The New Galaxy: Signatures of Its Formation


Freeman, Bland-Hawthornr
2002 ARAA 40, 487 - 537




 アブストラクト 

 銀河の階層的な形成の枠組みないで、我々は自身の銀河が如何に現在に至ったかと 同様、銀河形成の粗い描像を持っているだけである。個々の星種族が原始銀河雲のどの 要素に結び付くかを描く詳細な筋書きは理解の彼方にある。  銀河系=近傍宇宙論と高赤方偏移宇宙=遠方宇宙論の両方から重要な手掛かりが 現れてきている。ここでは銀河系に見つかる過去の化石資料に重点を置く。 銀河系の詳細な研究は "baryon dissipation" に含まれる複雑な過程」を理解する 核心である。


 序章 

 新しい銀河系 

 ELS 説 

 Eggen, Lynden-Bell, Sandage 1962(ELS) は恒星の元素組成と運動学を用 いて銀河考古学が可能であることを示した最初の論文である。 ELS は高速度星 の運動を調べ、メタル量が低下すると起動エネルギーと軌道離心率が増加する 一方で、軌道角運動量は低下することを見出した。彼らは低メタル星がハロー に含まれており、ハローとは原子銀河雲が宇宙膨張から切り離され、急速な崩落 をする際に形成された構造であると考えた。彼らの論文は、原始銀河雲が 10 8 年程度の短期間に一斉に収縮すると主張していると見做されてきた。 しかし、 Sandage 1990 はそれは言い過ぎであると述べている。

 Searle, Zinn の説 

 Searle 1977, Searle, Zinn 1978 は球状星団はその最大到達距離に関係なく、 様々なメタル量を示すことに注意した。彼らは 108 Mo 程度の かけらが長期間かけてハローを形成して行ったと考えるとその現象が説明できる と考えた。ハローフィールド星の年齢には 2 - 3 Gyr の巾があることが判って いる。

 現在の説 

 現在では、ハローは落下してくる破片が長期間かけて形成されたと考えられ ている。これは長い間の真剣な討議を経て確立されてきた説である。
 初期のかけらを探せるか? 

 このハロー形成説の確立と並行して、宇宙論の分野においても変化があった。 初期宇宙の小さな要素が集まってより大きな構造を作って行くという考えは、 Searle, Zinn の小さなかけらからの銀河形成説に良く合ったのである。それらの かけらの残骸を探すアイデアは既に、 Eggen の運動群にたいする初期研究にも あった。

 バリオン消散 

 この方向円盤形成に進めることが可能である。円盤には宇宙のバリオンの大 部分が存在している。原始銀河雲バリオンの性質に関する情報の多くは銀河円 盤形成に導いた消散過程で失われた。しかし、ハローと同じように初期円盤の 性質を探る探索子は円盤形成に光を当てるであろう。そのような化石情報は 様々な恒星種族内の元素組成分布に含まれている。

 新しい銀河系 

 初期銀河系のハローに限らず、円盤においても化石情報を研究することで 銀河研究の新しい時代が拓かれる。これが「新しい銀河系」という表題の理由である。


 図1.見返り時間と宇宙の大きさ:5つの宇宙モデル。 



 近傍と遠方の宇宙論 

 ダークマターハロー 

 構造形成が冷たい暗黒物質(CDM) の大規模分布による重力が階層過程による 構造形成を駆動するのである。現在(2002) のモデルはガス圧、メタル形成、 輻射冷却と加熱、星形成過程が含まれている。ダークマターハローの密度、 分布も分かっている。しかし、このダークマター階層の中でバリオンがどう 銀河を作るのかはまだ分からない。
 図1: z と t 

 このレビューでは話を銀河系に限る。図1に, CDM モデル、特に λCDM の z と見返り時間の関係を示す。


 図2.年齢・メタル量関係 


図.TDO = 薄い円盤の散開星団。 TDG = 厚い円盤の球状星団。 B = バルジ。 YHG = ハローの若い球状星団。OHG = ハローの古い球状星団。 青(紫?)=薄い円盤のフィールド星。緑=厚い円盤のフィールド星。黒= [Fe/H]=-5 まで広げたハローフィールド星。

 銀河形成の作業モデル 

 密度超過 

 ビッグバン直後、冷たいダークマターがバリオン密度の局所超過を駆動した。 原始分子雲の崩落の後に最初の星が誕生した。これらの星は再電離期をもたら した。この頃に最初期の原始雲の集結が開始されたのかも知れない。まず銀河 系のダークハローが集積したが、この成長は現在も継続中と思われる。ある 銀河ではガス降着の最初の出来事は恒星バルジ、中心ブラックホール、第1期 ハロー星と球状星団の形成であった。銀河家では内側円盤の星から小さな恒星 バルジが出来たのかも知れない。

