MW R ≤ 7 kpc のバルジと円盤が単一の化学進化と二期の星形成活動で 上手く記述できることを示す。内側円盤の種族は一つであり、バーの外側リン ドブラッド共鳴(OLR) がこの一様性を説明する鍵である。我々の二期星形成モ デルでは、メタル量、[α/H], [α/Fe], 年齢-メタル量関係が全て 内側円盤とバルジの観測に一致する。バルジと内側円盤のメタル量分布におい て、[Fe/H] = 0 dex 付近に現れる窪みは内側円盤の星形成史で年齢 8 Gyr に 起きた星形成活動の一時停止と、バルジと内側円盤星の共通進化を反映する。 内側円盤 R ≤ 7 kpc に対する我々の結果は, 銀河系総バリオン質量の大 きな割合が数ビリオン年で急速に構築されたという考えに合う。 | z ≤ 1.5 の頃、銀河系の星形成が停止し始め、高 α 厚い円盤 形成の終了から薄い円盤の開始に切り替わり、未だ円盤はガスが豊富な時代に ガス降着は強くはあり得なかった。この降着停止期の前後で [α/Fe] は 異なるであろうが、観測では未確認である。z ≤ 2 における降着率とガス 量比率の低下は、円盤を安定させ、厚い円盤から薄い円盤への転移を許し、天 の川銀河のゆっくりした進化の開始をもたらす。恐らくこれが恒星バーの発達 を可能とし、我々はそれが星形成の停止につながったと仮定する。 今回の解析は天の川の歴史、特に厚い円盤から薄い円盤への転移と星形成の 一時停止は星形成効率の低下により駆動されたに違いない。ガス降着の低下、 バーの形成、星形成停止が同じ時期に起きたことは互いに因果関係で結びつき、 それで同時に発生したのである。貯蔵ガスの 20 % が分子であると仮定すると 我々のモデルはシュミットケニカット関係に上手く乗る。 |
初期の急速な星形成 局所宇宙の星の大部分は天の川銀河と同程度の質量の銀河に含まれる。それ らの銀河では、質量の約半分が z = 1 (8 Gyr 昔)までに作られていた。 天の川銀河もこの一般過程に従っている, Snaith14. そして我々の銀河では、厚い円盤だけで天の川型銀河における最初 期 3 - 4 Gyr における急速な星形成を説明できる。Bell17 が強調したように、 天の川と似た質量の銀河の形態は多彩で、初期の急速な星形成にどんな星種族 が関与しているのか明らかでない。 バルジの取り扱い 天の川銀河においては棒状バルジが円盤の力学的不安定から発生したという 証拠が圧倒的になってきた。しかし、円盤がバルジ形成にどう関与したかまだ 完全には明らかでない。バルジと円盤の間の性質の差、特に化学的性質の差、 それに単一の化学進化モデルを円盤とバルジの双方に適用する困難さが研究を 阻害している。Tsujimoto, Bekki 2012. 天の川の質量進化を研究する際にバ ルジをどう扱うかはまだ明らかでない。 種族の定義 種族の実際的な定義は、 空間、運動、元素組成、年齢 などが一様な星の集団 というものであろう。そかし、ここでは単なる星の集団の分類を越えて、銀河 系の形成と進化の上でそれらの集団が果たした役割を理解したい。 |
個々星の化学の使い方 そんな目的のため、種族を次の二段階で定義する。 (a) 進化と明確に結びつき、星を識別できる特性を探す。 (b) それらの星を銀河進化と関連付ける。 しかし、種族が形成されしばらく経つと、初期にあった空間、運動学特性は ぼやけてくる Freeman, Bland-Hawthorn (2002)。 最近、化学特性が種族の遺伝的特徴として注目されてきた。そして、 APOGEE I, II, WEAVE, 4MOST, MOOONS などの分光観測が行われている。 それらのデータを化学的タグ付け Bland-Hawthorn, Freeman (2004) して、星を今では消えた母分子雲に帰属させて、銀河系進化の基本単位を 同定しようというアイデアだ。しかし我々はそれとは逆に、個々星の化学を 全体的な情報に関連付ける研究方法を採る。 Snaith et al. (2015) はアルファ元素量が星形成史、またはそこでの元素量の増加に直接結びつくこ とを示した。銀河系におけるアルファ元素増加の各段階が、上に述べた (a), (b) 過程を通じて、対応する星種族と関連するならば、我々の種族の定義は 意味を持ち、天の川銀河が形成されてきた段階を「再構築」する助けになる。 バルジと厚い円盤は同一種族? バルジと厚い円盤が同じ種族かどうかについて多くの研究 Melendez08, Alves-Brito10, Bensby10, Ryde10 がある。 Haywood et al. (2013) はアルファ元素量に基づいて厚い円盤を定義した。それによると厚い円盤は、 (a) R < 10 kpc に限られ、(b) 年齢 > 10 Ga で (c) 薄い円盤より 垂直方向に厚い。この論文では内側円盤(R<7kpc の厚い円盤+薄い円盤) が同じ種族であり、その化学的進化は単一のモデルで記述されることを示す。 |
第6章で議論するが、ガス降着の大部分が星形成が始まる以前に起きたとい
う筋書きで、内側天の川は記述できるかどうかを試したい。このような状況を
最も良く近似するのは閉箱モデルである。この論文の目標は、R < 6 - 7
kpc のデータにこの単純なモデルがどこまで当てはまるかを調べることである
ので、このモデルを内側円盤+バルジの全体に適用する。
