IoA Seminar 2023 / 令和5年度(2023年度) 東京大学天文学教育研究センター談話会

本談話会について

趣旨

東京大学・天文学教育研究センターでは2003年4月から談話会を開いています。 第一線で活躍されている研究者の方々を講師にお招きし、最先端の研究成果をお話しいただきます。 講師の方には、大学院生の参加者のことも考慮し、レビュー的な側面も含めた上で、ご自身の研究紹介をお願いしています。
なお、当談話会は天文学研究者・学生を対象に大学・大学院での 専門的な研究と教育を目的として開催されています。 一般の方は公開講座・講演会などにご参加いただければ幸いです。

定例日時

場所

世話人(天文センター)

ML: semiadm _at_ ioa.s.u-tokyo.ac.jp

please replace _at_ with @

天文学教室談話会について

Upcoming Seminars

No. 411: 2024年2月22日(木) 14:30-15:30 ***開始時刻に注意***

場所: 東京大学天文学教育研究センター講義室

講師: 竹内望 (千葉大学大学院理学研究院) ・瀬川高弘(山梨大学総合分析実験センター)

題目: 氷河や積雪,永久凍土に生息する雪氷生物の世界と地球外生命探査への期待

Language: Japanese

要旨: 極地や高山に分布する積雪や氷河,永久凍土は,低温で過酷な環境であるため長く生物は生息できない場所と考えられてきた.しかし,このような環境にも,近年多様な生物が生息していることがわかってきた.例えば,昆虫やミジンコ,ミミズ,クマムシなどの無脊椎動物,光合成を行う藻類,さらに生物の遺骸や有機物を分解するバクテリアなどである.これらの生物は,低温環境に特化した進化を遂げ,雪氷生物として知られている.雪氷生物は,互いに補食被食の関係を持ち,積雪や氷河に独立した生態系を作っている.また,雪氷生物の繁殖は,雪氷の表面のアルベド(反射率)を変化させることで,氷河や積雪の融解を加速する効果をもつこともわかってきた.分子生物学,特にゲノム解析の進歩により,これら低温環境に生息する微生物の多様性や,微生物がもつ特殊な機能が明らかにされつつある.雪氷生物と雪氷圏との相互作用は,全球スケールの気候変動や地球生命史においても新しい視点を提供する.さらに,氷河や永久凍土などの雪氷環境は,太陽系の他の天体にも存在するため,雪氷生物は地球外生命の存在を探る上でのモデル生物としても期待されている.

Abstract: Glaciers, snowpacks, and permafrost in polar and alpine areas have been believed to be lifeless environment for a long time. However, diverse organisms have recently been found to live there across the world. For example, invertebrates such as insects, copepods, iceworms, and water bears, photosynthetic microbes such as snow algae, and heterotrophic bacteria are living in snow and ice. They are special species adapted to cold environment and form simple and closed ecosystems in the cryosphere. As their blooming on glaciers and snowpacks can reduce albedo of snow and ice and enhance their melting, they have a strong impact on cryosphere and global climate. Recent advance of genomic analyses of the organisms has revealed their diversity and special physiologic functions. As glaciers and permafrost can widely be found in other planets in our solar system, they are the best model organisms to explore extra-terrestrial life.


No. 412: 2024年3月21日(木) 15:30-16:30

場所: 東京大学天文学教育研究センター講義室

講師: 植田稔也(デンバー大学)

題目: 目標天体の輝線分光データを自家減光補正しつつ輝線ガスの電子温度・密度を一括同定する新手法について

Language: Japanese

要旨: 観測天文学において、減光は避けられない事象であり、その補正は永遠の命題と言える。しかしながら、ともすると減光は目標天体の「前景」の問題と捉えられ、減光補正は目標天体の解析とは切り離されて扱われる傾向にある。ところが、輝線天体の減光量を正しく見積るには、目標天体輝線ガスの物理状態を知る必要がある。従い、実際には減光補正とプラズマ解析は包括的に行って無矛盾最適解を求める必要がある。しかし、先行研究を紐解くと、無矛盾最適解を厳密に追求するケースは期待に反して多くはない。

