLIMPSE と銀河系の恒星構造 

 GLIMPSE 

 GLIMPSE は |l| = [10, 65], |b| < 1 を 3.6, 4.5, 5.8, 8.0 μm を撮像した。角分解能は 3.6 μm で 1.4, 8 μm で 1.9 である。


 観測結果は4バンド全てで解析し、比較した。サーベイ領域は Δb = 0.3 の 3本の帯に分けて解析した。そして、各帯を独立に考察した。


 2.星計数の非対称性 

 計数マップ 

 Δl × Δb × Δm = 0.1° × 0.1° × 0.1 mag を4バンドで区切る。0.1° × 0.1° 区画内の 星数はカタログで 1400, アーカイブで 2200 程度である。図1には 4.5 μm 天体の m = [6.5, 12.5] 数密度(星数/平方度)マップを示す。図中水平線= 銀緯中間値 bcen を示す。bcen は -0.05 から +0.05 の範囲を動く。|l| が 10° から 65° まで変わると、計数は 1/12 に なる。

 南北非対称 

 l = [10, 22] の星数は l = [-10, -22] の星数の 25 % 増しである。さらに、 l = [26, 28], [31.5, 34], [306, 309] には明らかな密度超過がある。 図1にはまた、約 40,000 の (K-8.0) ≥ 3.0 の赤い天体の等密度線を 示す。これらは総星計数と強い逆相関を示す。 星の総計数が落ち込むところは 13CO コラム密度の高いところか、熱電波強度の高いところであった。

 指数関数円盤へのフィット 

 図2には各曲線に示した等級範囲の星密度を示す。1次モディファイドベッ セル関数、N(バンド, m, |l|) = No(|l|/lo)K1(|l|/lo)、は Merrifield 2005 の私信では指数関数円盤に期待される関数系である。 我々は、l = [35, -35], [-51, -53.5] (超過), [-53.5, -58.5](データなし), を省いた残りに上の関数をフィットした。内側境界を |l| = 25 と |l| = 45 の間で変化させて、その選択による影響を調べた。4.5 μm バンドに対する ベストフィットは lo = 24.2 ±0.3(ランダム)±3.6(2σ系統) である。この値を Wainscoat et al. 1992 の M-, K-巨星の円盤モデルと合わせた結果は H* = 3.9 ± 0.6 kpc と なった。

 |l| < 22 ではフィットは観測を超過 

 |l| > 30 で、かつ上の除去範囲を除いて、ベストフィット関数は 4.5 μm 天体密度に 20 % (カットオフ 8 - 10 mag), 10 % (カットオフ  12 - 14 mag) で合う。ただし、この関数は |l| < 22 では観測値を 30 % にまで超過する。この不一致度はカットオフ等級を変化させても変 わらないのでコンフュージョンのためではない。又、GLIMPSE は m = 14 でも コンフュージョンはない(Churchwell et al 2005)。

図2.GLIMPSE 数密度(星数/deg2)。 赤線=(下の目盛:正銀経)。 青線=(上の目盛:負銀経)。両方の曲線への l = 35 - 65、明らかな超過部 を避けて、でのフィットも示した。4セットの曲線は暗い方の等級カットオフ の影響を示す。カットオフ等級を落とす度に、計数はファクター 3.5 - 2.3 倍 増える。垂直線=渦状腕の接線方向の追跡天体による差 (Englmaier, Gerhard 1999) を示す。実線=彼らの採用値。点線=文献値。



図1.GLIMPSE カタログ m(4.5μm) = [6.5, 12.5] の個数マップ。著しい特徴は 銀河中心からの距離に伴う数密度の低下と、l = [10, 22] と [350, 338] との間の 非対称性である。実線=銀緯中央値。二本の等高線、log(星数/deg2) = 2.8, 3.3 は [K-8.0] > 3 の赤い星の表面密度である。赤い星と星総数の 逆相関に注意。これらの方向は星形成域か、"R" = 強い連続電波源 (Altenhoff et al 1970, Haynes et al 1978)である。

 3.GLIMPSE 計数の等級による変化(光度関数) 

 光度関数のべき乗則フィット 

 図3には、GLIMPSE カタログ星の数。南北各3方向での等級による変化を示す。 図3と図4は有効感度限界 msens (表1)の銀経依存性を決める ために用いられる。図3の曲線を

      log n(m) = a m + b

でフィットする。m = -2.5 log (S/So)、S = フラックス密度、So = ゼロ等 フラックス密度である。n(m) dm = N(S) dS と変換すると、

     N(S) = No(S/So),   (α = 2.5 a + 1)

