第151回: 4月 1日 (水) 16:00 酒向重行 (東大・天文センター)
「mini-TAO建設現場からの報告」
2009年3月,
チリ・アタカマのチャナントール山頂 5,640mに東京大学mini-TAO望遠鏡が設置され,
ファーストライト観測に成功した.
世界最高地点の望遠鏡となった mini-TAO にはその高い大気透過率を活かした高感度の赤外線観測が期待される.
標高 5,640mの高所への建設は観測機器だけでなく人間自身の体力の挑戦でもあった.
本講演では, 砂と紫外線と低温低酸素の中で繰り広げられたmini-TAO建設の2か月を現場の視点から報告する.
第152回: 4月16日 (木) 松永典之 (東大・天文センター)
「銀河中心領域の変光星探査と周期光度関係の応用について」
"Variable stars towards the Galactic centre and applications of their period-luminosity relation"
ある種の変光星では周期と光度の間にきれいな相関関係が存在し,
その天体までの距離を調べることができる. 100年前にリービットが
セファイド変光星の周期光度関係を発見して以来,
天文学の広い分野で重要な役割を果たしてきた.
発表者は銀河中心やバルジの領域でミラ型変光星の探査を進めているが,
このタイプの変光星についても周期光度関係が存在し,
それらの距離を調べることができる.
本講演では, まず変光星やその周期光度関係の由来に関して概説する.
その後, 現在行っている変光星探査のプロジェクトを紹介し,
銀河中心領域の探査の成果として得られた銀河中心までの距離などについて議論を行う.
第153回: 4月23日 (木) 小西真広 (東大・天文センター)
「近赤外線で探るz ~ 1の星形成銀河の形態」
"A Morphological Study of Star-forming Galaxies of Redshift z ∼ 1 with Subaru/MOIRCS"
宇宙の星形成活動は現在からおよそ80億年前 (赤方偏移 z∼1)
を境に現在に向かってその勢いが衰え続けている事が知られているが,
その原因は未だ解明されていない.
まず z∼1 において主にどこでどのように星形成が起こっているのかを
理解するために, 我々はこの時代の銀河の静止系近赤外線で見た形態に着目した.
Subaru/MOIRCSによるJHKsバンドでの深撮像プロジェクト
(MOIRCS Deep Survey: MODS) のデータを用いて,
銀河の形態と星形成活動との関連を調べた結果,
この時代の星形成の主な担い手は, 多量のdustを伴った銀河である事,
それらの9割近くはdisk(-like)な構造を持っている事,
さらにそれらの星形成銀河のサイズや数密度が近傍大質量渦巻銀河と同程度である事が明らかになった.
本講演ではこれらの結果を紹介するとともに,
この星形成銀河種族がどのような進化を辿るのかについても議論したい.
第154回: 5月14日 (木) 山下卓也 (国立天文台)
「系外惑星の生命とその生存環境の検出に向けて」
"Toward detection of sign of life and habitable environment"
1995年に視線速度法によって太陽系外に惑星が発見されてから現在までに300以上の系外惑星が確認されており,
その統計的な性質が明らかにされつつある.
次の大きな目標はこれらの系外惑星が生命の発生と生存に適した環境にあるかどうかの確認,
さらには生命の痕跡を見つけることであろう.
そのためには系外惑星大気についての情報が不可欠で,
原理的にはいくつかの手法による分光観測によって取得が可能である.
本談話会ではトランジット法を用いた分光観測を中心に, SPICA や JWST, ELT
などの次世代の望遠鏡を 用いた場合に,
どこまで解明できるのかについての検討を紹介する.
第155回: 5月21日 (木) 中桐正夫 (国立天文台)
「国立天文台のアーカイブス (−お宝続々, 次々とおもしろい話が−)」
"Archives of National Astronomical Observatory (Treasure and Interesting stories appear one after another)"
日本の天文学の中枢機関である国立天文台にアーカイブ室を立ち上げたことを紹介します.
国立天文台では初めての活動で, 近代天文学の黎明期にイギリス, ドイツ,
フランスから輸入され,
埋もれていた観測器械を発掘, 復元, 展示を進めています.