2.1.天の川史上の目印しと筋書きこれまでに分かったこと我々は次の先行研究と関連して研究を進める: Haywood et al. (2013), Haywood16a,b, Lehnert et al. (2014), Di Matteo14, Snaith et al. (2014), Snaith et al. (2015), Halle15, Di Matteo16. これらの研究の成果をまとめると、 (1)9 - 13 Ga の激しい星形成期 Haywood et al. (2013) は年齢-アルファ関係から天の川銀河の爆発的星形成モデル Lehnert et al. (2014) に基づき、 9 - 13 Ga の激しい星形成期 Snaith et al. (2015) に厚い円盤が形成されたとした。この種族の化学的一様性は激しい乱流ガス からこの星種族が生まれたことを推測させる。 (2)2段階の薄い円盤形成 内側円盤の年齢-アルファ関係に銀河系化学進化モデルをフィットして、 Snaith et al. (2014), Snaith et al. (2015) は内側円盤の星形成史が二つの時期から成ることを見出した。その第1期(13- 9 Ga) には厚い円盤が形成され、その質量は円盤星質量の約半分である。 薄い円盤は第2期(<7Ga)にできる。厚い円盤形成の早期 (>11 Ga) の 星形成活動は激しく、放出流 Lehnert et al. (2014) を発生させた。その一部は外側円盤(R>10kpc) を汚染 Haywood et al. (2013) した可能性がある。 (3)OLR = 外側リンドブラッド共鳴の役割 Haywood et al. (2013) は、円盤の内側と外側という動径構造の二分法の方が、薄いと厚いという垂直 構造の二分法より優れていると、提案した。この考えは Hayden et al. (2015) により APOGEE データから直接に確認された。 Halle15 は z= 1 の頃にバーが形成 Sheth08, Melvin14 された際には、外側 リンドブラッド共鳴 (OLR) が内側円盤を外側円盤から分離していたと述べた。 |
Di Matteo14 が示すように、OLR の内側の星のみがバーと箱型またはピーナツ型
バルジに関与できる。図A1 は Halle, Combes 2013 のシミュレイションで、
OLR 外側の星が外側に居続け、バーに関与しないことを示す。天の川における
OLR の位置には様々な議論がある:太陽円環の少し内側 Dehnen00, 太陽より
遠く 10.5 kpc Perez-Villegas12, Portai;17. Halle15 は初期の OLR は太陽
より内側にあり、バーの回転が遅くなるにつれて外側へ動いたのではないか、
と提案した。彼らはさらに、 OLR が内側円盤を外側円盤から分離し、内側円盤
と外側円盤という二つの成分を独立に進化させたと考えた。
(4)バー形成が星形成を低下させた Haywood et al. (2013) は、厚い円盤から薄い円盤への転換期 9 - 7 Ga に R < 6 - 7 kpc で星形 成活動の著しい低下が起きたことを見出した。ただし、この低下の原因はガス が欠乏したからでない。それならば低下期を境に化学組成の不連続が起きるは ずであるがそれは観測されていない。Haywood13 は厚い円盤と薄い円盤の間に 化学的連続性がある事を見出した。Haywood16a はバーの形成が星形成活動低 下の原因ではないかと提案した。この低下が厚い円盤から薄い円盤への転換を 引き起こしたことを強調する。Khoperskov18 はバーの形成が実際に円盤銀河 の星形成率を 1 - 2 Gyr の間 1/10 に低下させることを示した。これは少な くとも定性的に天の川銀河で起きたことである。 (5)バルジ種族は内側円盤 天の川のバルジは主に擬バルジである。その運動学的性質は円盤の力学不安 定から生じたことを物語る。HST によるバルジの CMD は非常にきついターン オフ Clarkson08 を見出した。これは共時性の古い星種族を意味する。 Haywood16b は SWEEPS フィールドターンオフがバルジ MDF と合うためには、 年齢-メタル関係がなければならないことを見出した。それはバルジの超太陽 メタル星が 8 Ga より若いことを意味する。 上からの推論 これらから二つの推論が導かれる。 一つは、もしバルジが円盤不安定から生まれたのなら、二つは同じ化学組成を 持つ。二つは結論 (2) によると、厚い円盤の質量は内側円盤質量の半分である。 これは大量のガスが 10 Ga 以前に存在したことを意味する。 5.2 節で述べるが、 それは内側から外側銀河形成モデルの仮定に反し、閉箱モデルに戻る道を開く。 |
2.2.モデル標準閉箱モデルとの違い我々の閉箱モデルは Snaith et al. (2015) に述べてある。それは (i)IMF 一定 (ii)一様な星間物質 (iii)降着、放出なし (iv)メタルゼロのガスから出発 を仮定する。標準的な閉箱モデルとの差は (1)シュミット・ケニカット型星形成則を使うとガスが急速に枯渇し、非 現実的な年齢分布に導かれる Fraternali12。 Snaith et al. (2014), Snaith et al. (2015) では、年齢-[Si/Fe] 関係に SFH をフィットした。その結果 SFH は二つの時 期に分かれることが明らかになった。図1にはその MDF, AMR, SFH を示す。 (2)元来の閉箱モデルは太陽近傍用であった。しかし、ここではバルジと 内側円盤の全体に適用可能と考える。"閉箱" はここでは早期にガスが圧倒的 で、降着や流出が大した意味を持たないような状況の近似として考えられて いる。 (3)閉箱モデルの MDF は釣り鐘状であることが知られている。これは星か らのガス放出が星形成と同時に起きるという近似での結果である。そのような 場合、 MDF は SFH に関係なく同じ形 Pagel09 になる。 Snaith et al. (2015) のように、星の寿命を適切に扱うと、MDF の形は大きく変わる。それは SFH によって変化する。図1にその結果を示す。Haywood15 は フィットに使われ た近傍星の年齢-アルファ関係が内側全体に適用可能であると述べた。 図1の MDF は二つのピーク [Fe/H] = +0.3 と -0.2 を示す。その間 [Fe/H] = 0.0 (平滑 SFH では +0.1)に SFR の窪みがある。 モデルの制限 今回のモデルは、近傍星中の内側円盤系列の星に対する年齢-[Si/Fe] 関係 のフィット Snaith et al. (2015) に限られている。内側円盤やバルジ星のその場所でのデータに合わせていない。 追加パラメタ―、例えば動径距離により変化する星形成率 Minnchev14, Kubryk15、 や動径移行も実際上のフリーパラメターとして、入れていない。 強調しておきたいのは、このモデルは内側円盤のみに適用されるもので あるということである。 2.3.使用した物理量今回のモデルの内容は Snaith et al. (2015) に述べられており、イールドには、 Iwamoto et al. (1999), Nomoto et al. (2006), Karakas et al. (2010) を使用した。質量-寿命関係は Raiteri et al. (1996) の近似式を採用した。IMF は Kroupa et al. (2001) の物を採用した。 |
![]() 図1.内側円盤のモデル。下=SFH. 中=年齢-メタル関係。上=MDF. 太線= Snaith et al. (2015) のベストフィット。細線= 平滑化 SFH の場合。青領域=星形成低下期。 |
3.1.APOGEE からの内側円盤 MDF距離の分かる APOGEE 星Wang16 は 104,000 APOGEE 星の距離をベイズ推定で決めた。 その 15,000 星は r < 6 kpc である。我々は DR13 から薦めに 従って、 Teff > 5250 K または [Fe/H] < -1、 log g = [1, 3.8] の外側 の星を捨てた。 Hayden et al. (2015) はこれらの星に対し、APOGEE 星の方向、等級、カラー選択は MDF にいかなる バイアスも掛けないことを見出した。ただ、古い星は過小サンプリングされて いるかも知れない。 |
MDF 図2には R = [3, 6] kpc の APOGEE 星の [α/Fe]-[Fe/H] 図を示す。 Rgc = 8 kpc を仮定した。密度分布は finite mixture density component estimate で処理した。近傍星の汚染を防ぐために上段の黒線の上だけを採って 作った MDF を下段に示す。 |
3.2.メタル量、[α/Fe], [α/H] の分布図3には、APOGEE サンプルのメタル量、[α/Fe], [α/H] 分布 を図1に示したモデル(距離に対し一様)と比較した。 最初に気が付くのは、太陽近傍(図1)と内側円盤とで MDF の形が違うこと である。内側円盤は [α/Fe] 分布に見られる2成分性を反映している。 |
年齢決定 現在、年齢が得られるのは太陽近傍に限られている。そのため、我々が内側 円盤星を選べるのは、太陽近傍サンプルからである。我々は Adibekyan et al. (2012) サンプルに年齢測定を行った、 Haywood et al. (2013), FHaywood15。 図4a は Haywood et al. (2013) が年齢を、 Adibekyan et al. (2012) がメタル量を定めたアンプル星を示す。内側円盤星をより正確に選ぶため、 我々は図4の黒線の上側の星に限った。 ( ここも、フィット線を使ってサンプル領域を決め るって、話が逆!) 我々は Adibekyan12 サンプルに対しては R < 6 kpc 星に対するよりきつい 制限を掛けている。なぜなら太陽近傍での混入汚染はより深刻であろうから。 この選択は近傍星から良く離れた内側円盤星系列 [α/Fe] > +0.05 または 年齢 > 7 Ga に関しては良く選ばれてい る。 ( Snaith et al. (2015) の図2a では、[Fe/H]=0.0, [α/Fe]=0.0 付近の星を薄い内側円盤 星としている。 Haywood et al. (2013) では内側円盤 R<7kpc 星は現れていない。この論文で選んだ星は 軌道から力学的な位置を考慮したわけでなく、厚い円盤の延長シナリオに あてはなる星を内側薄い円盤星と決めているだけらしい。調子いい。 ) 黒線より下では近傍星の混入が増加するであろう。 ( しかし、サンプル星は近傍から選んでいる。 Rmax を内側星の基準にして いるわけでもなく、 Hayden et al. (2015) の図4が頼りなのか? ) 内側円盤星と選ばれた星について年齢をカラーで表した。大きな丸の3星は 若い高アルファ星で、黒三角は NGC 6791 である。 図4b = 内側円盤星の年齢-メタル量関係 図4b は内側円盤星の年齢-メタル量関係を示す。年齢 < 5 Ga では散布 度が少し増加する。それは我々が選んだ内側星は [α/Fe] < 0.05 に おいて "OLR" 星を含み、同じ年齢で比較すると "OLR" 星は一般に低メタルだ からである。