Dynamic Model Atmospheres of AGB Stars
III. Effects of Frequency-Dependent Radiative Transfer


Hofner, Gautschy-Loidl, Aringer, Jorgensen
2003 AA 399, 589 - 601




 アブストラクト 

 動力学方程式と輻射方程式を合体して、AGB 星大気の新しいモデルを作った。 脈動による衝撃波、星風も組み込めた。炭素星の場合、モデルは自己整合なダ スト形成の時間変化も表された。  周波数依存輻射方程式の効果を灰色輻射方程式の結果と比較して調べた。非 灰色方程式は適正な密度分布を得るに重要であることが判った。合成スペク トルも示す。


 2.モデル 

 2.1.基礎方程式 

 2.1.1.輻射方程式 

 ガス 

 
 
ガスト輻射場とガスの間の運動量とエネルギー交換式に現れる項は、

 
ここに、 X は J, H, S を表し、X = ∫Xν である。

 

 輻射 

 輻射方程式のモーメンタム方程式は、

 
u/c ≪ 1 の場合上式は簡単化され、

 
となる。

表1.シンボルのリスト




ただし定式化は他の応用も考え、元のままで行った。今回のモデルに は Jorgensen1997 の CO, CH, C2, CN, C2H2, HCN 分子オパシティデータを用いた。輻射方程式は 0.25 - 12.5 μm の 51 周波数において定式化された。LTE を仮定し源泉関数は

 

とした。

 状態方程式 

 状態方程式は γ = 5/3, μ = 1.26 の完全気体とした。 


 2.1.2.ダスト形成 

 ダストの形成と成長 

 Kj = グレイン半径の j-次モーメント。K0=数密度。 また、K3/K0 = 平均粒子体積に比例する。モーメント を用いてダストの成長を追うと、

 
核形成、グレイン成長、蒸発は C, C2, C2H, C2H2 との反応を通じて行われる。

 吸収係数 

 グレイサイズが小さい場合、Qext/agr は agr に依らなくなる。その時、

 
ここに、n(agr)dagr = 半径が agr と agr+dagr の間にある粒子の数密度である。上式の最後 は K3 に比例する。

 Qext/agr 

 この論文で用いた Qext/agr は Rouleau, Martin 1991 から採った。オパシティ以外は Hofner95 と同じ表式を用いている。
 ダストとガスの相互作用 

 簡単化と前論文との比較のため、ガスとダスト間の運動量交換は瞬時に行わ れると仮定する。一方で、ガスとダストの間での内部エネルギーの交換は、 夫々の成分が独立に輻射場と行う相互作用に比べると無視できる、 (Gauger et al 1990)
(ダストとガス分子衝突で、運動量 は渡せても、ダストの温度は伝わらないのか?ふーん。ガッカリ! )
その結果、

 
ここに、S(Td) = B(Td) = Td4σ/π で

 

 ダスト形成 

 現在 O-リッチ環境でのグレイ形成の記述は得られていない。そこで、Bowen88 では、M-星において、ダストなしか、またはダストオパシティを以下の様に パラメター化して表現する。

 
ここに、κdmax =極大ダスト質量吸収係数、 δ = 階段巾である。Tcond = 1500 K、δ = 600K とした。
(ngr の表式なら分かるが、 質量吸収係数にこの表式は何だ? )
この表現は定性的な性質の理解には役立つが、そこから定量的な結論を導くことは 無理である。



表2.炭素星モデルのパラメターと計算結果。R*=初期静止モデルの半径。

 2.2.数値解 

 2.3.初期モデルと境界条件 

 初期モデル 

 図1は初期モデル 152t30c11u2 の上= ρ - T 構造と下= 合成スペクトルである。ダストなしモデルが大気モデルと良い一致を 示すことが判る。

 内側境界 

 内側境界 Rin(t) は周期 P 速度振幅 Δup でサイン曲線 型の運動を繰り返す。内側境界光度は Lin(t) ∝ Rin2(t) で変化する。つまり、内側境界面を通過するフラックスは一定とする。

 外側境界 

 静止モデルでは外側境界は 1.5 R* で十分であった。しかし、星風が始まると それに伴い外側境界位置は伸びていく。最後は 20 - 30 R* にまで達した。

図1.初期モデル l52t30c11u2 の上: ρ - T 構造。 下:合成スペクトル。黒線=モデルから。灰色線=対応する L, Teff,log g からの MARCS モデル。





