Properties of Carbon Stars in the Solar Neighbourhood Based on the Gaia DR2 Astrometry


Abia, de Laverny, Cristallo, Kordopatis, Straniero
2020 AA 633, 135 - 149




 アブストラクト 

 Gaia DR2 で視差の誤差 20 % 以下の炭素星 210 個を選んだ。 N-型と SC-型星の合成光度関数は Mbol = -5.2 mag をピークとするガウシアン で表現可能である。以前に得られた光度関数と比べると両側のすそ野はより長く尾を引いている。 太陽メタル量の AGB 炭素星は Mbol = -6 mag まで達する可 能性がある。これは以前に銀河系ミラ型炭素星で得られた結果と矛盾する。 J-型星は N-, Sc-型星より 0.5 mag 暗い。R-型高温炭素星は以前の値より 0.5 mag 明るくなった。  N-, SC-, J-型星の空間分布と運動特性は非常によく似ている。一方、 R-型星 の 30 % は銀河面から 500 pc 以上離れている。その速度も LSR から離れてい る。
 N-, SC-星の光度関数は 1.5 - 3 Mo の AGB 光度と合致する。暗い尾の星は 外因性の低質量炭素星からの寄与を必要とする。明るい方の尾は炭素星質量が 5 Mo まで伸びる可能性を示唆する。J-型星は化学組成のみならず、光度関数 も異なり、その起源は不明である。空間分布と運動学は N-, SC-, J-型星は 薄い円盤種族に、 R-型星は厚い円盤種族に属することを示す。


 1.イントロダクション 

 炭素星質量上限値 

 AGB 星は星からのマスロスの > 50 % を占め (Wallerstein et al 1997)、 かつ中間年齢種族の指標として使用できる。その著しい特徴の一つが炭素星で ある。炭素星形成の下限は太陽メタルで約 1.5 Mo で、その値は メタル量に伴って変化すると考えられている。上限ははっきりしない。モデル は hot bottom burning の結果、3-4 Mo より上では炭素星になれないとして いる。しかし様々な物理プロセスが影響し、正確な上限値を出すことは難しい。 高質量 AGB 星の観測的研究から上限値を制限することは、その質量、光度を 決める困難さを別にしても、難しい。
 Gaia DR2 

 Gaia DR2 により 距離、光度が分かるようになった。さらに Gaia LPV カタログ Mowlavi et al 2018 には ΔG > 0.2 以上の 151761 星が 載っており、多くの炭素星が含まれる。





図.

 2.サンプルと分布 

 炭素星サンプル 

 銀河系 AGBs のサンプルを集めた研究としては、 Claussen, Kleinmann, Joyce, Jura (1987), Willems (88a), Willems (88b), Jura, Joyce, Kleinmann (1989), Jura, Kleinmann (1989), Groenewegen et al. (1992) がある。

 Claussen87 サンプル 

 Claussen87 が最も広範で、明るい炭素星を扱っている。そこで、 今回の研究はこのサンプルに基づいて行う。それらは TMSS カタログから 採られたので K < 3 mag, δ = [-33, 81] の炭素星である。214 炭素星が含まれる。スペクトル型は Simbad データベースから採った。

 Gaia DR2 

 zGaia DR2 の歳差測定が良いものを、 ε(ω)/ω < 0.20 という条件を課した。サンプル星の 85 % 以上はこの比が 0.1 以下であ る。このように精度が高い場合には Bailer-Jones et al 1989 の方法による 距離は視差の逆数とほぼ同じである。このフィルタリングの結果、 SC = 10, J = 22, N = 143 が残った。加えて比較のために、 M = 10, R-hot = 35 星を選んだ。

 距離と視線速度 

 距離の決定には Bailer-Jones et al 1989 の方法を適用した。視線速度 には、 CO 観測、Pulkovo Compilation of Radial Velocities (Gontcharov 2006), Simbad, Gaia Vrad の順の優先度で探した。Gaia の視線速度決定 波長帯は炭素星には向いていない。

 RUWE 

 RUWE =renormalized unit weight error は Gaia 位置精度のチェックに 使われ、多重性の可能性やそのほかの問題の程度を表す。通常 RUWE > 1.4 は位置フィットが悪い場合に相当する。我々のサンプルでは 70 % が RUWE < 1.0, 90 % が < 1.2, 94 % が RUWE < 1.4 である。 したがって、この研究で使われる距離の信頼度は高い。また、DR2 のデータ 処理にはカラー、等級項が含まれている。星表面の巨大斑点の影響も無視で きない。しかし、全体としては Gaia データは使えると判断する。

図1.今回の 139 炭素星サンプルに対するヒッパルコスとガイアの視差の比 較。エラーはヒッパルコスでは、50 % 以上に及ぶ。Gaia では 15 % 以下であ る。エラーバーは見やすさのため省いた。

 図1=視差の比較 

 図1にはヒッパルコスとGaia の視差を比べた。 ω < 1 mas では ヒッパルコス視差が大きめに出る。ω > 1 mas では点の分布は等視差線の両側に対照的に分布するが、  ω < 1 mas では系統的にヒッパルコス値が大ききくなる。 この差はヒッパルコスで決めた光度が小さく出ることを意味する。





図2.左:銀河面上の炭素星分布。青=N, 赤=J, 緑=SC, 茶=R-hot. 右:断面分布。Ro = 8.34 kpc.

 X-Y 面分布 

 図2にはサンプル星の位置を示す。個々星の X, Y, Z, R 不定性は 500 モンテカルロ実験の分散から決めた。
(具体的内容は不明)
左側の図から、太陽 1.5 kpc 以内の N, J, SC 星分布は一様に見える。また 方向による集中も見られない。この結果は Claussen, Kleinmann, Joyce, Jura (1987), が述べている、サンプルが 1.5 kpc 以内で完全という主張を裏付ける。

 R-Z 面分布 

 N-, J-, SC-星全体を指数関数でフィットした結果はスケール高 zo = 180±20 pc であった。
 スケール高 

 このスケール高を Miller, Scalo (1979), の主系列星統計と比べると炭素星の前駆星質量範囲が出る。スケール高 160 - 190 pc は 1.5 - 1.8 Mo に対応する。一方、 R-hot 星は |Z| < 1 kpc では 一様に分布し、|Z| 平均値は 510 pc である。これは R-hot 星の年齢が古く、 質量が小さいことを意味する。





図.

 3.炭素星の Gaia DR2 光度 

  

 低温巨星の輻射補正 BC は色々提案されているが、未だ決定版がない。ここ では Kerschbaum, Lebzelter, Mrkul (2010) の 4 本の BCK 式の内、炭素星用を採用する。参照用 O-リッチ星 に対しても彼らの M-型星用 BCK を使う。

  

 

  

 

図3.スペクトル型毎の光度分布。  





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.


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