より低メタル [Fe/H] < -0.2 で年齢 < 7 Ga になると 3つの若い高アルファ星が見えてくる。それ以外では、年齢-メタル関係は モデルと合っている。 図4b から分かる事 図4は2つの重要な結果を示す。 (1)内側円盤星のみが選り分けられると、ある年齢での元素組成とメタル量 の散布度は非常に小さい。太陽近傍での観測に反し、その場での内側円盤星 サンプルはきつい年齢-化学組成関係を有する。 ( 図4だから近傍星から内側円盤星に分類された星のことだが、それでも in-situ" と言えるのだろうか? ) (2)内側薄い円盤の進化(年齢<:7Ga)は厚い円盤の進化と連続している。 それは太陽近傍星で観測される年齢-メタル量分布の上側包絡線に対応する。 OLR 内側では薄い円盤は、星形成停止期後に厚い円盤が残したガスから星形 成を開始し、単調メタル量増加を継承する。その際にガスの希釈はない。 OLR の外側 OLR は内側円盤へのガス流入を禁止し、閉箱近似と似た状況でメタル増加を 進行させる。OLR 位置およびその先では、厚い円盤が残したガスが外側円盤に 存在する星間物質と混ざり合う。これが何故 OLR 及びその先では内側円盤よ り引くメタル量を持つのかを説明する。 内側円盤の化学進化が説明された まとめると、我々のモデルは内側円盤に対し、年齢-[α/Fe] 関係, [F/H]-[α/Fe] 関係、年齢-メタル量関係、MDF を上手く説明する。 Haywood16a はこのモデルがこの銀河中心距離範囲における APOGEE の観測結果 も良く説明することを示した。 |
![]() 図4.上段:内側円盤星の[α/Fe]-[Fe/H] 関係。色丸= Adibekyan et al. (2012) から、青線=我々のモデと、黒線=青線の0.025 dex 下に引いた境界線、を使 って選んだ。色丸のカラーと大きさは年齢 Haywood et al. (2013) を示す。 中段:内側円盤星の年齢-メタル量関係。5 Ga より若い星でメタル量の散らば りが大きいのは、内側円盤星を低アルファ星の OLR (近傍)星から分離するの が困難だからである。 (”低アルファ星の OLR (近傍)星” というのは何の種族と考えているのか? ) 下段:内側円盤星の年齢-[α/Fe]量関係。大きな3つのシンボルは 若い高アルファ星である。黒三角=年齢 6.8 Ga のNGC6791 (6.8 Ga, [Fe/H]=+0.3, [α/Fe]=+0.036) NGC 6791 これまでの化学進化モデル Carraro06, Geisler12, Carraro14 では NGC 6791 はモデルに対する例外とされていた。しかし、図4に見られるよう にこの星団は内側円盤進化の上にきっちり乗る。 |
![]() 図5.太青線=標準モデルMDF。細青線=平滑化モデル MDF。 上:Ness13b モデルとの比較。中:Bensby13 モデルとの比較。 下:Zoccali17 モデルとの比較。太線は 0.1 dex ガウシャンで畳み込みした。 細線は 0.2 dex ガウシャンで畳み込みした。 |
![]() 図6.銀河系中心から 3 kpc 以内の APOGEE サンプル=バルジ種族、と我々 のモデルとの比較。 |
バルジが円盤と独立の天体系であるという認識は次の2つに基づく。 (1)バルジの MDF は非常に幅が広く、太陽付近に極小を有す。我々の考え では、ガイド半径が OLR を超えない星のみがバーに寄与しているので、バルジ と太陽近傍の比較はそもそも無意味である。後に示すが、内側円盤の MDF なら バルジの MDF と良く合う。 (2)バルジは一様に古い (> 10 Ga) ように見える。ビッグバンの 3 - 4 Gyr 内に高メタル [Fe/H] > +0.4 dex に達するのは中々大変である。しかし、最近の研究はバルジが一様に古いわけではないと述べている。バルジに若い成分 を認めると問題はずっと易しくなる。 4.1.バルジ MDFバルジ星と内側円盤Dehnen00, Perez-Villegas17 は OLR 位置が R = 7 - 10 kpc にある事を 見出した。つまり、バルジが円盤から形成されたなら、内側円盤星が主成分 となるわけである。Di Matteo14,15 は Ness13 の種族 B, C が厚い円盤星で 種族 A が薄い円盤星であることを直接に示した。問題は バルジ MDF が場所により変化することである。 観測 MDF 図5上は、青線=我々のモデルを ARGOS Ness13 の b = -5°, l= [-15, +15] と比較したものである。中は Bensby13 との比較で主に b = [-6, -2], l = [-6, 7] から採った。図5下は Zoccali17 の b = -3.5 と -6 の観測である。観測箇所の変化に拘わらずモデルとの一致はかなり良い。 |
図6 APOGEE との比較 図6は APOGEE との比較を示す。APOGEE のバルジサンプルは銀河系中心か ら 3 kpc 以内 l = [0, 20], b = [-15, +15] という基準で選ばれた。 [Fe/H] < -0.7 でモデル星数の超過がある。図6上のAPOGEE MDF には窪みが ない。しかし全体としては [Fe/H] > -0.5 の観測とモデルとの一致は良い。 窪みの不在の原因は距離バイアスによると考えられる。 バルジ MDF の双峰性 Gonzalez15 は [Fe/H] = -0.31 と +0.26 dex に、Uttenthaler12 は -0.57 と +0.30 にピークを見出した。彼らの b = -10 データでは高メタル ピークはずっと低くなっている。 Zoccali17 は 26 箇所で観測し、遷移が 大体太陽メタルで起こることを見出した。我々の内側円盤モデルでは MDF の 窪みは 8 Gyr 経ってから星形成が一時停止した事件に対応する。 全体の一致 我々のモデルが太陽近傍の内側円盤系列星からの化学進化の結果であることを 考えると全体的な一致は満足すべき水準である。 |
