COBE/DIRBE の FIR, NIR データをフィットして、 l = [20, -20]を除く, b = [-30, 30] の銀河系3次元モデルを作った。 240 μm の光学的深さが小さいので、遠赤外放射 はダスト分布を追跡可能である。ダスト分布は、(1)スケール長 0.28 Ro で スケール高はフレアリングを示すワープした円盤、(2)4本腕の渦状腕成分、 (3)局所腕、から成る。この局所(オリオン)腕は l = 80 と l = -100 方向に明るい 放射構造を生み出している。以前の研究と合致する、宇宙背景放射 1.07 MJy/str が 得られた。 | このダスト分布を使って、J, K 減光量を計算した。さらに恒星放射強度分布を次の 2成分モデルで計算した。(1)ワープしたスケール長 0.28 Ro の指数型円盤。 (2)2本腕が支配的な渦状腕成分。この小さなスケール長は我々の銀河系を最適化 フィットして得られた結果であり、 CDM モデルが予想する暗黒物質尖がりハローとは 合わない。ワープの振幅はダストとハローとでは異なる。ワープの開始は太陽円の内側 である。 Ro = 8 kpc 採用。 |
パラメトリックモデル この方針の研究は最初 Spergel, Malhotra, Blitz 1996, Davies et al 1997 が COBE/DIRBE 遠赤外データをダスト軸対称分布モデルと比較したことから始まる。 ここではもっと複雑な、冷たい軸対称円盤に暖かい非軸対称成分を加えたモデルを 考える。モデルパラメタ―は 240 μ マップとのフィットから決める。 |
円盤モデル 恒星分布にも指数関数円盤に腕を加えたものを考える。このモデルは Freudenreich et al. 1998 と似ているが、ダスト分布を NIR 吸収でなく、FIR 放射から導いたことが 違っている。解析領域は b = [-30, 30] とし、銀河中心周辺の l = [20, -20] 領域は除いた。バーの扱いが困難だからである。 |
![]() 図1.J バンド各ピクセルのローカルエラーの銀経による変化。 ZSMA マップ ここでは Kelsall et al 1998 による、黄道光除去マップ (ZSMA) を使用 する。このデータセットは各バンド 393,216 ピクセルから成る。全スカイマップ が Arendt et al 1998 に載っている。 近赤外点源の除去と局所エラー NIR データに 5x5 ピクセルのメディアンフィルターを掛けて、点源を除去した。 許容範囲は局所メディアンの 0.5 - 1.5 倍である。局所エラー σλ は各ピクセルを中心とする 7x7 区域の除去データを除いた標準偏差である。 図1には σJ の銀経による変化を示した。 |
![]() 図2.上:平滑化:非平滑化データの比。下:ローカルエラー σ240. 遠赤外放射 遠赤外放射にはあらゆる角度スケールで構造が見られる。それらは尾根やピークとして 現れる。このため局所エラーの計算には近赤外と別の工夫が要る。また、 S/N も低く、 黄道光を引いた後が負になるピクセルもあった。ある種の平滑化が必要である。 平滑化 各ピクセル点を中心に 7 x 7 ピクセル区間で2次式フィットを行い、 ピクセル点でのその式の値を平滑値とする。図2にはローカルエラー σ240 のマップを示す。 排除領域 |b| > 30 データは除かれた。これは円盤の星とダストに関心があるためである。 同様に、|l| ≤ 20, オリオン星雲、アンドロメダ、 M33, マゼラン雲の近傍も除いた。 その結果、 240 μm で 173,569 ピクセル、NIR は点源を除去した後に 152,371 ピクセル残った。合計 478,311 ピクセルがフィットの対象となる。 |
補正項 遠赤外では τ << 1 を仮定する。DIRBE では Iνν = 一定の仮定で輻射強度を求めて、D としている。実際の輻射強度 I との間に 補正項 K が入り、 D = I K となる。このあと、K についてごちゃごちゃ。 |
