l = 27 の銀河面上にある 58 星の可視分光観測の解析結果を述べる。天体は Two-Micron Galactic Survey カタログから K < 5 mag でかつ銀河面から 2° 以内という基準で選んだ。60 % 以上が光度クラス I であった。 残りの内かなりが非常に晩期型で速い進化速度の巨星であった。 | このように若い天体の集中は巨大な星形成領域が 存在することを示す。それは、盾座腕が生じると想定される方向の丁度内側 である。そこは銀河系のバーが渦状腕と出合う場所で衝撃波が集中している と考えられる。そのような現象は銀河に見られる。巨大星形成領域の存在は 銀河系にロングバーが存在する強い傍証である。 |
l = 21, 27 の明るい星の集中 l = 27 において輝度分布が高まることは Viallefondo et al 1980 の150 μm 30 cm 気球望遠鏡観測で報告されている。 Hammersley et al. 1994 は l = 21 と l = 27 では銀河面から 1° 以内に明るい星の集中が見ら れることを示した。銀経に沿って明るい星の分布をプロットすると、そこに はスパイク上の突起が見られるのである。それは銀河円盤と腕の組み合わせ では説明できない構造である。 バー端末の星形成とバー前面のダストレーン 彼らは、TMGS と COBE に見られたこの突起はバーの終端と銀河円盤との相互 作用により活発な星形成が起きた結果であると解釈した。 Calbet et al. 1996 はまた、銀河中心領域における赤外星計数は負銀経におけるバー回転前面の ダストレーンで説明できることを指摘した。 |
他領域との比較 l = 33, 21, 16 における星計数と較べると l = 27 における星計数の超過 は明らかである。この突出が特に強調されるのはサンプルを K < 5 mag の 明るい星に限定した時である。 三上らの対物プリズム観測 三上、石田、浜島、川良 1982 は対物プリズムを用いてこの領域を研究し、M 型超巨星が この突出の原因であると述べた。彼らの結論は我々の解釈と一致する。 |
Ca II 3重線の利用 観測は Isaac Newtin Telescope 2.5 m で行われた。スペクトルは 7750 - 9400 A で 1.7 A/pixel 分解能である。70 天体中 60 天体は TMGS 天体と一致した。Ca II 三重線 8498.02, 8542.0, 8662.14 A を F5 より晩期型の星の指標として調べた。それより早期ではパッシェン ラインが、 M4 より晩期では TiO バンドが混入してきて Ca II ラインの検出 は難しい。Jones. Alloin, jones 1984 と Diaz, Terlevich, Terlevich 1989 は Ca II 三重線の等値巾 EW と光度クラスとの関係を F5 - M3 のスペクトル 型に対して求めた。 ![]() 表1.TMGS サンプルの座標 |
サンプルの座標 表1には TMGS サンプルの座標を示した。TMGS 座標の精度は 2″ - 10″ もあり、また混み合った領域なので座標の利用には 注意が必要である。 Ca II 3重線による超巨星の判定 Jones et al 1984, Diaz et al 1989 によると、EW はメタル量と温度に も依存するがその程度は表面重力に較べるとはるかに小さい。そこで我々は Diaz et al 1989 に従い、3重線の強い二本の EW の和が 9 A より大きか ったら、超巨星と看做す。 ![]() 表1続き. |
高い比率の超巨星 等値巾の測定結果を図1に示す。最も著しい特徴は、 EW > 9 A の超巨星 が 36/58 = 0.62 と優に 50 % を越える割合で存在していることである。 これは星形成域に付随する超巨星の集団が存在する強い証拠である。 巨星と矮星 Wainscoat et al 1992 のモデルによると、円盤と渦状腕のみではこの領域 での超巨星数の 20 % しか説明できない。その上、このモデルは、1平方度 当たり 20 個の巨星を予想しているが、それはこの研究で見つかった巨星 数に近い。巨星と矮星の領域では実はメタル量の効果が無視できないほど大きい。 それで、両者の分離はやや不明確にならざるを得ないが、一応巨星は EW = [6, 9] A, 矮星は EW = [0, 6] A とする。この基準に従うと、 サンプル中には矮星は一つもない。これは K 等級の制限から容易に予想される。 スペクトル型分類 スペクトル分類は文献にある標準星スペクトルとの比較から行った。それらは、 Barbieri et al. (1981), Schulte-Ladbeck (1988), Torres-Dodgen, Weaver (1993), Bessell 1991 である。図2にはスペクトル型の分布を示す。大部分は非常に 低温度の星である。図3には超巨星だけのスペクトル型の分布を示す。 超巨星では K-型が最も多い。ただ、我々の方法では晩期型になると、 TiO バンドが Ca II ラインに影響して等値巾 EW を下げる傾向があるので、 晩期型の超巨星の割合が実際より低い。 ![]() 図2.スペクトル型 の分布 |
![]() 図1.等値巾 EW の分布 ![]() 図3.超巨星だけのスペクトル型 の分布 |
超巨星は星形成の証拠 Bica, Alloin, Santos 1990, Bica, Santos, Alloin (1990), によると、若い星団が超巨星段階に達するのは、年齢が 10 Myr の時である。 彼らは超巨星でも M-型超巨星が出現するのは短い期間で、その後は G-, K- 型までしか行かないと述べている。これは、つまり我々が視ているのは最近 起きた星形成の現場であることを意味する。 距離分布 スペクトル型と光度クラスが分かると、絶対等級が分かるので距離が決まる。 図4には距離分布を示す。分布には 2- 3 kpc と 6 kpc 付近に山が見える。 第1の山は若い円盤超巨星であろう。第2の山はもっと広がっているが、 この広がりは距離決定の不定性として理解できる。 24/36 超巨星が 5 - 8 kpc に分布している。このような超巨星の集中はただの円盤、バルジ種族とし ては理解できない。 どんな構造か? この領域には Georgelin, Georgelin (1976) によると、目立った HIIR がない。 Mikami et al 1982, Ruelas-Mayorga 1991, Kent et al (1991) はこの超過をリング成分に付与した。しかし、 Hammersley et al. 1994 は、星計数が銀河中心に対して非対称であることから、もしリングだとしても それは大きくひずんでいるとした。また、腕の接点方向はこの星形成域と ずれている。 |
![]() 図4.サンプル天体の距離分布。 |
l = 27 に星形成の証拠を見出した。TMGS の星計測に基づくと、この領域は l = 21 まで広がっているらしい。その原因としてはロングバーと盾座腕との 相互作用が考えられる。 | Hammersley et al. 1994 はロングバーの端末が l = 27 と -22 にあるという理由から、 軸角として最大の 75° を唱えた。この角度は我々が求めた星形成域距離 と合う。 |