.scnにはプロファイルデータが記述される

基本構造

拡張子".scn"のファイルにはスペクトルデータが格納される。 ひとつのファイルがひとつのプロファイルに対応する。 このファイルはUNIX-OSあるいはLinux-OSによって直に扱われるので、 ふつうに mv, cp, rm, ls することができる。 ファイル中には、スペクトルの値、および"ヘッダ"と呼ばれるデータが含まれる。

ヘッダ

.scn ファイルおよびフローには、ヘッダとして次の情報が含まれる。 number, name, etc.は値の種類(numberなら数字 ...など) あるいは可能な選択肢を示す。
それらはC言語における構造体のメンバーに対応するが、 同じ名前ではない。詳細は開発者向けのページを参照のこと。

  1. "システムヘッダ"
    file_length number
    バイト単位での.scnファイルの長さ。最新版の.scnファイルでは、この値は "ls -l"の結果と一致する。
    header_length number
    バイト単位でのヘッダの長さ。
    format_id spectrum | cube
    ファイルの基本構造。".scn" ファイルは "spectrum" である。
    version number
    ファイルのバージョン番号。
    data_type Ta | frequency_switch | Tmb |Integ_Ta | Integ_Tmb | RawLong | RawFloat | ID_number
    物理的な意味でのデータのタイプ。
    Ta - アンテナ温度 (K)
    frequency_switch - 周波数スイッチの折り畳まれていない出力。 アンテナ温度 (K)
    Tmb - 主ビーム輝度温度 (K)
    Integ_Ta - 積分アンテナ温度 (K km/s)
    Integ_Tmb - 積分主ビーム輝度温度 (K km/s)
    RawLong - 生の出力 (全パワー)
    RawFloat - 生の出力 (全パワー) の浮動小数表示
    history_step number
    履歴のステップ数 ("end" ステップはカウントされない)。
    history_line number
    履歴の行数。
    original_scan_number number
    もとのスキャン番号。 この番号は観測プログラムの ASTROS によってつけられる。
    backup_version version_number
    "save" コマンドを使う際に必要になるバックアップバージョン番号。 作成されたバックアップファイル名にこの番号がつく。
    composed_scans number
    もとになった .scn ファイルの数。"integ" 処理によってこの数は増える。
  2. "観測パラメータ"
    project name
    プロジェクト名。16 文字以内。
    scd_name file_name
    ASTROS が使った .scd ファイルの名前。8 文字以内。
    scd_line_number number
    ASTROS が使った .scd ファイル中の行番号。
    sw_mode total_power | onoff | frequency_switch | Dicke | ID_number
    データ取得時のスイッチングモード。
    total_power - 全パワーモード(受信機からの直接出力)
    onoff - on-off スイッチ
    freqency_sw - 周波数スイッチ
    Dicke - Dicke スイッチ
    observed_mjd MJD
    観測時刻の修正ユリウス日表記。
    observed_start_time in_sec_from_1970.0
    プロファイルの観測開始時刻。1970/1/1 0:0:0 UTC からの秒数で測られる(UNIX/Linux 標準)。
    observed_stop_time in_sec_from_1970.0
    プロファイルの観測終了時刻。1970/1/1 0:0:0 UTC からの秒数で測られる(UNIX/Linux 標準)。
    integration_on_time sec
    on 点の積分時間(秒)
    integration_off_time sec
    off 点の積分時間(秒)
    observer1 name
    第 1 観測者の名前。8 文字以内。
    observer2 name
    第 2 観測者の名前。8 文字以内。
    observer3 name
    他の観測者の名前。8 文字以内。
    observer4 name
    他の観測者あるいはデータ処理者の名前。8 文字以内。
  3. "天体情報"
    object name
    天体名。15 文字以内。
    coordinates lb | radec | radec-app | ID_number
    基準座標系。この座標系に対して局所 xy 座標も定義される。
    lb - 銀河座標。l(II) , b(II) と呼ばれる。
    radec - B1950.0 における赤道座標。平均位置。
    radec-app - 観測時における赤道座標。視位置。
    l angle_value
    on 点の銀経。angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    b angle_value
    on 点の銀緯。angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    ra angle_value
    on 点の赤経 (B1950.0)。平均位置。 angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    dec angle_value
