Minchev13 では太陽近傍を中心に研究した。今回はさまざまな R での化学 進化を調べ、現在進行中および将来の観測で発見されるべき特徴を求める。 運動学的加熱と動径移行の効果を分離して、移行の方が重要であることを示 した。星誕生のガイド半径と最終ガイド半径の分布は古い星ほど広がる。 その結果年齢-メタル関係は太陽より外側では著しく平坦になる。色々な半径 でのメタル分布はどこでも -0.15 dex がピークになる。低メタル端は -1.3 dex までのびる。これに反し、高メタル端は半径と共に下がって行き、平均 メタル量が半径と共に下がる原因となる。 | 同様に、[Mg/Fe] 分布はどこでも 0.15 dex がピークとなる。その低値端は R が大きくなると消える。逆に高端は 0.45 dex で消える。 R-[Fe/H]、R-[Mg/Fe] 関係は円盤高度 Z により大きく変化する。R-[Fe/H] 勾配は負から僅かな正へ( R = 10 kpc で)と、R-[Mg/Fe] 勾配は正から負へと 銀河面高度と共に転換する。これは(i)円盤面近くで若い星が、離れると古い星 が多く、(ii)古い星ほど集中度が高く, (iii) フレアリングとエラーの効果である。 動径移行は「内から外」円盤形成には勝てない。 |
1.1.論文1の化学動力学論文1のモデルモデルの特徴は、宇宙論の枠組みにあったシミュレイションと薄い円盤化学 進化モデルの融合である。正確な SFH と元素存在量の増加がシミュレイション に組み込まれた。この新しい方法は論文1に述べられている。 降着 シミュレイションにはフィラメントとマージャーによるガス流入、動径移行 (migration) が自己無撞着に扱われている。最後の大規模マージャーは 8 Ga 昔に生じた。その後 8 - 9 Gyr は比較的静かな星形成が続いている。この期間 には多数の小型、マス比で 1/100 −1/70, マージャーが生じた。その頻度は 時間と共に低下している。降着円盤成分 (星?)は R = 4 - 16 kpc で全円盤 質量の 3 % である。論文1とここでは円盤内で生まれた星のみタグ付けし、 降ってきた星は簡単のため無視する。 バーの成長 中心部のバーは早期に発達して過去 6 Gyr でサイズを倍にした。シミュレイ ション期間最後の長さは天の川銀河のバーと同じになった。 Minchev, Chiappini, Martig (2013) の図1には途中経過の図が載っている。 Dehnen (2000), Minchev07, 10 は 2:1 OLR のすぐ外側に太陽を置いて、付近の軌道を研究し た。 |
1.2.化学-運動学情報が全円盤で必要分光観測RAVE 巨星の軌道を積分して Boeche13 は現在半径の代わりにガイド半径を 求めた。 SEGUE G-型矮星データを用い、 Cheng et al. (2012b), Bovy12b, Hayden14 は R = 6 - 12 kpc 円盤のデータを得た。APOGEE は現在 円盤の広い範囲の観測を進行させている。 円盤全体の説明が目標 年齢集団により組成勾配が変化することは予想されている。MW 化学動力学 モデルは太陽近傍の星だけでなく、銀河系の動径と高度の双方による変化を 説明しなければならない。この論文の目的は論文1= Minchev, Chiappini, Martig (2013) の結果を太陽近傍の外にまで押し広げることである。 |
マージャー、バー、腕 Minchev, Chiappini, Martig (2013) 図1下段には角運動量の変化を示した。そこから初期にはマージャーが動径移 行(migration)の原因で、その後はバーと腕の摂動であったことが判る。混合 を見る別の方法が図1である。大マージャー以前に生まれた 8 Ga より古い星 では特に離心率が増大した効果が大きい。 ガイド半径 ガイド半径とは(多分)銀河系ポテンシャル中でその星の角運動量に対応す る円周軌道半径の事である。図1を見ると、ガイド半径を使った下段では離心 率効果による乱れが消えて(ガイド半径は変わらないから)分布がより対照的に なる。