座標系 銀河座標 (l, b, s) から銀河系中心デカルト座標 (x, y, z) への変換は、 x = Ro - s cos(b) cos(l) y = s cos(b) sin(l) z = s sin(b) + Zo |
240 μm 放射の基本式 D(l, b) = ∫(kdρaxi + kaρ arm + k+, -ρloc) ds + Q240 ここに、Q240 は宇宙背景放射である。 kdρaxi = 円盤 指数型円盤は次の式で与えた。 ρaxi = ρ0 exp(-r/hr) sech2(z/hd) 円盤のフレアは線形表式で与えた。 hd = h0, d + h0, d(r - rf) (r > rf) = h0, d (r ≤ rf) 円盤の穴 円盤の穴は以下の式で取り込められる。 ρaxi = ρ(Ro) exp[ -(r-0.5)2 /0.252] 円盤のダスト温度 ダスト温度は、 Sodroski et al 1997 が見出した HI 温度を近似して、 T = 26 - 6.8(R/Ro) 図3に示されるように、ダスト放射率は R = 1.5 Ro までは温度に比例する。 腕の密度分布 腕の配置は、HIIR 位置に基づく Georgelin, Georgelin 1976, Taylor, Cordes 1993 を採用した。腕を横切る密度プロファイルは銀河面上で半巾 wa ∝ r、 フレアリングスケール高 ha のガウシャン とする。銀河系の任意の位置に対し、i-番腕までの最短距離 di (i = 1,...,4) が決まる。その中で exp[-(di/wa)2] が最大 である腕からの寄与を考える。すると、 ρarm = ρa ga exp[- (di/wa)2]exp[-(z/ha)2] ここに、ρa は腕の規格化密度、ga は腕に沿った密度の 動径(?)方向カットオフで、 ga(Ra) = exp[-(Ra - rm) 2/ra2] (Ra > rm) = 1 (Ra ≤ rm) ここに Ra = 腕の最近接点の銀河中心距離。 (rm は腕の終端半径?) 半巾 wa とスケール高 ha は Ra の関数である。 wa = ca Ra ha = h0,a + h1,a (Ra - rf,a)2 (Ra > rf,a) = h0,a (Ra ≤ rf,a) サジタリウス - カリーナ腕について サジタリウス - カリーナ腕 (i = 3) には ca と ha に 縮小係数 fr を掛ける。l = ±50 の放射ピークを見ると、接点距離は同じくらい なのに、高さが随分違う。この差は i = 2 と 3 の腕が同等ではないことを示す。 腕の目印 腕の接線 l = [80, -80] 範囲に見える 240 μm ピーク。 ペルセウス腕 l = [180, 90] に幅広の放射構造を示す。 オリオン局所腕の接線 低銀緯で見える l = 90 と l = -100 のピーク。NIR で吸収なので近距離。 |
![]() 図3.銀河系半径(下)またはダスト温度(上)の関数としての相対的放射率 オリオン局所腕の表示 (r, φ, z) = 銀河円筒座標で、太陽位置は (Ro, 0, Zo) である。 ps = 局所腕のピッチ角。as = tan ps。 腕の中心線は、rs = Rs exp( -asφ). (右手系で考えて φ を反時計回りにとると、 方位角が増すと rs が減る。φ は時計回りに測るのか? ) 表1では Rs = 8.001 kpc, Ro = 8 kpc だから、ほんの僅か(1 pc !) 太陽の外側を通る事になる。 (どうやってその差が確定したのか分からない。 ) 局所腕の密度プロファイルは ρloc = ρs exp( -ds2/ ws2) ここに、ds2 = (r - rs)2 + (z - Zs)2、 Zs は局所腕のワープ銀河面からの 高さ、である。 (銀河面上の点(r, φ, z) に対しては局所腕の 軸上の点 (rs, φ, Zs) が対応し、ds はその間の 距離。) 太陽は局所腕のギャップの中に 太陽を局所腕のギャップの中に位置させる必要のあることが判った。ギャップの端は φ1 と φ2 で指定される。太陽が希薄領域内に存在している ことは、 Paresce 1984, Frisch 1996 の研究からも分かっている。 計算上の都合で局所腕はピクセルサイズより小さくなった距離で打ち切る。 局所腕輻射率の違い 局所腕の輻射率は正銀経側と負銀経側で異なる。これは両側で温度が異なる証拠である。 遠赤外放射率としては正銀経側の方がずっと明るい。一方、近赤外の吸収の特徴は 双方似通っている。 |
スケーリングファクター ダストの光学的深さを計算する際に、ダストの柱密度を計算する代わりに、 Spergle et al 1996 が導入したスケーリングファクターをダストの成分の中の 1つにのみ適用する。スケーリングファクターでそのダスト成分を再スケール すると、その視線方向ではモデル放射が観測値と一致する。それは、
ある視線方向では j-番ダスト成分のみが再スケールされて、 ρjres = fjρj となる。選ばれるダスト成分は、その結果のそのダスト成分の密度の相対変化が最も小さい ものである。 腕の形状1:対数螺旋 m対数螺旋の第n腕の半径は、 Rn = Ro exp(-aφ) exp[2πa(n-1)/m] n = 1,...,m と表される。ここに a = tan φ = ピッチ角である。m = 2 と 4 を試す。 |
腕の形状2:剪定腕 ダスト渦状腕分布の剪定版のようなもので、この論文ではこれを採用する。若い星は 腕から下流側に少し流されているだろう。それは方位角で表すと、
ここに、 Vo = 銀河円回転速度、τ = 若い種族の平均年齢、Rc = 共回転半径。 ワープ Zw(r,φ) = ワープの高さとして、 z から z'= z -Zw へと変換することでワープを表現する。 Zw(r,φ) = hw(r) sin(φ-φw) とする。ワープの振幅は hw(r) = aw(r - rw)2 r ≥ rw = 0 r < rw ここに、rw = ワープが開始される半径、aw = ワープの振幅 ファクター。星のワープはダストと異なるパラメタ―を持つ。 |
ベストフィットを探すために χ2 を最小化した。
上の和はバンドとピクセルに渡る。しかし、計算上の制限により全波長を同時に フィットすることはできなかった。そこで、まず FIR をフィットし、次に NIR を フィットする。 4.FIRパラメタ―の調整不定パラメタ―は事前にフィックス FIR マップだけからダストモデルを出す際にいくつかのあいまいさが残る。それらは、 長さの基準 Ro = 1 として表すことにした。 ![]() 図4.(上) DIRBE 240 μm 平滑化マップ。(中)モデル。(下)モデルと観測の差の相対値 ![]() 図6.指定銀緯から 0.17° 以内の 240 μm プロファイル。 |
k ρ を k と ρ に分離困難。 FIR フィットでは k- = ka = 1 は円盤成分との相対比である。 Zo Zo = 15 pc 採用 腕のスケール高 h0,a h0,a = 0.01 Ro とする。 残った 22 パラメタ―がフィットに使われた。結果を表1に示す。 図4= 240 μm マップ 図4は 240 μm マップを観測(上)とモデル(中)で示す。さらに相対的なズレ、 (Dobs - Dmod)/Dobs を示す。この図から全体的な 様子を見てとることができる。しかし、この図では銀河面での変化がよく分からない。 そこに興味深い天体が集中しているのに。そこで、図5と図6では等銀緯プロファイル を示す。これから、モデルのずれが高銀緯で大きくなるように見える。しかしそれは 用いた対数スケールの効果である。図7は残差が高銀緯で小さいことを示す。 FIRマップの特徴 放射プロファイルはモデルが銀河面での主要な特徴を再現していることを示す。 