AGB 星を探索子に使い、太陽円の内側の恒星円盤の構造を調べた。銀河中心の 周りの恒星分布の最低調和関数項を決定することから出発し、長半径 5 kpc, 位置角 -36±10 のバーが存在する証拠を発見した。 | バーの存在は、輻射補正の不確定性、減光強度、AGB 星の光度分散に対して 確実に言える結論のようである。また、マップはバーの端末から渦状腕が発生している 様子を示す。この方法はもっと広範なサーベイに適用可能である。 |
サンプルの選択 追跡天体を選ぶためには一様性が重要である。IRAS PSC から変光 AGB 星を 選ぶ。そのためにフラッグ VAR を使用する。問題点が二つある。 (1)観測回数が場所により違う。 (2)コンフュージョン。 これらを避けるため、次の制限を設けた。 (1)F12 > 2 Jy 38,004/158,000 12μm 検出 (2)VAR > 98 % 5736/38,004 (3)|b| < 3 3170/5736 98 % は 12, 25 で検出。F60/F25 > 1 の 143 は星形成域天体 であろうが、 全体の 5 % なので無視する。またそれらは天空上を 等方的に分布している。 サンプルのカラー 図1にカラー C = log10(F25/F12) の分布を示す。ピークは C = -0.12 にある。そのカラー温度 = 380 K である。最も青い区分は C < -0.174, 最も青い区分は C > 0.053 である。 |
![]() 図1.IRAS PSC から選んだ 3170 天体の C = log10(F25/F12) 分布。 点線は最少4分線(C < -0.174)と最大4分線(C > 0.053。 破線は 90 % の境界線。 |
3.1.測光距離1.固有光度を決める仮定として、前章で選んだ天体は分散ゼロの一定光度を持つと考える。バル ジの OH/IR 星は平均光度 8 103 Lo で、散布度は距離の違いのみ で期待される大きさに過ぎない (te Linkel Hekkert 1990). Claussen et al. 1987 は炭素星のフラックス限界サンプルを調べ、その光度を 3 103 Lo - 4 104 Lo としたが、平均値は 8 103 Lo で、 標準偏差は 1 103 Lo であった。このように OH/IR 星は 炭素星と同じくらいの光度を持つようである。IRAS 変光星を OH/IR 星と 炭素星の集合と考えると全体のっ標準偏差は Claussen et al. 1987 の図5から判断して 0.5 等以下であろう。平均光度のエラーは距離の スケールを変えるだけなので容易に修正可能である。散布度の影響に関して 言うと、0.5 等以下ならこれから述べる結論に影響しない。1等になると 全体の形態は同じだが少し歪みが生じる程度である。このように、赤外で 明るい AGB 星 = IRAS 天体の光度散布度は標準光源と見なせるほどに 狭い。 2.輻射補正 図2から分かるように、O-リッチと C-リッチな AGB 星では SED が異なる。 様々なグループの星に対し BC が提案されてきた。この論文では、 C = log10(F25/F12) の黒体輻射に対する輻射補正を採用する。 3.減光補正 A12 = k(mag/kpc) d(kpc) と考える。銀河中心 d = 8 kpc で Av = 30 mag, A12 = Av/15 - Av/20 と考えると、 k = 0.18 - 0.24 mag/kpc である。 |
![]() 図2.輻射補正のカラー指数 C による変化。BB = 黒体輻射への 補正。vdVBO = van der Veen, Breukers O-リッチ星。 vdVBC = van der Veen, Breukers C-リッチ星。tLH = te Lintel Hekkert の輻射補正。 |
1.調和関数展開 太陽を中心にした星の空間分布を次数 mmax までの調和関数で 表現する。銀経方向の不完全性は無視する。2.1.節で選択したサンプル に対しては mmax = 10 を適当と看做した。 2.不完全区間の内挿 不完全区間の天体密度は m = 0 と 1 の展開項から内挿値を使う。Δφ = 欠けた角度として、m = 0 項を 2π/(2π - Δφ) 倍する。 続いて、調和解析を完全に行う。これにより、高次項で人為的な構造が 現れることを防ぐ。 |
