動力学的大気モデルを計算して、脈動で強化されたダスト駆動星風を再現し、 スペクトルに与える効果を調べた。脈動が大振幅の変光を引き起こす一方、星風 に含まれる非晶炭素ダストは強い赤化に導く。モデルスペクトルから測光等級 を計算し、観測と比べた。 | 星周ダストによる赤化はダストを持たない静止大気と較べ非常に赤いカラーを もたらす。炭素ミラの例として RU Vir を取り上げモデルと比較した結果、 BVRIJHKL 光度曲線の振る舞いに良い一致を得た。 |
炭素星の静止大気モデル Aringer et al 2009 では炭素星大気モデルグリッドを計算して観測と比べた。 その結果 Teff ≥ 2800 K では良い一致が得られた。しかし、それより低温 になると、右図に明らかなように不一致が目立つ。 ずれの第1原因は脈動で、第2は星周ダストによる減光である。 べリリンモデル 動力学ベルリンモデル、Fleischer et al 1992, Winters, Le Bertre, Jeong, Helling, Sedlmayr (2000) を用いて、 Winters, Fleischer, Gauger, Sedlmayr (1994) は 0.5 - 20 μm における変光曲線をモデル化した。彼らは、ダスト形成により 変光曲線の非対称性が生じる可能性を論じた。 オーストラリア・ハイデルベルグモデル M-型脈動星の Hofman, Scholz, Wood 1998、Tej et al 2003 による オース トラリア・ハイデルベルグモデルを用いて、Ireland, Scholz, Wood 2004, Ireland, Scholz (2006) は分子とダストのオパシティが変光曲線に及ぼす影響を調べた。 二つのモデルの欠点 Nowotny et al. 2005a は二つのモデルには以下の欠点があるとした: (i) ベルリンモデルはダストなし光球部の扱いに分子吸収を入れず、灰色近似輻射 方程式を使用していて不十分である。 (ii) オーストラリア・ハイデルベルグはダスト形成と星風の存在を許さない。 我々は Hofner, Gautchy-Loidl, Aringer, Jorgensen (2003) のモデルを使用した。このモデルは上の二つの欠点を克服している。つまり、 波長依存のオパシティを使い、波長毎の輻射方程式を解き、時間依存のダスト形成 を組み込んでいる。その結果、脈動するマスロス大気外層の整合性の良い記述を 得ることが出来た。 |
![]() 図14ofAringer09.COMARCS モデル(Z/Zo=1, M/Mo=2)による Teff と (J-K) の関係。log g [cm/s~sup>2] と C/O の違いを色で表現している。 アステリスク= Bergeat et al 2001 の観測。 論文の目的 (i) 第一論文で使用したダストなし静止大気モデルの適用限界を明らかにする。 (ii) 脈動ととマスロスが SED に及ぼす影響を調べる。 (iii) 観測との比較からモデルの妥当性を調べる。 |
![]() 表1.脈動マスロス炭素星の動的大気のモデルパラメター。 2.1.動的モデル大気2.2.モデルスペクトル2.3.モデル等級 |
![]() 図1.灰色=ダストなし静止大気の R18000 スペクトルとその図中に示す平滑化。 上:全波長域表示。中:狭い範囲の拡大図。下:低分散スペクトルのoversampling の影響(?) |
![]() 表2.RU Vir(C-ミラ)の物理特性。 |
![]() 図2.C-ミラ RU Vir (Whitelock 2006 サンプルより)の変光曲線。 黒点= AAVSO visual mag. 赤丸=K mag. (Whitelock et al 2006) 矢印=JD2447336 (ψV=0) RU Vir の特徴は我々のモデルSと似ていることがわかった。ただし、フィッ トを意識してモデル S を計算したわけではない。 |
![]() 図A1.モデルS大気の運動。カラー=炭素グレインに凝結した C 原子の割合。 |
![]() 図3.様々なオパシティ種がスペクトルに及ぼす影響をダストなし静止大気モ デルと動力学モデル S (位相 ψ=0)を使って示す。異なるオパシティ種が 事後輻射伝達に使われた。 中:分子吸収に寄与している分子種を書き込んだ。 下:測光バンドとフックス(リニア表示)挿入枠=炭素オパシティ |
![]() 図4.オパシティによる等級変化。初期動モデルと ψ = 0.31 での結果。 動力学モデルの縦線は変光位相による変化巾。 ![]() 図5.二色図へのオパシティ種の影響。 |
![]() 図6.モデルSの初期とその後の4位相でのスペクトル変化。 |
![]() 図7.モデルS 光度曲線。サンプル点は二つの周期 ψ = [7,8] と[14,15] から採った。左軸の橙文字=静止大気モデルの等級。 |
![]() 図8.RU Vir の観測光度曲線。M-ミラの類似光度曲線は Lattanzio, Wood 2004 から得られる。 |
![]() 図9.モデルSの変光振幅変化。 |
![]() 図10.RU Vir の変光振幅変化。 |
![]() 図11.モデル S のカラー変化 |
![]() 図12.RU Vir のカラー変化 |
![]() 図13.モデル S の二色図。 |
![]() 図14.幾つかの炭素星の位相による二色図の変化。 |
![]() 図15.炭素星(観測、モデル)の平均カラー二色図。星間減光補正ナシ。 |
![]() 図16.炭素星(観測、モデル)の平均カラー二色図。星間減光補正アリ。 数字はマスロス率と K 振幅。 |
論文1の COMARCS 静止大気モデルは T > 2800 K では成功した。 それより低温度星では脈動とダスト星風の効果を入れる必要がある。 今回は、ダスト形成を組み込んだ動力学モデルを観測と比べた。 | その動力学モデルの選択された位相点で、その時に与えられた構造に対し、 輻射伝達方程式を解いてスペクトルを求めた。 |