The Spiral Structure of Our Galaxy Determined from H II Regions


Georgelin, Georgelin
1976 AA 49, 57 - 79




 アブストラクト

 Bok 1971 の方法 
 HIIR の分布が他銀河でも見られるような渦状構造を示す。可視観測から決めた 励起星の距離、Hα線の視線速度を HIIR 電波観測による H 109α 視線速度と結合して、Bok 1971 の提案した方法で渦状腕を描き出した。

 非円運動銀河回転 
 268 個の HIIR の Hα線の視線速度観測、360 個の励起星までの距離 決定から、銀河系の回転モデルが詳細に決定された。
ある個所では円運動から のズレがわかり、星までの距離と運動学距離を一致させることが可能となった。 この回転モデルは、 109α 速度極大を使うことで、 R = 4 - 5 kpc, l = 330° - 340° 補足された。

 HIIRが腕に沿って並ぶ 
 9 kpc という遠方 HIIR の可視光検出は可視データと銀河面全体に及ぶ電波 109α データとを重ねることを可能にした。その結果、 109α 天体を1つにまとめることができた。ただ、距離選択効果は残る。これらの 同定により、遠運動距離と近運動距離のあいまいさが 66 % 確度で解決した。 高励起 HIIR の 80 % が傾き角 12° 二対の対称腕(計4本)に沿って並 んだ。これ等の腕を接線方向に見る銀経は電波連続波と 21 cm 波の極大に 一致した。


2.解析方法  

近運動距離と遠運動距離  

 二つの運動距離のどちらを採るかの基準を確度の高い順に示す。

(1)励起星までの距離が得られている。

(2)HIIR が可視で見える。近距離を支持。

(3)電波吸収線の視線速度絶対値が HIIR より大きいのは、遠距離支持。

(4) 109α 領域が可視では見えないのは遠距離支持。

(5)銀緯巾が大きいのは近距離支持。


(6)電波吸収線の視線速度絶対値が HIIR より小さいのは、弱く近距離支持。

(7)他に使える証拠がない場合、腕に載りそうな方を採る。

重要な HIIR 100個のうち 67 個は距離の不確実さがある。その内 44 個は上の (1) - (4) の確度の高い支持観測がある。23 個は (5) - (7) で確度が低い。


 3.運動距離 

 3.1.平均回転曲線 

 151 HIIR については、視線速度と励起星の分光距離を得ている。Ro = 10 kpc、 Uo = -7.2 km s-1, Vo = +14.7 km s-1、 Θo = 250 km s-1 を仮定した。 R = 銀河中心距離、Θ = 回転速度、 r = 太陽からの距離、VHIIR = HIIR の視線速度とする。すると、

     Θ = (R/Ro)(Θo + VHIIR/sin l )

     R2 = Ro2 r2 - 2Ro cos l

図1には HIIR の回転速度を銀経 l の関数としてプロットした。北銀河が白丸、 南銀河は黒丸である。


図1.実線=HIIR 励起星の分光距離と Hα 視線速度から決めた回転曲線。 白丸の下線はペルセウス腕、黒丸下線はカリーナ腕に対応。  

 3.2.南北不連続 

 図1を調べると、南銀河天体は平均回転曲線より大きな回転速度 を示す。図2では南と北それぞれで回転曲線を決めた。


図2.実線=南北それぞれの HIIR 励起星の分光距離と Hα 視線速度から決めた回転曲線。 破線=シュミットモデル。  




 3.5.可視−電波回転曲線  

 図3では、

北銀河: R < 7 kpc シュミットモデル。H109α最大速度がモデルと一致。
     7 < R < 13 kpc Hα回転曲線

南銀河: 3.9 < R < 5 kpc Hα回転曲線。
     5 < R < 7 kpc 内挿曲線。
     7 < R < 13 kpc Hα回転曲線

を採用した。この手法は次の 2 利点がある。 (i) 同一曲線の時、 l = 332, 337 で現れる r = 4 kpc のホールが消失する。
(ii) l = [180, 270] HIIRs の運動距離と分光測光距離の相関が大きく改善 される。