 黄金時代 

 銀河系初期の特徴は激しいガス運動と降着現象である。それらが、第1次球状 星団の高い内側数密度と良く知られたブラックホール質量-恒星バルジ分散関係 へと導いた。この活動期に恒星バルジと巨大ブラックホールは共に成長した。 この z = 1 以前の時期を「黄金時代」と呼ぶ。この時代に星形成と降着円盤の 活動度はピークを迎えた。

 ハロー形成 

 この時期にバルジから外側ハローに掛けては強いメタル量勾配が存在した。 メタル増加は銀河系中心核で最大で z = 1 までに [Fe/H] = -1 にまで達した。 これにより、現在のバルジが高齢で比較的高メタルである理由が理解できる。 第1次ハロー ([Fe/H] = [-5, -2.5]) はより広い空間で形成され、おそらく 原始雲の最初期にまで遡る。第1次球状星団は激しいガス作用 ([Fe/H] = [-2.5, -1]) の結果、同じくらいの大きさの空間で形成された。 ハロー星と球状星団の多くは初期の衛星銀河の残骸で、銀河系に落下する 以前のそれぞれが異なる化学進化を歩んできたのであろう。

 [Fe/H] 

 [Fe/H] の広がりは銀河系成分のそれぞれが」どう進化してきたかを診断する 道具である。初期質量関数が一定ならば、各種族の平均メタル量はそれらが 形成された時期までの SN II 数の粗い見積もりを与える。ただし、時間が長く なると、タイプ Ia 超新星からの Fe 形成への寄与が増加することに注意する 必要がある。
閉じた系では数個の SN IIs で [Fe/H] = -3 に達する。 [Fe/H] = -1.5 になるには 30 - 100 個で十分であり、太陽メタルまでには 1000 個 くらいが必要だろう。

(閉じた系の大きさに触れていない。 銀河系を考えている?しかし1000 SNe でソーラーは変? )
強調したいのは [Fe/H] は時計ではなく、SNe 回数、重力井戸の深さの尺度 である。

 バリオン消散期の謎 

 「黄金時代」の終わりまでに、バリオンの大部分は円盤に落ち着いた。この バリオン消散期がいつ起きたかの謎に関して二つの重大な観測事実がある。

(i) [Fe/H] < -2.2 で円盤と共に回転する星が存在しない。
(ii) 「黄金時代」の激しい活動にも拘わらず、少なくとも 80 % のバリオンが 円盤に落ち着くのに 1 Gy 以上掛かった。この 80 % は、もしバルジが円盤の 後に出来た場合には、 95 % まで上がる。

 厚い円盤 

 バリオンの 10 % が厚い円盤に存在する。 [Fe/H] = [-2.2, -0.5] である。 対して若い薄い円盤では [Fe/H] = [-0.5, +0.3] である。厚い円盤と球状星団 とが同じメタル量域を占めているかは驚きである。メタル量のみでなく年齢も 球状星団が 12 - 14 Ga に対し、厚い円盤は少なくとも 12 Ga の古さを示す。 厚い円盤も球状星団もバリオン消散時期は z = 1 - 5 である。

 残る謎 

 図2には上に述べたことをまとめた。厚い円盤と球状星団が、既に [Fe/H] = -2 までメタル増加したガスから、それほど大きな空間に渡って、そんなにも 早期に形成されなことは謎である。進化の進んだ中心核で起きた星形成爆発に よる強力な銀河風が原始雲全体にメタルを運んだのだろうか?最後に強調したい のは、円盤バリオンの 90 % (薄い円盤?)は z = 1 以降に落ち着いたという 事である。
( 8 - 9 Ga まだ円盤で来てない? )


 タイムスケールと化石 

 銀河系の最も古い星と遠方の銀河 

 銀河系の最も古い星の年齢は、ハッブルディープフィールドで見つかった 最も遠方の銀河の見返り時間と同程度である。両者は宇宙史の初期の環境 を教えてくれる。2002 時点で z =5 で最高の銀河の星は既に太陽メタルに なっている。

