A Three-Dimensional Galactic Extinction Model


Drimmel, Cabrera-Lavers, Lopez-Corredoira
2003 AA 409, 205 - 215




 アブストラクト

 銀河系ぜんたいの3次元減光モデルを Drimmel-Spergel 2001 ダスト 分布モデルに基づいて作った。このモデルは銀河円盤内の任意の点までの減光を 3次元デカルト座標系で与える。  モデル減光を実際の観測値と比較した。それらには可視、赤外での銀河面 近くでの観測も含まれる。特に、近赤外色等級図から銀河面上 8 kpc までの減光を以下に決めるかを示す。


 1.イントロダクション 

 3次元減光マップ 

 個々の星の減光データを用いた3次元減光マップは、 Neckel et al. 1980, Arenou et al 1992, Hakkila et al. 1997, Mendez, van Altena 1998 が研究した。これらは d < 2 kpc の減光 が限界である。これは可視データに基づく減光に依存していることが 原因である。しかし、レッドクランプ星を用いれば、8 kpc 遠方の星を 用いることが可能となる。

 ダスト分布モデル 

(i) 平板モデル
Chen et al 1999 は シュレーゲルらの SFD マップを規格化の基準に用いて ダストの平板分布を導いた。

(ii)軸対称円盤モデル(電波)
Waincoat et al 1992, Ortiz, Lepine 1993 は HI, HII, CO 観測から導いた ガス表面密度をダスト表面密度に直した。ガス対ダスト比はメタル量勾配 も配慮した。

(iii)軸対称円盤モデル(遠赤外)
Spergel et al 1996, Davies et al 1997

(iv)非軸対称円盤モデル(遠赤外)
Drimmel, Spergel 2001, Launhard et al 2002 はワープや渦状腕を 取り入れたモデルを考えた。

 この論文では、 Drimmel, Spergel 2001, のダスト分布モデルに基づいて、減光3次元モデルを提案する。





図2.Mollweide 投影法で示す銀河系の全減光マップのモデル予想図。 上:リスケーリングなし。下:あり。表示は -log Av

 2.銀河系減光モデル 

 減光の計算 

 ダスト分布 ρd(x) が与えられたら、ある点までの減光 Av(x) は 次の式で計算される。

   Av(x) = 1.086 τv=1.086κv0xρdds   (1)

我々のダスト分布は、ワープは入るがその他の点では軸対称で温度勾配の ある円盤、既知 HIIR から導かれる腕、オリオンーシグナス局所腕を含む。

 ダスト分布モデルの修正 

  Drimmel, Spergel 2001, における渦状腕は、 Geogelin, Geogelin 1976, Taylor, Cordes 1993 の HIIR マップに基づいていた。ただデータは 銀河系反対側で欠けているので、腕もそこで欠けていた。円盤全体での現実 的な腕の配置を得るために、Bland-Hawthorn, Maloney 2002 の拡大モデルを 採用した。銀河系モデルの他のパラメタ―は変えていない。 図1は新しい腕によるダスト表面密度分布を示す。新しい腕の拡張により、 COBE/DIRBE マップとのフィットに変更はなかった。これは DIRBE の空間 分解能が粗く、向こう側の腕を分解できないからである。
( 輝度は変わるはずではないか?)
ただ、このモデルは再検討が必要である。というのは、モデルでは |l| < 20 に腕の接点を予想しているが、そのような証拠は FIR マップには見られないから である。

 リスケーリング 

 DIRBE 240 μm データとモデル輝度との違いを方向毎に補正するために、 滑らかなモデルに小スケールの構造を加えた。ある DIRBE ピクセルに対しては、 3つの成分の内の一つを選んでリスケールした。どれを選ぶかは、 柱密度の変化が相対比で最小の成分という基準を採用した。一般には、 銀河面付近では腕が選ばれることが多い。視線にそった選択成分はリスケール ファクター倍される。
(視線方向内で最も寄与の大きい 成分が選ばれる。円盤近くでは自動的に腕となる。それが良い理由は何か? )


 SFD マップによるリスケーリング 

 リスケールされたダスト密度は次の式で表される。

     ρd=Σfiρi      (2)

ここに i = 円盤、腕、局所腕を表す。fi は方向の関数で fi=fi(l, b) である。リスケールされる成分は 1つだけで、残りの fi = 1 である。SFD マップへの リスケーリングは
fdisk = ASFD - Σi≠diskAi(∞)
Adisk(∞)


で与えられる。

図1.渦状腕を伴うダスト分布モデルからのダスト表面密度マップ。 太陽の位置は中心左の点で示される。

円盤成分のみがリスケールの必要がある。高銀緯では ダスト柱密度に寄与するのは円盤のみだからである。
( 低銀緯でも全て円盤が 選ばれるのか?前節では腕が選ばれると書いてあったが、どうなっているんだ? ここでは高銀緯でのリスケールを論じているのかも知れない。)


 リスケーリングの効果 

 図2にはリスケーリングなし(上)とあり(下)の場合について 減光マップを示す。図3,4では低銀緯でおけるリスケーリングの重要性 を示すため、COBE/DIRBE J バンド観測(十字)とリスケールモデルとを 比較した。
( どこにリスケールの利点が 現れているのか不明。J バンドは星の光にダストの減光が加わった図 だな。遠いところの寄与は少ない?)



