Trigonometric Parallaxes of Star Forming Regions in the Scutum Spiral Arm


Sato, Wu, Immer, Zhang, Sanna, Reid, Dame, Brunthaler, Mnten
2014 ApJ 795, 72 - 86




 アブストラクト 

 スキュータム腕内の HMSFRs 6個の三角視差を測った。その結果 l = [5, 32] の視差付き HMSFRs の総数は 16 になった。全て BeSSel サーベイの結果である。 対数螺旋を仮定したピッチ角=19.8°±3.1° である。  このピッチ角は他の腕より大きい。これはバーの力学効果のためかも知れない。 平均特異速度は銀河回転より 4 km/s 遅く、銀河中心方向に 8 km/s 向かっている。 この日線形運動の方向は他種天体で得られたものと同じであるが、GC 向きの速度 が大きい。


 1.イントロ 

 分子リング 

 Scoville,Solomon 1977, Clemens et al. (1988), Dame et al. (2001) は Rg = 4 - 7 kpc に CO がリング状に集積しているとし、それを 銀河系分子リング (the Galactic Molecular Ring) と名付けた。 Nakanishi, Sofue 2006 によると、これはサジタリウス腕とスキュータム・ ケンタウルス腕の二つの腕を合わせて見たものである。

 二本腕? 

  Benjamin et al. (2009) Churchwell et al. (2009) は MIR での星数計数から、スキュータムとケンタウルスの腕接線方向で天体 数の超過があることを示した。彼らは古い種族円盤に対してスキュータム腕 に密度超過があることを意味するとした。彼らはそれが Drimmel et al. (2000) が提案した二本腕モデルを支持すると考えた。  最近 Dame, Thaddeus (2011) は銀河中心から 11 kpc 離れた第一象限内に渦状腕を発見し、それをスキュー タム・ケンタウルス腕の延長とした。
 運動距離の不定性 

 渦状腕の経路は l-v 図上では明瞭であるが、それを正面図上に描くのは 困難である。その主な原因は運動距離の不定性が大きいことである。 色々な距離の天体視線速度がゼロ付近に重なり合うため、 銀経の小さなスキュータム腕方向にある天体の運動距離は特に決定が難しい。

 スキュータム腕 HMSFRs 

 この論文では、スキュータム腕に属する HMSFRs のメタノールと水メーザー 源の三角視差と固有運動の測定結果を報告する。BeSSel 計画で観測された 他の10 天体と合わせると、スキュータム腕天体の数はかなりになるので、 腕の位置、ピッチ角と運動についての解析が可能となった。


 2.観測 

 表1.スキュータム腕 GMSFRs の視差と固有運動 



 図1.6HMSFRs のVLBA 観測、 





 4.議論 

 4.1.スキュータム腕の幾何学 

 図2.l-v 図上のスキュータム腕の経路 


図2.背景は Dame et al. (2001) の CO 放射。青実線=Shane 1972 HI 観測によるスキュータム腕。青点線=外挿。 赤丸=観測された HMSFRs.

 メーザー源と腕 

 まず、HMSFRs サンプルを Dame et al. (2001) Jackson et al. (2006) のサーベイにある分子雲と合わせる。そして次にそれらの分子雲が l-v 図 上で腕にあることを見る。こうして、 HMSFRs がスキュータム腕に属することを 確認した。スキュータム腕の l-v 図上での反転は Shane et al 1972 により HI 21 cm で、また Cohen et al. (1980) により CO で示されが、図2で確認できる。腕の周りの HNSFRs の散らばりは 雲内の励起星のビリアル巾、雲間の速度分散などからの予想と一致する。 例外は G012.68-00.18 である。 Immer et al. (2013) はこの天体、他天体より Vr が 20 km/s くらい大きい、を W33 からの逸脱 速度成分と見做した。

 16 HMSFRs  

 こうして、以前の観測と合わせ、スキュータム腕に属する 16 HMSFRs の視差 を得た。表1にそれらの視差を示す。図3にはそれらの配置を示す。 図3中最も遠方にある、 G029.95-00.01, G029.86-00.04, G027.36-00.16, G025.70+00.04 は CO l-v 図上での位置から、スキュータム腕の向こう側ループ に乗っていると予想されていた。それらの相対位置さえ正しい。これは、 Shane 1972 が提案し、最近では Ellsworth-Bowers 2013 が示唆した、スキュータム腕 は接点の先にしばらく伸びているという主張を裏付ける。




図3.スキュータム腕上の HMSFRs. 赤丸=今回の結果。緑=以前の BeSSel 観測。Ro=8.34 kpc. 背景= Taylor, Cordes 1993 腕モデル。 実線楕円=中心バーはGerhard 2002 と Churchwell et al. (2009) より。点線楕円=ロングバーは   Benjamin et al. (2005) より。


 4.1.2.ピッチ角 

 図4から得たピッチ角は ψ = 19.8°±3.1° であった。

図4.スキュータム腕のピッチ角。Ro = 8.34 kpc. 赤実線=ベイズ法による対数螺旋フィット。黒曲線= 1σ距離不定性。  





表2.HMSFRs の運動。

 4.2.3D 運動 

 表2=特異運動 

 表2の特異運動を計算するための銀河円盤運動は Reid et al 2014 の銀河 回転モデル A5 に準拠して求めた。それは、 Ro = 8.3 kpc, Θo = 240 km/s, dΘ/dR = -0.2 km/s/kpc. 太陽運動は Uo(GC方向) = 10.7 km/s, Vo(銀河回転方向) = 15.6 km/s, Wo(北銀極方向) = 8.9 km/s とした。

 図5=特異運動 

 特異運動の平均は、 ⟨U⟩s = 8.2 km/s, ⟨V⟩s = -4.2 km/s, ⟨W⟩s = -1.5 km/s, である。

 4つの腕の特異運動の平均 

 Reid et al 2014 はサジタリウス、局所、ペルセウス、外側腕中にある 73 HMSFRs の特異運動の平均値として、 ⟨U⟩ = 3.7 km/s, ⟨V⟩ = -1.5 km/s, ⟨W⟩ = -0.6 km/s を得た。 スキュータム腕の HMSFRs の特異運動は U と V の符号の点で同じ傾向を示す。

 特異運動の原因 

(1). バーポテンシャルに沿った運動。しかし、我々の特異運動は 95 % レベルで非円周運動とは言えない。
(2).太陽運動の誤り。Honma, Sofue 1997 の内側銀河で回転速度が遅い、 という結果は大事

図5.HMSFRsの特異運動。左下矢印= 20 km/s を示す。