 近傍宇宙論での力学時間尺度 

 近傍宇宙論での力学時間尺度は τD = (Gρ)-1/2 である。これで GC から 1000 kpc 離れると大体 τD = 数 Ga となり、混合時間は非常に長いことが判る。したがって、それより大きい 空間では過去の出来事の力学的、化学的痕跡を見出すことが可能である。 例え小さな力学系がその後銀河系に融合したところでも。
(一応直訳だけしたが意味分かんない。 )
 形態・密度関係 

  CDM 階層は巾広い範囲での力学時間尺度を反映する。
(この先意味分かんない。 )


 近傍宇宙論の目標 

 近傍宇宙論の目標 

 近傍宇宙論の目標は、個々の星をそれが生まれた原始雲の要素と結びつける ことである。
(「原始雲」が銀河系を生んだ雲の 意味か、個々の分子雲か、不明。大体何言ってんだか、分んない。)

 消散程度 

 銀河の各部分ごとに消散の程度は様々である。円盤は最も消散度が高く、 ハローは最も低い。バルジはその中間である。消散前の情報が生き延びて いるだろうか?
 生き延びた情報? 

 遠方宇宙論はマイクロ波背景放射で代表される最後の散乱まで我々を 連れて行く。それ以前の情報が生き延びることは可能と考える天文学者も いる。同様に近傍宇宙論においても、最後の消散過程を生き延びた情報が あるだろうか?

 ガイア 

 ガイアは 20 kpc 内の数十億の星の6次元位置運動情報を与える。それらの 元素組成もいずれ得られるであろう。  



図3.(a) 銀河系のスケッチ。黒=ダークハロー。丸=球状星団。星円盤の半径 = 15 kpc. ハロー半径= 100 kpc. (b) DIRBE による MW. (c)M 104. 大きなバルジを持つ正常な円盤銀河。(d) コンパクト銀河群。 Hickson 87. 一つは他銀河との重力作用でピーナッツ型バルジを示す。(e) S0 銀河 NGC 4762. 薄い円盤とバルジが見える。(f) より深い NGC 4762 像。厚い円盤が見えてくる。 (e) と (f) の矢印は厚い円盤の輝度が薄い円盤を上回る位置を示す。 (g) 純粋の円盤銀河 IC 5249. 薄い円盤は見えるがバルジはない。(h) IC 5249 の深い画像にも厚い円盤は現れない。しかし、深い表面測光から 非常に淡い厚い円盤が検出された。

 星の年齢 

 構造 

 バルジ 

 成因 

 図3 (c) = M 104 (大きなバルジ) と (g) =IC 5249 (バルジナシ)を 較べてみよう。大きなバルジは構造からも元素組成からも楕円銀河と似る: 表面輝度は r1/4 則に従い、 Mbol - [Fe/H], [Mg/Fe] 関係も 似ている。これらの性質は大きなバルジの形成は急速であったことを示す。 小さなバルジの形状はしばしば箱型で表面輝度分布は指数関数型に近い。 これらは屈曲不安定性の結果、円盤から生じたと考えられる。

 メタル量 

 銀河系バルジに含まれる RR Lyr 星から、少なくともある割合のバルジ星 が高齢であることは確かである。McWilliam, Rich 1994 の観測は赤色巨星の メタル量が広い範囲におよび、平均値 [Fe/H] = -0.25 は、非常に古く低メタ ルのハローや球状星団の星よりは、高メタル円盤の古い星々に近いことを示す。

 形状 

 図3(b) の COBE 画像は銀河系バルジがやや箱型であることを示す。これは Sb - Sc 銀河では典型的な形である。図3 (d) に極端な箱型ピーナッツ形状 バルジの例を示す。もしこのようなバルジが円盤不安定性の結果生じた物なら ば、我々が求める初期銀河の状態は、円盤形成とそれに引き続くバルジ形成 の間に失われてしまったであろう。明るい円盤銀河の多くはバルジを持つが、 暗くなるとバルジナシが増える。バルジ形成は円盤銀河形成における 必須要素ではないらしい。

 円盤 

 薄い円盤 

 図3 横向き円盤銀河 (e) = NGC 4762 と (g) = IC 5249 の目立つ特徴は、 スケール高約 300 pc の指数関数型の薄い円盤である。薄い円盤はバリオンの 大部分にとり静かな消散過程の最終形成物であり、バリオン角運動量の殆ど がそこに含まれる。銀河系円盤の星では最も古い星の年齢は 10 - 12 Ga である。