    on 点の赤緯 (B1950.0)。平均位置。 angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    az angle_value
    on 点の方位角。 angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    el angle_value
    on 点の高度。 angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    off_l angle_value
    off 点の銀経。angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    off_b angle_value
    off 点の銀緯。angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    off_ra angle_value
    off 点の赤経 (B1950.0)。平均位置。 angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    off_dec angle_value
    off 点の赤緯 (B1950.0)。平均位置。 angle_value が単なる数値として与えられている場合には、 コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。
    orig_x angle_value
    局所 XY 座標の原点の経度方向の位置。angle_value が単なる数値として与えられている場合には、コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。基準となる座標系はキーワード "-coordinates"によって与えられる。
    orig_y angle_value
    局所 XY 座標の原点の緯度方向の位置。angle_value が単なる数値として与えられている場合には、コマンドはこれを "度" 単位であると解釈する。基準座標系はキーワード "-coordinates"によって与えられる。
    position_angle deg
    局所 XY 座標の原点における位置角。単位は度。値が 0 のときは、 局所座標の X 軸・Y 軸は基準座標の経度・緯度とそれぞれ平行になる。 値が 90 のときは、局所座標の Y 軸が基準座標の経度と平行になる。 基準座標系はキーワード"-coordinates"によって与えられる。
    x angle_value
    on 点の局所 XY 座標における X 方向の位置。angle_value が単なる 数値として与えられている場合には、コマンドはこれを "度" 単位であると 解釈する。基準座標系はキーワード"-coordinates"によって与えられる。
    y angle_value
    on 点の局所 XY 座標における Y 方向の位置。angle_value が単なる 数値として与えられている場合には、コマンドはこれを "度" 単位であると 解釈する。基準座標系はキーワード"-coordinates"によって与えられる。
  4. "望遠鏡/アンテナ情報"
    telescope_name name
    プロファイルを得るのに使われた望遠鏡の名前。8 文字以内。
    ap_eff absolute_value
    望遠鏡の開口能率。%単位ではなく、0.0 と 1.0 の間の値。
    mb_eff absolute_value
    望遠鏡の主ビーム能率。%単位ではなく、0.0 と 1.0 の間の値。
    fss_eff absolute_value
    望遠鏡の forward scattering and spillover 能率。 %単位ではなく、0.0 と 1.0 の間の値。
    beamsize arcmin
    ビームの FWHM。単位は arcmin。
  5. "受信機情報"
    rx_name name
    受信機の名前。7 文字以内。
    sideband lsb_ssb | lsb_dsb | usb_ssb | usb_dsb | ID_number
    観測のサイドバンドモードと信号のサイドバンド。
    lsb_ssb - 信号は LSB、観測モードは SSB。
    lsb_dsb - 信号は LSB、観測モードは DSB。
    usb_ssb - 信号は USB、観測モードは SSB。
    usb_dsb - 信号は USB、観測モードは DSB。
    v_lsr km/s
    プロファイルの、局所静止基準(LSR)に対する「中心速度」。単位はkm/s。 「中心速度」とは、そのプロファイルに対して標準として参照される速度を指す。 たいていは目標天体のLSR速度に一致するはずである。 プロファイルの実際の中心とは異なることもある。
    v_off km/s
    off点におけるプロファイルの、局所静止基準(LSR)に対する「中心速度」。単位はkm/s。 データが周波数スイッチで取得されていない限りほとんど意味はない。 「中心速度」とは、そのプロファイルに対して標準として参照される速度を指す。 たいていは目標天体のLSR速度に一致するはずである。 プロファイルの実際の中心とは異なることもある。
    rest_freq GHz
    観測する輝線/吸収線の静止周波数。単位は GHz。
    obs_freq GHz
    受信機の観測周波数。単位は GHz。
    local_freq GHz
    LO の周波数。単位は GHz。
    if_freq GHz
    一次 IF の周波数。単位は GHz。
    local_multiplier_order number
    LO の逓倍器の次数。ダブラーなら 2、トリプラーなら 3。
