Stellar Wind Paleontology: Shaells and Halos of Planetary Nebulae


Frank, Balick, Reley
1990 AJ 100, 1903 - 1914




 アブストラクト 

 PNs のシェルとハローは通常、高速星風の発生以前のマスロスに付託されて いる。それらはまだ高速風による直接、間接の衝撃を受けていないので、密度 分布は r-2 の形と考えられている。このような訳で放射メジャー は θ-3 で落ちて行く。しかしながら、CCD表面輝度分布 を6 PNs で測った結果、放射メジャーが θ-1 で落下する ことが分かった。  その結果として、放射メジャー分布を利用してマスロスの時間変化を調べら れる。特に、次の制約をマスロスに課すことが可能となる。
(a) シェルを形成するマスロスの形。
(b) 放出後の流体力学的進化に働く外圧。
(c) 進化のタイムスケール。
我々は、AGB 上昇期の希薄で「赤色巨星風」に、前惑星状星雲からの「超星風」 が作用するという「二星風」モデルを仮定する。流体力学シミュレイションを 行い、シェルとハローの放射メジャーを求めた。その結果、質量放出は短期の パルスの形をとり、線形の放射メジャーは超星風は停止してから 5000 年後に 起こることが判明した。





図1.シェルとハローを持つ惑星状星雲の図解。コア=高温で可視光では見え ない高速風 (V=2000km/s) に満たされている。観測的には PN 中心核大気スペ クトルの P-Cygni 輪郭で検出される。明るい縁=膨張する高温コアによる衝撃 波面と "contact discontinuity" の間の圧縮されたガス領域。シェルとハロー =高速風の前に吹き出たガス。

 1.イントロダクション 

 シェルとハローとは 

 惑星状星雲にシェルやハローが存在することは Duncan37 以来知られていた。 シェルは PNs の明るい縁の外側に低輝度で広がる。一方、ハローは外側の縁が 明るい放射円環で、明るい縁とは分離して見える。 Chu, Jacoby, Arendt (1987) の形態分類では、シェルはタイプII =多重シェル惑星状星雲を定義する決定打 である。それは Kwok82 によれば、AGB 期の連続的マスロスの残骸である。 Pottasch84, Volk87, van der Veen, Habing, Geball (1989b) は、カラーやダスト放射帯の特徴からシェルと星周層の関連を指摘した。

 PNs の質量分布 

 赤色巨星は 5 km/s で 10-7 Mo/yr 程度のマスロスを行い、 AGB を上がるに連れ、10 km/s 10-4 Mo/yr のマスロスを 1000 年 行い、その際に 0.2 Mo 程度を放出する。シェルとハローはこの超星風から生 まれる。星が高温の PN 中心核に到達すると、希薄高速流 1000 km/s 10-7 Mo/yr の星風を発し、それが超星風と作用する。PNs の明る い内側領域の形状には重要であるが、高速流はシェルやハローとは関係ない。

 マスロスの進化 

  Schild (1989) は赤外、電波の観測データを集め、星がミラから OH/IR へ進化するにつれ、 マスロスが増加することを示した。 Olofsson,Carlstrom, Eriksson, Gustafsson,Willson (1990) は炭素星の CO 観測から、 マスロス率が数百年間 10-5 Mo/yr、続いて数千年間 10-7 Mo/yr、それから定常期の 10-6 Mo/yr に戻るというシナリオを得た。Sivagnanam88 はミラ から OH/IR 遷移期に星風速度が増加すると論じた。
 超星風 

 超星風の性質と歴史には多くの論争がある。AGB 期放出ガスの分布は非常に 貴重なデータである。しかし、星周層の光学的厚みが大きいため、 Mtot, V, Tdust のような全体的な物理量しか分からない。Iben83 は AGB 晩期に超星風 が発生すると提案した。 Baud, Habing (1983) は OH メーザー観測からこの提案を支持し、マスロスの時間変化を導いた。 理論モデルではしばしば定常期と超星風期にそれぞれ一定の固有マスロス率を 与えることが多い。Kwok 1990 は 10-7 Mo/yr から 10-4 Mo/yr への変化は連続的であるととし、「超星風」は異なる性質のメカニズム が働いているかの印象を与えるという理由でこの用語に反対している。最近、 Icke, Frank, Heske 1990 は AGB 星の脈動がカオスであり、その振幅がマス ロスに関係するというモデルを提案した。その場合、超星風のマスロスは一定 から遠い。

 星風が PNe の形を決めた? 