表3.O-リッチモデル。

 3.構造と力学 

 3.1.ダストフリー動的大気 


図2.質量層位置の時間変化。上:l70t28c14u2. 下:l70t28c14u4. 上と下の違いはΔup のみである。 上モデルでは、大気浮揚が不十分でダスト形成とマスロスは起こらない。 下モデルはどちらも起きる。

 分子吸収による冷却効果 

 図2は質量層位置の時間変化を示す。上図の l70t28c14u2 はダスト形成には 不十分な例である。図3にはこのモデルの数位相における物理量の分布を示す。 図3のパネル (d) はガス温度 Tg と輻射温度 Tr の比を示す。

 
ここに、 S(Tgeq) = B(Tgeq) と Tr は式(18) で定義 されている。灰色オパシティではこの比は1である。しかし、非グレイの場合、 光球より外側では分子吸収が, 星からのフラックスピークより長波長側の NIR と MIR 吸収(発光)係数が大きく、外層で強い冷却源として働く。

 以前の論文との違い 

 源泉関数にプランク関数を使用するので、オパシティ κS はプランク平均である。図3dは従って、κJ が κS から離れると大気のエネルギーバランスにどう影響するかを教えてくれる。

図3.l70t28c14u2 の異なる変光位相における動径構造。

このシリーズの以前の論文では、 κJ と κS の双方にプランク平均を適用 してきた。プランク平均は高目の κJ を与え、結果ガスへの 輻射圧を大きくする。

 まとめると 

 周波数別の輻射方程式は外層を低温、高密度にする。それはダスト凝結と 、そして星風の起動に有利に働く。



図4.モデル l70t28c14u4 の色々な変光位相に対する動径構造。 実線は静水モデル。  

図5.モデル l70t28c14u4 の色々な変光位相に対する動径構造。 実線は静水モデル。


 3.2.ダスト駆動星風 

 モデル l70t28c14u4 の静水スタートモデルは l70t28c14u2 と同じである。 違いはピストン運動の振幅で、外側外層はダスト形成が可能なほど、低温で 高密になる。ダストに働く輻射圧は星風を 11 km/s まで加速する。そのマス ロス率は 2 10-6 Mo/yr である。

 3.2.1.ガスとダストの温度 

 非灰色効果 

 図4(d) は Tg/Tr を示す。分子の冷却が働き、静水平衡の Tg は Tr より 著しく低い。ダスト形成の R = 2 R* 付近で非灰色効果が最も大きく働く 事に注意せよ。
(そう言われても何なのか理解できない、 )

 Tr < Td 

 図5(c) には Td を示す。ガスと異なり、Tr < Td である。これは amC のオパシティが 1/λ で変化し、ダストの吸光も放射も輻射 ピークより短波長側で強いからである。

 オパシティ則の効果 

 図6には仮想的なオパシティ則に対する Td 分布を示す。

 3.2.2.輻射圧とマスロス 

 図5(d) には χH=実際のフラックス平均ダストオパシティ と χGrey=灰色ダストオパシティ との比を示す。 ダストに働く輻射圧が灰色に比べ 2 - 3 倍になることが判る。

図6.上:実線=amC. 点線=Qext' ∝ λ-1. 一点破線=Qext' ∝ λ-2. 破線=一定。
下:上のオパシティに対する温度分布の違い。


 4.観測 


図7.上:グレイモデル P13C14U4 極小の合成スペクトル。 上中:波長依存モデルl13t27c14u4。下中: R Scl. 下: R Lep. 灰色モデルがあまり良く合わないことに注意。

 スペクトル 

 図7には P13C14U4 =プランク平均ガスオパシティモデルと 波長依存モデルl13t27c14u4を較べた。グレイモデルのフィットが悪い。 図8では二つのスペクトル領域での比較を示す。

図8.黒:灰色モデル P13C14U4 極小の合成スペクトル。 赤:波長依存モデルl13t27c14u4。 緑:R Lep





図9.左:点線=p5tou2=グレイ動力学モデル。実線=MARCS モデル。 右:非グレイモデル l10t28osu2 (破線、点線)to 実線=MARCS モデルの比較。

 5.結論 

 動力学モデルと波長依存輻射方程式の結合モデルでないと 上手く観測を説明できないことが判った。