この活動で古い貴重なお宝といえる数々の観測器械, 測定器械が発見されると同時に,
それらに付随して実におもしろい話が次々と出てきました.
私は, 主に天文台で観測機器開発をやっていたもので,
世にいう天文学者とは違います.
いわば天文学関係者で紫外線, 可視光,
赤外線領域の観測天文学および太陽物理学に関係していました.
したがって今日の話は皆さんの聞きなれた最先端の天文学の研究の話とは違っています.
第156回: 6月 4日 (木) 渡邊鉄哉 (国立天文台)
「ひので搭載極端紫外線分光撮像望遠鏡 (HINODE/EIS) の最新成果」
"Most Recent New Results Achieved by EUV Imaging Spectrometer On board the Hinode Mission"
「ひので」衛星に搭載されている極端紫外線分光撮像望遠鏡 (Extreme-ultraviolet
Imaging Spectrometer) は,
世界で初めての太陽極端紫外線輝線の線輪郭解析を行うことが可能な高性能望遠鏡で,
プラズマ分光診断の手法を用いることにより,
太陽外層プラズマのダイナミックな運動や加熱の様子を詳らかにしつつある.
フレアやコロナ加熱機構に関する話題を中心に,
この望遠鏡による最新の観測成果について紹介する.
第157回: 6月11日 (木) 岡本美子 (茨城大)
「 すばるCOMICSの高空間分解能で見た星周円盤 」
"Subaru/COMICS observations of circumstellar disks with high spatial resolution"
星周円盤は, 惑星形成の場として重要である. また, 大質量星においては, その形成が, 星周円盤を通した物質降着によるのかについて, 依然として議論になっている. すばるCOMICSは, 10ミクロン帯で0.3"の空間分解能を実現し, さまざまな星周円盤の観測に活用できる. 本講演では, 中質量星周の原始惑星系円盤からデブリ円盤の10ミクロン帯観測からわかってきた円盤の構造やダスト分布について, また, 最近, 10太陽質量星周に発見した円盤とその性質についてを中心に, すばるCOMICSによる星周円盤研究の成果を紹介する.
第158回: 6月18日 (木) 百瀬宗武 (茨城大)
「原始惑星系円盤のミリ波サブミリ波観測 −最近の進展と将来の展望−」
"Observations of Protoplanetary Disks at Millimeter and Sub-millimeter Wavelengths − Recent Progresses and Future Prospects"
若い星には原始惑星系と見られる円盤が普遍的に存在している. これらの性質を詳しく調べることは, 惑星系の形成過程やその多様性を知る上で重要である. この講演ではまず, 野辺山ミリ波干渉計で行われたダスト連続波サーベイなどを紹介しながら, 太陽質量程度の前主系列星に付随する円盤で明らかになっている基本的な性質をレビューする. そのあと, 我々が最近ハワイサブミリ波干渉計 (SMA) やASTEを用いて行った, 超低質量星や中質量星に付随した円盤の観測結果を紹介する. 最後にこれらを踏まえ, 惑星形成理論と関連させながら, ALMAを用いた観測について展望する.
第159回: 6月25日 (木) 松原英雄 (JAXA)
「 「あかり」による北黄極銀河ディープサーベイと 見つかった赤い1型AGNの正体について 」
"Overview of AKARI Extragalactic Deep Survey toward the North Ecliptic Pole & the Nature of Red type-1 AGN"
Overview of AKARI infrared (IR) space telescope mission, and performance of deep extragalactic surveys toward the north ecliptic pole (NEP) will be presented. I then introduce observational characteristics of three red, mid-IR selected active galactic nuclei (AGNs) in NEP at z=1.3-2.2. Their broad-band spectral energy distributions (SEDs) at optical and mid-IR are quite red, showing power-law which is similar to that of the AGN dust torus seen in edge-on, while their optical spectra show very broad Mg II emission (3000-5000 km/s). We found their optical -- mid-IR SEDs can be mostly explained by face-on AGN dust torus templates multiplied by an external dust extinction, indicating that these red AGN are likely young AGN still cocooned by dust cloud. We argue the stellar population co-existing with the AGN. The star-formation rates of the stellar population can be constrained by the absence of PAH features in their mid-IR SEDs, and thus the huge mid-IR luminosity originates from the AGN activity. This may suggest that star-formation activities were already terminated while the AGN is still obscured by dust cloud.