腕の接線 l = ±30, ±50, -80 と局所腕によるピーク l = 80, -100 は正しく位置している。天空図では局所腕は銀緯方向に大きく広がる二つの明るい 点として現れている。ワープは銀緯の正負での放射の対比から明らかである。 (何処が非対称?) ペルセウス腕は l = 80 から -140 (l=220) にかけての b > 5 での広い放射構造 として図6に明らかである。この腕は主に正銀緯側で見えるがそれはワープの効果である。 ( 外側円盤とどう分離するのか?) そしてそれが銀緯方向に大きく広がっていることが渦状腕のスケール高にフレアリング を要求する根拠である。ワープはまた l = -80 で銀緯方向にわずかに負方向にずれている ことも説明する。 ![]() 図5.b = [-0.17, +0.17] の 240 μm プロファイル。バツ=データ。菱形=モデル。 ![]() 図7.遠赤外データとモデルの差の対数。 |
![]() 図8.(上) J バンド観測天空図。(中)モデル J マップ。(下)モデルと観測の差。 (上)と(中)は対数表示。(下)は線形表示。 図の説明 NIR のパラメタ―は表2に載せた。図8と図9には観測とモデルの天空マップ を比較した。相対差 (Dobs - Dmod)/Dobs も図示した。それを見ると、大きな差は銀河系中心から 30° 以内の銀河面 であることがわかる。図10,11,12にはより詳細な銀緯一定線上での プロファイルを示す。 銀経プロファイルの特徴 観測された NIR プロファイルは FIR に較べずっと滑らかである。また、軸 対称成分が卓越している。非軸対称性が現れるのは銀河面近くである。これは 主に減光の効果で K より J で著しい。渦状腕は FIR ほどはっきりせず、K バンドで部分的に認められる程度である。局所腕による吸収構造が l = 80 と l = -100 にはっきりと見える。 FIR リスケーリングの効果 FIR リスケーリングの効果が NIR の放射プロファイルに現れている。リス ケーリングにより人工的な特徴が出る場合もあるが、それよりしばしば、これ により NIR プロファイルの細かい構造が再現されるようになった。特に低銀緯 では、吸収がプロファイルを規定する効果がはっきり示された。 ワープ NIR ワープは FIR ワープほどはっきりしないが、図12の b = 5 と -5 図 を比較するとはっきり分かる。プロファイルは b = -5 では正銀経側に強く、 b = +5 では負銀経側に強い。 K バンドのズレ Kバンドのズレマップを見ると、モデルでは表現しきれていない構造が残って いることが判る。前に述べた銀河中心周り銀河面上のズレをおいても、 K マップには巾の広い大きな黒い斑点がみえる。l = 90 付近に広がる黒い染みは 局所腕によるものであろう。銀経負側の白い斑点は l = -90 以内に分布するが あまりはっきりしない。これらのシミは J でも同じ場所に見える。 ![]() 図11.各銀緯から 0.2° 以内のJバンド放射分布。Kバンド。 バツ=観測。実線=「切り離し」腕モデル |
![]() 図9.(上) K バンド観測天空図。(中)モデル K マップ。(下)モデルと観測の差。 (上)と(中)は対数表示。(下)は線形表示。 ![]() 図10.銀河面から 0.2° 以内の放射分布。(上)Jバンド。(下)Kバンド。 バツ=観測。実線=「切り離し」腕モデル ![]() 図12.各銀緯から 0.2° 以内のKバンド放射分布。 バツ=観測。実線=「切り離し」腕モデル |
