An Evolutionary Catalogue of Galactic post-AGB and Related Objects


Szczerba, Siodmiak, Stasinska, Borkowski
2007 AA 469, 799 - 806




 アブストラクト 

 1 October 2006 までに NASA/ADS に載った post-AGB 候補星の文献サーチ を行った。それらを "very likely", "possible", "disqualified" の3群 に分けた。 "very likely" はさらにいくつかのクラスに分けた。  Galactic post-AGBs の「進化する」、オンラインカタログを作成した。 名前は "Torun catalogue of Galactic post-AGB and related objects" とする。現在の版では、326 very likely, 107 possible, 64 disqualified 天体を含む。very likely 天体に対しては、可視赤外測光、赤外分光、スペク トル型を与える。


 2.分類基準 

 post-AGB を一口で定義するのは難しい。高質量星では中心星の可視スペク トル型が求まらないし、逆に低質量星ではしばしばダストセルが消散して赤外 超過が検出されない。従って、何らかの理由で post-AGB と認定された天体を 全て集めることとした。中心星に関する制限は K-型から Te = 25,000 K までと する。中心星が M-型と低温炭素星の場合は除くが、非変光 OH/IR 星は例外と する。また、光度クラス V の星、PN と分類された星も除く。 以下のクラス分けは重複することに注意。

 (1) IRASsel = IRAS 二色図選択 

 IRAS カラーが AGBs と PNe の中間、Kwok et al 1987, van der Veen et al. (1989) Hu et al. (1993) Garcia-Lario et al. (1997) にある天体。この方法は、星周ダスト放射を利用しているため、天体の多くは 可視で暗い。サンプルには、銀河、 AGBs, PNe, YSOs が混入するので、追加 情報で選別しなくてはならない。

 (2) hglsg = 高銀緯超巨星 

 大質量超質量星は高銀緯に存在する可能性が小さい。従って高銀緯超巨星は 進化末期にある低質量星と見做せる。 Bidelman (1951) が初めて、そのような星 89 Her に注意した。種族Iの超巨星が力学 効果で放出された可能性もあるが、分光解析の結果たいていの場合低メタルで 種族IIと確認された。Ib| > 5° の post-AGBs は hglsg と考える。 スペクトル型は K, G, F, A である。

 (3) hglB = 高銀緯 B-型超巨星 

 主系列 B 型星と Teff, log g が同じくらいなので、詳細な組成解析が必要 とされる。それらは |b| > 15° である。

 (4) hotpAGB = A, B 型超巨星 

 hotpAGB は A, B 型超巨星で、 |b| > 5 °, 組成から post-AGB とされた。

表1."very likely" post-AGB 天体のクラス分布

 (5) IRexc = 赤外超過 

Parthasarathy, Pottasch (1986), Pottasch, Parthasarathy (1986) が提案した赤外超過に基づく判定法である。しかし、その全てが post-AGBs ではない。例えば、 Pottasch, Parthasarathy (1986) が挙げた候補 10 天体中 5 個が "very likely", 1個が "posible", 3個は "disqualified" (= Herbig Ae/Bes) である。最後の SAO 253680 は Simbad の 分類ミスである。 Hrivnak et al (1989) の 8 候補中 6 個は "very likely"、 2 個 は "disqualified" であった。 Oudmaijer et al. (1992) の 21 候補中 18 個が "very likely"、3個は "disquaalified" である。

 (6) UU Her 型星  

 種族 II 超巨星の変光星で、hglsg の特性に加えて、大きな視線速度と 0.1 mag 程度の小振幅変光、大きな赤外超過を特徴とする。Bartkevicius 1992 のリストで 12/18 は "very likely", 3/18 は "possible", 3/18 は "disqualified" である。


 (7) RV Tau 

 RV Taus は P = 30 - 150 d で深い極小と浅い極小を交互に繰り返す。 スペクトル型は F, G, K である。NIR 超過のある RV Taus は全て連星である。 SIMBAD で RV Tau 型とされた星中 R Sct は怪しい。

