SDSS/SEGUE から選んだ 23,767 G-型矮星分光サーベイデータを用いて、銀 河系円盤の [α/Fe], [Fe/H] サブ集団毎の密度モデルを作った。その範 囲は R = [5, 12] kpc, |Z| = [0.3, 3] kpc である。単組成準集団はそれぞ れが単純な空間構造を持つ事が判った。それらは垂直方向にはスケール高 0.2 - 1 kpc, 動径方向にはスケール長 < 4.5 - 2 kpc の単一指数関数で記述 できる。 | 組成で選んだ準集団のうち、スケール高最大はスケール長最小になる。これ は単純に幾何学的に厚いー薄い円盤に分解する図式と反する。[α/Fe] を年齢の指標に使える限りで、我々の結果は古い円盤準集団ほど中心集中が 強い。これは「内から外へ」の円盤成長モデルを意味する。スケール高最大の 準集団が最も中心集中度が高いという事実は内的進化を通じての円盤垂直構造 を説明する。 |
![]() 図1.Ivezic08 の測光距離指数とAn09 のモデル等時線距離指数の差の比較、 |
![]() 図2.[α/Fe]-[Fe/H] 空間内での分光サンプルの分布。左上破線=α 老人星領域。右下破線=α若者星領域。点線=α老人サンプルの [Fe/H]メディアンで、α老人サンプルを分割する。 [α/Fe] <: 0.25 では、点線箱(?)は低メタルα若者星を囲む。 |
SEGUE SEQUE = Spectroscopic Extension for Galactic Understanding and Exploration は R = 2000 のファイバー(n=320)分光サーベイである。 g-矮星 我々は SDSS DR7 から G-矮星を単純にカラー、等級切り分け、g-r = [0.48, 0.55], r ≤ 22 mag, で選んだ。G-矮星は寿命 が円盤年齢より長く十分に明るいので構造追跡天体として適している。サンプ ル星のカラーと等級は Schlegel et al. (1998) で補正した。E(B-V) > -.3, S/N < 15 の星は落とす。 (距離無視で円盤の端までの減光適用?) データ処理 データ処理は SEGUE Stellar Parameter Pipeline で処理した。矮星を選択 するため、log g > 4.2 とした。 図1= 距離 個々星までの距離は Ivezic08 のカラー/メタル量/絶対等級 関係を用いた。 メタル量は分光解析の結果を使用した。これらの距離は An09 等時線からの 距離に比べ 10 % 大きい。 (カラー法では年齢、等時線法だと 絶対等級情報が欠けているのでは?) 図2=元素組成 図2には G-型矮星の [α/Fe]-[Fe/H] 分布を示す。分布は (1) 高アルファ低メタル星=古い円盤と(2)太陽アルファ高メタルの2成分 に分かれる。 薄い円盤星 図3に上=古アルファ G-矮星と、下=若アルファ G-矮星の空間分布を 示す。明るい星 r < 14.5 を落としたので、有効最小距離は 600 pc であ る。これは、薄い方の円盤成分に対しては1スケール高内部の星がサンプルか ら欠けることを意味する。それは図2でサンプル星の大部分が太陽メタル以下 であることにも現れている。しかしながら、薄い円盤の星は多いので、1スケ ール高より上にもまだ十分な数の薄い円盤星が含まれている。 |
![]() 図3.上=α老人、下=α若者 G-矮星、の R - Z 空間分布。 |
古アルファ星 表1は古アルファ星サンプルを単一指数関数円盤でフィットした結果と、 二重指数関数円盤でフィットした結果を示す。二重円盤の方が良い。 しかし、支配成分円盤のパラメターはどちらのモデルでも似通っている。また、 より薄い円盤の証拠はない。(第2成分のスケール高は高い。)古アルファ星 サンプルはスケール高 686 pc、スケール長 2 kpc の円盤が支配的である。こ れは Bensby et al. (2011) と合う。また Carollo10 の非直接的な力学的推定 2.2 kpc とも合う。 細分割 これをメタル量やアルファ量で更に分割してゴチャゴチャ言ってる。 |
