Molecular Clouds and Galactic Spiral Structure


Cohen, Cong, Dame, Thaddeus
1980 ApJ 239, L53 - L56

 アブストラクト

 CO 2.6 mm サーベイ、一つは l = [12, 60], b = [-1, +1]、もう一つは l = [105, 139], b = [-3, +3]、から以前の見解に反し、渦状腕をよく再現 することが分かった。分子雲から、ペルセウス腕、局所腕(Lindblad の 局所膨張リングを含む)、サジタリウス腕、盾座腕、 4 kpc 腕が同定された。  局所腕とペルセウス腕の間の空間には分子雲がない。内側銀河の腕間領域の 大部分にも分子雲が存在しない。CO が渦状構造を示していることからその寿命が 108 yr をそう大きくは超えないことが分かる。この時間スケールは 星間物質が腕を横切る時間である。すると、質量保存則から R = 4 - 12 kpc での 星間物質中で分子雲に含まれる割合は 1/2 を越えられないことが導出される。

 1.イントロダクション 

 分子雲は渦状腕を再現するか? 

 分子雲は渦状腕を良く再現するだろうか?この問題に決着を付けようと、 二つの CO 観測を実施した。一つはペルセウス腕をやや粗いが広い範囲で、 もう一つは内側銀河腕を密に観測した。以前の観測は第1象限に限定され、 かつ観測点間隔が粗いという欠陥があった。

 再現しない説 

 Scoville, Solomon, Sanders 1979 は、「渦状腕が見えてこないので、... 分子雲の大部分は規則的な渦状腕内に収まっていることはあり得ない」 と述べた。
CO に渦状構造が見えないなら、分子雲は古い天体で、星間物質が 腕を横切る時間よりずっと長い寿命を持つことになる。

再現する観測 

 我々の新しい観測は、分子雲が渦状腕をよく再現することを示す。 観測は NY の 1.2 m 望遠鏡を使い、 1978, 1979 に行われた。ビーム巾は 7.5 である。

 2.ペルセウス腕サーベイ 

 (l, v) 図上の腕 

 ペルセウス腕の観測は観測点間隔、観測時間がやや不規則に行われた。 図1は (l, v) 図である。v = [-20, 0] km/s の明るい帯は局所腕、それと 平行に走る [-60, -40] km/s の暗い帯はペルセウス腕である。図の上下の 矢印は 21 cm 腕の位置で、CO 雲と良く対応している。 局所腕には、 HI 観測から リンドブラッドら(1973) がグールドベルトに付随する局所膨張リングと解釈した構造(R-R')さえも見え る。

 腕間空間での CO の完全な欠如 

 図1 v = [-40, -20] km/s の縦の空白帯=腕間空間での CO の完全な欠如 はこの研究で最も大きな発見である。ただし非常な低温であったり、小さな粒、 または希薄過ぎて検出できなかった可能性が残る。普通に CO 観測で定義され ている分子雲= 5 pc より大きく、CO 温度(Ta のこと?)が 1-2 K より強い が存在しないというのがこの観測の意味である。

 分子雲の面密度

 l = [105, 139] でのペルセウス腕の表面積は 2 kpc2 である。 腕間部の表面積は 1 kpc2 である。これから腕間部では 分子雲の表面密度が腕部の 1/5 以下であることがわかる。

図1.CO (l, v) 図。等高線=∫Ta db である。l > 128° では 観測が速かったので 0.5° になまして S/N を上げた。図の上下にある 矢印は 21 cm のピーク位置。PP' = ペルセウス腕、LL' = 局所腕、RR' = リンドブラッド局所膨張リング。 l = 134° に W3 に付随する分子雲 複合体が、 l = 110° に SNR Cas A と多数の HIIR に付随する分子雲 複合体が見える。




 3.第1象限 

 腕と穴 

 図2は第1象限 l = [10, 60] で b = [-1, +1] 積分 Ta の (l, v) 図。 差込枠は CO マップ上に HI 腕を重ねた。差し込み図では構造A,B、 v = 5 km/s 付近の縦帯、は再びリンドブラッドの局所リングで、ペルセウス 腕方向に見えた構造の延長である。Cはサジタリウス腕、Dは盾座腕、Eは 4 kpc 腕である。ペルセウス腕方向と同様に腕間空間には分子雲が殆ど存在 しない。特に、リンドブラッドの構造体とサジタリウス腕の間の太い帯、 サジタリウス弧の中の穴、サジタリウス腕と盾座腕の間の穴、それに盾座腕と 4 kpc 腕の間の穴である。

サジタリウス腕と盾座腕の間の橋 

 図2を渦状腕と直接対応させることに関して、最大の例外はサジタリウス腕と 盾座腕との間にかかった CO 放射橋である。それは、終末速度 85 km/s の付近、 構造 C と D との間にかかっている。
(上の文章は HI ではない橋が CO では 掛かっているという意味なのかと思い、探して Shane, Bieger 1966 にあった b = 0 の l-v 図を参考に載せる。HI にも橋は掛かっているようだ。)
これは端末速度付近で速度分布が混むため見えるようになった腕間雲の集合と 解釈できそうに見える。しかし、そうではないことは、この橋が終端速度まで完全 に達していないことから明らかである。これは HI 研究者には良く知られており、 Weaver 1970, Shane 1972 は "Galactic spur" として説明していた。橋はその CO 対応物である。このスパーが無ければ、内側銀河の渦状構造はもっと明確で あったろう。

 バークレイ低銀緯 HI 観測との比較  

 バークレイ低銀緯 HI 観測とこの CO 観測との比較は有意義である。特に Weaver 1974 Fig 3 との比較は、CO と 21-cm が細かい点までよく一致している ことを示している。

 M31 

 同様結論、つまり 分子雲と HI が渦状腕と一致することは M31 において Stark 1979 が述べている。

 渦状腕 

 様々な 21-cm 観測結果を適用して、図3に CO 腕を描いた。

図3.CO サーベイで同定された 21-cm 渦状腕。腕の位置は、Simonson 1976, リンドブラッドら(1973) Burton, Shane 1970, Shane 1972 から取った。  



図2.第1象限 l = [10, 60] で b = [-1, +1] 積分 Ta の (l, v) 図。最強 点では Ta = 30 K を超えた。差込枠は CO マップ上に HI 腕を重ねた。A,B は Lindblad の局所リングで、Cはサジタリウス腕、Dは盾座腕、Eは 4 kpc 腕である。




Shane66Fig図.Shane, Bieger-Smith 1966 の引用。b = 0° Tb 分布。

 CO と HI の比較 





 4.議論 

 分子雲の寿命 

 CO 構造が渦状に分布していることは、分子雲の寿命が短いことを意味する。 我々のデータは分子雲の形成は星間ガスが渦状腕に突入した時に起き、 その破壊は渦状腕を去る以前に終わる、ことを示唆する。
分子、原子、電離間の平衡

 寿命上限は星間ガスが腕を通過する時間で与えられる。密度波理論によると、 それは 0.1 Gyr である。散開星団と OB-アソシエイションは 0.03 Gyr で 母分子雲を消散させているので、上の上限値は大きすぎるかも知れない。 もし分子雲が一過性の天体であるなら、星間物質の存在形態として、分子、原子、 電離間の平衡が問題となる。