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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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国際光工学会SPIE2024@パシフィコ横浜に参加

2年おきに開催される国際光工学会SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation (以下SPIE) は、天文学研究用の望遠鏡と観測装置に関する最先端の研究成果が数多く発表される、注目度の高い国際研究会です。今回アジア初開催となるこのSPIEが2024年6月16〜21日までパシフィコ横浜で開催されました。今回の大会は過去最高の2900人あまりの参加者が世界各国から集まりました。世界最先端の研究結果を知る良い機会のため、多くのTAOメンバーが参加し、またTAOプロジェクト関連で数件を発表しました。

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▲図1: 会場付近に立てられたSPIE2024の案内看板

SPIEでの講演内容は多岐に渡ります。現在、開発と建築が進んでいる30 m級の地上超大型望遠鏡プロジェクトや、将来打ち上げ予定の大型宇宙望遠鏡計画のセッションでは、現存する望遠鏡・装置では到底検出できない現象を検出可能と語られ、天文学者としてはそれらによる観測結果を知りたくなるものばかりでした。一方、このような超大型計画の実現には多数の技術的課題を克服せねばならず、100名を超える人員体制で各課題に立ち向かっている様子が見て取れました。大型望遠鏡の観測装置は数mのサイズとなり、ちょっとした部品の重量が10トンを超えてしまって移動が困難になる、との発表が印象的でした。SPIEではこのような大規模プロジェクトの講演だけでなく、観測装置に使われる検出器、グレーティングなどの分散素子、補償光学などの各要素についてのセッション、望遠鏡を建設する場所や観測所の運営や観測データの取り扱いなど、個別の要素ごとのセッション、さらに天文学で機械学習や人工知能 (AI) を利用した研究についてのセッションもありました。我々のプロジェクトに応用できそうな技術はあるか、我々のライバルになりそうなプロジェクトはあるか、などの観点で各講演を聴きました。

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▲図2: 基調講演の様子

朝から始まる口頭講演が夕方に終わると、ポスターセッションが始まります。広い会場に100枚以上のポスターが一堂に会し、ポスター講演者による説明と参加者からの質問が行われます。各ポスターの掲載期間はたった1日、つまり翌日にはそのポスターはポスターボードから剥がされてしまうので、そのポスターの講演者と議論するには基本的にチャンスは1日きりです。そのため、ポスター会場は連日満員で大盛り上がりでした。また、多くの参加者がポスター会場に集まるため、以前に知り合った研究者数名と久しぶりの再会ができ、現況の報告や情報交換などができました。このあたりは正に研究会を現地開催するメリットだといえます。

今回のSPIE2024ではTAOに関連して、プロジェクト全体進捗状況報告1件、観測装置の開発状況報告2件、望遠鏡組み立て補助装置の提案1件の計4件を発表しました。

  • The University of Tokyo Atacama Observatory 6.5m telescope:
    project status 2024 (Paper 13094-29)
  • Development of a cold chopper for TAO/MIMIZUKU:
    Repetitive Control (Paper 13100-52)
  • Development of a cold chopper for TAO/MIMIZUKU:
    onboard test on MIMIZUKU (Paper 13100-267)
  • The University of Tokyo Atacama Observatory 6.5-m telescope:
    screen camera system for the telescope mirror alignment
    (Paper 13094-115)

2年後に行われる次回のSPIEでも、TAOプロジェクト関連で発表できるよう、開発を着実に進めていきたいと考えています。



Coffee Break

「コロナ禍を超えて続く SPIE とTAO の関係」

SPIE*(国際光工学会)は、光学、光工学、画像工学の分野における知識の交換・収集・普及を目的とする国際学会で、1955年の設立以来、非営利団体として運営されています。現在世界184カ国25万8,000人以上の構成員から成り、世界の光学関係者・科学者を繋ぐ役割を果たしています。理事会、複数の委員会、会議委員長、ジャーナル編集者などをボランティアチームが運営し、研究者・教育者・産業界と協力しながら、「光」に基づく研究と技術を推進することを使命としています。本部は米国ワシントン州ベリンガムにあります。

* 開設当初、SPIEは「Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers」が正式名でしたが、1981年に「SPIE - The International Society for Optical Engineering」という現名称に変更されました。通称のSPIEはそのまま使われています。

SPIEは多くのコンファレンスがあります。天文学に関するブランチとしては、”SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation”や”SPIE Optics and Photonics”、”SPIE Sensors +Imaging”などがありますが、そのうち”SPIE Astronomical Telescopes + Instrumentation”が主に我々天文関係者が主戦場となる学会になります。その会合が2024年、横浜で開催されました。これまではアメリカとヨーロッパで交互に隔年で開かれていましたが、今回がアジア初開催となりました。実は2020年に日本開催が計画されていたのですが、新型コロナウイルスの世界的感染拡大の影響を受け、実地開催は見送られ、オンライン学会として開催されました。満を辞して本年開催された横浜でのSPIE、参加者総数は2900名を超え、これまでで最大の会合となりました。会場や運営のクオリティの高さも好評だったようです。

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▲(左)2016年モントリオール大会の会場(右)2024年に開催された横浜大会の会場近くの夜景

SPIEでのTAOに関する発表としては、2004年に初めて発表が行われました。このときはTAOサイトであるチャナントール山頂のシーイングモニタリング観測の報告でした。これが20年の時を経て現在のTAO6.5m望遠鏡建設へと繋がっていることは、非常に感慨深いものがあります。以後10回のSPIEで、トータル70件以上のTAOに関連する発表が行われてきました。SPIEでは海外の研究者や技術者との議論も多くあり、TAOの推進にとって重要な場となっています。
TAOプロジェクトの開始と開発、SPIEの設立と発展は時期的に同期しています。今後、TAO6.5m望遠鏡が完成し、観測運用が開始された暁には、さらに一層発表数が増えていくことが予想されます。また新規搭載装置の開発も進めば、新たな展開が見られることも期待されます。今後のTAOの発展は、このような学会への参加・発表数という形でも伺い知ることができるでしょう。

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▲ポスター会場では様々な議論が行われます。
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