銀河面の色々な場所で NIR CMD と星計数を行った。 (l, b) = (27, 0), d = 5.7±0.7 kpc の所に円盤と較べ2倍、おそらくは 5 倍の星密度の箇所 がある。この構造はバルジから l = 28 まで (H, J-H) 図上ではっきりした 塊りを示す。 | しかし、l > 28 では消える。その距離は l = 20 では l = 27 より 0.5 kpc 遠くにある。そして l = 10 までにはバルジと溶け合う。 l = 27, と l = 21 に非常に若い星の集団がある。それらを全て説明するのは長軸半径 4 kpc で位置角 43 ±7 の長いバーである。 |
1.イントロダクション3軸バルジの軸角バーの軸と銀河中心視線との角度推定値は 10 - 75 の範囲に広がっている。 最も多いのは、銀河面から少し離れたところでの星の分布に基づいた、 10 ° - 30° Dwek et al 1995, Freudenreich 1998, Lopez-Corredoira et al.(2000) である。 Binney et al 1991 は内側数度内のガス流から軸角 16° のバーポテンシャルを導いた。 棒状のバー? Sevenster et al 1999 は OH/IR 星の運動から軸角 44 とした。Peters 1975 は HI マップ、中井その他 1992 は CO マップから軸角 45 とした。 最も極端な値は 75 Hammersley et al. (1994) で、l = 21 と l = 27 の間にある 巨大星形成域の検出に基づいている。彼らは、棒のように伸びた軸半径 4 kpc のバーが COBE 表面輝度分布の形をうまく説明すると述べた。しかし、他の 研究者 Freudenreich 1998 はそれを、渦状腕状の星形成の泡またはバルジの 尾をする見方を取った。 バーの古い星種族 もしもバーが実在するなら、古い星種族でもその存在が明らかにされるはず である。そのために最適な星は早期 K-型星であろう。この星は数において 圧倒的で、絶対等級の巾が狭い。したがって、赤外 CMD 上で、これ等の星は 塊りをなすであろう。おそらくその等級は K = 12 - 14 で小望遠鏡でさえ 数秒の露出で検出可能である。 仮定類 この論文では、 Ro = 8 kpc とする。特に触れない限り位置は銀河面上と 考える。また、K2-3III の絶対等級を MK = -1.65, MH = -1.5, MJ = -0.89 を Wainscoat et al 1992 から採った。星間 減光は Rieke, Lebofsky (1985) から AK = 0.112 Av, AH = 0.175 Av, AJ = 0.282 Av とした。 2.観測l = 0 - 37 の間で銀河面に沿って幾つかの 20′ × 12′ 区画の画像が撮られた。観測には Obs. del Teide 1.5 m 望遠鏡上の CAIN カメラが用いられた。シーイングは 1″. 星計測を J = 17, H = 16.5, Ks = 15.2 まで行った。 図1には l = 32, 27, 20, 10 での CMD を示す。矢印は Av = 10 mag. である。 | ![]() 図1.銀河面上 l = 32, 27, 20, 10 の (J-H, H) 図。斜め矢印= Av 10 mag の減光。縦矢印=距離が倍になった時の等級変化。l = 32, 27 図上、斜め右下 に引いた曲線=K3III 天体の軌跡。l = 27 のほぼ垂直な実線は d 4.5 kpc, Av 4.7 kpc と d 6.6 kpc, Av 8.7 kpc での巨星枝。 |
図1:近傍主系列星と円盤 K-巨星 主系列星は近赤外では明るくないので、近傍の星で赤化も弱い。CMD上 では左隅 J-H = 0.5 の付近に固まっている。画面左上から右下に流れる帯 が円盤の K-巨星である。l = 32, 27 図で帯の中央に引いた線は K3III で ある。この線を引く際は Wainscoat et al. 1992 の二重指数関数型円盤 hR = 3.5 kpc, hz = 50 pc の減光モデルを使った。この線が帯の中央を通っているので、仮定した絶対 等級と減光に大きなエラーはなかったと判断される。主系列星と K-巨星帯 は l = 27, 20, 10 図にも明瞭に見える。 l = 10 図上 J-H = 2.8 付近に見える雲は赤色巨星枝である。l = 27 図には Av = 4.7, d = 4.5 kpc と Av = 8.7, d = 6.6 kpc の二本の巨星枝を 引いた。 |
図1上の星の塊り l = 27 図の中央には H = 13.3, J-H = 1.3 に大きな塊があり、巨星枝が そこからほぼ垂直に伸びている。この塊は l = 20 図にも見えるが、 J-H = 2 でやや強い赤化を受けている。そのせいもあり、こちらの塊りは 少しぼやけている。減光は小さな角度差でも大きく変化する。このため、 画像内の個々の星は異なる強度の減光を受ける。したがって、平均減光が 大きくなると、等級とカラーの散布度も大きくなる。 l=10でバルジが見え始める l = 10 図、J-H = 2.8 に巨星枝が見える。これはバルジである。バルジ距離と 減光は大きすぎるためにこの図にはバルジの K-巨星塊は現れていない。 |