 3.6.運動距離の使用  

 この先、分光測光距離が得られない場合にのみ運動距離を使う。

図3.モデルを併用した回転曲線。  




 4.可視天体と電波源との同定 

 4.1.光学データの結果 

 4.1.1.ペルセウス腕 


表3a.l = 29° 付近のチャート。視線速度、距離を示す。

図4 天体同定

 図4a は Dubout 1975 による Hα 写真である。図4b にその天体同定 を示す。ペルセウス腕は局所天体から図上で、破線によりはっきり区別される。 局所天体は銀緯が正の領域に分布する。その距離は約 0.8 kpc で Ceo OB2, Cep OB3, Cep OB4 が含まれる。その他の星団, HIIRs は表3に示される。

ペルセウス腕のサブグループ 

 ペルセウス腕には 10 アソシエイション、21 星団、29 HIIRsが含まれる。 ペルセウス腕内の天体距離の散らばりは大きい。腕内には多くのサブグループ が、異なる距離に散らばる。それらは

(a)l = [100, 106]
   r = [3.1, 4.1] kpc, b = [-0.6, 0.8] の単一なグループ。

(b)l = [106, 123]
   r = 2.5 kpc 群。HIIRs と星団 S142(NGC7380), S143, NGC7510, S157, S161, S162, S163, S164, S165, S168, S169, NGC7788, NGC7790, S170, S175, S177, King14, NGC146, S184 を含む。
   r = 5 kpc 群。l = [106, 112], b = [-3, +1] に固まり、二つの星団 NGC7419 と King10, それに HIIRs S151,152,153, 148, 149, 156, 158 を 含む。

(c)l = [124, 133]
   HIIR はない。7つの星団が r = [2.1, 2.8] kpc. それらは NGC457, NGC581, Tr1, NGC638, NGC654, NGC659, NGC663 である。これらは (b) 2.5 kpc 群の延長上にある。

(d)l = [133, 138], r = 2.5 kpc.
   アソシエイション Per OB1 (h and χ Per) と Cas OB6 (IC1795, IC1805, IC1848, S196, S198, S201 を含む。





図4.(上)l = 95 - 145° ペルセウス腕の Hα 画像。
   (下)上の説明図。破線の上は近傍 0.8 kpc プラス銀緯の天体。       破線下はペルセウス腕の 2.5 - 5 kpc 天体。


 4.2.Hα と H109α の双方のデータがある星 

可視 HIIRs 中 H109α 観測の割合 

 420 HIIRs が可視で観測され、連続電波で 1300 HIIRs が検出されている。 258/420 HIIRsで Hα 視線速度が、 212/1300 で H109/H158α が 観測された。うち 58 天体では両方が観測されている。電波観測天体は固有光度 が最も明るいグループの HIIRs に限定され、可視観測は減光で制限される。 電波の限界光度より 1/100 以下でも可視では観測可能である。従って、 弱い電波源であっても、減光が 5 等以下なら可視では検出可能である。

非常に遠方の HIIRs の検出 

 最近、電波 HIIRs 周辺を深く可視観測して、 HIIRs の光学観測が盛んに なり、非常に遠方の HIIRs が見つかるようになった。

(a) l = 291 領域
   図5には近傍星雲 Gum38a(NGC3576), Gum37、 やや遠い(R=5.7 kpc) の RCW55 が写っている。同時に、非常に遠い Gum38b(NGC3603) Hα 運動距 離 8.0 kpc, WR-星 LSS2063 に励起される Gum35 分光測光距離 7.9 kpc, 天体 292.9-0.7 Hα 運動距離 9.7 kpc が見える。このように、 可視と電波観測が重なる星は多い。電波源 298.8-0.3, 298.9-0.4 r=11.7 kpc と 289.1-0.4 r = 8.9 kpc だけが可視対応天体が見つからなかった。

(b) 316.8-0.1 領域
 Georgelin, Georgelin 1970a の Hα 写真には遠方 HIIR 316.8-0.1 位置に弱い HIIR が写っていた。表4にはその視線速度を示す。 平均速度 -37 km/s は遠運動距離 12.5 kpc, 近運動距離 2.1 kpc に相当する。 吸収プロファイルからこの天体は接点の向こう側 12.5 kpc にあることが 分かった。この値は今までで最遠値である。