3.原点変換 新しい原点の周りに調和展開を行う。展開をやり直す代わりに、 付録Aにある定式で変換する。 3次元 類似のアルゴリズムを3次元構造に対して行える。初めての試みなので、 今回は平面構造に限定したが、サンプルが大きくなったら、バルジや 円盤のスケール高の研究に応用できる。 |
密度ピーク距離 減光率として A12 = 0.21 mag/kpc を採用した。これを 0.16 mag/kpc にすると中央密度ピークの距離が 8kpc となった。この一致は 方法が大体良いことを示している。 スタートサンプル 初めは C > 0.053 の最も赤い 793 天体を第3章の方法で処理した。 この範囲は te Lintel Hekkert 1990 が多数のバルジ OH/IR 星を発見 した領域である。密度分布を求める際には A12 = 0.16 mag/kpc を 使用した。 ![]() 図3.C > 0.053 サンプルの分布。目盛は kpc. 太陽は (X, Y) = (0, 0)、 銀河中心は (8, 0) である。等高線はピークの 5 % から 100 % まで等間隔。 である。 |
分布の特徴 (1)中心集中が高く、比較的軸対称である。 (2)一本腕が方位角 -30° 方向に伸びる。向こう側が見えないため? 向こう側の構造 図3では片側のみに噴き出るジェットに見える。向こう側に距離を伸ばすため、 フラックス限界を 2 Jy から 1 Jy に下げて同じ解析を行った結果が図4である。 明らかに向こう側にも少し弱い腕が見える。これはサンプルの不完全性が原因 であろう。 ![]() 図4.F12 ≥ 1 Jy, C > 0.053 サンプルの分布図。 ピークの 5 % から 100 % まで 10 % 刻み。 |
![]() 図5.図3と似ているが、サンプルが抜けている方向を 3.2.節の方法で埋 めた。等高線間隔は図3と同じ。 m = 0 項補正の分布図 図5にはサンプルが抜けている方向を 3.2.節の方法で埋めた時の分布図 を示す。図2(3の間違い?)と図5を比べると、全体の構造は変わらない。 |
![]() 図6.偶数次調和項のみで構成した銀河中心周りの分布図。 10 & から 100 % までを等間隔の等高線を引いた。実線=位置角 - 36°。点線=位置角 -26°, -46°。 m = 0, 2, 4 項による合成分布 図6には、m = 0, 2, 6 の項のみから作った分布を示す。現れたバー構造は 系外銀河のバー構造とよく似ている。バーの長さは 5 kpc で位置角は -36 で ある。角度と長さについて、3.8 , 5.4 kpc, 24°, 46° と色々な数値が 出てくるが理解できなかった。 |
![]() 図7a.m = 0, 2, 4 を使った、表面密度。(図6との違いがよく分からない) |
![]() 図7b.偶数、奇数次項を合わせた m = 4 までの分布。 |
全てのカラー C 図8には全てのカラー C を用いた分布図を示す。我々は腕の青い種族と バーの古い種族の二つが混ざった構造を見ているのかも知れない。また カラーが光度と関係している可能性もある。特に青い天体では。 種族の特定が必要 種族を特定する必要がある。 リング? 図には渦状腕またはリングに見える構造が存在する。これは人為的な現象では ないだろう。これは Sanders 1984 が述べた 5 kpc 分子リング (Ro = 8 kpc) に 対応するのかも知れない。 |
![]() 図8.図5と同じだが、全てのカラーを用いた。実線=方位角 -36°. |
バー IRAS 12μm 天体の分布は銀河中心から 5 kpc まで伸びるバー状の構造が 存在することを示す。その位置角は 36±10 である。非軸対称成分と 軸対称成分との比は最高で、R = 4.4 kpc で 0.76 に達する。 |
リング R = 5 kpc にバーを取り巻くようにリングが見えるのも著しい特徴である。 |