Synthetic Photometry for Carbon-Rich Giants III. Tracing the Sequence of Mass-Losing Galactic C-Type Stars


Nowotny, Aringer, Hofner, Eriksson
2013 AA 552, 20 - 35




 アブストラクト 

 炭素星の動的大気とダスト形成による星風駆動のモデル計算から、 様々なマスロス率を持つ銀河系ミラ型炭素星の観測を再現し て Whitelock06 の観測データと比べた。 炭素リッチミラ型星の動力学大気モデルは外側の構造が静止大気と大きく 異なる。得られた大気構造に熱化学平衡と LTE 近似を仮定して、モデルスペク トルと等級を計算した。  モデル計算から、星周ダストが SED に与える影響と、光度曲線とバンドの 関係を調べた。モデル系列と観測も対照して調べた。LMC 炭素星との同異も 研究した。今回のモデルは様々なマスロス率の炭素星を再現することに成功した。


 1.イントロダクション 

 ダスト駆動星風に対する恒星パラメターの影響を調べる。 重要なことは、星風の特徴=ダストの種類、マスロス率、星風速度、 光学的厚み等、はモデル計算の結果として現れる物であり、入力 パラメターではないということである。その結果、恒星大気と星周シェル とは整合的に関連付けられる。これに対し、良く用いられる DUSTY のような プログラムでは、輻射輸達の結果はダストシェルのパラメターを選択によって、 コントロールされる。  この論文では、使用するモデルの範囲を比較的狭い範囲に限定し、 その代りにかなり詳しく調べる。



表1.脈動するマスロス炭素星の動的大気モデルの特性。

 2.モデル大気と輻射輸達 

 2.1.大気と星風の結合モデル 

 表1にここで使用するモデルを示す。大雑把に進化が進む順に並んでいる。 モデル R は Hofner, Gautschy-Loidl, Aringer, Jorgensen (2003) から採った。
モデル T, S は Gautschy-Loidl, Hofner, Jorgensen, Hron (2004) から採った。今回我々は C1 と C2 モデルを計算した。

 2.2.モデルスペクトルと等級 



 3.観測データ 

 4.モデル 

 4.1.SED 


図1.モデル T, S, C2 のψ = 0(緑) と 0.5(赤) での R = 360 スペ クトル。黒線=対応静止大気モデル。小枠=非晶炭素のオパシティ。  

図2.モデルT,S, C2 の等級SED。  


 4.2.ダスト層の光学的深さ 


図3.ダスト形成が等級に及ぼす効果。上:大気層の運動。カラー=C-原子の 凝結度。中:ダスト層の光学的厚み変化。下:光度曲線。黒丸=ダスト形成アリ。 白丸:ダスト形成ナシ。

 図3の中段にはモデル S の光学的深さの時間変化が示されている。 外側の定常星風による光学的厚みに重なって、極小期付近で τdust が一時的に盛り上がっている。そこは、上段で R = 2 Rs 付近の狭い領域で ダスト形成が発生している時期である。新たに発生したダストシェルの結果 光学テク深さは ψ = 0.6 付近でピークとなる。

 4.3.変光振幅 


図4.表1のモデル T,R,S,C1,C2 に対する変光振幅。

 図4にはモデル T,R,S,C1,C2 に対する変光振幅を示す。ダスト形成の無いモデ ル T ではバンドに関係なく Δm = 0.6 mag 程度である。これは分子吸収の 影響が小さいからである。その他のモデルでは全てにダスト形成による振幅の 変化が見られる。


 5.モデルと観測の比較 

 5.1.等級変光巾 


図5.炭素星ミラの観測変光巾。

 5.2.カラー 


図6.星間赤化補正後の炭素星ミラの平均カラー二色図。 星間減光補正は Whitelock et al. (2006) の表6による( Drimmel et al. (2003) 使用) 色付きはモデル。 破線= Whitelock et al. (2006) のフィット。


 5.3.マスロス 


図7.マスロス率 - (J-K)o 関係。 Whitelock et al. (2006) の表6による。色丸=モデル。完全さのためモデルTを矢印付きで加えたが、 このモデルはマスロスゼロである。点線=Le Bertre 1997 の銀河系 C−星。 破線=Gullieuszik et al 2012 の LMC C-星マスロス。

 5.4.変光 


図8.K振幅 - (J-K)o 関係。 Whitelock et al. (2006) の表3から採った。点線は眼視でフィットしたガイド線である。色丸 =モデル。モデル S (黄色丸)がバツ印=RU Vir と重なっていることに 注意。



 5.5.輻射補正 


図9.BCK - (J-K)o 関係。 四角=Mendoza65. 実線=Bergeat02 の平均関係線。バツ=COMARCS 静止大気 モデル(Aringer09)。一点破線=近傍炭素星 Kerschbaum et al. (2010) . 点線=LMC炭素星の平均フィット。Riebel et al. 2012. 灰色丸= Whitelock et al. (2006) の炭素星ミラ。破線=それへのフィット。色丸=モデル。

 5.6.周期光度関係 


図10.板その他 2004 の K-logP 図。DM=18.5 で絶対等級に直した。 灰色丸= Whitelock et al. (2006) の炭素星ミラ。色丸=モデル。星周減光の効果が見える。


 6.議論 

 6.1.星種族とモデル 


図11.バーデの窓天体のCMD.Mbol は K(2MASS)+BCK(Montegriffo et al. 1998) で求めた。上辺に Houdashelt et al 2000 表4からの スペクトル型と有効温度を記した。灰色丸= Whitelock et al. (2006) の炭素星ミラ。色丸=モデル。縦破線=炭素星静止大気と動的大気の境。

図12.銀河系バルジ天体の色等級図。灰色丸= Whitelock et al. (2006) の炭素星ミラ。色丸=モデル。左縁矢印はValenti04 による TRGB (見たけどない!)と Marigo08 の TP-AGB 開始等級。


 6.2.(C-O) - [Fe/H] 

 6.3.極端炭素星 



 7.まとめ 

 Whitelock06 データ 

 Whitelock06 のサンプルはマスロス進化の系列に沿って並んでいるように見え る。しかし、それは様々な質量と年齢の炭素星を含んでいるので単純に進化 系列と解釈することは注意が必要である。

 モデル 

 モデルでは上層大気の時間変化を与え、ダスト形成による星風をモデル化した。 以前のモデルと異なる点はマスロスが星のパラメターから決定され、事前に 与えられるものではないと言う点である。

 モデルの成功 

 数種類のモデルパラメターは、単純に脈動を繰り返すマスロス無し星から、 つよいマスロスを行う炭素星ミラまでを表現した。
 モデルの成功 

 数種類のモデルパラメターは、単純に脈動を繰り返すマスロス無し星から、 つよいマスロスを行う炭素星ミラまでを表現した。