 厚い円盤 

 多くの円盤銀河には第2の円盤成分=厚い円盤, がある。銀河系の厚い円盤 はスケイル高 1 kpc 薄い円盤の 3 倍である。星の年齢は 12 Ga より古く、 薄い円盤の星より低メタルである。現在では厚い円盤は銀河系初期の降着現象で 円盤が加熱された結果出来たと考えられている。


 ハロー 

 ハローの検出 

 ハローの総質量は銀河系では 1 % で 109 Mo である。 局所群のハローは個々に分解された星を通じてハローの存在が確認されるが、 それより遠いと淡過ぎて観測的に探知できない。

 衛星銀河の降着 

 現在の考えでは、少なくともハローの一部は小さな低メタル衛星銀河の降着 から形成された。各衛星銀河は独自の化学進化を遂げており、メタル量も様々 であった。衛星銀河の降着は薄い円盤を力学的に加熱する。したがって、現在 薄い円盤が支配的であるということは、ハローを作った降着が起きたのは 厚い円盤が出来た 12 Ga 以前であったことを意味する。

 主過程でない 

 若し降着説が正しければ、ハローは単に銀河の初期に降着した小天体の 残骸に過ぎない。ハローの元天体まで遡ったとしてもそれは、銀河形成の 主過程と言うよりは、矮小銀河の早期化学進化について語ることになる。

 ダークハロー 

 楕円体 

 ダークハローは銀河総質量の 90 % を占め、その ρ = r-2 密度分布は少なくとも 100 kpc まで広がっている。それは円盤状でなく 楕円体形状と思われている。

 副構造  

 CDM シミュレイションによると。ハローは未だに強く副構造を持って いる。それが正しいなら、ムラムラしたハローは円盤の進化に 影響する。ピクセルレンジングは副構造の力学を探れるかもしれない。


 銀河系形成の目印 

 我々は、階層的な集積を通して銀河系が形成されたと考えている。 次の3つの時期に原始的階層が失われた。

 1.暗黒物質のビリアル化 
 激しい星形成の時期であったかも知れない。しかし、非常に薄い純粋円盤銀河 が存在することから分かるようにそうでなければならないわけではない。
2.バリオンが消散して円盤やバルジになる 

3.現在進行中の過程 
 現在、円盤内で星形成が進み、外空間から天体が降着して来る。どちらにも かなりの期間生き延びる残滓がある。


 ゼロ次目印:暗黒物質のビリアル化以降に保存された情報 

 イントロダクション 

 ビリアル化の間に局所的階層に関する大量の情報が失われた。この時代は 天体融合と激しい緩和作用が起きた。暗黒物質とバリオンの総量、それに ハローに入って行く階層内の角運動量はほぼ不変であった。環境の典型的 密度もまた保存される。融合作用と力学緩和を通じて構造が進化して行くが、 低密度環境のままである。
(最後の "a low density ... environment." も何言ってんだか。まいるな。 )
 環境の現れ 

 銀河の局所密度はその後の相互作用に影響する。銀河系周辺の衛星銀河の数 は CDM モデルの予想よりは少ない。しかし、過去、現在の降着の証拠は沢山 残っている。薄い円盤は散逸過程を通じて、ビリアル化した暗黒物質のハロー ポテンシャル内に落ち着く。薄い円盤が現在の形状をとるには、降着小銀河が 幾つあったかが影響する:非常に薄い円盤は、散逸円盤と星形成後に降着が 殆どなかったことの現れである。厚い円盤の形成は円盤が落ち着きかけた直後 に起きたある一回の降着事象が原因で、その時に円盤の 10 % の星が既に出来 ていた。低密度環境ではそのような出来事がなければ厚い円盤は形成されない。 銀河系の低メタルハローの存在と構造は小天体の降着に依存している。降着は 多分ガス円盤が大体落ち着いた後に起き、円盤は小天体の軌道が減衰するため の共鳴箱の役割を果たした。ここでも、ハローの存在という形で原始銀河の環 境が現れている。恐らく純粋円盤銀河にはハローはないだろう。

 大規模量の現れ 

 ラム圧力や銀河風でバリオンの幾分かは失われるが、残りは銀河の明るい 星成分になった。暗黒物質は回転する3軸不等の楕円体形状を取ると思われる。 ダークハローの総角運動量 J はその形を決定する要因であり、その形が今度は 円盤の構造に影響する。例えば、ワープは暗黒物質とバリオンの角運動量の軸 がずれている結果生じたのかも知れない。

