SMC 星団 AM3m HW31, HW40, HW41, HW42, HW59, HW63, L91, NGC339 の ワシントン CT1T2 測光を行った。AM3 と NGC339 が 中間年齢、かつ低メタルであることを確認した。 | 残りの7星団の年齢が t = 4.3 - 9.3 Gyr の中・高年齢であると決定した。 この結果 SMC の中間年齢ー高齢星団の数が 60 % 増加した。調べた星団の メタル量は [Fe/H] = -0.7 から -1.3 に亙る。 |
古い星団の数が少ない SMC に高齢星団が存在するかどうかは関心の的であった。 Piatti1 et al. (2011a) は 1 Gyr 以上の星団 43 個を調べ、内 11 個が中間年齢ー高齢 t ≥ 5 Gyr であるとした。しかし、いくつかの試みに拘わらず新しい候補の数は増えて いない。Bonatto, Bica 2010 の SMC 星団カタログには 456 個の星団が載って いるので、この数は僅かに 11/456 = 3 % 以下ということになる。 メタル量ー年齢関係 高齢星団のメタル量は SMC の年齢ーメタル量関係 Piatti et al 2007, Parii et al 2009 の決定に欠かせない。 |
辻本、別来 2010 は その年齢・メタル量関係
の中に 7.7 Gyr 昔に大きな合体が起きた証拠が [Fe/H] の窪みとして記されて
いるとした。従って、それら 11 個のみが中間・高齢星団なのかどうかは、
SMC の進化を考える上で重要な問題である。
SMC 中間年齢星団発見の意義 この論文では SMC の中間ー高齢星団の候補を7個同定した。この数は 60 % の増加となり、年齢・メタル量関係、星団形成率、星団の幼児死亡率に見直し を迫る。 |
NOAN データアーカイブ この研究では、 Canterna (1976), Geisler 1996 の C, T1 ワシントンシステムを用いて SMC 星団の 年齢、メタル量 Piatti et al. (2011a), を決めた。データの整合性を維持するため、我々は NOAO データアーカイブ の中から SMC 星団方向のワシントンシステム画像を探した。その結果、 CTIO 4m 望遠鏡モザイク II カメラ、 8Kx8K CCD、36'x36', から未研究星団 を含む画像を発掘した。 観測データ 表1には使用した C, R, I データのリストを示す。 R は T1、 I は T2 と同等の結果を出し、かつ3倍速いので代用した。 データ処理は NOAO Wide Field Survey チームの報告書に従い、 MSCRED/IRAF を使用した。 Geisler 1996 のワシントンシステム標準星リストからの約 90 の標準星 を観測して、装置等級から天文等級への変換を行った。測光には DAOPHOT /ALLSTAR プログラムを使用した。 図1に測光エラーをプロットした。 |
![]() 図1.等級、カラーのエラー分布。データは NGC339 周辺の 80 arcsec 円。 |
フィールド星の除去 図2には、星団の密度プロファイルを示す。これから決めた星団半径内の 星の CMD から、同じ面積の周辺フィールドの CMD を Bonatto, Bica 2007 統計的差し引き法で除去する。 フィールド星除去から CMD へ 最後にフィールド星除去後のサンプルについて、 (T1, C-T1), (T1, T1-T2) CMD と (C-T1, T1-T2) TCD を作り、 Claria, Lapasset (1986) の基準を補助的に適用して、各星のメンバー度を評価した。 ( ”補助的に”の意味が不明だが、 統計除去にもし個々星のメンバー判定とを重ねると二重除去になる?メンバー度を 調べるだけ?) 丁寧にフィールド星除去を行ったが、結果として得た CMD にはまだ混ざりものが 見出された。 CMD 図3には SMC 星団の (T1, C-T1) CMD を示す。 上段には星団半径内の観測星全て。中段は、周囲等面積内のフィールド星。下段は フィールド星除去作業後である。 |
div align="center">![]() 図2.サンプル星団の密度輪郭 |