![]() 図7.Bensby13 のバルジ 年齢-メタル関係。太線=我々のモデル。 |
![]() 図8.Bensby13 のバルジ [Fe/H]-{Si/Fe], 年齢-[Si/Fe] 分布、と 我々のモデルとの比較。 |
4.2.バルジの年齢-メタル量関係Bensy13 は年齢 < 8 Ga の若い星がバルジ内に存在することを示し、 van Loon03 の主張を裏付けた。図7は我々のモデル AMR と Bensby13 データとの比較である。観測年齢に大きな不定性がある事を考えると、 一致はかなり良い。。4.3.アルファ元素量図6= [α/Fe] と [α/H]図6中断と下段は APOGEE の [α/Fe] と [α/H] を示す。 モデルとの一致は良い。 |
図8= Bensby13 の観測 図8は Bensby13 からの Si 量を [Fe/H] と年齢に対してプロットしたもの である。モデルは超ソーラでの反り返りを再現しない。しかしエラーバーの 大きさも考えるべきだろう。 4.4.結論我々のモデルは全体としては観測結果と良く合っている。我々のモデルは 何のフリーパラメターも含まず観測データにフィットできた。Tsujimotp12 や Grieco12 は降着史や IMF などを調整する必要がある。 |
5.1.内側円盤とバルジは同じ種族か?MDFと組成内側円盤とバルジの MDF は類似している。また Fragoudi17 はモデルの メタル量マップが APOGEE と良い一致を示すことを見出した。 バルジ年齢 バルジが高齢であることは円盤との大きな差である。Clarkson08 はバルジの ターンオフが狭い幅に集中することを見出した。Haywood16b はバルジ星の広い メタル量分布と狭いターンオフを両立させるには、バルジ星のかなりが 8 Ga より若く高メタルでなければならないと述べた。つまり、狭いターンオフは 同一年齢を物語るのではなく、その逆を示している。 Bensby17 はバルジ星の約 50 % が 8 Ga より若いことを見出した。この値は Haywood16b が SWEEPS 領域で見出した 35 % より高いが、Bensby17 の観測 は銀河面近くが多いのでこの差は自然である。 5.2.厚い円盤の形成が「内側から外側へ」でない3つの理由1.円盤スケール長は一定である。「内側から外側へ」円盤形成モデルでは円盤が時と共に成長していき、スケー ル長は次第に増加する Kubryk15 とした。我々のモデル Haywood15 は閉箱で あり、内側から外側へという過程は含まれないので、内側円盤のスケール長は 変化しない。ここで強調したいのは、我々が問題にいているのが、 ≤ 6 - 7 kpc のバーOLR 内側ということである。 Bovy12 は SEGUE データを用いて内側円盤のスケール長が時間と共に 不変であることを示した。これはその後更に APOGEE により高アルファ成分星 の密度プロファイルが驚くほど一定 Bovy16 という形で示された。R = 4 - 14 kpc で指数関数型密度分布を仮定して、そのスケール長は 1.67 kpc である。 これは薄い円盤がまだない z > 1 銀河において円盤の成長が自己相似形で 「内側から外側へ」ではないという結果とも合う。 2.厚い円盤のメタル量勾配は平坦 「内側から外側へ」円盤形成モデルでは厚い円盤のメタル量勾配を -0.125 dex/kpc Kubryk15, Minchev13 と予想する。それとは逆に、 Haywood et al. (2013) は厚い円盤では乱流混合が活発なため、厚い円盤の星間物質は一様と考えた。 これは、SEGUE データを解析した Cheng et al. (2012) により |z| = 1 - 1.5 kpc 星にメタル勾配がないという形で支持された。 これは動径移行による混合ではあり得ない、なぜなら、その場合大きな AMR の 散らばりを生むだろうが、それは見られないからである。 薄い円盤に関しては、 Hayden et al. (2015), Bovy16 が急な勾配を見出しているが、太陽円環から Rで ± 2 kpc に限られている。これはここで問題にしている内側円盤に届いていない。Andrievsky16 は R < 6kpc の薄い円盤内でメタル量が平坦ではないかと述べている。 |
![]() 図9.異なるシナリオでの内側円盤化学進化のマンガ。上段:内側から外側 シナリオ。下側:我々のシナリオ(閉箱?)。強調したいのはこれらは内側円 盤にのみ適用されるべきであるという点である。我々のシナリオでは内側円盤 には属さない太陽の位置も書き込んである。下図で細線=星形成停止期 (10 - 7 Ga) である。第1シナリオでは R により化学進化の経路が異なる。 3.薄い円盤内での元素組成の散らばり は小さい 「内側から外側へ」モデルでは内側ほど初期の星形成が活発でこのため、α 量もメタル量も内側から外側へ減少する。与えられた年齢で比べてもそうであ る。これらの高齢星は今や大きな離心率軌道を持ち、どの年齢でもどの R でも メタル量や [α/Fe] に大きな散らばりをもたらす。図9は、上= 「内側から外側へ」モデル、下=一様な円盤モデルを表す。 Haywood15 は観測は散らばりの少ない円盤を支持することを見出した。 |