図3.バツ=COBE による J-バンド放射プロファイル。太線=リスケーリング モデルによるダスト放射予想。




図4.図3と同じだが、リスケーリングなし。

 3.応用 


図5.銀河中心から 15 kpc までの、ダスト渦状腕成分による銀河面上減光 分布。銀河中心は中央。太陽は中心の左側。渦状腕接線方向がはっきり見える。 最高減光量は Av = 5.7 mag である。



グリッド計算 

 先に x, y 方向に 200 pc, z 方向に 20 pc の 30×30×1 kpc グリッド上で減光を計算した。任意の点までの減光はその内挿で与える。 誤差は 0.2 % である。また、局所腕、太陽近傍のためにもっと細かい小体積の グリッドも作った。

 DIRBE ピクセル 

 リスケーリングは DIRBE データと平滑モデルとのズレを調整するために 導入されたので、リスケーリングファクターは DIRBE の各ピクセル毎に 決められている。このため、リスケーリングファクターを引き出す操作は やや複雑である。それは COBE のデータ構造が独特なためである。 以下にその方法が記されているが略する。

図6.ダストの全成分=円盤、渦状腕、局所腕(オリオンーシグナス腕) による減光。最高減光は Av = 37 mag.



腕成分による減光 

 図5には銀河面上での腕成分だけの減光分布を示す。接線方向 の強い減光が明瞭に示されている。

 全成分による減光分布 

 図6には全成分による減光分布を銀河面上で示す。


 4.データとの比較 


図7.低銀緯の代表例 (l, b) = (65, 0) における 2MASS 色等級図。 破線=レッドクランプの選択区域。黒円=等級ごとのレッドクランプピーク。



 ASFD と A&inf; の比較   

 ASFD と リスケール前の A とは両方とも COBE FIR データを用いているが、 手法は全く異なる。そこで、|b| = [5, 40] で両者を比較した結果、 0.096 mag の誤差で合っていることが判った。

レッドクランプ法との比較 

  Lopez-Corredoira et al. 2002 は 2MASS から 1°×1° 領域の (J-K, K) 色等級図を作った。 彼らはそこから抜き出したレッドクランプ星の与えられた見かけ Ks 等級ごとに ピークカラー (J-K)K を決め、以下の式で色超過を得た。

     AK(K) = [(J-K)K-(J-K)0] /1.52     (8)

レッドクランプの絶対等級を MK = -1.65、固有カラー (J-K)0 = 0.75 として、減光と距離が決まる。

 レッドクランプ法の誤差 

 減光の誤差は平均カラーの誤差から決まる。

     σA(K) = σ/(1.52√N)

ここに、σ = カラー分布の標準偏差。ここで与えたエラーは統計的な エラーのみで、固有カラー等の系統誤差は入っていない。

矮星の混入 

 矮星の混入は K = 13 では有効でない。一方 2MASS は K = 14 まで完全 である。この二つの理由で色超過の決定は K = 13 までで行った。

 対象領域 

 彼らはこの方法を銀河面に近い、内側銀河系と外側銀河系の領域で実施し、 満足のいく結果を得た。

図8.(l, b) = (65, 0) でのレッドクランプの等級別の色分布。 白丸: mK = [11.5, 11.8]。十字:mK = [12.1, 12.4]。 黒丸: mK = [12.7, 13]。曲線=フィット。



レッドクランプ法との比較 

 図9、10は幾つかの視線方向で、我々のモデルとレッドクランプ法とを 比較したものである。データある場合には OB 星の観測から決まった 減光 Neckel et al. 1980, 1995, も載せた。我々の減光が 2 kpc までであるのに対し、 レッドクランプ 法は 8 kpc に達している。

 図9:OB 星の効果  

 図9左側は OB 星を含まないりょういきであり、我々の結果とレッドクランプ 法との一致はよい。右側は OB 星を含み、一致が悪い。これは部分的には OB 星でダストが加熱されて FIR 放射が強くなった結果と思われる。 それらが l = 173, 187 で見られる。

 図10: 

 図10には内側銀河系での比較を載せた。典型的な差は 20 % 程度であるが、 腕の接線方向、 l = 30, 50、ではずれが大きくなる。あと色々な接線方向に ついてごちゃごちゃ。





図9.銀河系外側円盤における K-減光。実線=リスケーリングありの モデル。破線=なし。菱形= 1°×1° 領域における 2MASS CMDから求めた減光。アステリスク= OB 星減光(Neckel et al 1995) 大きいアステリスクは指定方向の 0.5°以内の星。小アステリスクは 1° 以内。




図10.銀河系内側円盤における K-減光。実線=リスケーリングありの モデル。破線=なし。菱形= 1°×1° 領域における 2MASS CMDから求めた減光。アステリスク= OB 星減光(Neckel et al 1995) 大きいアステリスクは指定方向の 0.5°以内の星。小アステリスクは 1° 以内。 点線=渦状腕でなくて円盤成分をリスケーリングしたモデル。

 5.まとめ 

 使用注意 

 Drimmel, Spergel 2001 ダスト分布モデルに基づいて、減光3次元マップ を提示した。ただ、このモデルには欠点があるので気を付けよ。 と言って、4−5個の注意を上げた。
レッドクランプ法 

 レッドクランプ法と比較すると、いくつかの欠点が分かった。