一般的な減光則を用いて輝線天体分光データを補正する場合、標準波長(一般的には水素バルマーβ輝線)の青側・赤側で逆センスの補正になる。そのため、プラズマ診断で用いる輝線が標準波長の両側にまたがって分布している場合、減光量見積りの精度がプラズマ診断の精度に如実に影響を与えることになる。日常的に多波長分光データを扱うようになった昨今、これは由々しき問題になりかねない。

そこで我々は、最低5本の水素再結合線を検知できれば、目標輝線天体の分光データから、目標天体視線方向の減光量(c(Hβ); 天体周辺、星間、銀河間由来すべて含む)と規格化された選択減光(Rv)、並びに、目標天体輝線ガスの電子温度(Te)と電子密度(ne)を一括同定する方法を開発した。ここに提案する方法では、減光補正とプラズマ解析の相互依存性からc(Hβ)とRvをTeとneの関数と表すことにより、減光補正とプラズマ解析の無矛盾最適解を求めることが可能となる。特に、自家分光データのみから目標天体視線方向のRv値をも求められる、という点は画期的である。

ランダムモデルを用いた検証により、輝線強度の観測精度が数%の場合、c(Hβ)とRvは10%程度、Teは数%の精度で解が求められることが示された。neの精度は、水素輝線がそもそも電子密度にセンシティブな輝線ではないために劣るが、この方法で決まるTeと他の密度診断輝線によるプラズマ解析を組み合わせれば、数%の精度で求められる。この新手法は、惑星状星雲のプラズマ解析精度の向上を動機として開発されたが、得られる輝線が少ないような暗い遠方の輝線天体にこそ有益な手法と思われるため、この機会に紹介させていただきたい。

この研究は2023年度の国立天文台(大学支援経費)「委託研究」事業の支援を受けて行われている。


今後の講演予定

#DateSpeakerTitleChair
4112024年2月22日(木) 14:30-15:30 開始時刻注意竹内望(千葉大)・瀬川高弘(山梨大)氷河や積雪,永久凍土に生息する雪氷生物の世界と地球外生命探査への期待K. Kohno
4122024年3月21日(木) 15:30-16:30植田稔也(デンバー大)目標天体の輝線分光データを自家減光補正しつつ輝線ガスの電子温度・密度を一括同定する新手法についてK. Kohno
4132024年3月26日(火) (時刻調整中)Navin Chaurasiya (Inter-University Centre for Astronomy and Astrophysics, India)TBATBD

終了した談話会(2023年度)

詳細はこちら: 令和5(2023)年度談話会

#DateSpeakerTitleChair
4102023年12月25日(月) 15:30-16:30 臨時幸田 仁 (Stony Brook University)近傍銀河の分子ガス進化 - 星形成や銀河進化を理解する第一歩としてK. Kohno
4092023年12月14日(木)坂野正明 (ワイズバベル (英文校閲・日英翻訳))理系英語コミュニケーション:論文の執筆、履歴書からレフェリー交渉までM. Imai
4082023年11月16日(木)日下部晴香 (国立天文台・科学研究部)CGM observations in emissionK. Kohno
4072023年11月7日(火) 10:30-11:30 臨時浅山信一郎 (SKA Observatory)電波天文観測装置と情報通信技術K. Kohno
4062023年10月26日(木)平尾優樹 (天文学教育研究センター)The latest findings and future prospects in exoplanet studies through gravitational microlensingM. Imai
4052023年10月3日(火) 天文学教室との合同談話会Ewine van Dishoeck (Leiden Observatory)Protostars and protoplanetary disks with JWST: first results from the JOYS and MINDS programsN. Matsunaga
4042023年6月29日(木)谷口琴美 (国立天文台・科学研究部)Chemical complexity around massive young stellar objects revealed by ALMAK. Kohno
4032023年6月8日(木)今井正尭 (天文学教育研究センター)Observations of planetary-scale waves on Venus atmosphereS. Koyama
4022023年5月25日(木)藤田真司 Shinji Fujita (Institute of Astronomy, the University of Tokyo)Distance determination of molecular clouds in the Galaxy using deep learningM. Imai
4012023年4月20日(木)Yao-Lun Yang (Research Scientist, RIKEN)Complex chemistry in the era of JWST and ALMAK. Kohno
4002023年4月6日(木)Doug Johnstone (National Research Council Canada)What the Variability of Embedded Protostars Tells Us about Accretion: Past, Present, and FutureK. Kohno

これまでの談話会


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Last-modified: 2024-02-22 (木) 07:41:09