最近のモデルでは、低温流を通じて z > 2 - 3 の期間に急速に銀河
の中心部に降着すると考えられている。閉箱モデルはそれとは違って、
一時に降着が起きる、おそらく z > 6 であろう。これが [Fe/H] <
-0.5 (z>3)での観測との不一致の原因かもしれない。モデルは [Fe/H] =
-0.5 より上では十分に上手くデータを再現する。
閉箱モデルに対する第2の拘束は、ガス量が豊富などんな MW モデルでも、
閉箱モデルを含め、SFR がガス量に直接結びつけられる限り非現実的な
年齢分布を産み出すというものである。SK 則の厳密な適用は星形成効率
が変化する可能性を見逃している。しかし、天の川で起きた星形成停止期
にはまだガスが大量に残っていた Haywood16a. 従って、他の要因、例えば
バーによる乱流の強化、星のフィードバック、AGN フィードバックなどが
星形成を制御したに違いない。
6.1.銀河系の降着史6.1.1.z > 2 の降着低温糸状流最近のシミュレイションの結果、降着ガスの全てがハロー降着衝撃波を 通過の際に高温に加熱されるわけではなく、一部は糸状流としてハロー奥に 侵入する。 Ocvirk08, Agertz09. それらによると、ハロー質量が天の川銀河程度では、 z > 2 でガスの大部分を低温モード降着を通じて獲得する。 Dekel et al. (2006), Woods14, Tillson15. これは大質量の厚い円盤を > 10 Ga に形成する ための基本要請である。 閉箱モデルは瞬間的降着とは異なる 瞬間的降着という点で閉箱モデルは上の筋書きとは異なる。もしSFR が 降着率に直接依るならば、z = 2 までの連続的降着は閉箱モデルとは異なる 結果となるだろう。上に述べたように、もし [Fe/H] < -0.5 dex の星が 閉箱モデルの予想より少ないことが確認されたら、それは z > 3 に移動さ れた「G-型矮星問題」ということになり、閉箱モデルとかなり長く続く降着と の不一致ということになる。 [Fe/H] < -0.5 で何故不一致か? [Fe/H] > -0.5 ではモデルは十分に上手くデータを再現した。従って それより前での不一致の原因は興味ある問題である。 第1の答えは降着が十分に速くて z > 3 までに終了し、z=3からの閉 箱モデルが良い近似であった。第2解答は円盤の構築=星形成率がガス降着に 直接依らないというものである。 |
降着超過 Deve12 は "gas accumulation phase", Papovich11 は "gas accretion epoch" という言葉で z ≥ 2 の宇宙 SFR が高い時代を表している。この時期、 降着率が星形成率を上回り、ガス貯蔵が大量となった。天の川型銀河は z = 1.3 で分子ガスの割合が 40 - 50 % ある。これは天の川型銀河では既に、現在の天 の川質量銀河を作るに必要な量のガスを蓄えていたことを意味する。しかもそ れは星からの還流を考えなくての話である。 降着平衡 さらに重要なのは、z = 2 - 3 で星形成が極大に達した後、星形成、降着、 流出が準平衡状態に落ち着くことである。Bouche10, Dutton10, Dave12, Krumholz12, Lilly13. そしてガス質量はほぼ一定値になる。Stinson15 のシ ミュレイションも同様な結果を示すようである。これらのモデルが示すのは、 この時期には SFR は単に降着量に比例するのではなく Lehnert15、何らかの 機構が働いて星形成とガス降着の直接の結合を破っているということである。 Peirani12, Lehnert15. その候補として最も有力なのはフィードバック、 Lehnert15, Agertz15 であり、それは SFR を観測値にとどめる。そして実際 に天の川銀河はその初期に大規模流出を行い、それと大規模なガス還流は外側 円盤の元素組成とその内側円盤との関連を説明 Haywood et al. (2013), する。Perret14 のシミュレイションは星からのフィードバックと降着は、強い 乱流とガスの分裂を維持して、高 z 銀河で星形成率が高止まりする機構を与え る。こうして、閉箱モデルが z = [2, 3] におけるデータ表現の第1近似とし て使えることが判った。なぜならモデルが次の二つの特徴を捕らえているから である: (1)大量のガスを円盤中央に集める。 (2)SFR の降着率依存性を棚上げにする。 まとめ 最後に、もし降着が z = 2 まで続き、銀河系半径 10 kpc 内の星形成に及ば す降着の影響がそこに制限されるならば、我々のモデルの記述は正当である。 その時代には van de Voort11 によると、低温と高温の降着がほぼ等量のガス をハローにもたらした。銀河への降着自身はその 1/3 か 1/4 だったであろう。 高温ハローガスの冷却時間は長く従ってその降着率は低い。低温ガスは角運動 量のために円盤外側に多く落ちる。 Danovich15. そのようなガスは潮汐トルク のような作用で内側円盤に落ちるだろうがその落下時間は降着時間より長い。 その上、低温ガスの銀河への降着率は銀河自身の星からのフィードバックによ り抑えられそうである。 Dubois13, van de Voort16. 興味深いことに、 z ≥ 2 における星形成は強いのでかなりの放出流を引き起こす。 Lehnert et al. (2014). こうして、流入と流出の相互作用がガス供給とガス消費の釣り合いを実現する。 定性的には内側 10 kpc でガス降着が平衡状態に及ぼす影響が小さいと予想さ れる。更に詳しくはより精密なモデルが必要となる。 |
