Bolometric Corrections for Cool Giants Based on NIR Photometry


Kerschbaum, Lebzelter, Mekul
2010 AA 524, 87 - 91




 アブストラクト 

 低温の巨星に対する輻射補正式をNIR カラーの関数として求めた。恒星の 区分にJHK のみでは不十分で L' が不可欠であることが分かった。  K-L' で3つに分けた O-リッチ星と C-星の4つのグループに輻射補正式 を与えた。そしてそれらを以前に得られた式と比べた。


 2.データベース 

 2黒体でフィット 

 Kerschbaum, Hron 1996, Kerschbaum 1999 による 832 LPV サンプル星 に対し、J, H, K, L' 等級、GCVS にある可視等級、IRAS フラックスを 合わせて SED を作った。Kerschbaum, Hron 1996, Kerschbaum 1999 は 二つの黒体で SED をフィットした。一つは光球、一つはダストシェルである。
 スペクトル型 

 サンプルは 146 C 星、655 K-, M-星、31 S-星を含む。また変光タイプでは 230 Irs, 369 SRs, 233 Miras である。


 3.結果 

 3.1.BKK 対 (J-K) 


図1a.輻射補正 BCK 対 (J-K). スペクトル型 K, M.

   副構造3 

 図1a には BCK = mbol - K と (J-K) の関係を K-, M-型星に対してプロットした。図上には 1, 2, 3 の副構造が見える。 それらの勾配は 2, 0.5, 0 である。副構造間の重複もかなり大きい。 ただし、(J-K) > 2.2 では全てのサンプル星が副構造3に属する。した がってそこでは K 等級が mbol の良い指標となる。 副構造3の星は全てが二つの黒体成分を有していた。しかし、二黒体星は 図1の全体にわたっている。

  

 炭素星の BCK は J-K = 2 まで単調に増加して行く。その先 では傾きが逆向きになって行く。そこで全体を二次式でフィットし、

  BCK =1.70 + 1.35 (J-K) - 0.30 (J-K)2

を得た。

 L-ratio  

 SED フィットから L-rati = Ldust/Lstar が計算できる。 単一黒体でフィットできた137 星はここでは考慮しない。 我々は L-ratio を三つのグループに分けて図2にプロットした。

図1b.輻射補正 BCK 対 (J-K). スペクトル型 C.


図2.O-リッチで、2黒体SED の星に対する輻射補正 BCK 対 (J-K). 黒丸=L-ratio<0.13. 白丸= L-ratio {0.013, 0.025]. 十字=L-ratio≥0.025.  




 3.2.その他の関係 


図3.O-リッチ星に対する輻射補正 BCK 対 (J-K). 黒丸=Irrs. 白丸= SRs. 十字=Miras.

 変光タイプ 

 図3にスペクトル型別の BCK 対 (J-K) 関係を示す。 副構造3 にはミラ型星しかない。しかし、ミラ型星は他の領域にも 分布するので、1対1対応ではない。

 失敗 

 以上の結果、光球とダストシェルの2成分分解では、輻射補正を 表現する助けとして不十分であることがわかった。2MASS による J,H,K データも助けにならない。

 別の分類の必要 

 図4にはサンプル O-リッチ星の (J-K) - (K-L') 二色図を示す。 それらを K-L' で3区分に分け、A, B, C と名付けた。

 図5=新しい分類 

 図5には A, B, C 区画の星の BCK 対 (J-K) 関係を示す。 互いの重なりが殆どなくきれいに分かれている。 グループ A は Bessell, Brett 1988 の固有カラーに良く合っている。 J-K = 1.3 の M5 カラー付近で K-L' が急上昇し始め、黒体ラインに 達する。これがグループ B である。グループ C は黒体に沿って赤くなる。 これはダストシェルの温度を表すのであろう。グループ B はその中間の 過渡的段階である。

図4.O-リッチ星の (J-K) - (K-L') 二色図。 白丸=K0, K3, M1, M5 巨星の固有カラー (Bessell, Brett 1988)

図5.O-リッチ星の BCK 対 (J-K) 関係。図4の3区画 星が重ならない。


 3.3.他の関係式との比較 


表1.BC の線形表示式。

 Bessell, Wood 1984 

 Bessell et al. 1998 モデルに基づく BC に近い。J-K < 2 はグループ A と B の作る三角形の中をを通過する。A, B を区別しなかったためではないか?

 Costa, Frogel 1996 

 Aringer et al. 2009 モデルからの BC に近い。C-星のみ。J-K < 2 は グループ A と B の作る三角形の中を通過する。

 Montegriffo et al. 1998 

 J-K が赤い方でグループAに近づく。グループ B に対してはずれが大きい。

図6.様々な BCK 対 (J-K) 関係の比較。

 Whitelock et al. 2006 

 C-星のみ。A, B グループの平均に近い。

 グループ C 

 グループ C に対する BC は過去の文献にはない。(ホント?)


 6.結論 

 O-リッチ星の正確な BCK を得るには JHK に加え L' が必要で あることを発見した。C-リッチ星の BCK を改善した。  したがって、2MASS に L' データを加えることは非常に重要である。