ここに、No = [2.5/(So ln10)]×10b stars deg-2 Jy-1、α = 1.83 - 1.95 である。

 m = 12 のコブ 

 図3には m = 12 より暗い星のコブが北銀河に見えるが南銀河にはない。 これは、カタログでもアーカイブでも 3.6, 4.5 μm にはあるが、 5.8, 8.0 μm の方には現れない。これをもっとよく調べるため、図4では Δm = 0.1 サンプル上で α = 2.5 d(log n)/dm +1 を l-m 面上でマップした。 コブは l = [10, 22] と [24, 29] で続いている。l = 23 のギャップは減光が 大きい箇所か、または拡散光が強い箇所であろう。l = 10 におけるコブの 中心等級は mh = 12.5 ±0.1 mag である。散布度は σh = 0.25±0.1 mag . ピークの高さは、べき乗則 フィットの 20 % 上である。コブの位置は銀経が増すと共に明るい方へ移動する。 その割合は、

     dmh/dl = -0.025 ±0.005 mag/deg

である。


図3.GLIMPSE カタログ星の数。南北各3方向での等級による変化を示す。 外側銀河系( l = ±55.5) と 中間銀河系 (l = ±35.5) では 南北のカーブは同じ勾配と強度を示す。しかし、内側銀河系(l = ±15.5) は著しい南北非対称を示す。さらに、北側の星計数には m = 12.2 にコブが ある。計数は Δl × Δb = 1.0 × 1.8 で行った。 カタログは 6.5 等より明るい星は欠いている。



図4.光度関数べき乗指数の、見かけ等級 - 銀経面上マップ。 12 mag コブ 位置の変化がはっきりと見える。上図には、モデルバーを構成する星の絶対等級 を M4.5 = -2.15、前景減光率 a4.5 = 0.05 mag/kpc として、3通りの位置角 φ に対する等級・銀経軌跡を黒線で、下図には白線 で描いた。軌跡上の丸は R = 3, 4, 5 kpc を示す。点線は、 M4.5 = -1.8, 減光なしの場合。
(何故、カウントでなくカウントの傾きをマップ にするのか? )


 4.解釈及び以前の研究との比較 

Ro = 8.5 kpc を仮定する。

 指数関数型円盤 

 |l| ≥ 22 では IRAC 4バンドの星計数は全て、 N(band, m, |l|) = No(|l|/lo)K(|l|/lo) でフィット可能である。 4.5 μm では lo = 24.2 ±3.6(系統誤差)4バンド全てで、 lo = 17 - 30 である。 これは、2MASS K バンド星について我々が同一の形、lSC > 40 を得たことと較べられる。K でこのように大きな値が必要だったのは K で は減光が大きかったためと思われる。この角度スケール長を動径スケール長に 変換するには、赤外光度関数と減光とが必要(Cohen 1993) である。予備的な モデルによると、GLIMPSE サンプルの大部分は M-型と晩期 K-型巨星であり、 それを使うと H* = 3.9 ±0.6 kpc である。
 |l| < 22 では、このフィットよりカウントは 20 % 少ない。これは Rh = 3.2 ±0.3 kpc の内側に恒星ホール、もっと正確には 欠損、があることを示しているのかも知れない。この値は Freudenreich 1998 が COBE/DIRBE データから導いた Rh = 2.9 - 3.3 kpc と合う。

 バー 

 |l| ≤ 30 の星計測には強い南北非対称が存在し、北側の星は 25 % 多い。 また、l = [10, 30] では、等級分布の m = 12.5 付近にコブが存在する。 この両方はバーの存在の検出と考えられる。これまで位置角の推定値は φ = 15 から 35 の間に渡っている(Gerhard 2002). 図3、図4に現れるコブを 絶対等級がある範囲に押さえられた星がバー状に並んでいるためと考えると、 バーの位置角と長さを評価できる。図4では、前景減光 aV = 1 mag/kpc を仮定して(Mihalas, Binney 1981)、等級対銀経関係のラインを 引いた。ベストフィットは φ = 44 ±10, Rbar = 4.4 ±0.5 kpc, M4.5 = -2.15 ±0.2 mag を得た。減光 を強めると φ と M を増加させる。もしもデータをゼロ減光でフィット すると M4.5 = -1.8 となる。M4.5 = -2.15 は コブが K2 - K3 (Cohen 1993, Hammersley et al. 2000 )であることを示す。
図4を見ると、モデルバーの mhump は l = 350 で我々の感度以下になることを示す。しかし、図1では星計数が l = 345 から l = 350 にかけて増加していくことは我々が導いたバー長と合致する。 バーは最も簡単な解釈であるが、他の配置も考慮すべきである。

 腕による超過 

 l = 26 - 28, 31.5 - 34, 306 - 309 では連続レベルのフィットに較べ 20 % 超過である。これ等の超過を渦状腕の接線と同定したくなる。初めの l = 26 - 29.5 のコブはそれが l = [10, 20] の超過構造の連続で、減光のために分かり にくくなったことを主張している。 減光に関する未解決の問題が第2の構造にも影響する。 第3の特徴 l = [306, 309] は以前から知られているケンタウルス渦状腕の接線 l = 309 に同定される。サジタリウス腕接線 l = 49 方向には何の超過も見られない。

 減光、拡散背景光 

 図1に示したように、GLIMPSE 計数と (K-4.5) > 3 の赤い星の計数の間には 明瞭な逆相関がある。計数の減少は減光によっても、拡散光レベルの上昇によっても 起こる。

 GLIMPSE の特徴 

 ここに述べたことの多くは以前の研究で検出、提案されてきた。GLIMPSE が それらと違う点は、2 以下の空間分解能で、銀河面の完全サンプル を実施した点にある。カラー選択のような手間を掛けなくとも、我々は銀河系構造 の基本問題を扱えた。