若い LMC 星団の全体スペクトルの性質を Mermilliod 1981 の銀河系 散開星団の合成 HR 図と較べた。 | 二つのグループの進化系列の間には、恒星進化期、例えば赤色超巨星、中間 質量星を起源とする巨星、Be 星、の点で強い対応が認められた。 |
LMC 星団と銀河系星団 LMC の青くて若い星団はサイズが小さいので全体の分光に適している。銀河 散開星団は成分星のスペクトルが分かる利点があるが、構成星の数が少ないの で、グループ化して全体の数を増やす。こうして両者を比較した。 |
メタル量 Cogen 1982 によると LMC の若い星団はほぼ太陽メタルなので、比較にには Mermilliod の合成 HR 図を用いた。 |
分光観測 ラシーヤ 1.5 m 望遠鏡で LMC 星団のロングスリット分光を行った。クラス ターを 15″ から 60″ の巾でスキャンした。 分解能 14 A で 5600 - 10000 A である。 年齢 年齢の較正にはターンオフ年齢と blue-violet カラーの関係を用いた。 ![]() 表1.星団のグループ分け |
![]() 図1.LMC 星団の 5 < t(Myr) < 500 スペクトル進化段階。各段階に まとめた星団のリストは表1. |
YA グループ LMC の YA グループは銀河系散開星団では NGC2362 が対応する。HIIR 期 直後で、しかし赤色超巨星出現前である。進化の進んだ星が存在しないので、 集合スペクトル中の Ca II 三重線は下部主系列星からと考えられる。Be 星は 存在しない。 YB グループ M-型超巨星の強い寄与が見られ、集合スペクトルには強い TiO バンド、 Ca II 三重線と平坦な連続光が見られる。このように明るい低温度星は Mermilliod のグループでは NGC 884, NGC 457, NGC 3766 にのみ現れる。それらは図2で B-V = 1.8 付近に位置する。これらの超巨星は t = 10 Myr 付近のごく短期間 にのみ出現する。その結果、スペクトル進化系列上に「レッドフレア」が形成 されるのである。これ等の星は質量 15 Mo、質量放出率によるが、最大でも 25 Mo であろう。 M > 40 Mo の星は M-型星ほどの低温度星には進化しない。 従って、10 Myr 付近の星団に現れる M-型超巨星が 5 Myr 星団の G, K 型 超巨星と混同される心配はない。 YC グループ t = 30 Myr のこのグループは IC 4665 に対応する。このグループには赤い 進化した星がない。集合スペクトルには TiO がなく、代わりに B, A 型星に よるパッシェンラインが目立つ。一方下部主系列星からの Ca II 三重線は存在 する。この青い時期は、赤色超巨星がもはや存在せず、中間質量星からの赤色 巨星は未だ登場しないために、 HR 図上に赤色星のギャップが生じる原因と なっている。Be 星は YB と YC グループに現れる輝線の原因である。 YD, YE グループ 中間質量星が進化した赤色巨星により、TiO が現れ、CaII 三重線は YC より 強くなる。YE グループに対応するのはプレアデス星団である。 YF グループ LMC NGC 1866, 銀河系では NGC 2516 がそうである。YF グループでは、M-型 巨星による TiO バンドが強い。赤色端のカラーは YE グループより 0.25 等赤い。 この時期が AGB 星による第2のレッドフェイズである。 YG グループ YG グループには TiO バンドが見えない。赤色巨星端が高温のためである。 星団は NGC 2287, NGC 7475 である。これらの巨星は下部主系列星ほどでは ないが、集合スペクトルに見える Ca II 三重線に貢献している。 |
![]() 図2.LMC 星団と Mermilliod の散開星団グループとの対応。黒い帯=星の集中 領域。黒い線=低集中域。 YH グループ YH と YG は良く似た写真赤外スペクトルを持つ。ただし、ターンオフカラー が異なることを反映して、青スペクトルには大きな差がある。 |
LMC 星団の集合スペクトルから導かれる進化段階と、Mermilliod の銀河系 星団集合 HR 図との間には強い対応関係が存在する。赤い時期と青い時期が 交互に現れる。特に 10 Myr 付近での晩期型超巨星の存在は疑えない。 また 100 Myr 付近に現れる AGB 星の証拠がある。 | 赤色超巨星が終了し、中間質量巨星が出現する前の時期には進化した星が 存在しない。Be 星による強い H+ 輝線が 10 < t(Myr) < 30 の時期 に現れる。これらのスペクトル段階は星形成域の種族合成を考え、星形成 爆発の継続期間を研究する際に重要である。 |