6.1.2.星形成停止と z = 2 以後の星形成降着低下と星形成停止シミュレイション van de Voort11, Woods14 によると、ガス降着率は z = 2 - 3 で極大に達し、その後かなり急速に低下する。天の川銀河の星形成が低 下し始めるのはその後 Haywood16a である。降着率の低下は銀河系星形成停止 期と重なり、厚い円盤形成から薄い円盤形成への変化を示すが、降着低下自体 は、厳密には、多分星形成停止にも厚い円盤から薄い円盤への切り替えにも関 係しない。我々のモデルでは、この時期にはまだ大量のガスが残っていて、 z = 1.5 の天の川型銀河と同じとすれば、総質量の 40 - 50 % Daddi10, Genzel15 を占めるのである。もし星形成効率が変わらなかったら、星形成は高い速度で 進行したであろう。従って、それを止める何かが働いたに違いない。 Haywood16a は、バーがガス円盤に強い乱流を引き起こし、星形成効率を低下 させたと提案した。Khoperskov18 は N-体流体力学計算から、バーが星形成効 率を下げる可能性がある事を見出した。 因果関係 しかし、バーの形成が可能になるのは、ガス量が減り円盤が乱流円盤から不 安定臨界円盤になってからである。ガス比率の低下はガス降着率の低下と関係 するであろう。つまり、低温降着流の終了は星形成停止と直接の繋がりはない が、因果関係はある。これは、3つの出来事=ガス降着率低下、バーの形成、 星形成停止、が同時期に生じたかを説明する。 |
厚い円盤と薄い円盤は時間的には 1.5 - 2 Gyr 離れているが、化学的には 繋がっている。それは、厚い円盤が終る時期の [α/Fe] 値が、薄い円 盤が始まる時の [α/Fe] 値であるという意味である。図3を見よ。 ガス降着率が星形成停止後の薄い円盤の星形成率と釣り合うには降着率が 3 Mo/yr であればよい。これは Woods14 のシミュレイションでの値とも一致 する。厚い円盤の最後 z = 1.5 で分子ガスの総バリオンマス (5 1010 Mo とする)の 40 % 、その時の星間物質メタル量をソーラーと仮定し、星形成 停止期 2 Gyr の間天の川銀河が 3 Mo/yr のガス降着を続けていたなら、0.6 1010 Mo のガスが星間物質に加えられる。この新参加ガスのメタル 量を [Fe/H] = -1 dex とすると、薄い円盤開始時の星間物質は厚い円盤終了時 の星間ガスに比べメタル量が 0.1 dex 低かったことになる。 もし降着ガスがアルファ元素を欠いていたなら、図3の年齢-α関係 (そんな図はない。図4の下段? ) には[α/Fe] で データと較べて 0.1 dex の亀裂またはオフセットが 7 Gyr で生じていた。 ([α/Fe] が亀裂の後で下がると いう意味か? ) この後を含め理解できない! |
6.1.3.降着が無視できるほど弱い場合:R < 7 kpc, z lt; 1「内側から外側へ」モデルの特徴「内側から外側へ」モデルでは内側領域の降着多時間が短いため年齢分布が 古い星に片寄る。 通常、モデルは Schmidt-Lennicutt 型星形成則を使うため 結果的に SFH は降着史に従い、時間と共に急速に低下して、若い星の割合は 無視できるほどにしかならない。 Minchev14 の例 例えば、Minchev14 では R = 3 - 5 kpc の円盤では古い(> 6 Ga) の星 が圧倒的に多い。若い星が少ないため MDF ピーク [Fe/H] = +0.25 dex を再 現できない。 外側円盤では降着時間スケールがのびる 外側円盤では降着時間スケールがのび、星形成の大部分は z = 1 以降に起 きる。Fraternalu13 は 「星形成の大部分、したがって低温降着の大部分は、 z < 1 - 2 の "hot-mode phase" に起きた」と述べた。 |
星形成停止期後の降着は要らない 星形成停止期の最後の頃に我々のモデルでは、銀河系のガス比率はまだ高く、 それと当時の 2 - 3 Mo/yr という低い星形成率と合わせると、現在よりも 低い星形成効率を意味する。ガス比率 30 - 40 % = 1.5 2 1010 Mo と SFR = 2 - 3 Mo/yr だと、枯渇時間= 5 - 10 Gyr となる。円盤年齢 7 Gyr に対してこの数字は、停止期最後に残されたガス量は弱いにしてもか なりの程度の星形成を維持するに十分な量であった。こうして、内側円盤に降 着を長引かせる必要はないと分かる。これはまた、現在強い降着が観測されな い、SFR から予期される量の 1/10, ことを説明する。 外側円盤には降着がある 我々がこれまでに述べたことは内側円盤に関してであり、外側円盤にかなりの 降着が星形成停止期後にある事を否定しない。降着後期の降着は大きな角運動量 を伴い、天の川銀河に見られるような広がった Hi 円盤を作る。他の機構、例え ば星形成によるハローへのエネルギー注入= "galactic fountain" のような 物も円盤星形成に関係する。 |