第160回: 7月 2日 (木) 半田利弘 (東大・天文センター)
「生まれはクール〜銀河中心の分子ガスはtransientな加熱の結果か?」
"NH3 in the Galactic Ceter is formed in cool condistions"
銀河中心には天球上で数度にわたる分子雲複合体があり,
Central Molecular Zone(CMZ)と呼ばれる.
ここのガスは円盤部でよく見られる分子雲より温度・密度が系統的に高い.
我々は東大60cm鏡のCO(2-1)と同じビームサイズをもつ鹿児島6m電波望遠鏡の
アンモニア分子輝線を用いて, この領域全体の分子ガスの状態を調べた.
その結果, 現在のガス温度はCMZ全域にわたって典型的な塵の温度より高いが,
分子形成時の温度は塵の温度と同程度に低いことがわかった.
現在の塵の温度では分子は塵表面から放出されないことを考えると,
これは, 塵表面で形成された分子が現在のガス温度程度以上に加熱された
ことがあることを示す. ここから我々は, CMZでは塵は短期間だけ加熱された後,
現在は冷えてしまったと考えている.
短時間だけ加熱する機構としていくつかの可能性を検討した結果も紹介する.
reference:Nagayama et al. PASJ in press; Nagayama et al. (2007) PASJ 59, 869
第161回: 7月16日 (木) 高田昌広 (東大・IPMU)
"Gravitational lensing of galaxy clusters: dark matter and dark energy"
重力レンズ効果は暗黒物質の空間分布を復元する強力な手段である. また, 重力レンズの幾何学的な性質から, 重力レンズ強度は宇宙膨張に敏感であり, 暗黒エネルギーを探る手段になり得る. 特に, 遠方銀河の像には手前の構造の重力レンズにより, 普遍的に微弱な歪み効果が引き起こされており, 逆にこの系統的な弱重力レンズ信号を探ることにより, 宇宙のあらゆる場所の暗黒物質の分布を探ることが可能になる (重力レンズシアー効果). この重力レンズシアーを測定するには, 広視野, 集光力, さらに高撮像性能を有するすばる望遠鏡が威力を発揮する. そのような研究の一例として, 我々が進めている多数の近傍銀河団の重力レンズ研究の成果を報告し, すばる重力レンズサーベイの展望を議論したい.
第162回: 7月23日 (木) 大師堂経明 (早大)
"Radio Transients Observation with Huge Spherical Dish Array at 1.4GHz"
自由学園那須農場の一角を貸していただき,
20m球面鏡8台+30m球面鏡1からなる電波干渉計を建設した.
この装置で発見された正体不明のトランジェント電波源や,
他の観測所の電波観測で示された諸現象, “超光速” 運動, ジェット, などは,
ガンマ線衛星 Fermi, 宇宙線大気シャワー装置 Auger,
などの観測と関連がありそうである.
数百Mpcの距離にある活動銀河核AGNから間欠的に放出される相対論的荷電粒子のかかわる可能性もでてきた.
早稲田大学の那須干渉計は6回目のサーベイを進めている.
検出された144個の電波源の中に, 多くの割合で
VLBI sources が含まれるという岐阜大学の須藤etalの観測も,
conpact電波源の数を増やす傾向にある.
那須のサーベイが刺激となり,
VLAアーカイバルデータの解析による電波トランジェントの検出やパークス・パルサーサーベイデータの再解析から分かった50msの銀河系外パルスの存在など,
の発見もなされた.
時間領域電波天文学という新たな分野が開けつつある.
観測装置の開発も含め, これらの結果を紹介する.
第163回: 9月24日 (木) 北本俊二 (立教大)
「X線連星系, 白鳥座X−3の光電離プラズマ 」
"Photoionized Plasma in the X-ray Binary, Cygnus X-3"
宇宙の環境は様々である.