(c) W51
 W51 には可視 HIIRs が3つある。それらの H&alphah; 速度は H109&alphah; 速度と一致した。

表4.316.8-0.1 の視線速度

(d) l = 70 領域
 HIIRs複合体が l = 70, r = 8.8 kpc に見える。この電波複合 W58 は 3つの HIIRs を含む。 Mi I.18(NGC6857=S100), Mi I.16(S99), Mi I.17(70.4+1.6) である。この3領域はより広がった薄い HII ガスに 取り囲まれている。それらの視線速度は同一である。W58の南に新しい HIIR 69.9+1.5 が発見された。その速度 -35 km/s はこの天体が W58 群に 属することを示す。 l = 79 にある 79.3+1.3 (DR7) は運動距離 8.0 kpc で、W 58 と同じ腕に所属する。

(e) l = 75 領域
 l = 74.8 の S104 は r = 4.8 kpc, S 106 は r = 5.8 kpc である。

 4.3.電波源の光学同定の例 




表5.326,6+0.6 の視線速度

l = 326 

 RCW94, RCW95 の近くに更に二つ新しい HIIR が見つかった。それらの視線 速度が一致することから複合体であると判断された。 図6にその電波マップと Hα 画像を示す。二つを比較して、電波源 326.5+0.9 は RCW94 に一致することがわかる。326.6+0.6 は新しい HIIR の一つと分かる。こうして可視で見える 4 HIIRs のうち二つが電波でも 検出された。表5の運動距離は 2.5 kpc である。

l = 328

 Georgelin, Georgelin 1970a の図3にある直径 3° の Hα 写真には多数の星雲が写っている。 それらの視線速度が一致することから、 複合体を成すことが判る。その中の一つ RCW 97 は電波源 327.3-0.5 から南西 に伸びる部分に一致する。電波源 327.3-0.5 の色々なラインの視線速度を表6 に示すが全てが良く合っている。電波源 328.0-0.1 は H109α で検出 されたが、光学的な同定はない。その視線速度 -44.7 km/s は上に述べた天体 と一致するので、おそらく同じ複合体の一部なのであろう。
 結論として、これら全ては平均視線速度 -46.2 km/s、運動距離 2.9 km に 位置する単一の複合体に属する。これは励起星距離 2.6 kpc と、 Muzzio. McCarthy 1973 が観測した OB 星集合の距離 2.5 kpc とも一致する。

図5:l = 291 

 図5には色々な天体の Hα H109α, 吸収線視線速度を示す。 一つの天体の速度同士はよく一致するが、天体間で速度が異なる。これは視線 に沿って異なる距離 2.5 - 9.5 kpc の天体が重なっているためである。 この領域ではカリーナ腕が視線方向に伸びている。




図6.l = 326 領域の電波マップと Hα 像の比較。
   (上)RCW 94, RCW 95, 326.6+0.6 の電波連続波マップ
   (下)Hα 光像。



表6.327.3-0.5 の視線速度




図5.l = 291° 付近のチャート。視線速度、距離を示す。

 5.大事な l = [332°, 337°] の問題 

 この領域は銀河中心に対する対称性に関係する。反対側の l = [23, 28] はそれほど重要でない。何故なら追尾型の腕に対して我々の視線が横断する r < 10 kpc での腕の数は、l = 30 より l = 330 での方が多く、かつ 直交度が高いからである。この領域で、視線は腕を R = [4, 12] kpc まで見 通す。また微分回転も大きく、視線速度の変化大きな範囲に及ぶ。  このため、速度グループ=腕で、天体を分けることが可能となる。 H109α による HIIRs の観測は非常に有益で、 l = 332 領域では 15 HIIRs を、l = 337 領域では 17 HIIRs を検出した。この 32 HIITs の観測は運動距離 64 個を与え、それの解釈が腕構造の解明に重要なのである。


 5.1.l = 332 領域 

 5.1.1.H109α 領域 l = 332 

3つのグループ 

 この領域は Georgelin 1970 の図2に見えるように、 HIIRs、高温度星が 多数存在する。l = [330.9, 333.7] には 15 個の H109α 領域がある。 その速度は [-47.0, -90.9] km/s に分布する。これらは運動距離 15x2 = 30 個分に相当する。 H109α 領域と Hα 天体との同定を以下に述べる。

(i) H109α 332.7-0.6 (V=-47.0 km/s), 332.8-0.6 (V=-57.2 km/s)
  HIIRs RCW 106 中の二つの領域に相当し、同じ速度を示す。

