Dust-Enshrouded AGB Stars in the Solar Neighborhood


Jura, Kleinmann
1989 ApJ 341, 359 - 366




 アブストラクト 

 赤外カタログを使い、太陽から 1 kpc 以内にあり、マスロス大 > 2 10-6 Mo/yr の星のリストを作った。それらの銀河円盤表面密度は 25 kpc-2 である。O-リッチと C-リッチ星は半々である。  総マスロス量は 3 - 6 10-4 Mo kpc-2 yr-1 である。主系列質量 1 - 5 Mo の星が白色矮星に進化する際に失う質量 8 10-4 Mo kpc-2 yr-1 とほぼ合う。 太陽近傍では 1.2 Mo 付近の星の半数は > 3 104 年を炭素星と して過ごし、1 - 2 10-5 Mo/yr のマスロスを行い 0.7 Mo WD となる。


 1.イントロダクション 

 1 kpc 以内のマスロス星には次の利点がある。

(1) 大きいので十分な数のサンプル星が確保できる。

(2) 小さいので小さいので星数の勾配の効果が小さい。

(3) 運動学データが得られる。

 IRAS は全天の 95 % をカバーし、我々の選択基準に合う星で IRAS カタログ になかったものは 3/63 個(表3)だけであった。したがって、我々の選択した サンプルはほぼ完全と言える。



表1.ダストまみれの AGB 星

 2.ダストまみれ星のサンプル基準 

(1)F60 > 10 Jy

(2)F12 > F60 かつ/または, F25 > F60

 post-AGB が(2)を破る。

(3)δ(1950.0) = [-33, 82] (TMSS 領域の星に興味がある。)
(4)F = ∫Fνdν > 3.2 10-7 ergs cm-2 s-1 (104 Lo/4πkpc2)

(5)F12 > F2

 表1に上の基準を満たす星を載せる。超巨星を除いた。それらは、
VY CMa, S Per, PZ Cas, AH Sco, +10420, NML Cyg, IO Per, KW Sgr, UY Sct, KY Syg は





表2.ダストまみれ星の物理性質

 3.AGB 星の物理性質 

 仮定: L=104 Lo  

 L=104 Lo を仮定する。すると距離は
   D = (L/4πF)1/2 

で求まる。採用した L は D に系統的な誤差を生じさせる。ただし、平面分布 (到達距離が厚みよりずっと大きい場合)にはこれはあまり問題ではない。 Knapp, Morris 1985 は、「マスロス率は D^2 に比例し、面密度が D^(-2] に比例するので、面積当たりのマスロス量は変わらない」と述べている。

 C-リッチ星が半数 

 表2には表1の星のフラックス、距離 などを示す。表2には 63 天体が 載っている。うち 29/63 は C-リッチ、 32/63 は O-リッチ、2/63 は S-型星である。

 スケール高 H 

 太陽近傍での空間密度 ρ を以下のように表す。

   ρ = ρo exp(-|z|/H)

図1には表2から計算した |z| のヒストグラムを H = 100, 200, 300 モデル と比べた。H = 200 pc が最も良い。 Claussen, Joyce, Kleinmann (1987) は H = 200 pc は Mms = 1.5 Mo に相当すると述べている。

図1.実線=表2 AGB 星の |z| 分布。細実線、破線、長破線はモデル。





図2.銀河面に投影した表1星。黒丸=炭素星。白丸=O-リッチ星。 バツ=S-星。右下象限は南半球のためサンプルが欠けている。

 スケール長 D  

 図2には表1の星の銀河面上の投影位置をプロットした。円盤星の表面密度 σ はスケール長 D を用いて以下のように表される。    σ = σo exp(-r/D)

D = 3.5 kpc (Mihalas, Binney 1981) とすると、半径 1 kpc のサンプル半径 では GC 方向と AGC 方向の端同士では exp(-2/3.5) = 1/1.8 の違いとなる。

 赤外マスロス率 

  Jura (1987) は、赤外シェルのモデルと Knapp, Morris 1985 の CO 観測との比較から、 次のマスロス式を与えた。

   dM/dt = 1.7 10-7F60 rkpc2 L4-1/2λ101/2 v15 Mo/yr

F2 ≥ F12 の星では λ10 = 0.22 それ以外では 1 とした。

 Olofsson, Erickson, Gustafsson 1987, 1988 と不一致 

Olofsson, Erickson, Gustafsson 1987, 1988 は多数の炭素星の観測を 行った。彼らの出したマスロス率は Knapp, Morris 1985 の値の2倍である。 彼らはその原因を、Olofsson, Erickson, Gustafsson 1987, 1988 の 20 m 望遠鏡はビームが CO を分解していたが Knapp, Morris 1985 の 7 m 望遠鏡 では分解しなかったためとして、Knapp, Morris 1985 のマスロス率にファクタ ー2の補正を施した。この補正が正しいしいかどうか確かでない。図3には、 Olofsson, Erickson, Gustafsson 1987, 1988 と Knapp, Morris 1985に 基づく IR マスロスを比較した。F60 からの赤外マスロス率を2倍するか、 Olofsson, Erickson, Gustafsson 1987, 1988 の CO マスロス率を半分にすると 赤外ーCOの一致はかなり改善する。不一致の原因としては、 (1)ダスト/ガス比が不確か。 (2)ダスト放射率の絶対値。 (3)CO の流出率速度、温度全て一定の仮定。