若アルファ星 表2は若アルファ星サンプルを単一指数関数円盤でフィットした結果と、 二重指数関数円盤でフィットした結果を示す。二重円盤の方が良い。 しかし、支配成分円盤のパラメターはどちらのモデルでも似通っている。若 アルファ星 サンプルはスケール高 256 pc、スケール長 3.6 kpc の円盤が支配的である。 |
![]() 図5.単一組成の準集団のスケール長とスケール高の関係。上;[α/Fe] で 色分け。下;[Fe/H] で色分け。 |
![]() 図6.単一組成の準集団のスケール長、二重指数関数モデルの主成分と 単一指数関数モデルの推定値間の比較: |
スケール長が以前のモデルと逆 我々の研究は円盤を単一組成セット毎に異なるスケール長とスケール高を持つ 成分に分解した。厚い円盤成分ほど動径方向の広がりは小さい。これは、これま で受け入れられてきた幾何学的な円盤の成分分解 Robin et al. (1996), Ojha (2001), Larsen, Humphreys (2003) とは逆である。 単一組成セットの密度分布 全てのメタルサンプル星=古アルファ(厚い円盤)+若アルファ(薄い円盤) の密度分布をフィットすると、先に述べた純粋に幾何学的で成分分解が得られる。 それは、薄い円盤=スケール高 300 pc, スケール長 2 kpc と、 厚い円盤=スケール高 600 pc, スケール長 2.4 kpc である。どちらのスケー ル長も若アルファサンプルのスケール長より短い。その理由は、全サンプルの メタル分布が -1.5 dex まで伸びているので、モデルが薄い円盤成分では多数 の低メタル星が R 大領域に存在すると「期待」するからである。 (そう「期待」したらスケール長が ながくならないか?うーむ。 ) このように、メタル量、アルファ元素量で星の帰属を分けてから分布を調べな いと、実際と基本的に異なる構造分解に導かれる。 |
![]() 図7.組成面上での平均軌道半径の分布。 |
5.4.円盤形成組成セット毎の分布元素組成、特に時間指標度が強いアルファ元素量によって円盤構造がはっき り変化する現象は天の川円盤の形成問題を解く鍵である。第1章で述べたが、 円盤の全体構造は、動径移行があっても、保存されると期待される。しかし、 準集団の動径分布は "mass-weighted" 平均分布に収斂するだろう。 ("mass-weighted" ?) このため、準集団間の動径密度分布の差は真の差の幾分なまされたものとなる。 [α/Fe] が年齢の良い指標 (Schonrich09) とすると、高アルファつま り古い星種族は中心集中が強い=短スケール長を持つ。これは想定される年齢 幅 1 - 10 Ga に渡る銀河系円盤の 「内から外」形成の直接の証拠である。 同年齢では低メタルほど長いスケール長 第2に与えられた [α/Fe] =年齢、に対しては低メタル準集団ほど 長いスケール長を持つ。 Cheng et al. (2012). これは我々の G-矮星サンプルの軌道計算からも確かめられた。図7に示すように、 [α/Fe] < 0.25 で低メタルの星は薄い円盤星で、高メタル星よりも 大 R で過ごす期間が長い。 |
5.5.円盤進化 |
(1)組成セット毎の銀河系円盤 (R, Z) 構造を得ることが出来るようになった。
(2)SDSS/SEGUE G-型矮星のアルファ-メタル単集合を使い、円盤を分解できた。 各成分は動径、垂直方向に指数関数型分布関数でフィットできる。 (3)高アルファ=高齢になって行くにつれ、スケール高が増大し、スケール長は 減少する。 |
(4)もしサンプルを二つに分けると、
高アルファ成分はスケール長 2.0 kpc, スケール高 686 pc,
低アルファ成分はスケール長 3.5 kpc, スケール高 256 pc である。
(5)これは「内から外」説を支持する。 (6)成分間の年齢、スケール高、スケール長のきつい相関は進化機構の 手掛かりである。 |