(ii) H109α 333.0-0.4 (V=-53.8 km/s), 333.1-0.4 (V=-55.8 km/s)
  可視 HIIR 333.1-0.6 の縁に位置し、同じ可視速度を示す。RCW 106 と同 じ距離を持つ。

(iii) H109α 332.2-0.5 (V=-55.0 km/s), 333.3-0.4 (V=-50.1 km/s)
  可視対応天体はより弱い。

 われわれは H109α 天体を 332.7-0.6 と 332.8-0.6, 333.0-0.4 と 333.1-0.4, 333.6-0.1 と 333.6-0.2 の3つのグループに分けた。 そしてそれらの平均速度を求めた。15個の H109α 天体の平均速度で分けた -53, -66, -86 km/s グループ(これは上の3グループとは別)を図7a に示す。 それらは別々の運動距離に対応する。

3グループの位置と距離

 図7b はそれらの天空上の位置を示す。それを見ると、

(i) グループ1.V = -86.6 km/s の5天体
  グループ1は b = [-0.2, 0] で銀緯が非常に小さい。可視では見えない。 r = 7.8 または 9.7 kpc.

(ii) グループ3.V = [-50, -56] km/s. 8 H109α 天体。
  r = 4.2 kpc にあるほぼ単一の複合体。大部分は可視で見える. 6つの HIIRs と多数の OB 星が存在。

図7.(上)l = 332° 付近 15 天体の H 109α 線の視線速度分布。
   (下)15 H 109α の3つグループが空間的にも分かれて見える。



(iii) グループ2.V = -64, -68 km/s の二つの H109α 天体。
  この二つは近接する HIIRs で、可視では見えない。前の2グループには 入らない独立な群れである。


 図8,9= l = 336° での電波連続光マップ。 


図8.l = 336° での 408 MHz 連続光マップ。図9の右下延長部に当たる。


図9.l = 336° での 5000 MHz 連続光マップ。図8の左上延長部に当たる。  

 5.1.2.H109α 領域 l = 337 


図8.l = 336° での 408 MHz 連続光マップ。図9の右下延長部に当たる。



 l = [335.8, 338.4] には H109α 領域が 17 個存在する。V = [-4, -93] km/s である。この領域で見つかる HIIRs は、

(i) RCW 107
  Of 星 HD148937 から膨張している二つの小星雲 NGC 6164, 6165 から成る。
H109α 336.4-0.2 = NGC 6164 は確か。V = -68 km/s.
H109α 336.4-0.3 = NGC 6165 はやや確かでない。V = -93 km/s.
この電波速度差は通常の乱流速度より大きい。Pismis 1974 による可視観測も +20 km/s から -120km/s に至る大きな内部運動を示す。その平均速度は 夫々の星雲で -20 km/s tp -80 km/s である。図8には Shaver, Goss 1970 の 電波連続光マップを示す。それにはもう二つ近傍に 336.5+0.0 (-63 km/s) と 336.5-0.2 (-88 km/s) が見える。それらもこの非常に特異な複合体に 入れる。ただこの複合体は腕の追跡には使用しない。

(ii) RCW 108
 明るく巨大な(直径 3°) HIIR で V = -19.9 km/s, H109α 領域 336.5-1.5 (V = -24.9 km/s)と一致する。 (グループ9)

(iii) 336.8+0.0, 336.9-0.1, 337.1-0.2
 図8のグループ4を形成する。H109α 速度は夫々 -78.9, -73.1, -72.7 km/s である。337.3-0.1 は速度 -53.5 km/s でかなり違うが、この複合体に 繋がってるかも知れない。運動距離は 11.7 kpc 又は 6.7 kpc である。

図9.l = 336° での 5000 MHz 連続光マップ。図8の左上延長部に当たる。  

(iv) 337.6-0.0(-52km/s), 337.8-0.1(-52.5km/s), 338.1-0.2(-47.7km/s), 338.1+0.0(-41.7km/s)
 強い電波源 338.4+0.2, 338.4+0.1 (-38 km/s)につながる、複合体である。 図9のグループ5を形成する。平均速度 -46.9 km/s からの運動距離は 4.4 または 14.1 kpc である。

(v) 338.4-0.2
 図9、グループ6.しかし、V = -4.3 km/s で他と大きく異なり、実際には この複合体には属さない。運動距離は 0.6 または 18.0 kpc である。

(vi) 335.8-0.2(図9のグループ8), 337.9-0.5(図9のグループ7)
 これらは、前述の複合体には繋がっていない。



表7.l = 332° と 337° での HIIRs 複合体。


表8.視線速度の観測値と計算値

 5.1.3.解釈 

l = 332° 天体が l = 337° に移ったら? 

