Fitting a Galactic Model to an ALL-Sky Survey


Larsen, Humphreys
2003 AJ 125, 1958 - 1979




 アブストラクト 

 POSS I による APS Catalog の星計数を用いて、銀河系モデルを作った。 星計数データをフィットするため、円盤、ハロー、厚い円盤の3成分モデルを 作った。GA = genetic algorithm を用いて、銀河系の全体パラメタ―を決める。  結果は, c/a = 0.5 - 0.6 の平坦化した内側ハロー、円盤スケール長 3.5 kpc、厚い円盤のスケール高 900 pc を得た。最も驚くべきは、厚い円盤のス ケール長が > 4 kpc と円盤より大きい事である。



図1.使用領域の Aitoff 表示。  

図2.POSS 乾板 P103 での星像直径-等級較正。  



図3.POSS 乾板 P103 の色等級図。北銀極方向である。  

図4.減光見積もりと Schlegel98 との比較  


図5.銀河の銀緯分布  


 4.Genetic Algorithm 

 GA=ジェネティックアルゴリズム 

 ジェネティックアルゴリズム(進化論的計算手法)はHolland 1975 が提唱 した自然淘汰の概念を最適パラメターの捜索に用いる計算手法である。基本的 には、パラメター空間内から無作為に選んだ候補解の集合のメンバーに適応点 を付ける。次に、それらの中から子供解が作られる。解の全てが適応点に応じ て子供解に貢献する。黒点の低い解は再生頻度(?)が低く、解集合から消え て行く。過去の解集合の歴史により、淘汰圧で新しい探索が定められる。 この方法の利点は使用の容易さにある。GA に必要なのはパラメターに許される 領域範囲と評価関数=銀河モデルだけだからである。

 天文への応用 

 GA 自体は 1960 年代から存在した。しかし他分野での応用は比較的最近で ある。 Charbonneau 1995 には天文への応用が述べられている。この解法は 全領域での最大を保証しないが、許容できる解を許容できる時間で見つけ出す。

 GA の操作 

 GA の操作は単純である。(1)解答候補の集合をつくる。(2)各解の適 合度を評価する。(3)選択と再生産から次世代の解答集合を作る。この 仮定を収束まで続ける。図6にその例を示す。GA はまずベストフィット近く までかなり急速に近づく。その後は変異作用により緩やかにベストフィット まで接近することが判る。

図6.世代=generation による適合度 fitness の変化。 黒丸=世代平均適合度。黒星=世代内の最適合度。





表6.全88領域へのフィットの結果

 5.GA による銀河系モデル 

 ハロー 

 ハローの軸比は c/a = 0.5 - 0.6 とかなり平たい。これは内側ハローに対 して以前から見出されている値に近い。観測が深く遠くまで行けばより外側 の球対称ハローが見えてくるだろう。de Vaucouleurs radius =4.3 kpc は よく言われる 2.7 kpc より大きい。

 円盤 

 スケール長 - 3.5 kpc は 3.5 kpc (Gilmore84, Bahcall86) に近い。 しかし、 Robin et al. (1996) の 2.5 kpc とは合わない。他にも短いスケール長としては、 Ortiz93, Ruphy96, Porcel98 などが Ro 8 kpc で L=2.0 - 2.6 kpc を出し ている。Drimmel01 は COBE DIRBE データを使い 2.2 kpc とした。 Ojha (2001) は 2MASS データから 2.8 kpc とした。 Lopez-Corredoira et al (2002) はフレアリングを考えると 3.5 kpc であるとした。
 厚い円盤 

 これまでの研究 Gilmore (1984), Reid (1993) は高いスケール高 1.2 - 1.4 kpc と低い局所密度を与えた。一方、 Robin et al. (1996)、 Buser99 は低いスケール高 600 - 900 pc と高い局所密度 4 - 6 % を見出した。我々の結果はそれらの中間で、スケール高 900 pc, 密度 2 - 3 % である。これは Ojha (2001) が 2MASS から得た結果に近いが、彼のスケール長 3.7±0.2 kpc は我々のスケール長 4.7 kpc とは異なる。Gilmore などの以前の研究 では厚い円盤のスケール長は円盤と同じと仮定されていた。 Robin et al. (1996)、 は厚い円盤のスケール長を円盤と独立に測り、 2.8 kpc を得た。

 銀河観測 

 de Grijs97 は横向き銀河の観測から厚い円盤のスケール高、スケール長 が円盤より大きいことを見出した。


 7.結論 

 GA を用いた我々の最初の実験はそれが星計数を使った銀河モデルの全体的 最適化に有用なことを示した。この方法は整約の追加が著しく容易である。」