 (8) R CrBs 

 H-欠乏、He-リッチな超巨星で、不規則に 8 mag にまで達する減光を示す。 成因に関し、マージャー説と最終 He シェルフラッシュ説があるが確定して いない。第2説が正しければ post-AGB であることになる。36 R CrBs を "very likely" とした。

 (8) eHe = extreme He Star 

 eHe 星は Te < 25,000 K で 16 個が知られている。 R CrBs に進化上関 連するかも知れない。
 (9) LTP 星  

 Sakurai's object と FG Sge は late thermal pulse objects LTPs と される。V605 Aql は最近 LTP を体験した星であるが、現在 Teff = 50,000 K なので post=AGB には入れない。

 (10) 21 micron = 21 μm 放射天体 

 21 μm に強い放射帯を示す星が 12 個知られている。(Kwok et al 1989) 全て C-リッチで s-元素超過を示す。この天体群の性質はまだ分からないがリスト に加えた。

 (11) refne = 反射星雲 

 Red Rectangle, Minkowski Footprint, Egg Nebula, AFRL 618 は有名な 天体で、 IRAS 以前から知られていた。


 非変光 OH/IR 

  Habing et al. (1987) の非変光 OH/IR 星は post-AGB リストからは意図して外した。分子電波線、 星雲形態学は将来のカタログのために今回は含めていない。

 3リスト 

 カタログは3つに分かれる。

(i)"very likely" = 326 天体
前に述べた基準を少なくても一つ満たし、ADS で5つ以上の引用があったもの。

(ii)"possible" = 107 天体。
前に述べた基準を少なくても一つ満たすが、ADS で引用が5未満のもの。 ただし、RV Taus, R CrBs, eHes は自動的に (i) に回す。

(iii)"disqualified" = 64 天体
一度は post-AGB とされたが、その後の研究で違うとされたもの。
 SIMBAD post-AGBs  

 SIMBAD には post-AGB と分類される天体が 218 個あるが、107/218 が 我々の "very likely" リストに載った。53/218 は "possible", 35/218 は "disqualified" である。また IRAS 05298-6957 は LMC 天体である。 22/218 は non-variable OH/IR 候補として待機中である。SIMBAD には 99 の RV Tau 星が載っているが、80/99 が我々の "very likely" , 2/99 が "posible", 12 が "disqualified" に載っている。5/99 は LMC 天体。 一方で SIMBAD で RV Tau とされていない 19 星がわれわれの "RV Tau" リストに載っている。その大部分は最近の De Ruyter 2006 天体である。 SIMBAD では R CrB が 48 星ある。33/48 が "very likely" で、2/48 は SMC 天体、12/48 は LMC. SIMBAD にないがカタログでは R CrB とされた のは V3795 Sgr, V348Sgr, UX Ant の3つである。

 連星 

  De Ruyter et al (2006) は 51 post-AGB 連星候補の SED 研究を行い、確実に連星と判明した天体を リストにした。幾つかの連星では光球組成が hlsg で見出されたのと同様な元 素欠乏が起きていた。Waters 1992 は、もし星周ダストが円盤として重力場に 捕らえられているなら、ガスダスト分離が生じると述べた。





図1.選択天体に対して現れる画面の一例。

 3.カタログの記述 

 概要 

 カタログは次のサイトから得られる:

 http://www.ncac.torun.pl/postagb

全体は3つのサブカタログから成る。それらは、

(a) very likely post-AGB

(b) possiblr post-AGb

(c) disqualified objects

である。最初の画面でその内の一つをタップすると、現れる画面には、 総天体数と天体リストが載っている。各天体には (l,b), IRAS 名、HD, SAO 番号、その他の名前、分類、連星情報、スペクトル型、文献 の項目が並んでいる。
 各天体の情報 

 "very likely " サブカタログの (l; b) をクリックすると、図1のような 画面に変わる。そこには各天体の全情報が載っている。 "Finding Chart"ボタンで、2MASS, DSS 画像が、"SED" ボタンで SED を見る ことが 可能である。

 データエクスポート 

 "Export”ボタンをクリックしてデータをテクストファイルで取ることがで きる。形式は ascii または Excell フォームである。


 4.統計 




図2."very likely post-AGB" 天体の銀経分布。 上:全サンプル星。中:ヘリウム星= R CrBs, 極端ヘリウム星、LTPs を除い た post-AGBs のみ。下: Strabourg カタログからの PNe.