 H109α 天体 32 個は表7に示すように 9 個の群に分けられた。 図7を見ると、l = 332° ではグループ1,2,3の速度は -86.6, -66.0, -53.1 km/s である。渦状腕が連続であることから、 それらはすぐ近くの銀経では少しずれた値になるはずである。 腕の形を色々に仮定して、 l = 332° にあったそれらの天体が l = 337 ° に移っていたら速度が幾つになるかを計算し、 l = 337° 天体の 観測と較べたのが表8である。

表8を見ると、

(i) グループ1と4の間に速度連続性がある。

(ii) グループ2と5の間に速度連続性がある。

(iii)グループ1と4の間の速度連続性は近運動距離の時の方がずっと良い。

(iv) グループ2と5の間の速度連続性は遠運動距離の時の方がずっと良い。

遠近距離の選択 

(i) グループ3
  グループ3の 6/8 天体は可視で検出され、距離 4.2 kpc である。 従ってグループ3が近距離であることに疑いはない。

(ii) グループ9= RCW108
 RCW 108 はサジタリウス・カリーナ腕の一部である。

(iii) グループ5
 3つの OH 源と一つの HI 成分が大きな絶対速度、 -77, -89. -93, -60 km/s で見つかっている。また、銀緯が低く、銀河面に貼りついている 様子、から遠距離 14.1 kpc は 確かである。

(iv) グループ6 
 もし近距離なら 0.6 kpc で可視で見えるだろう。また、 OH が吸収で -35 km/s の所に検出されているので遠距離 18 kpc が採用される。

(v) グループ 4
 グループ4の2天体に Caswell, Robinson 1974 は吸収を見出した。しかし、 どれも H109α 速度を超えない。従って近距離を採用。

(vi) グループ2
  グループ2はグループ5と連続することを前に見た。そこで、こっちも 遠距離を採用する。

(vii) グループ1
  グループ1はグループ4と連続することを前に見た。そこで、こっちも 近距離を採用する。

(viii) グループ7、8
  遠近の決定が難しい。非常に強い理由はないが近距離を採用する。

図10.l = 330° - 340° の H 109α 天体のグループ化と解釈。  


表10.遠近分離に採用した基準。  

表9=全データ 

 表9には天体データを載せた。図10は上に採用した距離を使って 天体位置をプロットした。また、表10は採用した基準である。



図10.l = 330° - 340° の H 109α 天体のグループ化と解釈。  

 表9.天体データ 



 6.渦状構造の概観 




図11.高励起 HIIR で描いた銀河系渦状腕。No 1 は主要腕のサジタリウスー カリーナ腕。No 2 は中間腕のスキュータム-クルックス腕。No 1′ の内側腕が ノルマ腕。No 2′ の外側腕がペルセウス腕。斜線部=連続波電波と HI 電波の極大部。

 6.1.電離ガス渦状腕の記述(図11) 

HIIRs強さの評価 

 図11は銀経、速度、分光測光距離、運動距離、近遠の区別等の各 HIIR 毎のデータから作った。詳細は表9と表10にある。図11では U > 70 pc cm-2 以上の HIIRs のみを用いた。各 HIIR には (b) = 明るい (U > 200), (m) = 中間 (U = 110 - 200), (f) = 弱い (U = 70 - 110) と重み付けをした。 Mezger (1970) が用いた「巨大」 HIIR の定義 SD2 > 400 Jy kpc2 は,U > 100 pc cm-2 に相当する。
太陽近傍の位置付け 

この評価分けから太陽近傍 が銀河系の中では相対的に重要な個所ではないことが判る。このあたりは真の 渦状腕を構成せず、M51 や M101 などに見られる腕の分枝や棘のようなもので あることが判断される。現在の所、これがペルセウス腕から分かれたものか、 サジタリウス・カリーナ腕からかは判断できない。