図3.赤外マスロス率とOlofsson et al 1987, 1988 の CO 観測からのマスロス 率(単位 10-7 Mo/yr) の比較。黒丸=Onsala, 白丸=SEST. 実線はIR =CO を表す。破線は マスロス(CO)=2マスロス(IR)





図.

 4.恒星進化論への意味 

 AGB 総マスロス率 

 表2の各星マスロス率を総和し、掛けた南天部分の補正を行うと、 総マスロス率 4 10-4 Mo kpc-2 yr-1 を 得る。注意すべきは RAFGL 5379 が全体の 25 % を占めていることである。また、 Zuckerman, Dyck 1986 が CO 観測から導いたマスロス率は F60 からの値より かなり低い。したがって、表2に載ったマスロス率は大き過ぎる可能性がある。 安全を見込んで、3 10-4 Mo kpc-2 yr-1 と考える。半分は炭素星、半分は O-リッチ星からである。一方、もし Olofsson, Erickson, Gustafsson 1987, 1988 の CO マスロス率を基準に取れば 倍になって、6 10-4 Mo kpc-2 yr-1 となる。

 主系列星から攻める 

  Miller, Scalo (1979) は太陽近傍の星の密度、スケール高を調べた。そのデータから 1 - 5Mo の星が 8 10-4 Mo kpc-2 yr-1 のマスを失って、 跡に 0.7 Mo WD を残していくことが分かる。この主系列星の側から見た マスロス率は AGB 星の側からの値とほぼ一致する。ただし、それにはエラー の可能性がある。Bienayme, Robin, Creze 1987 は主系列星の数は Miller, Scalo 1979 の2倍あると主張している。

 C-リッチ星の数 

 Zuckerman et al 1976, 1978 はマスロス AGB 星の半数が C-リッチである と主張した。Zuckerman, Aller 1986 は PNs の半数が C-リッチであること 発見した。我々の調査した結果も太陽近傍でもマスロスの半分が C-リッチ 天体から放出されている。これは Knapp, Morris 1985 の結果とあうが、 Thronson, Latter, Black, Bally, Hacking (1987) とは違う。δ -33 の 1 kpc 以内に 29 炭素星が 表1、2に載っている。球探査だとして、探査分は天空の(1+cos57)/2である。 これを補正すると、マスロス炭素星の面密度は、(29/π)*2/(1+cos57)= 12 kpc-2 である。一方、 Claussen, Joyce, Kleinmann (1987) が求めた低マスロス炭素星の数は 40 kpc-2 であった。
(Claussen87 サンプルは IRC 天体 で C-リッチなものを全て集めたらしい。今回のサンプルには多数の IRC 天体 が含まれているが、表を目視した限りでは重なりがない。何故か?)
 寿命 

 低マスロス炭素星の場合、それらが数少ない星が長い寿命を保っているのか、 多数の短寿命のほしなのか、判断できない。それに反して、高マスロス星から は 1 - 1.5 Mo 星の半数が炭素星になることが分かる。 Miller, Scalo (1979) によると、そのような星の死亡率は R = 2.5 10-4 星 kpc-2 yr-1 である。チリまみれの炭素星の数が、n = 12 星 kpc-2 であるなら、その寿命は T = n/R = 5 104 年となる。しかし、炭素星になる質量範囲が 1 - 2.5 でなく 1 - 5 Mo である なら、チリまみれ炭素星の寿命は 3 104 年に縮まるだろう。

 マスロス量 

 表2から分かるように、典型的なマスロス率は 10-5 M/yr である。 したがって、これらの星は高マスロス期に 1 Mo 程度の質量を失う。

 13C/12C 

 可視で明るい炭素星は 13C に富み、13C/12C > 0.2 である。高マスロス星でもこの比が維持されているのかを決めることは 大変重要である。


 5.結論 

 1.63 高マスロス星 kpc-2 

  1 kpc 以内で > 10-6 Mo/yr の高マスロス AGB 星は 63 個 である。これらの星は全体で 3 -6 10-4 Mo kpc-2 yr-1 のマスを星間空間に戻している。

 2. スケール高 

 L = 104 Lo を仮定すると、スケール高 = 200 pc である。
 3.半数が炭素星 

 半数が炭素星である。Mms = 1 - 1.5 Mo の星の半数が炭素星になる。

 4. チリまみれ炭素星 

 チリまみれ炭素星の平均マスロス率は 1 - 2 10-4 Mo/yr で この期間は > 3 104 年続く。