Mass-Losing M Supergiants in the Solar Neighborhood


Jura, Kleinmann
1990 ApJS 73, 769 - 780




 アブストラクト 

 太陽から 2.5 kpc 以内にあるマスロス中の赤色超巨星 21 個(20 個は M-型、 1個は G-型 L > 105 Lo)のリストを作成した。これらは初期 質量 20 Mo の主系列星から進化したものである。それらの表面密度は 1 - 2 stars/kpc2 であった。以前の研究でも言われていることだが、 これらの星は、同様に進化した大質量である WR-星に比べ、GC方向への集中 が少ない。  不確定性はかなりあるが、M型超巨星からの質量返還は 1 - 3 10-5 Mo kpc-2yr-1 である。GCに向いた半球側では W-R 星に較べ、RSGs からのマスロスはずっと少ない。しかし、半銀河中心方向では それが逆転する。M 超巨星の期間は 2 - 4 105 yr 程度である。 この期間に 20 Mo の星は 3 - 10 Mo のガスを星間空間に戻す。


 1.イントロダクション 

 マスロスと進化 

 M > 20 Mo の大質量星は重元素の合成とそれによる銀河の化学進化に重要 である。その進化はマスロス量に大きく影響される。マスロスはまた、青色超 巨星と赤色超巨星の数の比に依存する。最近この比を太陽近傍で測る研究 が多数行われた。ここでは、赤色超巨星からのマスロス強度を直接調べる。

 各種の体系的研究 

 W-R 星の系統的な研究が van der Hucht et al. (1988) により行われた。個々の赤色巨星、赤色超巨星についてはマスロスの研究が あるが、全体としての議論は少ない。ここでは赤外サーベイデータを用いて、 しっかり定義された赤色超巨星サンプルのマスロスを調べる。 1 - 5 Mo の AGB 星については、 Claussen et al. (1987), Habing (1988), Jura 1986, Jura, Kleinmann (1989) などがある。

 AGB 星との区別が難問 

 M 型超巨星研究での難問は見かけがよく似ている AGB 星 (1−8 Mo)との 区別である。AGB 星の極大光度は Iben, Renzini 1983 によれば 6 104 Lo である。
(これは多分大き過ぎ。 )
そこで、はっきりした分離のため、 L > 105 Lo のサンプルを作成した。 これは M > 20 Mo を意味する。
 25-60 Mo 星の進化 

 Chiosi, Maeder 1986 は次のような 25-60 Mo 星進化シナリオを提案した。

 O-型星ー青色超巨星ー黄色/赤色超巨星ーW-R(N)ーW-R(C)ー超新星

W-R 期はマスロス強度に大きく影響される。そこで赤色超巨星と W-R 星の数 を較べると進化モデルに制限を掛けられる。前超新星段階での星半径は超新星 の光度曲線に影響するので、その点でもマスロスの効果は大きい。

 サンプル半径 

 サンプルを集める範囲は局所増減が平均化されるくらいに大きく、しかし、 サンプルの完全性が高い程度には狭い必要がある。そこで、 ABbott et al 1986 の W-R 星サンプルに倣って、 2.5 kpc 以内とした。

 減光補正と距離 

 光度の計算には減光補正と距離が必要である。距離の不定性は大きな問題である。





表1.2.5 kpc 以内にある赤色超巨星




図1.表1に載る 21 赤色超巨星の銀河面分布。

 2.超巨星サンプル 

 利用した文献 

 データを集めたカタログは、 Humphreys et al. (1978), Elias, Frogel, Humphreys 1985, White, Wing 1978 である。それ に NML Cyg (Morris, Jura 1983) を加えた。表1にそれらを示す。 赤化も Humphreys 1978 にあればそれを使い、無い場合は AK = 0.15 mag/kpc (Jura, Joyce, Kleinmann 1989) を使用した。

 距離とその不定性 

 減光曲線には Savage, Mathis 1979 を使った。また幾つかの早期 M-型星に は可視測光データを追加した。それらを表4に示す。  距離の大部分は Humphreys 1978 が集めた星団距離から採られた。 距離の不定性は光度 L の不定性に対する最大要因である。例えば、 Baud, Habing (1983) は VX Sgr 距離を 0.5 kpc としたが、これは本論文で採用した値の 1/3 で ある。また、 White 1980 は α Ori 距離を 100 pc としたが、これは 通常用いられる 200 pc の 1/2 である。

 怪しい二つ 

 表1には距離が不確かだが、変光周期が長いので大質量ではないかと考えら れる二つの星、 KW Sgr(P=670days) と UY Sct(740 days) を加えた。 どちらもミラ型星ではなく、超巨星スペクトルを持つ。一応 距離 2 kpc とし た。

 マスロス星は全て M-型 

 ρ Cas を除く表1でかなりのマスロスを示す星は全て M-型である。我 々はマスロス星の基準として

  Fν(12μm) > 0.10 Fν(2μm)  (1)

を採用する。この基準については Kleinmann, Jura, Joyce 1989 を見よ。
(だが、無い。没? )

 サンプル完全性 

 北半球 (-33<δ<81)サンプル完全性を調べるため、表2に2MSS にあり、Bidelman 1980 が A 型より晩期とした超巨星全てを載せた。 I' は Claussen et al. (1987), に従って I の変換した。この表は赤外で赤る星の全体的な理解に有用である。
(意味不明。 )
表1に載らない RSGs  

表3には表2から採った、マスロス候補赤外超巨星だが表1には含まれなかっ た星を載せた。表3に載せる基準は、

(1)超巨星に分類(Bidelman 1980)されている。

(2)式(1)を満たす。

(3)K < 2 mag. (SG が 2.5 kpc にあれば)