結論=4本腕 

今回の結果は対照的な二組のピッチ角 10° - 15° の双腕、つまり4本の 腕を提示している。  図11には5か所に斜線で電波連続波と HI 21 cm フラックスが極大となる ところを示す。それらは、サジタリウス (l = 50), スキュータム (l = 33), ノルマ (l = 327), クラックス (l = 305), カリーナ (l = 283) である。 これらは Kerr, Kerr 1970 と Simonson 1970 が述べている。


 6.1.1. 主要腕=サジタリウス・カリーナ腕(腕 No.1) 

l = [282, 36] = 可視 HIIRs での追跡 

 OB-星団、励起星、 Hα速度など可視データからサジタリウスとカリーナ の領域は一本の腕の一部であると以前から言われてきた。 Becker (1964), Lynga 1964, Georgilin,Georgilin 1970. Bok (1970) は可視、電波 H109α データから、カリーナ腕を 9 kpc 遠方まで 伸ばした。彼の図はもっとゆるい傾斜角の腕を示す。サジタリウス・カリーナ 腕を特徴づける巨大 HIIR の多さは、これが Bok 風に言えば主要腕であること を示す。既に見たように、この腕の限界は可視では HIIR 291.9-0.7 の 9.8 kpc, 電波では H109α から複合体 298.6 (No.65) の 11.7 kpc である。 この端点 l = 299°, r = 11.7 kpc から、よく決まった接点 l = 282°, r = 5 kpc を通り、太陽への最接近点 l = 295° r = 2.4 kpc を通る腕は ピッチ角 10° の対数螺旋で良く近似される。l = 295° から 350° に掛けてはピッチ角が 15° まで上がる。l = 0° から 18° の間、 この腕上には非常に大きな可視天体 M8, M20, S35, S41, M16, M17, S54 が 並ぶ。それらの平均距離は 2.2 kpc である。U < 70 の小さな HIIRs S57, S58, S59, S60, S61, S69, S72 への運動距離を用いてこの腕を l = 22° から l = 36° まで追跡できる。
l = [36,50] = 電波 HIIRs での追跡  

 l = 36° の先は減光のために可視 HIIRs での追跡は不可能となり、次 のような電波 HIIRs を用いる:

W48(35.2-1.7) H109α, H2O, OH, HeCO, HI 観測から r = 3.0 kpc

34.3+0.1 W44 に随伴する電波源で SNR. r = 3.6 kpc.

W51 (表9の No,30) l = 49° r = 5.8 kpc でこの腕の第2の銀経境界 である。

この部分のピッチ角は依然として大きく 15° である。図11の l = 330° - 20 ° 部分ではこの腕ははっきり定義されず、内側のスキュータム・クラックス 腕とはっきり分離しない。実際、サジタリウス腕の輪郭は弱い HIIRs U < 70 Crampton, Georgelin (1975) を考慮するとはっきりする。 さらに、 l = [0, 30] で 24 Hα 領域の lv-図を作ると、22/24 個が 傾き 1.36 km/s/deg のライン上に載る。標準偏差は 3.75 km/s である。 S 48 と S 53 の速度は残差 13.8 km/s と 23 km/s で明らかにこの系列から 外れている。この二つの天体はスキュータム・クルックス腕上で、他の Hα 天体と共に並ぶ。この区間では 二つの HIIRs RCW 98 (No.81) と RCW 94 (No.80) が二つの腕の中間に位置する。


 6.1.2.中間腕:スキュータム・クルックス腕 (腕 No2.) 

l = [310, 325] の外側腕

 l = [310, 325] には電波でのみ見つかる9つの H109α 天体がある。 表10から 7/9 HIIRsが遠運動距離にあることが判る。近運動距離 (2 kpc) では可視で見えるはずだからである。316.8-0.1 では HI, H2CO 吸収線が大きな速度で見つかり、遠距離採用の正当性が確認された。 320.3-0.3 は表9より速度が他天体と繋がらないので近運動距離を与えた。 腕の接点は l = 310 なので、これ等の HIIRs は渦状腕の遠方部をなぞって いる。

l = [310, 325] の内側腕

 内側の方は多数の可視、電波 HIIRs で見える。それらは、

RCW 91, RCW 92, 324.1-0.9
2つの H109α 源が RCW 91 に、一つが RCW 92 に付随する。

RCW 102
周辺に6つの明るい可視星雲。8つの電波源が付随。

RCW 117, RCW 121
4つの HIIRs, Hα では3つだけ。

OB 星
Muzzio, McCarthy 1973 は l = 328, r = 5 kpc に集まっている多数の OB 星 を研究した。それらはこの腕の一部である。

l = [8, 20] 区間 

銀河中心に関して反対側=第1象限へこの腕を追跡できる。可視 HIIRs S 48 と S 53 はサジタリウス腕の向こう側 r = 3.5 と 4.3 kpc にある。 その付近にはいくつかの電波源が見出される。

