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銀河中心部の宇宙のちり
― 極小「ドーナツ」の大きさを測る
東京大学、国立天文台、オーストラリア国立大学合同のマグナム計画研究グループ (代表:吉井讓 東京大学教授)は、NGC4151 活動銀河核の可視光と 赤外線によるモニター観測を行ない、中心部をとりまくように分布する宇宙塵の 存在を確認し、中心部から宇宙塵までの距離を最も高い精度で決定しました。 これは見かけの大きさがおよそ 1000 分の 1 秒角という極めて小さな構造で、 今回の結果は活動銀河の中心核構造の解明に継がると期待されます。 渦巻銀河 NGC4151(図 3) は その中心部の極めて狭い領域から莫大なエネルギーを放射しています。 このように銀河中心部に特別に活発な活動性が存在する現象を 活動銀河核と呼んでいます。 活動銀河核の構造の見かけの大きさは極めて小さく、通常の 光学望遠鏡では空間分解能が不足して「点状」にしか見えません。 そこで我々は NGC4151 活動銀河核の明るさの変化を 可視光と近赤外線の異なる波長で継続的にモニター観測し、 可視光の変光から遅れて近赤外線が変光する現象をとらえ、 その遅延時間を 48(+2-3)日と精密に測定しました(図 1)。 今回とらえた近赤外線の変光の明瞭な遅れは、 紫外線および可視光を放射している活動銀河核の中心部をとりまくように分布して 赤外線を放射している宇宙塵の存在が疑いようのない事実であることを証明しました。 また、今回の遅延時間の測定はこれまでの同様の研究のなかで最も高い精度に達しています。 この遅延時間の大きさは活動銀河核の中心部からそれをとりまく宇宙塵の分布まで の距離がおよそ 0.1 光年であることを示しています(図 4)。 さらに我々はこれまでの同様の研究と我々の観測結果を比較し、 明るい活動銀河核ほど可視光の変光から近赤外線の変光までの遅延時間が大きい、 つまり活動銀河核の中心部からそれをとりまく宇宙塵の分布までの距離が 大きいことを示しました(図 2)。 これは宇宙塵の蒸発温度がほぼ一定であり、 より明るい活動銀河核ほど中心部からの強力な紫外線にさらされて より外側まで宇宙塵が蒸発してしまうためであると考えられます。 この結果は 2004 年 1 月 1 日発行のアストロフィジカルジャーナル誌に掲載される予定です。
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