そして宇宙に存在するプラズマも周りの環境により様々な性質を示す.
近くにコンパクト星等X線で明るい天体があるとプラズマは,
X線による光電離の影響を強く受ける.
特に白鳥座X−3と呼ぶ天体はコンパクト星と非常に激しい星風を持つ星との連星系であり,
その星風はコンパクト星からの強いX線のために光電離の影響が強く見られる.
日本のX線天文衛星「すざく」で観測した,
白鳥座X−3のエネルギースペクトルを紹介して, 白鳥座X−3はどういう天体か議論する.
第164回: 10月 1日 (木) 午前11時〜 山田雅子 (台湾中央研究院)
"Emission Signatures of a Young Embedded YSO Outflows -- 3D Line Transfer Study and Pseudo-Observation towards ALMA era -- "
We examine emission signature of a young protostellar object deeply embedded
in the envelope with three-dimensional ideal MHD simulations and non-local thermodynamic equilibrium (non-LTE) line transfer calculations.
Synthesized line emission of two molecular species (CO and SiO) show that
sub-thermally excited SiO lines as a high density tracer can better probe a complex velocity field of a young protostellar object, compared to fully thermalized CO lines.
The velocity field compound of infall, rotation and outflow motions introduces a great complexity in line emission fields through varying optical thickness and emissivity, such as double-horn profiles with various blue and red asymmetries.
We find that one of the features that characterizes an outflow driven by magneto-centrifugal force appears clearly in velocity channel maps and intensity-weighted mean velocity (first moment of velocity).
The somewhat irregular morphology of line emission at this youngest stage do not appear like a more evolved object such as young Class 0, even with high-resolution observation with the ALMA telescope.
We will briefly show tentative results of imaging simulation for ALMA.
第165回: 10月 1日 (木) 川勝 望 (国立天文台)
「銀河中心領域での爆発的な星形成による高赤方偏移クェーサーの形成」
"Formation of z > 6 Quasars driven by nuclear starbursts"
Based on a new physical model of a supermassive black hole (SMBH) growth via gas accretion in a circumnuclear disk (CND). I will discuss the formation of high-z (z > 6) Quasars whose BH masses are > 109 M_sun. In the model, the mass-supply from a host galaxy and angular momentum transfer due to turbulent viscosity driven by supernova explosions in the CND are self-consistently considered. I will show the necessary conditions to form quasars at z > 6, in terms of the total accreted gas mass from host galaxies and star formation efficiency in the CND. I will discuss how these constraints impact on the physical processes of mass accretion from the galactic scale and also the formation of CNDs. Based on the model, I will also predict observable properties of quasars at z > 6 .
第166回: 10月 8日 (木) 佐藤修二 (名大)
「光と大気の窓とスペクトル」
"Light, Spectrum and Atmospheric Window"
星の表面温度は30000〜3000Kに集中する. 放射SEDは波長 0.1 ∼ 2.5 μm
(ω1 ∼ ω2) の間にくる.
地球の大気は, 紫外 (波長 ≤ 0.3 μm) と赤外 (波長 ≥ 2.7 μm)
に吸収がある.
大気分子をバネ (電子遷移 k1と分子振動 k2のバネ) と考える.
共鳴周波数 ω1ω2 = √k/m,
紫外と赤外にあたる.
大気の窓と星のSEDの波長域は一致する.
観測 (減光, 赤化, 偏光) から星間微粒子のサイズは ∼ 0.1μm,
この大きさは星の放射を遮り大気の窓を塞ぐ.
宇宙進化の中で二度バネが消えた:
宇宙が晴れ上がる前 (自由電子) と地球が沈澱する時 (微粒子) 天空が曇った.
地球誕生後, 生命が酸素を作り現在の窓0.36〜2.5μまで狭めた.
300K下, 大気は可視-紫外-赤外域で"電気双極子"バネとしてふるまう.
Surface T of stars fall into 30000〜3000K.
Their SEDs are confined within the range of 0.1 ∼ 2.5 μm
(ω1 ∼ ω2).