W 30 (8.1+0.2)
V(H109α)=+19.3 km/s, V(OH)=17.8 km/s、r = 3.4 kpc, U < 70.

W 33 (12.8-0.2)
H109&alpha, H2CO, HI 速度から、r = 4.2 kpc.

14.6+0.2 は 4.0 kpc, 19.7-0.2 は 3.8 kpc.


l = [20, 30] 区間 

 表9の No.20, 21, 22 が l = [8,20] r = 4.1 kpc 腕の先に現れる。 それらの視線速度は V = 92 - 101 km/s である。この値は銀河中心周辺 の速度に近い。また吸収線速度も大きく異ならないので遠近分離は困難である。 しかし、No.22 = 30.8+0.0 = W 43 に関して Radhakrishnan et al 1972 は HI 吸収が接線速度の大分手前で止まることから近距離を推薦した。それらは 従って、 6.9, 7.0, 6.6 kpc である。この腕のピッチ角は 12° で、銀河 中心の周りを 150° 追跡できる。


 6.1.3.内側腕=ノルマ腕 (腕 No.1') 

 明るい天体のみが選ばれる

 さらに内側の腕は可視では見えないので、電波を使う。H109α で検出 される電波源は固有光度が高い天体で「重要」である。その意味で検出には 選択効果が含まれる。



 図10で見たように、 l = [332, 337] Mezger (1970) の電波源はピッチ角 12° の腕を示す。l = [325, 15] にあるその他の HIIRs はこの腕の輪郭を確認する。それらの HIIRs は、

(i) 328.3+0.4 と 327.6-0.4
共に接点付近に存在。

(ii) 338.9-0.1
r = 14.8 kpc

(iii) 340.3-0.2
V(H109α)=-43.3km/s, V(OH)=-40, -87 km/s. 従って、遠距離採用。
(iv) 343.5-0.0
この腕上では最も遠い HIIR.

(v) 338.9+0.6
距離 6 kpc.

(vi) 8.5-0.3, 13.2+0.0
距離 5.3 と 5.8 kpc.

ノルマ腕の相手腕

 この腕を作る HIIRs の数と「重要度」を考えると、このノルマ腕は主要腕 の一つであると考える。系外銀河では、渦状腕は銀河内側(R<5kpc)では 通常対称的である。ここでも、ノルマ腕(No.1')に対称的な腕の輪郭は丁度 サジタリウス・カリーナ腕(No.1)を引き延ばしたものになる。


 6.1.4.ペルセウス腕 (腕 No.2') 

「重要な」HIIRs が少ない腕 

 我々は U > 70 pc cm-2 の「重要な」HIIRs に限定している ので、有名なペルセウス腕であるが、図11では非常に薄くて不分明に見える。 それにも拘わらず、この腕自体は、弱い HIIRs, OB-星団、励起星で確立して いる。HI 観測結果ではペルセウス腕は最も強い構造の一つである。 HII の 結果とのこの矛盾は、しかし、系外銀河では良く見られる現象である。 銀河では外辺で HI 腕が強いに拘わらず、HIIRs がパッとしないことがある。

l = [40, 80] の HIIRs 

 l = [40, 80] の HIIRs で目立つのは、

(i) S106 (5.8 kpc), 75.8+0.4(5.7 kpc), 79.8+1.2, 80.0+1.5(5.7kpc)

(ii) 79.3+1.3 (DR 7)
  距離 7.6 kpc

(iii) 70.3+1.6 (W58)
   重要な可視、電波天体。

(iv) W49 A 複合体
距離= 14.1 kpc, この腕の HIIRs の中では最後。

ペルセウス腕とスキュータム・ クルックス腕

 ペルセウス腕のピッチ角は 12° である。もしペルセウス腕を内側に 同じ角度で伸ばして行ったら、それは腕 No.2 = スキュータム・クルックス腕 (盾座・南十字座腕)と丁度対称な位置に並ぶ。我々はここに提示した結果が 全ての問題を解決するとは考えない。