もう一つ図1下段の特徴は、CR, OLR 半径が効果的な migration radii であることが明瞭に見えることである。 (CR では確かに内向き移行。OLR には? ) 星位置銀河系半径の移動はガイド半径だけでなく、離心率の変化によっても 起きる。後者は年齢が古くなる、特に 8 Ga 以上、につれ重要になって来る。 角運動量変化 図1の上下段共に、4 - 6, 6 - 8 Ga で分布巾が最も大きい。これは長時間 の露出による角運動量変化を表している。古い方二つの枠は変化が小さいが、 高 z でのマージャー期の大きな速度分散で「熱い」星になったためである。 |
![]() 図2.大マージャに対する動径移行の効果。左マージャ期。右:マージャーの後。 上段:2 Gyr の間に生じた角運動量変化。下段:外向き、内向き、不動移行し た星の垂直速度散布度。 2.1.動径移行がマージャー期の円盤を「冷やす」 |
図4.左:上=現在のガイド半径、中=誕生時ガイド半径、下=誕生時半径 で分類した、内側から、外側から、そのままの移行の割合。 右:赤線=大マージャー前に誕生、青線=大マージャー後に誕生した星の ピークシフト=最終半径メディアン - 総分布のピーク。 (ピークシフト分からず。 ) |
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![]() 図6.左:銀河動径別の平均メタル量時間変化。 右:銀河動径別の平均 [Fe/H]-[Mg/Fe] 関係 |
![]() 図7.銀河動径毎の, 左=[Fe/H], 右=[Mg/Fe] 分布。 |
図9.左:メタル量分布。右:[Mg/Fe] 分布。 |
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厚い円盤 マージャーの間外側に移行した星はその場で出来た星よりも運動学的に 「冷たい」。これは動径移行が厚い円盤を作るという主張と逆である。 高 z 期の強いマージャー又は乱流期に星が生まれることの必要性は、 Liu12, Kordopatis13, Minchev14 などが示していた。 再生ガス流 再生ガス流の効果を調べ、R = [4, 12] kpc で [Fe/H] に及ぼすエラーは 0.05 - 0.1 dex 以下であることを見出した。 「内から外」円盤形成 動径移行は「内から外」円盤形成には勝てない。古い種族 ほど中心集中度が高い密度分布を示す Bensby et al. (2011), Bovy et al. (2012) という観測結果はこの仮説を支持する。 移行の汚染効果 銀河中心から遠いほど移行による汚染の影響が強くなる結果、 太陽円環外側では年齢-メタル量関係は著しく平坦となる。しかし、 R < 9 kpc ではその場で進化した種族による元素勾配は、外向き と内向きの移行が打ち消し合い保存される。 MDF のピークとテール 我々はさまざまな銀河動径距離においてメタルる量分布は [Fe/H] = -0.15 でピークになり、低メタルテールが -1.3 dex まで伸びることを予言 する。反対に、高メタルテールは動径距離と共に下がって行くだろう。 |
[Mg/Fe] のピーク 「Fe/H] と同様 [Mg/Fe] も 0.15 dex にピークを持つ。 その低テールは動径距離が大きい所では失われる。 勾配の高度効果 [Mg/Fe], [Fe/H] 勾配は銀河面高度が変わると大きな変化を示す。 これは高度により年齢構成が変化するためである。その結果、メタル量勾配は R < 10 kpc において、負から弱い正に変わる。それは古い種族の中心集中 が高いためである。 同じ年齢グループ 年齢が同じ星集団内ではメタル量勾配は |Z| によってあまり変化しない。 MDF ピーク MDF ピークは高度により -0.15 dex から -0.3 dex へと変わる。 [Mg/Fe] ピーク [Mg/Fe] ピークは高度により 0.1 dex から 0.15 - 2.0 dex へと変わる。 |