 ハロービリアル化期の結合エネルギー E はポテンシャル井戸の深さに、そしてそれを通して銀河の特性速度に影響 する。その指標の一つが λ = J|E|1/2G-1M -5/2 である。λ は銀河円盤の表面輝度が高いか低いかの 決定に効く。

 円盤銀河における、固有角運動量 J/M と総質量 M との関係はシミュレイ ションで再現されている。最近まで楕円銀河と円盤銀河は Fall 図上で分離 して見えた。楕円銀河内側の遅い回転から, その J/M は渦状銀河の一桁下に位置していた。しかし最近の研究から楕円銀河 の角運動量の大部分は外側領域にふくまれ、楕円銀河と渦状銀河とは Fall 図の 同じ領域を占めることが明らかになった。楕円銀河では角運動量の再分配が起き たのは明らかである。

 タリー・フィッシャー関係は HI 線幅と円盤銀河の可視光度を結び付ける。 これはポテンシャル井戸の深さとバリオン質量の関係ととらえ直せる。その両方 ともにハロービリアル化の後にも保存される物理量である。従って、 タリー・フィッシャー関係を銀河形成のゼロ次表徴と考える。この裏にありそう な関係は
  (a) バリオン/暗黒物質 比が銀河間で一定。
  (b) フェイバー・ジャクソン関係=ダークハローの M∝σ 4、つまりダークハローの表面密度が暗黒物質質量に依らない、
 固有角運動量の内部分布の目印 

 M(h)=固有角運動量<h であるバリオン質量は、暗黒物質のポテンシャル 井戸の中を回る円盤の表面輝度分布を決定する。バリオンの M(h), J, M は 円盤のスケール長と表面密度スケール長とを決める。従って、 原始円盤銀河の総角運動量と質量の分布が円盤銀河の スケール長と表面密度スケール長とを決めているのである。多くの研究で M(h) は進化の過程で不変とされてきたが、バー、渦構造などにより再分配が 進む可能性はある。

 hmax は大体 4*スケール長で起きる可視円盤の切断縁と関係する。 切断縁は初期原始銀河雲の角運動量の表徴として重要でもっと研究する必要が ある。同様に、非常に広がった HI を持つ銀河において HI 分布の端は原始銀 河雲の hmax と関係するだろう。一方、外側から降着してきた HI かも知れない。

 HI 縁は電離円盤の境界という可能性もある。外側円盤は原始銀河雲の性質 を考える上で重要な場を提供する。まだいくつもの不定性が残されており、
(i) 可視光、HI の様々な切断縁
(ii) 円盤積分光分布からの年齢勾配。星団にはないという研究もある。
(iii) 最外側円盤は若いだろうがゼロ年齢ではない。その意味は、円盤が 動径方向に成長し続けている証拠はない。

 円盤の端は原始銀河雲のバリオン角運動量と関係しそうで、有用な ゼロ次表徴である。

 CDM 階層の表徴 

  初期の N 体計算は特性速度 V = [10, 30] km/s の副構造は融合や低質量構 造のビリアル化により消えると予想した。しかしそれは質量、空間分解能が 低かったための偽効果であると分かった。現在の計算では L* 銀河球の 300 kpc 以内に 500 かそれ以上の低質量構造がのこることを示す。これは局所群 内の衛星銀河の数と較べると一桁多い。(衛星問題) 力学摩擦の効果が通常考えられるより 大きいのかも知れない。しかし、微妙な調整をしないと、現在局所群に含まれる 衛星銀河を全て珪砂るかも知れない。
 CDM において、基本構造要素を近傍宇宙内で見出せるのかという疑問がある。 CDM の副集合には自己相似性がある。巨大銀河団の質量関数にはその証拠が 見つかる。もし、暗黒ミニハローが個々に分離した天体ならば、マイクロレンズ で検出可能である。

 もし CDM が正しいなら、局所群内にある数百の衛星銀河を見逃している。 例えばそれらは初期の超新星でバリオンを吹き飛ばしてしまったのかも知れない。 証拠の一つは銀河団 X-線ハローはいつでもかなり高メタル [Fe/H] ≥ -0.5 である。別の可能性として、再電離期に低質量ハローへのバリオンガスの降着が 抑えられたという考えもある。

 高速 HI 雲(HVCs)は様々な考察の対象となってきた。それらが Mpc スケール の距離にあるなら、 CDM の基本要素になり得る。それらが 100 kpc 内にあるなら 暗黒物質ハローを伴ってい無そうである。


 1次目印:バリオン散逸以降に保存された情報 

 円盤構造 

 円盤進化のどの段階でその大規模な性質が固定されるのだろうか?前節の 「固有角運動量の内部分布の目印」でその解答の一部を議論した。 円盤が散逸し、バーや渦が現れるにつれて M(h)は進化する。星形成に伴う 粘性過程も M(h) を進化させる。円盤の大規模構造は中心表面輝度 Io とスケ ール長 h で決まる。(同じ記号!)図4に現在の銀河の (Io, h) 面上の分布 を示した。もし、M(h) が時間と共に変わらないなら、スケール長、表面輝度、 タリー・フィシャー関係はバリオン散逸期の残存物である。

 円盤が化石情報を維持するか? 