腕間 HIIRs の問題 

 RCW 94-95, RCW 97-98 は腕間空間に留まる(Rydgren 1974). W 47 もそう である。338.4-0.2 はスキュータム・クルックス腕とノルマ腕の間である。


 6.2.議論 

 6.2.1.本モデルと電波連続光分布との比較 

 上に述べたモデルでどんな電波連続光が期待されるか計算してみた。 腕の巾を 900 pc と一定にし、腕内側部では外側の 1.5 倍の強さにして 放射光のフラックスを計算した。図12に Kerr, Kerr 1970 によるパークス 11 cm 観測データをモデルと較べた。当然モデルの方が滑らかであるが、 観測ヒストグラムの主要な特徴は再現されている。特に著しいのは、 l = 304 と l = 326 における急な段差で、スキュータム・クラックス腕と ノルマ腕の接点に対応している。3つの極大は3本の腕、 サジタリウス・カリーナ、スキュタム・クラックス、ノルマ腕、 に対応する。

 6.2.2.本モデルと HI 21 cm 光分布との比較 

Kerr (1970), Burton, Shane 1970, Simonson 1970 は HI 21 cm 観測から腕の接点方向 を定めた。その比較を下に示す。一致は大変良い。

21 cm 283° 305° 327° 33° 50°
Proposed model 285° 308° 328° 47°


 6.2.3.本モデルと HI 21 cm 腕モデルとの比較 

Kerr モデルと Weaver モデル 

 現在 21 cm 腕モデルには Kerr 1969 または Kerr (1970a) Weaver (1970) の二つがある。この二つの比較に関しては Simonson 1970 を見よ。 Kerr モデルでは腕の接点は l = 33, 50, 75, 283, 305, 327 にある。 そしてこれらの6点は3組に分かれて、擬円周状の腕を形成する。 Weaver (1970) のモデルでは僅か2点 l = 50 と l = 283 しか接点を認めない。この二つは ピッチ角 12.5° の一本腕を作る。他の方向に関して、 Weaver (1970) は単に小規模な分枝または突起であるとした。我々のモデルは Kerr とは 接点間の結合が異なる。Kerr は 33 - 327, 50 - 305 を対にしたが、我々は 33 - 305, 56 - 283 という結合である。

Kerr モデルとの差 

Kerr (1970) は自説を補強する証拠として、l = [292, 304] で 11 cm 連続光が弱い のはカリーナとサジタリウス構造の間にギャップがあるからだとした。 しかし、実際にはサジタリウス・カリーナ腕では図11に見られるように 可視 HIIRs が繋がっていてギャップは存在しない。

Weaver モデルとの差 

 Weaver モデルでは、スキュータム・クルックス腕とノルマ腕が完全に抜けて いる。しかし、 Nos.1 (サジタリウス・カリーナ)と 2'(ペルセウス) は 我々のモデルと一致する。

初期可視モデルとの比較 

 Becker 1963, Becker (1964), Lynga 1964, Courtes,Georgelin, Monnet (1970) による初期可視モデルが 3 kpc までであったのと比べると、今回のモデルは 銀河円盤全面に及んでいるという違いがある。

図12.(a) Kerr、Kerr 1970 による 11 cm 電波連続光の銀経による変化。
(b) 巾 900 pc を仮定して計算(単位不定)した4本腕モデルからのフラックス。


腕のピッチ角は以前の、モデル が 20° - 25° と大きかったのに比べ、10° - 12° と小さく なった。これは主に、太陽近傍の局所構造の傾きが大きく、今回は局所腕 (オリオンスパー)を主要腕の一部と考えず、切り離したからである。 その上、鷲座の強い星間吸収が l > 20 での HIIRs の検出を妨げていた ため、サジタリウス腕の傾きが以前は大きく見積もられていたのである。  我々のモデルは距離スケールが星で与えられ、回転曲線も可視データから得 られているという意味で可視モデルである。ただ、H109α 速度を使う 点で電波モデルである。

 6.2.4.銀河系のタイプ 

省略