Atmosphere of the Earth has absorptions outside of the Optical window, i.e.,
at UV and IR ranges, which correspond to the resonance frequencies
with spring constants of k1 and k2 for for electronic
and vibrational transition of molecules, respectively.
Thus, both agree with each other.
Astronomical observations (extinction, reddening, polarization) indicate
presence of interstellar grains, and the upper limit is ∼ 0.1μm.
This size can block stellar SEDs and the atmospheric window most efficiently.
Heaven has encountered twice full coverage with thick "clouds":
before the clearance of cosmic background radiation from free-electrons
(Thomson scattering) and at the condensation of dust-particles (Mie scattering) into the Earth.
In the course of Earth evolution, Lives produce O2 and then O3, which narrowed the window to 0.35 ⇔ 2.5 μm.
Today, we are in the electric-dipole state at T ∼ 300K,
when and where the atmosphere behaves like a spring to starlight,
and opens the window in the wavelength range toward the stardom Universe.
第167回: 10月15日 (木) 縣 秀彦 (国立天文台)
「国立天文台天文情報センターの活動について」
"Activity of NAOJ Public Relation Center"
自然, 社会, 人文いずれの分野においても, その最先端で行われている研究の成果は,
直接的に人々の生活に影響を与えるばかりか, 時には人々の知的好奇心を刺激し,
豊かな文化の形成に寄与している.
新たな知の創造を目指す先端的研究機関や大学・企業等では,
このような成果をどのように市民に還元しているのだろうか?
ここ数年大きく変貌しつつある「研究機関広報」のうち特に,
国立天文台天文情報センターの活動に焦点を絞り, 研究機関や大学における
① 広報 (PR;Public Relation),
② 普及(PUR;Public Understanding of Research) の目的・役割とその取り組みを紹介する.
第168回: 10月29日 (木) 柴田一成 (京大)
「最新太陽像と宇宙天気予報」
"New View of the Sun and Space Weather Prediction"
ひので衛星をはじめとするスペース観測の発展によって太陽の驚くべき激しい活動性が明らかになってきた. そのような太陽の驚くべき正体について解説したのち, その天文学的意味について述べる. さらに, 太陽活動の地球への影響と予測 (宇宙天気予報) の現状と将来について解説し, 最後に, 最近の黒点数の異常な少なさとその意味するところについて述べる.
第169回: 11月 5日 (木) 松本敏雄 (ソウル大/JAXA)
"A search for the light of first stars of the Universe"
It has been believed that near infrared background is promising to detect the light from the population III stars, that is, first stars of the Universe, since stellar radiation redshifts to the near infrared range and pop.III stars are too fait to be detected individually. Space observations with COBE and IRTS showed there remains unknown excess isotropic emission that could be attributed to pop.III origin, however, there remains uncertainty in obtaining absolute brightness due to the ambiguity of the model of zodiacal light which constitutes a major part of the sky brightness. Another observational study is to detect the fluctuation of the sky, since zodiacal light is very smooth. IRTS and Spitzer already showed some significant results at large and small angular scale, respectively. Following them, we tried to detect the fluctuation of the sky towards north ecliptic pole with AKARI, at 2.4, 3.2 and 4.1 μm. AKARI is advantageous to Spitzer in having cold shutter and short wavelength band at 2.4 μm. Observations were performed towards NEP monitor field for half a year. 30~40 images of good quality were stacked and fluctuation maps of the sky were obtained by subtracting foreground sources. Power spectrum analysis for the fluctuation maps shows there remains significant fluctuation at angular scale larger than 100 arcsec that can't be explained by diffuse galactic light and shot noise of faint galaxies. Observed fluctuating component has a blue stellar spectrum and correlation between wavelength bands is not so tight. These evidences indicate that the detected fluctuation is not due to the clustering of low redshift galaxies but could be attributed to the pop.III star origin. The fluctuating maps provide observational clue to understand pop.III era.
第170回: 11月12日 (木) 宮川雄大 (東京大学/JAXA)
「セイファート1型銀河MCG-6-30-15は本当に"ディスクライン"天体なのか?」
"Is the Seyfert 1 galaxy MCG-6-30-15 really a "disk-line" object?"