 渦状銀河では幾つかの機構が動径勾配を形成する。
(i) メタル形成や初期質量関数による yeild (?) の勾配
(ii) 星形成時間尺度の勾配
(iii) 円盤外からのガス降着時間尺度の勾配
星の大部分が大星団で生まれる。星形成効率により星団は数十億年も維持され たり、あっという間に分解したりする。星は星団位置から離れた後通過する 渦状腕や分子雲により散乱を受ける。

 これらの摂動を受け星は積分空間内を移動する。パターン速度 Ω p の腕を通過する際に星のエネルギーと角速度は変化するが そのヤコビ積分は保存する:(E,J) 空間内で星は IJ = E - Ω pJ 一定の線上を動く。星は何度かの渦状腕遭遇の結果 (E, J) 面 内を酔歩運動する。円盤進化の N-体計算は動径混合が強いことを示す。 一時的渦状腕が面内運動を加熱することでこの混合が駆動されると考えらる。 ただ、この過程はまだ完全には理解されていない。"long-term" 渦状腕は 正味の効果はない。
(どういうことか? )
共回転付近の単独渦状腕は星の角運動量を加熱なしに 20 % も変化させる。 星は単に一つの円回転軌道から別の内側または外側軌道に 2 kpc も動く。

 動径方向以外に星は円盤に垂直方向にも加熱される。面内加熱は内側、外側 リンドブラッド共鳴点で最も効果的に起こり、共回転点で消滅する。垂直方向 加熱に関し、 3 Ga 以内では年齢-速度関係が観測されている。t = 2 -10 Ga 星は古い薄い円盤に属する。 それらの速度散布度は年齢に依存しない。より若い星は散布度が小さい。 年齢 10 Ga で散布度が突然倍に跳ね上がる。それらは厚い円盤星である。 図5を見よ。この様に τ < 3 Ga では垂直構造は種族の平均年齢に 依存する。

 ランダム速度が大きくなると一時的渦状腕らの影響を受けにくくなる。このため 加熱機構が飽和する。これは我々の目的にとって重要な意味がある。つまり、 力学情報は薄い円盤の早期 τL-3 = 7 Ga 昔の状態で保存されて いることを意味する。ここで τL は円盤が最初に形成された時の 見返り時間である。

図4.Sa - Sm 銀河の有効半径 re - 有効表面輝度 μe 分布。上=生分布。下=光度重み付きの分布。





図5.速度散布度と年齢の関係Quillen, Garnett 2001。サンプル星は Edvardsson et al 1993.

 古い散開星団 NGC 6791, Berkeley 21, Berkeley 17 は 10 Ga を超える。 もし加熱の空間尺度が星団サイズを大きく上回るなら星団は生き延びるだろう。 円盤星の 4 % は超高メタル(SMR) である。SMR 星は中間年齢で太陽円の数kpc 内側で形成されたらしい。最も高齢の SMR 星は銀河中心から来たらしい。それ らの特異な運動と外側への移住は中心バーに関連するかも知れない。

 降着による円盤加熱=厚い円盤 

 厚い円盤は [Fe/H] = [-2.2, -0.5] であるが、大部分は分布の高メタル側に ある。その太陽近傍速度楕円は (σR, σψ, σz) = (46, 50, 35) km/s、非対称ドリフト 35 km/s である。

 厚い円盤の年齢は不明である。個々星の測光年齢から厚い円盤は球状星団と 同じくらい古いようである。低質量矮小銀河の降着エネルギーが共鳴散乱過程 により円盤の運動熱エネルギーに変換され、厚い円盤の誕生につながったのかも 知れない。