 我々は、PN シェルの詳細な構造が AGB 期のマスロスの歴史に大きな手掛か りを与えてくれると考える。今回のデータは PN の放射メジャー輪郭にはいく つか共通の性質があることを示す。それらの特徴が普遍的なことは驚くべきで ある。その根底には何か共通の機構が働いているのではないか?超星風と赤色 巨星風との間に働く流体力学的作用の結果 PN シェル放射メジャー輪郭が形作 られ、ハローが形成されたという仮説を立て、我々は数値実験を観測と比べた。





図1.CCD Hα 画像( Balick (1987) )から導いた放射メジャー輪郭。

 2.観測と結果 

 術語の意味 

 図1には PN 構造が図示されている。使われる術語は二つのグループに分か れる。一つは形態学的記述を司る。コア=高温の可視光では見えない領域で、 現在は高速流(V=2000km/s) により圧力を掛けられ、かつ加熱されている。 観測的には PN 中心星大気の P-Cygni プロファイルで認識される。明るいリム =接触不連続面とコアの膨張で生じた衝撃波面の間で押し潰されているガス。 シェルとハロー=高速風以前の星風。もう一つは計算屋が使う用語で、星周層 (CSE)=希薄な赤色巨星風(V=5km/s)の最後と高速風発生の中間時期に放出され た超星風である。熱い泡(hot bubble)=高速風と高速風-CSE界面により作られる。 高速風や熱い泡、明るい内側リム=泡とCSEの界面はこの論文では扱わない。

 明るく、広がったシェルを有する8つの PNs  

 シェルは Balick (1987) サンプルのコンパクトで明るい PNs 中の 20 % に見られ、 Chu, Jacoby, Arendt (1987) のサンプルではさらに高い比率で見つかる。我々は 明るく、広がったシェルを有する8つの PNs = NGC 1535, 2022, 2392, 3242, 6826, 7354, 7662, IC 3568 を選び、解析した。 各天体で、長軸に沿った5本の線に沿って輪郭を測り加算して、一次元輪郭を 作った。短軸に沿っても同様の操作を行った。図2にそれを示す。
 シェル輪郭フィット 

 図2のシェル輪郭を a - b θn でフィットした。その結果 n = 0.93 - 1.05 が得られた。簡単に言えば a - b θ で良くフィット できるのである。仮に球対称な放射密度分布 e(r) を仮定すると、

   &e(r) = {Clog|[R+(R2-r2)1/2] /r|}1/2

ここに、 R = シェル外半径、C = 定数、r = 動径距離である。この式から dM/dt(t) を出すことは可能である。ただ、われわれはより直感的なモデルから 図2を説明する。

 ハロー 

 Balick90 の短露出ではハローの輪郭を得ることは無理である。しかし、 Plait, Soker (1990) は NGC 6826 のハローを正確に測っている。


 5.議論 

 物理過程の概要 

 チューブ中の流体中に密度と圧力の不連続が存在したとしよう。左側に高密 度/圧力 (超星風)、 右側が低密度/圧力(赤色巨星風)と考える。不連続面の左 側のガスは右側からの圧力が不足するためそちら側に加速される。右側になだ れ込んだガスは低圧ガスを圧縮して右側に進行する衝撃波を形成する。しかし、 高密度ガスの加速は後に空白域を生じさせる。この空白波は左側に伝播する。 この二つの波は合わさって、最初の急激な不連続面を大きく変化させる。
 速度の不連続 

 初期に速度の不連続があった場合はどうだろう?高速流が衝突により低速物 質を加速するので右向きの衝撃波が生ずる。これは運動量の交換であり、右側 の高速流は減速を受ける。しかし、そこに右側から高速物質が流れて来るので もう一つの上流向きの衝撃波が発生する。その二つの衝撃波の間には高速流の 運動エネルギーが散逸した高温高密度域が挟まれる。


 図2.放射メジャー輪郭 




図2.長軸、短軸沿いの Hα 放射メジャー輪郭。縦軸は表面輝度 (相対スケール)。点線はピクセル分解表示。




図3.シナリオ1=ブロック型高速風。




図4.超星風開始後 4400, 4900, 5500 年後のモデルプロファイル。 左から右へ Δu = 1, 2, 3. ここに Δu = umax/uo




図5.t = 5500 での放射メジャー輪郭。全パラメターグリッドに対し表示。 全てのモデルで、プロファイルが線形になることに注意。