A Catalogue of Infrared Star Clusters and Stellar Groups


Bica, Dutra, Barbuy
2003 AA 397, 177 - 180




 アブストラクト

 銀河系の赤外星団のカタログを集めた。星団より密度の薄い星群(Star Group)も含めた。 それらは Taurus-Aurigga や Chamaleon 暗黒雲の中で見られる。  座標、角直径、名前を与えた。星団は 189, 星群は 87 個が載っている。雲に埋もれた星団の 25 % は二重、三重星団を形作っている。


 1.イントロダクション 

 赤外星団の発見とカタログの意義 

 最近、暗黒雲中に埋もれた星団が発見 Hodapp 1994 されてきた。Lada,Lada 1991 はそれらを埋もれた星団 (embedded cluster) と 名付けた。しかし、雲の外にあり、より年齢の古い赤外星団もある。それらに 新たに見つかった星団の研究が, Deharveng et al 1997, Carpenter et al 2000, Horner et al 1997 などによりなされた。この時点で、それら星団を1つの カタログにまとめ、将来の発展に役立てたい。

 銀河系中心方向の赤外星団 

  Dutra, Bica 2000 は 2MASS を用い、銀河系中心方向に 58 個のかなり暗い赤外星団を発見した。 2MASS の角分解能は低くく、付近のフィールド星密度が高いために、星団 星のみを抜き出して色等級図を作ることはできなかった。その確定にはより 大口径の望遠鏡の観測が必要なので、それらは今回のカタログには含めてい ない。現在 ESO NTT で計画中の観測により高精度観測がなされるであろう。 また、最近同じく 2MASS を用いて別の方向で Dutra,Bica 2001 が発見した 赤外星団はこのカタログに含めた。
Mermilliod の呼びかけ 

 Mermilliod 1996 は彼の散開星団サイト、 htt://obswww.unige.ch/webda において、埋もれた星団の部を作成し、寄与を 呼びかけている。この論文の目的の一つはそのようなカタログの集積である。

 多重星団 

 二重星団をはじめとする多重星団の研究は LMC, SMC でよくなされているが、 天の川銀河では不十分である。本研究の目的のもう一つはそのような多重性 の研究に役立てることである。


 2.カタログ 

星団と星群 

   Dutra, Bica 2001 の図1には電波 HIIR DR22 に見つかった赤外星団の Ks 像が載っている。 この図を見ると、DR22 星団本体の密度とその周辺のより星密度が低い 星群との違いが分かる。星団部分では 54 個 arcmin-2 である が、星群部分では 25 個 arcmin-2 であった。 ただし、背景星の補正は行っていない。

T Tau 星の集団 

 星群の他の例は T Tau 星の星団で Taurus において、 Gomez et al 1993, Leinert et al 1993, Chamaleon において Whittet et al 1993, が報告されている。

 

 このように今回のカタログは標準的な赤外星団と より緩い星群の2種類からなる。カタログには 198 星団と 87 星群が  86 文献から集められている。
星団名 

 名前の付け方は著者により様々で統一がない。できるだけ多く集めた。

 

 カタログには 276 天体が載っており、ftp で取ってこられる。各天体の 第1行には、銀河座標、赤道座標、長径と短径、名前が載っている。 第2行はクラス分け、IRC=星団, IRG=星群、距離等の付加情報が載っている。





図1.黒丸=赤外星団。白四角=赤外星群。

 3.サンプルの性質 

 3.1.方向分布 

 図1には方向分布を示す。反中心方向とシグナスX(l=80) 方向は 良く調べられていることを注意しておく。一方、南天 l=[240,340] は深い探査が必要である。星群は銀河面から遠くまで存在する。 これは、それらが近傍の複合体、オリオン(l,b)=(210,-20), Taurus (l,b)=(175,-15), Chamaleon (l,b)=(297,-15) に属する例が 多いからである。

 3.2.距離とサイズ分布 

 距離分布 

 図2には距離分布を示す。星団は 3kpc までであり、もっと遠くまで 探る必要がある。星群は 1kpc までで近傍複合に付随している。
( 距離はどう求めた?文献?)



図2.距離分布。上:赤外星団。下:赤外星群。
サイズ分布 

 距離と角サイズから物理サイズを求めた。図3にその分布を示す。 分布のピークは 1pc で、大部分は 3 pc より小さい。これに対し、 15 Myr より古い星団のサイズは 1 - 8 pc 間に分布している。

 星団サイズの年齢効果 

 星団サイズは星団形成時から力学効果により増加するのであろう。


図3.直径分布。上:赤外星団。下:赤外星群。


 4.結論 

 南天で赤外星団が足りないのはもっと系統的な探査を要求する。 距離が3kpc以内なので。比較的近傍に限られる。  サイズ分布が小さいのは星団サイズの力学進化の存在を示唆する。