"ディスクライン"とは, X線エネルギースペクトルにおいて,
降着円盤から放射される鉄輝線がブラックホール周辺の強い重力赤方偏移によって,
低エネルギー側まで裾をひいているように見えている構造のことである.
広がった鉄輝線の形を決定するには連続成分を正確に見積もることが不可欠であるが,
現状ではディスクラインの存在を主張する著書たちは,
特定の連続成分モデルに依存した解析を行っており,
その存在の決定的な証拠を得られていないのが現状である.
本講演では, もっとも有名なディスクライン天体である MCG-6-30-15 について,
まず「すざく」衛星による1 keVから40 keVの広エネルギーバンドスペクトルの解析結果について報告する (Miyakawa et al. 2009).
次に, RXTE衛星による10年以上にわたる長期観測データを生かした
1 Msec以上の長いタイムスケールにおけるスペクトル変化の解析結果について報告する.
さらに, Chandra衛星のgratingによる高分散スペクトル解析結果について報告した上で,
それらを総合して MCG-6-30-15 が本当に"ディスクライン
"天体なのかどうかを議論する予定である.
第171回: 11月19日 (木) 阪本成一 (JAXA)
「JAXAの広報普及活動」
"JAXA's Education and Public Outreach Activities"
JAXA全体としての広報普及活動の取り組みの概要や広報戦略, 広報関連組織と役割分担, スポークスパーソン制度, メディアトレーニングなどについてまず紹介するとともに, より大学に近い位置づけにある JAXA宇宙科学研究本部として行っている 「金のかからない」広報普及活動について, 地域連携, 科学館連携, 産業連携を柱に, 具体例を示しながら紹介します.
第172回: 12月 3日 (木) 福島登志夫 (国立天文台)
「自転力学の再構築に向けて」
"Toward Reconstruction of Rotational Dynamics"
天体の自転運動は軌道運動と並んで天体力学の2大研究テーマである.
にもかかわらず, 自転運動の研究, 特に理論的研究は軌道運動ほど進んでいない.
総研大および東京大学における講義のために, 自転運動理論に関するサーベイを行い,
講義ノートをまとめた (福島 2007).
その過程で上記の現状を痛感し,
自転運動に関する理論を基礎から再構築する決意を固めた.
まず, 精確な数値理論を展開するために,
最も一般的な三軸不等の剛体の自転運動に関する数値積分手法を総括し,
いずれも安定性もしくは計算速度の面で不十分であることを確認した.
次に, オイラー・パラメータ q および自転角速度の剛体固定座標系成分
(ωA, ωB, ωC) の組み合わせを基本変数として採用し,
q に関する正規化を数値積分の各ステップで強制的に実行することにより,
絶対的に数値安定で, かつ高速な数値積分法を創案した
(Fukushima 2008a, AJ, 135, 2298).
さらに, 軌道運動におけるケプラー要素に倣って,
自転運動の基本である剛体の自由回転に関する要素 (G,h,I,e,v,w) および同要素の運動方程式を導出した (Fukushima 2008b, AJ, 136, 649).
同要素は, ケプラー要素の場合と異なり, 自転運動のエネルギーによらず定義可能,
すなわち普遍的である.
また, 運動方程式はトルクベクトルによって表現されているため, 散逸も含む一般的な自転運動を扱うことが可能である.
しかし, 正準形式でないため, 解析的摂動論を展開することは困難である.
この欠点を克服するために, 自転運動に関する普遍的な正準変数
(S,Z,H;s,z,h) を考案した (Fukushima 2008c, AJ, 136, 1278).
同変数は, 剛体の自由回転の場合に要素となる.
即ち, 軌道運動におけるドローネ正準変数と同じ役割を果たす. さて,
剛体の自由運動は 厳密解が解析的に得られているが, その表現には,
一般になじみの薄い,
しかも計算が複雑なヤコビの楕円関数および不完全楕円積分が表れるため,
実用には向かないとされてきた.
