Spiral Arm Tangencies in the Milky Way


Benjamin
2009 IAU Symp 254, 319 - 322




 アブストラクト

 天の川銀河における腕の接線方向の歴史的変遷を紹介し、スピツァー望遠鏡 中間赤外の星計数に基づいた結果と比べる。盾座ーケンタウルス腕の接線方向 では星計数が 20 - 30 % の超過を示したが、他の腕の接線方向での超過は認め られなかった。  この二つの接線方向はおそらくバーの近い側の端から始まる密度波腕に伴っ ている一方、他の腕はガスの圧縮であるが古い星種族の密度増加ではないので あろう。


 1.宇宙論の中での銀河渦状腕 

 1953年 

 IAU Symp. 1 = "Coordination og Galactic Research" 27人の出席で銀河系 構造の研究の開始を告げた。

 1983年 

 IAU Symp. 106 = "The Milky Way Galaxy" 150 人参加。半ダースのマップが 提出されたが、同じ HI データを使って全く違うマップを示した。そこで、 「この問題を解く方法はない」と宣言された。このシンポジウムは腕構造研究の 終わりを告げた。

 2008年 

 IAU Symp 254. the Milky Way は渦状銀河でなく円盤銀河と呼ばれ、その宇宙論 的な意味づけを議論している。
腕構造に宇宙論的な意味があるのか? 

 渦状腕の詳細を理解することは、円盤銀河の全般的な進化や星形成史を理解する 上で必要ないのではないか?例えば Elmegreen,Elmegreen 1986 によると、グランドデザイン と羽毛状の渦状銀河との間に星形成率の差はない。彼らは円盤銀河では渦状腕での星形成 は全体の 50 % 以下と見積もった。B. Elmegreen はこの研究会で、集積過程にある若い 銀河では星形成の大部分がずっと不規則で一過性であると述べている。おそらく 渦状腕は円盤が落ち着いて静かになってから現れるのだろう。円盤銀河の構造にとっては、 興味深いが、無関係な規則性なのである。

しっかりした渦構造モデルが重要 

 しかし、もし真に銀河円盤を理解したいのであれば、渦構造のしっかりしたモデルを 持つ必要がある。銀河系は個々の分子雲レベルで研究できる円盤銀河であるが、同時に 渦構造の満足できるマップが未だに分かっていない銀河でもある。


 2.渦状腕の接点 

 対数螺旋を決めるには 

 運動距離を使って HI, CO 天体の位置を決めると非常にぼやけたマップになる。 しかし、腕の接線方向はしっかり決められる。理想的なグランドデザイン渦状銀河 では、マッピングは単純で、
(1)第1象限で l = [0, 90] の接線方向と距離を決める。
(2)第4象限で l = [270, 360] の接線方向と距離を決める。
(3)二つを対数螺旋で結ぶ。


 接点と星座 

 図1には腕の追跡天体2種類での接線方向の決定を示す。 Dame et al. 2001 では、v = ±15 km/s 区間の積分から、CO (l, v) 図を作った。 そこから接点を見つけた。他の歴史的意味のある接点も記録した。

 腕の名前 

 腕の名前は接線方向の星座で名付けられるべきで、それなら、 サジタリウスーカリーナ腕はサジッターベラ腕、盾座ー十字架座腕は 鷲座ーケンタウルス腕と呼ばれるべきだろう。


 以前の渦状腕の仕事はガスと星形成域の分布に集中していた。しかし、 スピッツァー GLIMPSE の結果、中間赤外の画像が驚きをもたらした。 この天体密度から円盤スケール長 H* = 3.9±0.6 kpc が得られた。

 ロングアームと腕の起点 

 さらに図1からはレッドクランプ星が 12 等付近で超過を示し、銀経が 減少するに伴い明るさが減ることから分かった拡張されたバーの存在とその 角度 φ = 44±10, 半長径 Rbar = 4.4±0.5 kpc が出た。 このバーは COBE/DIRBE のより短いバー(Gerhard 2002) の角度 20 - 25 と異なる。このロングバーの最大銀経は盾座腕の接点でもある。 ケンタウルス腕の対応位置でも 25 % の超過を見出し、 Drimmel, Spergel 2001 が COBE/DIRBE の解析から導いた結論を確認した。多くのでこぼこは減光のせい である。ロングバー l = [-15, 30] がはっきりと見える。腕と接点は CO マップ に従った。Englmaier, Gerhart 1999 による「歴史的」接点方向を サジタリウス、盾座、3 kpc 定規座、ケンタウルスについて示した。盾座と ケンタウルスしか超過を示していない点に注意せよ。



図1.GLIMPSE 4.5 μm [6.5 mag, 12.5mag] 間の星計数。指数関数円盤成分 へのベッセル関数フィット(Benjamin et al 2005) で正規化した。でこぼこは 星間減光による。ロングバー l = [-15, 30] がはっきりと見える。腕と接点は CO 観測に従った。Englmaier, Gerhart 1999 による「歴史的」接点方向を サジタリウス、盾座、3 kpc 定規座、ケンタウルスについて示した。それらの 中で星の超過を示すのは、盾座とケンタウルスしかない点に注意せよ。

 3.消えた渦状腕 

 

 図1には、ケンタウルス接点とバー・盾座腕接点による密度超過がはっきりと 認められる。これらは、ガス、星形成活動のみでなく星の数も超過していること を示す。では、他の腕の接点にはなぜ GLIMPSE 密度超過がないのだろう? l = 50 でのサジタリウス接点が見えないことは Drimmel 2000 や Drimmel, Spergel 2001 でも指摘されていた。我々は彼らの、渦状腕には 2種類あるという説に賛成する。
 可視光の腕に古い星種族の密度超過が伴わない例は他の銀河でも見られる。 (Block, Wainscoat 1991)
ケンタウルス接点の意味 

 もし銀河系に対する二本渦状腕モデルが正しいとするなら、ケンタウルス接点は 密度波渦状腕モデルをテストする格好の場となるだろう。実際、 l = [301, 313] は以前からいくつかの点で異常領域として知られていた。例えば、 HI 速度場が 大きくずれている(McClure-Griffiths, Dickey 2007)や MSX 闇黒雲の CS 検出率 が普通 80 % なのにここだけ 20 % に落ちることなどである。どうやら、内側 銀河系でもここは重力ポテンシャルが最も深く、それが盾座ーケンタウルス座腕 領域に沿って最も濃い分子雲が並ぶ原因なのではないか?