![]() 図13.ダストのモデル表面密度分布。太陽は中央上の小さな黒点。太陽が オリオン腕近くに位置することが判る。銀河中心の向こう側の腕は HII データ(HIIR)不足のため不完全である。 ダストと星の面密度分布 図13にはダスト、図14には K バンドのモデル表面輝度分布を示す。 r ≤ 0.34 Ro 部分は不完全である。特にバルジに関連した構造は現れて いない。また、銀河中心の向こう側の腕も不完全である。これは腕の軸線 を HIIR の配置によって決めているからである。 腕の強度 ダストと星における相対的な腕の強さは、腕対腕間域の銀河面におけるフラックス 比として図15に示す。しかし、円盤と腕とのスケール高のちがいがこの差を 表面輝度では和らげる。図16には様々な成分のスケール高を示す。 ![]() 図15.腕と腕間との密度比。破線=星。実線=ダスト |
![]() 図14.K バンドのモデル表面輝度分布。明るい輝点が太陽。 局所腕 図13には局所腕も表されている。しかし、銀河系全体として見る時には 局所腕は腕というより、腕間の橋、又は腕のはけ毛のようなもので円盤の あちこちに存在するものの一つに過ぎない。 ![]() 図16.スケール高の変化。破線=星円盤。実線=ダスト円盤。一点破線=腕。 |
5.1.不確定性固定パラメタ―を変えた計算4つの固定パラメター (φ, rf, h0, a, Zo)、 それに温度勾配、の内一つだけを標準値から変えて、モデルフィットをやり 直した結果を表3に示す。 影響の大きい FIR パラメタ― 表3を見ると、Zo とダスト円盤のフレアパラメタ― h1 の相関が大きい ことが判る。Q240 と 腕のパラメタ― ca と h1, a の間の相関も大きい。 |
恒星モデルの固定パラメタ― ダストモデルと違い、恒星モデルにはたった一つの固定パラメタ―、恒星腕の スケール高、しかない。変化の結果は表4に示す。 二つの極小 円盤モデルを調べると、 二つの解の回りにモデルが集まっていることが判る。 おそらく、χ2 分布に二つの極小が存在するのであろう。 一つは スケール長 2.56 kpc, もう一つは 2.19 kpc である。標準モデルは後者に 属する。 |
![]() 図17.軸対称モデル、3本腕モデル、m=2、4本の対数螺旋腕モデル。「切り離し」腕モデル。 |l| < 90 の J - プロファイル。 恒星フレアは確かでない 表5に別の恒星モデルを載せた。星円盤にフレアを付けたモデルは、フレアを ダストモデルと同じ距離から開始した。その結果は極めて穏やかで 6.6 pc /kpc であった。これはダスト円盤の半分以下である。しかし、 χ2 の 顕著な改善はなかったので積極的な証拠とはできない。 4つの異なる仮定のモデル NIR 放射の中に非軸対称の証拠を見つけるため、4つの異なるモデル、 3つの渦状腕モデルと一つの完全に軸対称なモデル、を計算した。図17と18に その4本のプロファイルを示す。表6にはそれらのパラメタ―を載せた。 二つの対数螺旋モデルは単一の振幅パラメタ―Bを持っている。これは腕と円盤が 同じ星種族から成ると仮定したからである。一方、「切り離し」腕モデルは若い星がダスト から離れる期間をJとKで異なる値を取っている。図を見ると、 m = 2 対数螺旋と 剪定腕モデルは同じくらい良い。軸対称と、m = 4 モデルは特に l = 30 と l = -50 の盾座腕接線の方向で失敗している。 ( それほどの違いには、特に l = 30 では、 見えないが。) サジタリウス・カリーナ腕 正銀経側にサジタリウス腕の存在は見えない。軸対称と m = 2 モデルは 他の腕モデルと同様 l > 40 の放射プロファイルを再現しているが、 前2者はサジタリウス・カリーナ腕を欠いている。しかし、m = 2 log モデルと 「切り離し」モデルを良く調べると、少なくとも負銀経では、サジタリウス腕が実在す ることが判る。m = 2 対数螺旋と「切り離し」腕のパラメタ―は良く似ているが、図 19から分かるように、m=2 対数の大きなピッチ角はその見かけを大きく 変えている。これは、 l ≤ -50 の放射を節飯用としたためである。 この放射は J で強く、実際、Kだけでフィットした結果(Drimmel, Spergel 2001) は 15.6° という小さな角度を与えている。 |