この常識をくつがえすために, 以前, 不完全楕円積分の計算アルゴリズムを開発し,
従来に比して約3倍の高速化を得ていた
(Fukushima and Ishizaki 1994, CMDA, 59, 237) が, 今回,
加法定理とマクローリン級数展開を駆使することにより,
パラメータおよび特性数一定という制限下においてではあるが,
25-70倍の高速化に成功した (Fukushima 2009a, CMDA, 245, 260).
この余勢を駆って, 剛体の自由回転の初期値問題の高速解法を導出した
(Fukushima 2009b, AJ, 138, 210).
この解法は, 軌道運動の場合の, いわゆるf-およびg-関数の方法に対応する.
従って, 同解法を基礎とすることにより,
自転運動に関するシンプレクティック積分法を構築することが容易になる.
また,
テイラー展開により第1種及び第2種の完全楕円積分の区分多項式を求めるとともに,
倍角公式を駆使して任意のパラメータに対してヤコビの楕円関数の高速計算法を導出した
(Fukushima 2009c, CMDA, in printing).
さらに, 半角公式とマクローリン級数展開の組み合わせにより,
第1種不完全楕円積分の高速計算法を創案した
(Fukushima 2009d, Numer. Math., submitted).
講演では, これまでの進展を概括し, 今後の研究の方向を示す.
第173回: 12月17日 (木) 本間希樹 (国立天文台)
"Studying the Milky Way Galaxy with VLBI -- from VERA to sub-mm VLBI"
I review our current activities at NAOJ to study the Milky Way Galaxy with VLBI observations. First I will summarize the current status of VERA (VLBI Exploration of Radio Astrometry), which is a dedicated VLBI array to conduct high precision astrometry of Galactic maser sources such as star-forming regions and late-type stars. So far we have measured parallaxes and proper motions of ∼20 maser sources and I will present high lights of recent VERA's outputs. In the second part of my talk, I will introduce our plan toward sub-mm VLBI observations using ASTE (Atacama Submilli-meter Telescope Experiment) to directly image a black hole shadow of Sgr A*, the super-massive black hole at the Galaxy center, in collaboration with an international sub-mm VLBI array.
第174回: 1月 7日 (木) 廿日出文洋 (東大・天文センター)
「サブミリ波広視野探査に基づく大質量星形成銀河の進化の研究」
"A Study of the Evolution of Massive Galaxies Based on Deep Wide-field Submillimeter Surveys"
我々は, ASTE搭載AzTECカメラを用いて1.1mm帯の大規模サーベイを行ってきた. ADF-S, SXDF, SSA22領域のデータを用い, 検出されたサブミリ波銀河の統計的性質から, 大質量星形成銀河の進化を探った. ナンバーカウントと理論モデルの比較では, z ∼ 1-3 において30倍を超える光度進化を経るモデルが観測をよく再現する. 角度二体相関関数の解析では, 明るいAzTECソースについて強いクラスタリングの兆候が得られ, ∼ 1013−1014 Msun という大質量のダークハローに付随するという結果を得た. これは, 近傍宇宙の大質量楕円銀河や銀河団スケールのダークハロー質量に相当し, サブミリ波銀河が銀河団中心に付随するような巨大楕円銀河の祖先であることを示唆する. 宇宙赤外線背景放射, 星形成史への寄与についても議論する.
第175回: 1月21日 (木) 小西功記 (東大・宇宙線研)
「母銀河環境のIa型超新星への影響」
"The impact of host galaxy environments on type Ia supernovae"
Ia型超新星の最大光度におけるばらつきは約1等級ある.
このばらつきの主な要因は,
超新星爆発時に合成された放射性ニッケルの質量における差異であるが,
その差異をうまく説明する理論は存在しない.
一つの有力な候補として, 超新星親星の重元素組成比の違いが示唆されている.
一方, Ia型超新星の平均的な明るさは母銀河の形態ごとに異なることが観測的に報告されている.
我々は, スローン・ディジタル・スカイ・サーベイ(SDSS)の第2期に超新星探査を行って,
過去最大の統計データを取得, 放射性ニッケルの多様性の要因を探った.
高金属量の銀河に爆発したIa型超新星ほど,
また星形成がおだやかな銀河に爆発したIa型超新星ほど, 合成された放射性ニッケルの質量が軽いことが分かった.