 図5の Edvardsson データを見ると、10 Ga 昔に垂直方向速度分散が急激に 大きくなっている。
Freeman 1991 によると、年齢-速度散布度関係は3つの 時期に分かれる: τ が 3 Ga より若い σz = 10 km/s の星、[3, 10] Ga で σz = 20 km/s の星、それに 10 Ga より古く σz = 40 km/s の星である。最初のグループ は一時的渦状腕による加熱を受けている星で、最後のグループは大昔の 個別降着事象で励起された星である。
(厚い円盤と同じ年齢の薄い円盤星は ないという意味? )
 &ω;Cen は剥がされた矮小銀河の書くという説が強い。この星団が厚い円盤 形成に関与した可能性もある。

 年齢ーメタル量関係 

 非常に特殊な集団でのみ見出される。通常のフィールド星にはない。

 環境の効果と内部進化 

 G型矮星問題とは、閉箱モデルで化学進化を解くと太陽近傍よりずっと多くの 低メタル低質量星が生まれてしまうことである。その解決はガスの降着を許容 すれば簡単に解決する。

 早期型銀河は晩期型銀河に比べると群れやすい。低メタル環境中の早期型銀河 の間には Hβ フラックス(= 年齢)に大きな幅があったがメタル量には差が なかった。逆にフォルナックス銀河団においては、反対に、年齢は同じなのに メタル量に巾があった。これは環境が異なるとその効果が異なることを示す。

この後早期型銀河の話を略。



図6.上=NGC 4365 と NGC 4150. 左は Sauron integral field 観測。 右は Hβ - [MgFe5270] 図。

 2次目印:その後の進化 

   イントロダクション 

 ここではバリオン質量の大部分が円盤に落ち着いた後に起きた物理過程の 遺物を考える。二次目印しの内、最も著しいのは星形成史である。それを探る 最も重要な天体は散開星団である。Majewski 1993 には異常な性質を持つ星 種族が大量に集められている。それらの中には、反対方向の回転軌道を持つ 沢山の星、中間年齢の低メタルハロー星、高メタルハロー A 型星などが含まれ る。前の方で、銀河系に関連する CDM 階層の観測的目印しを紹介した。実際、 速度空間における詳細な観測は、配位空間ではとうに失われた構造の痕跡を見 出すのに極めて有用である事が判ってきている。系外銀河では、関連した構造 が低輝度模様として現れる。

 星形成史 

 銀河系の星形成史は解明が非常に困難であった。 これまでの提案は、ほぼ一定の星形成率から初期に鋭いピークを持つもの Twarog80, Rocha-Pinto00, Just01 に至るまで様々である。局所群の銀河は 広い範囲に渡る星形成史を示す Grebel01 が、平均では宇宙史に合う Hopkins01  ことが分かっている。現在の研究は系外銀河の全体的特徴に利用できる面に重 点が置かれている。このため若い星にバイアスが掛かる。

 閉箱モデル 

 銀河円盤の化学進化を扱う伝統的な手法は太陽近傍を閉箱と考え、それが円盤 全体を代表すると仮定することであった。単純な数学モデルが過去40年間発展 van den Bergh62, Schmidt63, Pagel75, Talbot71, Tinsley80, Twarog80, Pitts89 してきた。
 測光と種族合成の結合 

 測光と種族合成の結合=種族合成は系外銀河の積分光から星形成史を導く十 分に確立れた手法である。その利点は単純さにある。しかし、年齢-メタル量 縮退を一意に解くことができないという問題がある。

 リック指数 

 リック指数 (Burnstein84) はもう一つの広く応用される手法である。Worthey94 と Trager98 はこの方法をさらに精密にした。そこでは Hβ 指数が年齢指標となり、 Mg と Fe 指数がメタル量指標になる。リック指数には よく知られた弱点がある。それらは分解能 8 - 9 A の低分散分光に対応し、銀河 内部運動の補正が難しい。その上最も明るい二つの指数, Mg2 λ 5176 A と Fe λ5270 はCa や C からの汚染を受けやすい。

 銀河年齢 

 現在最も信頼できる方法の一つは低バルマー系列(n < 4) の使用である。 Jones95 は Hγ 等値巾を利用した。 Rose94, Caldwell98 は より高次のバルマー線を使って年齢 - メタル量縮退を解いた。これら高次の吸 収線は星間空間からの輝線の影響を受けにくい、彼らは Hn = Hγ +Hδ + H8 を使い Hn/Fe 比の利用を研究 Concannon00 した。

 フルスペクトルマッチ 

 スペクトル合成モデルにフルスペクトルをフィットする方法 Vazdekis99 は 最も有望である。新しい方法はリック系に比べ波長分解能が4桁高く、等時線または 等メタルグリッド線を二つのリック指数に重ねると、 Worthey モデルより直交性が 高い。  図6には積分光に対するリック指数の応用を示す。





図7.ハローに淡い星流を持つ通常の渦状銀河の例。(a) M 104. 大きな星流。 (b) M 83. (c) NGC 5907. (d) M 31.