![]() 図18.軸対称モデル、3本腕モデル、m=2、4本の対数螺旋腕モデル。「切り離し」腕モデル。 |l| < 90 の K - プロファイル。 ![]() 図19.腕模式図。太線= 4 本スパイラル(HIIR に準拠)。星=「切り離し」腕。破線 = 2本対数螺旋(J)。細実線=2本対数螺旋(K)。 |
6.1.軸対称構造スケール長ダスト分布のスケール長は 0.28 Ro = 2.24 kpc (Ro=8 kpcの場合)となった。 この値は Spergel et al 1996 の 0.48 Ro, F98 の 0.37 ro, Davies et al 1997 0.62 Ro より小さい。ダスト分布の他の求め方はガス分布を使う (Ortiz, Lepine 1993) ものである。それらは R < 0.5 Ro では指数関数円盤は不適当 であると述べている。なぜなら、ガス表面分布は中心部に穴が開いているから である。それにも拘らず、外側銀河に関しては適当な値のスケール長は得られる。 ただし、メタル量勾配、CO/H2 比が一定でない(Sodroski et al 1997) 問題などが残っている。 ダストのスケール高 Malhotra 1995 は HI にガウシャン垂直分布をフィットして h = 100 pc (0.5 Ro) から 220 pc (1.0 Ro) まで増加することを見出した。我々のダストスケール高は 134 pc から始まり 1.0 Ro で 188 pc である。この値は F98 の一定値 152 pc と ほぼ一致するが、Davies et al 1997 の 470 pc より遥かに小さい。 宇宙背景輻射 Q240 = 1.05 MJy/sr は他の研究とほぼ合っている。 星のスケール長 我々の得た星のスケール長 0.28 Ro = 2.28 kpc(Ro=8 kpc) は Kent et al. 1991 の 0.38 Ro = 3.04 kpc より短い。 星のスケール高 スケール高は星のタイプ、年齢により 90 pc から 390 pc まで変わる。 NIR から求まったものとして、 Kent et al. 1991 は 247 pc, Spergel et al 1996 は 276 pc, F98 は 334 pc を得た。我々の 282 pc はその中に入る。 6.2.非軸対称構造ワープFreudenreich 1996, 1998 と同様、我々はワープが太陽円の内側から発生 し、かつダストワープの振幅は星ワープより大きいことを見出した。 r = 10 kpc で星ワープの振幅は我々のモデルで 0.25 kpc、 F98 は 0.18 kpc である。FIR 放射に対しては我々は 2.7 倍大きな振幅を与えた。一方、F98 は NIR 減光から 1.8 倍とした。 |
彼のダストワープ振幅は HI に対して Burton, Hartmann 1994
が与えた 0.3 - 0.4 kpc と近い。我々のワープ振幅は Smart et al 1998 による
OB 星分布のワープに一致する。近赤外では太陽円内から始まるワープの最も
著しい効果は局所傾き(local tilt) tan θ = hW(Ro)/Ro で、
低銀緯における NIR 放射プロファイル(4.2.節)によく現れる。我々は局所
傾きを 0.2° としたが、Freudenreich は 0.5° とした。
Hammersley et al 1995 も同様の傾きを見出したが、彼らはそれを銀河系星円盤
全体が b = 0 面に対して傾いているためと解釈した。ヒッパルコスデータからも
ワープの証拠は見出された。しかしその発生は太陽円またはそれより外側とされた。
我々(0.8 Ro)および F98 (0.5 - 0.56 Ro) はワープの発生を太陽円の内側とした
がこれは一般に受け入れられてはいないことを注意する。
