English | 日本語

東京大学大学院理学系研究科附属
天文学教育研究センター

研究活動

TAOプロジェクト

東京大学アタカマ天文台(The University of Tokyo Atacama Observatory; TAO)は、チリ北部アタカマ砂漠にそびえる高峰、チャナントール山頂(標高5,640m)に位置する世界で最も標高の高い天文台。高い晴天率や乾燥した大気など、世界最高の観測環境を誇る。2009年には口径1mのminiTAO望遠鏡が稼動し、世界で最も標高が高い天文台としてギネス世界記録に登録された。2012年からは大口径6.5mのTAO望遠鏡の製作が本格化している。0.9~2.5μmをカバーする近赤外観測装置SWIMSおよび2~38μmをカバーする中間赤外観測装置MIMIZUKUを口径6.5mのTAO望遠鏡に取り付け、赤外線観測を行うことにより、天文学最大の謎である銀河の誕生や太陽系の起源の解明を目指す。

IoA
口径6.5m TAO望遠鏡の模式図

トモエゴゼンプロジェクト

東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に搭載されたモザイクCMOSカメラとリアルタイムデータ処理ソフトウエア、自動観測ソフトウエアから構成される可視光の広視野動画観測システム。84枚のCMOSセンサにより、20平方度の視野を2フレーム/秒で連続撮像できる。広視野・高頻度の可視光サーベイ観測により、爆発直後の超新星、空を高速に移動する地球接近小惑星、重力波の電磁波対応天体、秒以下の短時間に変動する現象などの突発・高速移動現象の研究を推進する。

Tomo-e Gozenプロジェクトホームページ

IoA
木曽シュミット望遠鏡の焦点面に搭載された
トモエゴゼンカメラ

サブミリ波プロジェクト

現在の宇宙は、質量・形態・活動性いずれにおいても多種多様な銀河に満ちており、その形成・進化のメカニズムを解明し多様性の起源を理解することは、現代天文学における最も重要な課題の一つである。 私たちは、ダスト放射における負のK補正効果や、豊富な分子・原子スペクトル線、またスニヤエフ・ゼルドビッチ効果など、ミリ波サブミリ波における観測の特徴に着目し、アタカマ高地において稼働するALMAを基軸としてASTEや野辺山、JCMT、LMT、JVLA等を駆使するとともに、HSTやSpitzer、すばる、そしてまもなく稼働を開始するTAOとも連携し、幅広い波長域のデータを活用した研究を進めている。 具体的には、ALMAを使った遠方銀河探査、γ線バーストや超高光度超新星など突発天体母銀河の性質、渦状銀河の星間物質とその動力学、希薄な星間物質の分子化学組成、巨大ブラックホールと銀河との相互作用、重力レンズを利用した高赤方偏移星形成銀河の観測的研究など多岐にわたる。また、超伝導直接検出器を用いたオンチップ型超広帯域分光システムDESHIMAや2mm帯ヘテロダイン受信機システムB4R、ミリ波サブミリ波帯多色カメラとその要素技術など、新たな地平線を切り開くための機器開発・技術開発も、国内外の研究機関と連携しながら推進している。

サブミリ波プロジェクトのページ

ALMAによるGOODS-S領域の銀河探査 (ASAGAO
プロジェクト) で発見された、近赤外線より短波長側
では見えない、ダストに覆われた高赤方偏移銀河の
スペクトル・エネルギー分布

爆発直後の超新星の探査

超新星爆発は、一部の星がその一生の最期に起こす大爆発で、超新星を観測することにより、宇宙の膨張史等の様々な謎が解き明かされてきた。私たちは、超新星爆発のその直後を観測することにより、爆発前の星の姿を明らかにすることを目的とし、木曽シュミット望遠鏡やすばる望遠鏡の広視野カメラを用いて、爆発直後の超新星を探し、その光度の振る舞いを調べる研究を進めている。

すばる望遠鏡超広視野カメラ HSC で
一晩に発見した超新星の例

パッシェンα輝線による輝線B型星(Be型星)の研究

輝線B型星(Be型星)と呼ばれる水素のスペクトル線が輝線となって現れる特別な星が存在し、これまで可視光のバルマー線などによって研究されてきた。miniTAAO近赤外カメラによる観測で、小マゼラン雲に存在するNGC330という星団に存在するBe型星から、世界で初めて1.875 µmのパッシェンα輝線を検出した。今までに知られていたBe型星の他に新たなBe型星も発見した。これまで観測できなかった新たな輝線を観測することで、未解決の問題が多いBe型星の研究が進展することが期待される。

今までに知られていた Be 型星 (青丸で囲われた星) と
新たに発見された Be 型星 (赤い四角で囲われた星)

赤外線で探る大質量星の進化

太陽の数10倍以上の重たい星は、その短い一生の間に自ら莫大なエネルギーを周囲に放ったり、私たちの身体を作っている様々な元素を創り出したあと、その一生の最期である超新星爆発にともなって、それらを宇宙空間に撒き散らすなど、宇宙に大きな影響を与える。また大質量星の最終段階の形態は存在時間が短く、その星を含む星団の年齢を推定するよいツールにもなる。大質量星は塵や分子雲の奥深くに埋もれている場合が多いため、それらを見つけ出し、その生態を詳しく調べる手段として、赤外線を用いた様々な観測を行っている。

大マゼラン銀河にある大質量星形成領域
30 Dor/R136 付近の近赤外 3 色合成画像
(赤: 2.07 µm; 緑: 2.2 µm; 青: 1.87 µm)

銀河系の果てを探る

私たちの住む銀河系の果てはどこまで広がっているだろう?今まで残されてきたこの“辺境の地”も、小さな望遠鏡によるサーベイや大きな望遠鏡を用いた詳細観測により、近年その姿が明らかにされつつある。この“境界領域”は銀河が誕生したときの謎を残していると考えられ、銀河の基本構造を知るのにもっとも強力な可視光や赤外線を用いて、その形成過程を調べている。

銀河系外縁部の巨大星形成領域 S209
すばる望遠鏡+近赤外線撮像分光器 MOIRCS による
近赤外画像 (赤: 2.2 µm; 緑: 1.65 µm; 青: 1.25 µm)