 銀河の低表面輝度構造 

 星流は銀河形成に重要な役割がある可能性がある。
 図7にそれらの幾つかの例を示す。しかし、ここは飛ばす。



図8.(a) ヒアデスより若い星団の Rg-z 面上の分布。太陽は Rg = 8.5 kpc とした。(b) ヒアデスより古い星団の分布。

図8.(c) 散開星団のメタル量勾配。 (d) 星団の年齢ーメタル量関係は見られない。


 散開星団 

 散開星団の生存 

 局所宇宙論との関連では厚い円盤と薄い円盤中の古い散開星団は最も重要な 診断天体である。散開星団に関しては Friel 1995 の素晴らしいレビューがある。 古い星団も若い星団も薄い円盤に属する。最も古い散開星団は 10 Ga を越す Phelps, Janes (1996)。
(読んだら Berkley 66 は Ga 3 - 4 Ga が内容。 )
Friel, Janes 1993 は垂直方向に星団組成の勾配はないことを報告している。 Friel 1995 によると、Rg < 7 kpc (太陽が Rg=8.5 kpc として)には古い 星団が見つからない。 van den Bergh, McClure 1980 は、その原因を破壊され たか動径移動したのであろうとした。King 1958 以来、散開星団が生き延びるか、 壊されるかの綱渡りをしていることはよく知られている。

 散開星団の空間分布 

フィールド星と同様に古い星団の垂直分布はスケール高 375 pc の指数関数型 である。いっぽう、若い星団のスケール高は 55 pc である。フィールド星と同様に、 組成の垂直勾配は認められない。若い星団のそれは 55 pc である。
 散開星団のメタル量 

  Twarog, Ashman, Anthony-Twarog (1997) は 76 星団の観測に基づいて、円盤のメタル量分布が Rgc = 10 kpc で階段状 の変化を示すと主張した。 彼らによると Rgc < 10 kpc では [Fe/H] = 0, Rgc > 10 kpc では [Fe/H} = -0.3 である。しかし、Henry 1998 は HIIRs, B-型星にはこの効果が認められないとした。
(ADS にない! )
 図8(c) を見ると、古い星団も若い星団も同じメタル量勾配を持つ事が判る。
(8cが Twarog97 のいう階段なのか? )
Friel95 は散開星団に何の年齢-メタル量関係も存在しないとした。これは Eggen, Sandage 1969 と同じ結論である。図8dを見よ。彼女は円盤の全期間を 通じて、また円盤のどの場所でも、最も古い星団のメタル量は現在と変わらないと 述べている。  これらの結果から、バリオン散逸の直後、薄い円盤は 15 kpc まで形成され たことが判る。最も古い散開星団の年齢は厚い円盤の年齢に迫る。前の節で、 厚い円盤は円盤形成直後の瞬間写真であるらしいと述べた。

 球状星団 

 飛ばす。





図9.破壊後8Ga の衛星銀河の様子。広がってはいるが。最初の事件= 破壊を同定することは可能である。

 位相空間内構造 

 位相空間内構造 

 同じ速度を持つ星集団のよい例は散開星団である。運動群は最近破壊された 星団と考えられる。

 最近ハロー内に運動学的な副構造が見出された。最もドラマティックな 例は破壊の進んだ Sgr dSph 銀河である。

 衛星銀河の破壊されたかけらは銀河系重力場の中で歳差運動を起こし、 その軌道面は次第に散らばって行く。図9には 破壊後 8 Ga のちの 天空上の分布を示す。 





図10.(a) 銀河系ハローに落下する 33 の星集団の初期状態を運動積分空間 で表示。(b) 12Ga 後の分布。(c) 100 衛星銀河の降着をシミュレイトした結果。 (d) 同じ計算の別表示。 Rg - Vr図。

 ガイアスフィアと限界 


図11.上=軽い s-元素、中=思い s-元素、下=r-元素、と[Fe/H] の関係。

 ガイアと化学表徴 

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図12.

 古い恒星群を再構築する 

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図12.丸=CS 22892-052 中性子捕獲元素組成。実線と破線=スケールした 太陽組成。

 ガイアと化学組成空間 

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

 化学軌跡