![]() 図3.SMC 星団の (T1, C-T1) CMD. 上段:星団半径 内の観測星全て。中段:周囲等面積内のフィールド星。下段;フィールド星 除去作業後。 ( 上段から中断を引く作業で下段になる とは思えない例が見受けられる。どのくらい中立か?) 解析法は 以前の SMC 星団と統一 年齢とメタル量決定法を一様にするため、解析法は SMC 星団に関して、 Piatti (2011) が行った方法と同じやり方を踏襲する。 SMC 距離指数 18.90 を採用した。 赤化には Burnstein, Heiles 1982, Schlege, Finkbeiner, Davis (1998), Haschke, Grebel, Duffau (2011) 減光マップの重み付き平均を採用した。 表2を見ると分かるが、赤化は小さく、そのエラーも小さいので微分赤化は ないと判断した。 年齢 年齢の算定は、レッドクランプと主系列ターンオフの間の T1 等級差を Geisler et al (1997) の式に代入して決める。この方法では絶対測光は必要ないことを注意する。 得た δT1 は表2に示す。それから得られた年齢は 表2の第7列にある。 星の数が小さい場合 δT1 の扱いには注意が必要である。 |
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新しい SMC 中年星団候補の発見 年齢のエラーは大きいがそれでも選んだ星団が 4 Gyr より高齢であること は明らかである。こうして、SMC に新たな中年星団候補を発見した。 AM 3, 5.5 Gyr (Da Costa 1999) と NGC 339, 4 Gyr (Da Costa, Hartziditriou 1998) が年齢基準星団の役割を果たし、我々は Piatti et al (2011) の表19の結果は本論文と整合することを確認できる。一方、 Glatt et al 2010 は HW 31, 40, 41, 42 をそれらが 1 Gyr より若い という仮定で研究した。しかしそれは彼らの測光が浅いせいである。 メタル量 メタル量は、赤色巨星枝を球状星団の基準巨星枝 Geisler, Sarajedini (1999) と比較して決めた。MT1 - (C-T1)o 面上 でのデータ点の散らばりを様々な異なるメタル量巨星枝線に重ねて、 メタル量評価のランダムエラーを決めた。次に、Geisler et al 2003 の処方 により年齢効果を加味したメタル量の修正を行った。こうして決めたメタル量 はモデル等時線からの結果 Piatti et al (2011) ともよく一致した。こうして導いたメタル量は表2の最終列にある。 ![]() 図4a.星団の位置。黒丸=今回の対象星団。白丸= Piatti et al (2011) で扱った 41 星団。バツ= SMC 光学中心。楕円長半径= 2°, 4°. |
年齢のチェック 最後に、 Girardi et al 2002 モデル等時線との比較から導いた年齢を チェックした。入手できたのは Z = 0.001, 0.004 なので、その等時線を用い、 表2の結果を確認した。メタル量の違いは平均して 0,1 dex であった。 星形成爆発モデルがフィットする Piatti et al (2011) のサンプルを加えて、 SMC のメタル増加を調べた。図4a には星団の空間分布 を示す。図4b に SMC の年齢・メタル量関係を示す。実線は Pagel, Tautvaisiene (1998) の星形成爆発モデル。破線=閉箱連続星形成モデル(Da Costa, Hatzidimitriou 1998)。 観測との一致は星形成爆発の方が良い。 もう一つの星形成爆発? しかし、5 - 7 Gyr でのメタル量の散らばりは、Rich et al 2000 が主張するように、 3 Gyr でのはっきりした星形成爆発に加えて、もう一つの追加爆発を示唆する。 この点はより詳細な研究が必要である。 ![]() 図4b.SMC の年齢・メタル量関係。 |
ワシントン CT1T2 測光を SMC 9 星団に対して行った。その結果、
1.フィールド星の統計的除去 星団 CMD を抽出するため、フィールド星の統計的除去を行った。 2.年齢とメタル量の決定 δT1 指数と標準巨星枝法から星団の年齢とメタル量を求めた。 |
3.全て中年星団だった AM 3 と NGC 339 が中年星団であることを再確認した。残りの 7 星団も 中年星団であることを発見した。その結果、既知中年星団の数は 60 % 増加した。 4.メタル量の広がり 今回の星団のメタル量は低メタル [Fe/H] = -0.7 から高メタル [Fe/H] = -1.3 まで分布する。この広がりはさらに研究する必要がある。 |