    T_sys K
    大気吸収込みシステム雑音温度。単位は K。
    T_rx K
    受信機雑音温度。単位は K。
    data_rms K
    プロファイルの rms ノイズレベル。単位は K。
    calibrator_temperature K
    キャリブレータの輝度温度。
    data_weight value
    プロファイルの重み。ふつうは rms ノイズレベルから計算される。 数値でなく "rms" という単語を指定すると、コマンドは ヘッダに書かれている rms レベルから計算された重みを新たに与える。 integなどのコマンドによって使われる。
    data_scale_factor value
    データをケルビン単位に換算するためのスケーリングファクター。 浮動小数値 "profile.data[ch-1]" にこの値を乗ずることでケルビン単位の電波強度が得られる。 数値のかわりに"norm"という語を与えると、 データの値がスケールされた値にじかに書き換えられ、 data_scale_factorの値は1にリセットされる。
  6. "バックエンド/検出器情報"
    backend name | -be_name name
    バックエンド分光器の名前。8 文字以内。
    backend_channel_number number
    バックエンドの全チャンネル数。2048 以下。
    backend_basis_ch number
    バージョン 3 以降では無意味。"-be_center_ch" と同じ意味だった。
    backend_ch_sign 1 | -1
    バックエンドチャンネルの極性。正の値のときは、 バックエンドの周波数が高くなるに従って RF 周波数も高くなる。 負の値のときは逆。
    data_ch number
    データのチャンネル数。もともとはバックエンドのチャンネル数と 同じであるが、smooth などの 処理によって変わる。
    be_center_ch value
    使用されたバックエンドの「中心チャンネル」。 「中心チャネル」とは、バックエンドのチャンネル数と周波数との関係を評価するときに 標準として参照されるチャンネルを指す。 "backend_channel_number" の半分であったりすることもある。
    be_center_freq MHz
    バックエンドの「中心周波数」。単位はMHz。 「中心周波数」とは、分光計のチャンネル数と周波数との関係を評価するときに 標準として参照される周波数を指す。 プロファイルの周波数範囲の真ん中であったりすることもある。
    be_disp0 MHz
    分光器の分散関数の 0 次の係数。単位は MHz。
    be_disp1 MHz/ch
    分光器の分散関数の 1 次の係数。単位は MHz/channel。 バージョン3以降のデータでは、「チャンネル」は現在のデータチャンネルを指す。
    be_disp2 MHz/(ch^2)
    分光器の分散関数の 2 次の係数。単位は MHz/channel^2。
    be_disp3 MHz/(ch^3)
    分光器の分散関数の 3 次の係数。単位は MHz/channel^3。
    be_disp4 MHz/(ch^4)
    分光器の分散関数の 4 次の係数。単位は MHz/channel^4。
    be_freq_resolution MHz
    バックエンドの周波数分解能。単位は MHz。 これはオリジナルの値で、現在の実効分解能ではない。
    be_ch_width value
    オリジナルチャンネルのビニング幅。バージョン3以降のデータでは無意味。
    be_ch_origin value
    オリジナルチャンネルのビニング始点。バージョン3以降のデータでは無意味。
  7. "観測ログ"
    site_name name
    観測地の名前。8 文字以内。
    atm_temp C
    観測時の気温。単位は°C。
    atm_water hPa
    観測時の水蒸気分圧。単位は mbar あるいは hPa。
    atm_press hPa
    観測時の大気圧。単位は mbar あるいは hPa。
    optical_depth_at_zenith value
    観測時における天頂の光学的厚さ。
    observation_memo free_memo
    メモ。64 文字以内の ASCII 文字列。
    observation_comment free_comment
    コメント。64 文字以内の ASCII 文字列。
  8. "データ処理履歴"
    history
    データ処理の履歴。処理をおこなった時刻およびパラメータも書かれる。
  9. "データフラグ"
    spurious_flag 0 | 1
    すべてのチャンネルはスプリアスフラグを持っており、 0 は off (スプリアスではない)、1 は on を示す。
    baseline_flag 0 | 1
    すべてのチャンネルはベースラインフラグを持っており、 0 は off (ベースラインではない)、1 は on を示す。
  10. "プロファイルデータ"
    data[ch-1]
    実際のデータ。配列の引数は 0 から始まるが、 これをチャンネルの 1 番目と数える。したがって、 C 言語での data[ch-1] は チャンネル ch のデータに相当する。

参照

headlist, headcorr, sdbselect

バグ

履歴

ver.1
1992/4/17 T.Handa
ver.3
1997/11/12 T.Handa

マニュアルのバージョン

1998/5/13 T.Handa
1999/4/20 T.Handa
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