Hi-GAL による l = [19, 33], [340, 350], b = [-1, +1] サーベイからの、
長い銀河系バーの先端領域における星形成クランプの性質を調べた。新しく生
まれた大質量星と大質量原始星を同定した、それらの性質を調べた。
遠い側のバー先端で NANTEN CO(1-0) で見つかった5つの巨大分子雲複合体を
研究した。 大質量の乱流塊が星団へと陥落する時期に形成されると予想される原始星の 数から星形成率を評価した。そして、与えられた初期乱流塊の可能な最終配置 から原始星の数を予想した。乱流核にモンテカルロ法を適用する新しい方法を 開発し、陥落の間に作られる天体の多重性も配慮した。 |
第1象限先端での星形成率は 1.2 10-3 Mo yr-1
kpc-3、第4象限先端での星形成率は 1.5 10-3 Mo
yr-1 kpc-3 である。視野全体での平均値は
0.9 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と
0.8 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と
である。変換効率は第1象限で 0.8 %, 第4象限で 0.5 % であり、特に
バーの近くで変化しない。CO 等高線から決まった、第4象限バー先端での
星形成域は周囲領域より高い星形成と星形成率を示す。しかし、その変換
効率は似たような値である。 バー先端部は前景、背景部に比べて高い星形成率を持つ。しかし、変換 効率は観測領域全体で変化がなく、バーにおける星形成活動はダストと分 子量が多いためであり、特別な加速機構が働いているわけではないことを 示す。 |
観測域の意味 Benjamin (2005), Rodriguez-Fernandez, Combe (2008) の星間物質分光観測と星計数からの結果に依ると、銀河系は二本の主腕と数本の 二次腕を持つ渦状棒銀河である。銀河面内の長いバー Lopez-Corredoira et al 2001, Benjamin (2005), Lopez-Corredoira et al. (2007), Amores et al. (2013) は長さ、幅、高さが 7.8 kpc x 1.2 kpc x 0.2 kpc である。 主軸は太陽-銀河中心線に対し 42° 傾いている。バー主軸は盾-ケンタ ウルス腕と l = 31°, 太陽から R = 6 kpc の所で交わる。 不明点 このような領域での冷たい分子雲の力学とそれらがどう陥落して原始星を 作るかははっきりしない。バーの縁に沿って廻るガスはショックで星形成を 強化するかも知れない。また、バー先端で強まる重力ポテンシャルは分子雲 を集め、分子雲-分子雲衝突の頻度を高めかも知れない。 Herschel による前進 第1象限のバーの縁に関しては沢山のデータがある。Bally et al 2010, Nguyen-Luong et al 2011 は、この領域でミニ爆発的星形成が進行中でないか と述べ、それがバーの縁と腕の交点における重力ポテンシャルの 形が星形成を引き起こすためとした。 第4象限のバーの縁に関してはそのような研究は行われていない。それはデー タが不足して、両者を比較して異同を決められないためである。最近の Herschel/Hi-GAL = 2° 巾で銀河面全体を 70, 160, 250, 350, 500 μm で撮像、は FIR 波長帯における第1象限と第4象限の違いをなくした。 前原始星、原始星に関する解析は多数ある。 |
2種類のバー バーの位置は未だに論争の種である。データは二種類の非軸対称構造を指し 示す。 (i) COBE/DIRBE バーとか 3 軸不等バルジと呼ばれる。軸比 10:4:3 で、 サイズ 3.1 - 3.5 kpc, 軸方向 ψbar = 20° - 25°. (ii) 薄い長いバー。サイズ 4.4±0.5 kpc, 軸方向 ψbar = 44&plumn;10°. RC 星と GLIMPSE データ Benjamin (2005), Churchwell et al. (2009) で検出された。 解析領域の範囲 この論文では、バーの縁の星形成が活発な領域と、同じ視線方向でも 縁の周辺に当たる領域での星形成過程を調べる。銀河系の記述には、 Vallee (2008) を採用する。そこでは銀河系の速度マップをなぞるのに色々な種類の天体が 使われ、接点と腕の位置が決められた。このモデルに依れば、盾-ケンタウ ルス腕は l = 32°, ペルセウス腕は l = 339° に始まる。 Englmaier, Gerhard (1999) は長いバーの内側境界 (この言葉のイメージが定まらない。 ) を l = 19° と l = 350° に定めた。この境界は長いバーが GLIMPSE の検出限界以下になること Benjamin (2005), で決めた。決定誤差を考慮して、今回の研究範囲を l = 19° からとした。 この選択で、領域内には、バーの外側の縁、COBE/DIRBE バーの先端、腕の 一部とわずかだが腕間領域を含むようになった。 解析 大質量前恒星、原始星ガス塊の性質=温度、質量、進化段階、と星形成率 を l = [19, 33], [340, 350] で決めた。この領域にはバー先端と腕の 始発点が含まれる。今回、我々は初めて視線に沿っての全サンプルを解析し、 次に、バーの縁にある天体に注視して、両側での星形成活動と物理的性質 を較べた。星形成率は、質量と輻射光度に基づいた原始星計数から決めた。 YSO 進化モデルが用いられた。 |
![]() 表1.天体分布のパラメタ― 2.5.原始星ガス塊候補を選択する基準2.6.分子雲の質量推定図1.ガス塊の分布。色付き実線= Drimmel,Spergel (2001) が決めた腕。青点=70 μm 放射天体=原始星候補。赤点=前恒星天体。 黒点線円=太陽からの距離。緑破線円=銀河中心からの距離。灰色バー = Amores et al. (2013) から採った。黒四角枠=この論文がバーの縁と看做す領域。 橙丸=太陽。黒十字=GC.色曲線= Russell (2003), Vallee (2005) が与えた腕。 (色んな腕があるのか? ) |
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![]() 図4.初期ガス塊質量 105 Mo に対する、色々な星団実現による 星形成率の分布。 ![]() 表2.原始星ガス塊の進化パタメタ― |
![]() 図5.単一大質量星を作る場合(横軸)と星団を作る場合(縦軸)との 星形成率ファクターの比較。黒丸:ε∗ = 5 % 仮定。 白菱形:ε∗ = εmax 仮定。 最後の場合、見易さのために x-値を 10 % 右にずらした。 |
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![]() 表3.進化パラメタ―。第2列=原始星クランプ表面密度。第4列= 不完全度で失われた分。第5列=Li et al 2010 の IR 光度から決めた 星形成率密度。第6列=星に転換された割合。上:バー内とバー外の比較。 中:"near" 距離を全て "far" にした時。下:"far" 距離を全て "near" にした時。 |
![]() 図9.二つの領域での星形成率密度の RGAL = 銀河中心からの 距離依存性。四角=第4象限は見易さのため少し横にずらした。 |
3.2.FIR から決める SFR3.3.FIR から決める SFR3.4.ガス塊形成効率3.5.距離誤差が SFR に及ぼす影響3.6.完全性 |
![]() 図10.変換効率 ε∗ と銀河中心距離との関係。 |
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