![]() 図2.l = 32 と 27 における K 型巨星の Ks 微分星計数。 図2=図1に見える K-巨星帯の分離 塊りにある K-巨星の数を知るため、図1の l = 27, 32 で K-巨星を分離した。 モデル中軸線から J-H が 0.3 mag 以内の星(破線で挟まれた星)を抽出し、 図2にそれらの Ks 等級分布をプロットした。Ks = 11.5 より明るい星では l = 27 と 32 の間に差はない。しかしそれより暗くなると l = 27 の星の 方が多くなる。(何か色々言ってるが意味がつかめない。) 図3= Ks 微分星計数 図3には Ks 微分星計数を6領域で示す。図には、矮星を除去した後、 l = 32 のカウントを引いた残差をプロットした。見易さのため曲線は 30,000 ずつずらした。点線はゼロを示す。図2を見ると、l = 32 ラインには目立った 塊りがなく、等級と共に滑らかに変化して基準ラインに適している。各銀経の 分布から l = 32 を引くことで、等級に伴うカウントの急激な上昇を消し去っ て、各視線方向の特徴を浮かび上がらせることが出来る。図3では K-巨星だ けでなく、全巨星を数えた。J 深度がバルジまでには足らず、J-Ks をサンプル 選別に使いたくないからである。 |
![]() 図3.矮星除去後、l = 30, 27, 20, 15, 10, 5 から l = 32 を引いた残差 の Ks 微分星計数。見易さのため曲線は 30,000 ずつずらした。点線は ゼロを示す。 l = 27 から始まるピーク l = 30 は盾座腕の内側のダストレーンに突っ込む。一方、l = 32 は盾座の 接線である。この結果、l = 30 は 32 より強い減光を受け、図3の l = 30 曲線はゼロ以下に沈む。他の領域では、 Ks = [10, 12] ではゼロ付近になる。 これは銀経が大きく異なることを考えると驚きである。しかし、これはまた 各領域を直接比較できることを意味する。図2、3の l = 27, Ks = 12.8 の ピークは l = 20, 15, 10, 5 まで続いて見えている。l = 25 を載せていない のは、そこに有名なダストレーンがあり、カウントが大きく乱れるからである。 このピークが 27 から始まっているのは、それがバルジ起源ではないことを示す。 |
ピークまでの距離 図1での l = 27 塊りのカラーは J-H = 1.32 である。それは Av = 6±1 を意味する。そのピーク等級 Ks = 12.8, MKs = -1.65 から距離 5.7 ±0.7 kpc を得る。l = 20 ではピーク等級は 0.5 等暗くなり、減光も 考慮すると 0.5 kpc 遠方となる。 図4=距離のクロスチェック l = 27 ピークまでの距離をクロスチェックするために、図4では (l, b) = (2, -2) の (J-H, H) 図を載せた。それにはバルジの巨星枝が明瞭に見える。 視線方向が銀河面から離れているため、図1に較べ減光は小さい。K-巨星の 塊りが (J-H, H) = (0.95, 13.5) に見える。これは、距離が l = 27 の 0.69 倍、5.5 kpc にあることを意味する。 ![]() 図4.バルジ(l, b) = (2, -2) での (J-H, H) 図。 |
ピークでの光度関数=星密度 図5には l = 27 ピーク天体の光度関数 (stars mag-1 pc-3) の一部をピークの巾 = 500 pc と仮定して求めた。距離 5.7 kpc, Av = 6 としている。 同じ処理を l = 32 でも行い、 l = 27 から引いてピーク部分だけを抽出してある。 ピークを円盤、バルジ密度と較べると ピーク位置での円盤星の密度はピークの 5 - 10 倍低い。バルジのこの位置での 密度はピークの 100 倍以下であろう。バルジがこの密度になるのは銀河中心から 数百パーセクくらいの位置である。 銀河内で有数の明るい場所? Hammersley et al. 1994 は、この方向に多数の若くて明るい星を見出した。ここは銀河中心を除き、 最も星が集中して明るい箇所なのではないか? ![]() 図5.l = 27 のクランプにおける光度関数。クランプ通過距離=500 pc 仮定。 |
l = 27, d = 5.7 kpc に大きな古い種族の星の固まりがある。その続きは l = 20, 15 にも見え、その先ではバルジに溶け込んでいる。 l = [27, 21] 領域は既に若い星種族が高密度で形成されている領域として知られている。 | これらを総合すると、位置角 43 のバーがそんざいする証拠となる。古い 種族星の分布は、中井その他が示した CO の分布に類似している。この位置 角は3軸バルジとは大きく異なる。銀河系は二重バーを持つのではないか? |