還流ガス 図1には相対的な SFH が示されている。現在の星質量を 5 1010 Mo として SFR の絶対値を求めた。我々のモデルでは、銀河系の星種族進化過 程中に失われるガス Snaith15 しか考慮しない。すると 14 Gyr の間には、初 めの総質量の 28 % がガスにある。天の川銀河の最終質量とつじつまが合うた めには、初期のバリオン質量は 6.4 1010 Mo であろう。 (これはどういう計算だろう?表面 上は、5 × 1.28 = 6.4 なんだが、意味がついて行けない。 Snaith15 の図8を見ると、初期ガス質量= 14 Gyr 間の総星形成量になると いう境界条件を付けている。何かの形の境界条件が式を解くのに必要らしい。 兎に角それを認めよう。総質量を M とすると、0.28*M+5 = M M = 5/0.72 = 6.94 変だな?この論文では 0.28*5+5 = M という計算をしている。まっ、い いか。 ) 概算だが、 H2 = 2.5 109 Mo, HI = 8 109 Mo, HII = 2 109 Mo として総計 6.2 1010 Mo である。まあ良い一致だろう。 閉箱モデルto SK 則 閉箱モデルに SK 則を適用すると非現実的な年齢分布になることはよく知ら れている。我々は天の川銀河初期の星形成率を 12 - 15 Mo/yr と見積もって いる。これは星形成に使えるガスが何時でも少ないか、初期の星形成効率 SFE = SFR/gas mass が低かったかである。枯渇時間 tdep = 1/ SFE は、全てのガスが星形成に使えたとして, 9 Ga より古い時期には 4 - 5 Gyr, 停止期には 40 Gyr, その後現在までは 19 Gyr である。図10参照。 SFR とガス質量を使い、ガスとSFR の表面積当たり密度平面上での天の川銀河 の進化を追うことが出来る。それから、SFR とガス表面密度の関係を導ける。 我々が見出したのは、天の川銀河が近傍 SK-関係に従っていることである。 星形成停止期は SK 関係の 3σ まで外れてはいるが、観測の散布度以内 には収まる。 星形成は非効率であった 早期にはガスの乱流が強い。星形成停止後は円盤が落ち着く。円盤は通常の 渦状銀河として成長していった。そのガス枯渇時間は数 Gyr であった。 進化の全期間を通じて、天の川銀河の星形成は非効率であった。実際、局所宇宙 における天の川型銀河は皆似た SFH を有す Gonzalez Delgado17. |
![]() 図10.上:赤線=系の全ガスが星形成に使われるとかていしての枯渇時間の 変化。黒線=現在の枯渇時間 2.25 Gyr (Bigiel11 四角)に規格化した枯渇時 間。この規格化は分子ガスが全ガスの 2/9 であることを意味する。年齢 7.5 Ga のピーク=星形成停止。灰色線=Tacconi18 による枯渇時間。 下:Schmidt-Kennicutt 図上に上図の結果=黒線、赤線、を示す。青線= Bigiel11 を指数=1の SK-則にフィット。灰色線=指数 1.4 の Kennicutt 則。 |
[Fe/H] < -0.5, 年齢 > 11 - 12 Ga で閉箱モデルが不適切 OLR 内側の円盤とバルジとは化学的に同じ進化を辿った。モデルは [Fe/H] < -0.5, 年齢 > 11 - 12 Ga で、 APOGEE MDF と較べ星の過剰を示す。 この不一致はおそらく閉箱モデルが不適切になる限界を示している。 [Fe/H] = 0 の窪み 外側円盤星の汚染を除いた内側円盤とバルジの双方には MDF の双峰性が観察 される。その中間 [Fe/H] = 0 の窪みは天の川銀河で 9 Gyr 昔に起きた星形成 の停止期に対応する。この窪みが厚い円盤と薄い円盤を分ける。 AMR はきつい 内側円盤とバルジの年齢-メタル量関係は太陽近傍より遥かにきつい。 MDF の 双峰性が AMR がきつい事の証拠である。なぜなら、もしある年齢でのメタル量の 散布度が大きい=AMR は緩かったなら MDF の凪は見えなかったろうから。 星形成効率が突然下がった SFH は年齢-組成関係へのフィットから導かれ、降着率と星形成率の間に 特別な関係を仮定する等の操作は挟まれない。この方法により、星形成低下期 z = 1 - 2 の間、星形成効率が突然下がったことが判る。バーの形成が関係 するらしい。 |
冷たいガス降着は長期間は続かなかった 厚い円盤と内側薄い円盤との間の化学的連続性は、星形成低下が始まった後 冷たいガス降着は長期間は続かなかったことを示す。化学組成、特に [α/Fe] が星形成低下期に連続したことはこの時期の降着に強い制約を 掛け、さらにこの時期に内側円盤の降着が終了したことを示す。 同時に起きた3つの事件 3つの事件=降着低下、バーの成長、星形成停止、が同時に起きたのは偶然 ではない。それらには因果関係がある。星形成の停止が厚い円盤の生成に終止 符を打った。そしてゆっくりした薄い円盤の形成が開始された。天の川銀河は 形態学的な転換が星形成停止と関係する良い例である。 SFH は基本的にガス降着と独立 ガス降着史は SFH を定める唯一のパラメターではない。バーの出現は星形成 効率の低下を招き、内側円盤が新鮮なガスの供給無しで星形成を維持すること を可能にした。内側円盤は進化期間を通じてガスが多すぎだが、 z > 2 期 はフィードバックと乱流で、z < 1 では低い星形成効率で、星形成活動が抑 えられてきた。こうして、SFH は基本的にガス降着と独立であった。 太陽近傍 太陽近傍はここで述べた系のすぐ外側に位置する。OLR は 7 - 10 kpc に存 在する。 |
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