図5a."very likely" post-AGBs の (J-H)-(H-K) 二色図。 白四角= RV Taus. 白丸= R CrBs. 黒丸=他のpost-AGBs. 破線=分類境界線




図4. QF(12, 25, 60) = 2, 3 の 176 "very likely" post-AGBs の IRAS 二色図。白四角= RV Taus. 白丸= R CrBs. 黒丸=他のpost-AGBs. 実線枠= van der Veen, Habing (1988) による分類。破線= 典型的な post-AGB が占める領域。
[12]-[25] = 2.5logF25/F12, [25]-[60] = 2.5logF60/F25.



図3."very likely post-AGB" 天体の銀緯分布。 上:全サンプル星。中:ヘリウム星= R CrBs, 極端ヘリウム星、LTPs を除い た post-AGBs のみ。下: Strabourg カタログからの PNe.




図5b."very likely" post-AGBs の (J-K)-(K-[25]) 二色図。 白四角= RV Taus. 白丸= R CrBs. 黒丸=他のpost-AGBs. 破線=分類境界線




図6."very likely" サンプルのスペクトル型分布。上:|b|<15°、 下:|b|>15°. 右側は ヘリウム星を除いた残りのスペクトル型分布。 つまり、RCrBs, He stars, LTPs は除いたサンプル。


 様々な選択基準 

 カタログ天体は色々な文献から異なる選択基準で選ばれた天体を集めてきた ものである。このため、統計的な研究には必ずしも向いてはいない。しかし、 post-AGBs の性質間の相関や進化との関連を探るには向いている。

 図2、3= 銀経、銀緯分布 

 図2には銀経分布を示す。上図と中図は似ているが、両者は下図と異なる。 理由としては、 PNe の方が見つけやすいからかも知れない。しかし、post- AGBs 中の低質量天体は PNe に達しないのからかも知れない。図3の銀緯分布 を見ると、hglsg post-AGBs が多い post-AGBs に比べ、PNe では高銀緯分布 天体の数が少ない。

 図4= IRAS 二色図 

 図4には 176 "very likely" post-AGBs の [12]-[25] = 2.5logF25/F12, [25]-[60] = 2.5logF60/F25 分布 を示す。区分は van der Veen, Habing (1988) から採った。破線は post-AGB 探しで良く使われるカラー領域である。 その外側にある 59 天体は多くが RV Taus か R CrBs である。とにかく カラーによる選択は必ずしも万能ではない。
 図5= IRAS/NIR 二色図 

 ここでの [25] = -2.5logF25/6.73 で図4と定義が異なるから注意せよ。 分類境界線は Siodmiak, Meixner, Ueta, Sugerman, van de Steen, Szczerba (2007) に倣った。 Ueta, Meixner, Bobrowsky (2000) が導入した "DUPLEX" 天体は光学的に厚い星周層を持ち、図5の破線より上に ある。"SOLE" 天体は破線より下にあり、かつ (H-K) < 0.75、 K-[25] > 8 である。"STELLAR" 天体は破線より下にあり、(H-K) > 0.75、 K-[25] < 8 である。"STELLAR" 天体は HST 画像では星雲が見えない。 RV Taus と R CrBs の多くは "STELLAR" か "SOLE" 型である。

 図6=スペクトル型分布 

 図6にはスペクトル型分布を示す。A 型の数が明らかに少ない。これは進 化計算からも予想されたことで、その辺りの進化速度が速い Blocker (1995b) ことを反映している。ただし、スペクトル型分布、特に G/F 比はモデルと一致 しない。将来、質量別の観測でモデルと比較できることが望ましい。


 5.まとめ 

 今回紹介したオンラインカタログは、 "the Torun catalogue of Galactic post-AGB and related objects" と名付けられる。  今後随時更新される。