FIR 渦状腕 HIIR マップは 腕の接線による FIR ピークを記述するのに十分であった。 ただし、サジタリウス・カリーナ腕には軽減ファクターを掛ける必要があった。 こうして決まった腕の配置はピッチ角 12.5 の4本腕モデル(Vallee 1995)と合う。 (図19太線を見ると、4本腕といっ ても、つなげると2本になる可能性もある。) NIR 渦状腕 NIR 渦状腕の証拠ははっきりしない。3つの異なる配置モデルが試された。 我々の標準モデルはダストに使われた4本腕に「切り離し」を施したもので ある。Wainscoat et al 1992, Ortiz, Lepine 1993 は4本対数螺旋腕モデル を提案した。彼らと我々との大きな違いはサジタリウス・カリーナ腕に軽減 ファクターを掛けたことである。このような措置が必要なことは同等 4 本 腕モデルの失敗から明らかである。 星の腕強度 腕は K の方が J より強い。これは他の銀河でも同様である。しかし、腕の 振幅は他銀河ほど大きくない。Rix, Zaritsky 1995 は一周回での K 表面密 度の変動率、 (Σmax - Σmin)/ Σmin ∼ 1 であることを示した。一方、我々の腕は、 (sqrt(π)ha*/(2h*)BK = 0.32 である。我々の腕が弱いのは、スケール高が小さいためである。その 小さな値は銀河面上の K-型超巨星がフラックスに大きく寄与しているため であるか、腕のダスト柱密度を過小に見積もったためである。 腕と星形成 太陽近傍の星形成史 Rocha-Pino et al 2000, Hernandez et al 2000 は 円盤の星形成が間歇的であることを示唆している。その周期は2本腕を 横切る周期に一致する。Σo = 25 km/s/kpc, Rc = 0.83 Ro を仮定 すると、2本腕の星形成周期として 0.5 - 0.9 Gyr が得られる。 |
星円盤のスケール長が短い 我々の決めた星円盤のスケール長は 0.28 Ro でこれまでの値より短い。しかし、 最近の IRAS PSC から決めた 0.33 Ro (Ortiz, Lepine 1993), DENIS からの 0.27 Ro (Ruphy et al 1996)、TMGS からの 0.25 Ro (Porcel et al 1998) とは 合う。最近の可視観測の結果も、0.21 - 0.36 Ro (Ojha et al 1996) のように 短い値が出てきている。しかし、0.47 - 0.94 Ro (Mendez, van Altena 1998), 0.43 - 0.56 Ro (Ng et al 1995) と大きな値も出ている。最近 de Jong 1996 は 銀河の近赤外スケール長は可視スケール長に較べ 20 % 短いことを見出した。 彼はこれが銀河形成が内側から外へ向かっていくための効果であると議論している。 すなわち、外側の方が若い種族で青いので可視のスケール長が伸びるというので ある。この短い近赤外スケール長が銀河系質量分布に及ぼす影響は、 (1)ダークマターハローの密度低下 maximal disk model が回転曲線に良く合い、ダークマターハローの密度は 低下する。ただし、CDM シミュレーションとは矛盾する。 (2)マイクロレンズの光学的深さを増加させる。 (3)銀河系は M31 より著しく小さい。 |
2本腕 近赤外では2本腕構造が支配的である。これは、 Drimmel 2000 の簡単な解析の結果を支持するものである。腕からの近赤外放射は K-超巨星 のような若い種族の星と古い円盤種族の星から成っているだろう。我々の 「切り離し」腕モデルでは若い種族が、2本腕モデルは密度波に伴う古い種族 が寄与する。腕のスケール高が小さければ若い種族が支配的と言う仮説が 正しくなる。2MASS データがこの問題に決着を付けるだろう。 ワープ ワープは太陽円の内側から始まり、その振幅はダストと星とで異なることが 分かった。しかし、ダストの振幅がガスと異なるのは問題である。 |
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