表3にある 35 星は幾つかのグループに分かれる。

a: α Sco, α Her 型
  10 - 20 Mo 星で L < 105Lo

b: P < 150 days 星 W Tri, V Eri, UX Ari, V913 Aql, U Del, SW Cep
  短周期の AGBs で L < 104 Lo であろう。
(そんな星がなぜ超巨星に分類された?)

c: Bright Star Catalog で光度クラス II または III


  d: 情報不足の 15 星。

 表面密度 

 表1の 2.5 kpc 以内のM-型超巨星 21 個から表面密度は 1 RSGs kpc -2 となる。不確かだった 15 個を加えれば 2 くらいになる。

 XY-プロット 

 図1には銀河面上に 21 星をプロットした。 13/21 = 62 % がGC側にある。 対照的に WR 星の Conti et al 1983, van der Hucht et al 1988 リストでは 2.5 kpc 内にある 44 星中 36/44 = 86 % が GC 側にある。この明らかな 方向分布の差の原因は不明である。


 表2.TMMS で A - M 型超巨星と分類された星 











 表3.表1に載らなかった K < 2 の TMMS の赤い星 



 3.マスロス率 

 マスロス式 

 マスロス率の計算には (Jura, Joyce, Kleinmann 1989) からの式を採用した。

   dM/dt = 1.7 10-7F60 Dkpc210/L4)1/2 v15 Mo/yr (2)

ここに、v15 = (v/15km/s), Dkpc = D/1kpc, F60 = 60 μm フラックス(Jy), L4 = L/104Lo, λ10 = 放射の平均波長(&mu:m)である。
(面倒をここに押し込めている。) v15 = 2 を仮定し、表1から距離、光度、フラックスを求めて代入 する。 NML Cyg はスキャン回数が不足して IRAS PSC に載せられなかったので、 ADDSCAN 処理で求めた。ADDSCAN はまた最も近い星 α Ori と μ Cep が IRAS 60 μm ビーム巾より広がっていることを示す。

 他のマスロス率との比較 

 表4には他の研究で得られたマスロス率を比較のために載せた。ただし、同じ 距離での値に直している。大体はファクター 3 - 4 の範囲で一致する。大きく 異なるのは α Ori と ρ Cas である。Jura, Kleinmann 1990 で議論 されているが、ρ Cas のダスト/ガス比が普通より低い可能性がある。 α Ori の場合も流出速度の低さはダスト/ガス比が低い可能性がある。

 M 超巨星かも知れない 15 星のマスロス 

 表3に載った、M 超巨星の可能性のある 15 星のマスロス率を調べた。それらの 距離を全て 2 kpc、v15 = 2, λ10 = 0.2, L4 = 10 と仮定した。
λ10 = 0.2 とは? 10 μm 単位ということ? それらの計算マスロスロス率は表3に載せた。RW Cep 以外は大きなマスロスは 起きていない。
  1 kpc 以内星からの総マスロス率 

 表4からの総マスロス率は 3 10-4 Mo/yr である。 これは銀河面単位面積当たりでは、 1.5 10-5 Mo kpc-2 yr-1 に当たる。

 WR-星 + M 超巨星のマスロス 

 太陽近傍には2つの WR-星があり(Abbott 1982) それぞれが 3 10-5 Mo/yr のマスロスを行っているので合計して、6 10-5 Mo kpc-2 yr-1 のマスロス率となる。それで、 WR 星と M 超巨星双方からのマスロスは計 8 10-5 Mo kpc-2 yr-1 である。反銀河中心方向では M 超巨星が 星間物質への返還の大部分を担い、中心方向では WR 星が主役となる。 これらに対し AGB 星からのマスロスは全体で 3 - 6 10-4 Mo kpc-2 yr-1 (Jura, Kleinmann 1989) である。

 マスロス率の広がり 

  WR 星と違い、 M 超巨星からのマスロス率は星間で 100 倍の違いがある。 その理由はまだよく分からない。





表4.マスロス率



 4.進化上の意義 

 約半分が星風の形で戻されている 

  Miller, Scalo 1979 によると、太陽近傍では M < 20 Mo の星が 15 10-5 Mo kpc-2 yr-1 の割合で生まれている。一方、 WR 星と M 超巨星は 8 10-5 Mo kpc-2 yr-1 のガスを星間物質に返還している。 大雑把に言って、大質量星に取り込まれる星間物質の約半分が星風の形で戻さ れている。
 M 超巨星期間は 2 - 4 105 yr

 上のガス消費率を星数に直すと、M > 20 Mo の星の誕生率は 5 10-6 kpc-2 yr-1 となる。 M 超巨星の表面数密度は 1 - 2 stars kpc-2 なので、M 超巨星 期間は 2 - 4 105 yr となる。Chiosi, Maeder 1986 によると 25 Mo 星が He 燃焼期に Te < 6300 K である期間は 4.6 105 yr, 40 Mo では 1.2 105 yr である。一致は良い。


 5.まとめ 

(1)表面密度
 L > 105 Lo の明るい M 超巨星の表面密度は 1 - 2 stars kpc-2 である。銀河中心からの動径方向での スケール長は M 超巨星の方が WR 星より小さい。

(2)質量返還
 M 超巨星からの質量返還率は 1 - 2 10-5 Mo kpc-2 yr-1 である。個々の 超巨星間のマスロス率 には 100 倍もの違いがある。太陽近傍では WR 星からの質量返還の方が大きい。 しかし、反中心方向では M 超巨星が主力に代わる。  
(3)期間
 M 超巨星期間は 2 - 4 105 yr である。