内側銀河方面にある3つの星団に属する大質量星の近赤外分光観測を行った。 その内の一つ "Quartet" は今回発見された星団で、他の二つ "GLIMPSE20" と "GLIMPSE13" は以前に星団候補として報告されている。H, K バンドの R = 900 - 1320 分光を用い、星団の最高光度星の性質を明らかにした。 "Quartet" では 早期 WC-星と二つの Ofpe/WN9 星を新しく同定し、"GLIMPSE20" では早期 WC-星 を一つ同定した。 | これらの情報を 2MASS と組み合わせ、星団質量、年齢、距離を求めた。 "Quartet" と "GLIMPSE20" は質量数千 Mo, 年齢 3 - 8 Myr の星団である。 "GLIMPSE20" の距離は 3.5 kpc, "Quartet" は 6 kpc と見積もられる。 GLIMPSE13 には巨星が多く、質量 6500 Mo, 年齢 30 - 100 Myr で距離 3 kpc である。 |
W49 だけ例外 若い星団の探査は太陽から数キロパーセク内に限られ、 W49 (Homeier, Alves 2005) を除くと、全て銀河系のこちら側である。Dias et al 2002 は可視で発見 された 1700 星団、その大部分は 3 kpc 以内、の面密度から銀河系には 50,000 個の星団が存在するとした。Lamers et al 2005 も Kharchenko et al 2005 の 星団リストから同様の結論に達している。 大質量星団の数 M > 104 Mo 星団は 1 ダース (Figer 2008, Borissova et al. 2008) しか知られていない。質量関数を指数 -2 のべき乗と考えると、この 数字から M > 103 Mo 星団の数は 200 個となる。 赤外星団の半分は偽 Bica, Dutra, Barbuy (2003), Mercer et al 2005, Froebrich et al 2007, Ivanov et al 2002, Borissova et al 2003 は 2MASS, GLIMPSE から 1500 個の赤外星団 を検出した。しかし、星間減光の弱い穴を星団と見誤った例が多く、 Froebrich et al 2007 は本当に星団なのは全体の半分と述べている。深い NIR 測光と分光が必要である。 星団の問題 銀河系内の星団のセンサスを確実にすると、星団の質量関数、若い星団から 球状星団への力学進化、銀河系中心から 3 kpc 以内の星団の欠如などの問題 が扱える。 |
![]() 表1.観測した星団 3赤外星団の分光 ここでは、Mercer et al 2005 が GLIMPSE 画像から探した星団リストの 13 と 20 番目の分光と、我々が GLIMPSE 画像から探した新しい星団の分光を 報告する。 |
観測は 2007 年に NTT に SofI 分光器を搭載して行った。分解能は K で 1320, H で 900 である。 | GiV と G2V 星を大気吸収線の標準に撮った。 |
晩期型星 K, M 型星は CO 強度で容易に分かる。CO 吸収は温度が下がり、光度が上が ると強くなる。(McWilliam, Lambert 1984) 一方、水の吸収は温度が下がり、 光度が下がると強くなる。水の吸収は脈動星の目印であり、静的な巨星や 超巨星では非常に弱い。我々は Davies et al. (2007) の方法= EW(CO) と標準星の EW(CO) を比較、で Teff を決めた。 (EW は光度と温度の2要素 と書いてある。一意に Teff が決まるか? ) |
早期型星 早期型星は H-, He-ラインで見分けられる。いくつかの金属線例えば CIV 2.069, 2.078, 2.083 μm 3重線や NIII, CIII による 2.116 μm の幅広なバンドも有用である。 WR 星は N と C ラインに富む。 2.11.μm (CIII+HeI)/2.08 μm (CIV) で C-リッチ WR 星を分類できる。 |
![]() 図1.カルテット星団周りの GLIMPSE 8 μm 画像。画像中心は隣り合う HIIR G024.83+00.10 である。等高線=20cm マップ(Helfand et al 2006) |
![]() 図2.カルテット星団の 2MASS Ks 画像。四角=分光観測星。数字は表2より。 |
4.0.概観星団位置この新発見星団の位置は (l, b) = (24.90, +0.12) である。図2の4つの明るい 星は Ks = 7 - 8 mag で MIR 光を支配している。星団は Ks 画像で直径 45" と小さく、 GLIMPSE 画像の端にあるため Mercer et al 2005 の視察から逃れ ていたらしい。 バブル 図1で星団は MIR バブル N36 の端に重なって見える。この MIR バブルは Churchwell et al. (2006) により検出された。番号はそのリストの番号である。それはまた、 HIIR G024.83+00.10 と一致する。Kantharia et al 2007 による電波再結合線の観測 は Vlsr = 106 km/s で、運動近距離 6.1 kpc, 遠距離 9.2 kpc である。 (遠近分離はできないのか? ) |
4.1.スペクトルNos.1 and 2He I 2.058 μm と Brγ 輝線を示す。2.11 μm には HeI/NIII/CIII の弱いラインが見える。P Cyg プロファイルは膨張外層の存在を示す。 それらは Ofpe/WN9 スペクトルの特徴と一致する。 No.5 1.7 μm HeI/CII, 1.74 μm CIV, 1.785 μm CII, 2.08 μm CIV, 2.115 μm CIII の幅広な放射帯が見える。これは carbon WR 星の特徴である。 Nos. 6, 7, 9 2.058 μm HeI, 2.11 μm HeI, Brγ が吸収線で見える。Nos. 7, 9 には 1.7 μm HeI, Br10,11,12 吸収線が見える。これは O9 - B1 の特徴で ある。 Nos. 3, 4, 8 CO バンドが存在し、晩期型星である。 (この先の論理が理解できないが、 メンバーでないと判定 ) |
![]() 図3a.カルテット星団方向の星の H、K バンドスペクトル。 |
![]() 図3b.実線=新しく見つかった WC9 星の K-バンドスペクトル。破線=参考の WC8-星。点線= 参考の WC9-星。 |
![]() 図4a.左:カルテット星団の (H-Ks)-Ks CMD. 右:比較フィールド。半径45" |
![]() 図4b.混入除去後の CMD. 実線= 4Myr 等時線を距離 6.1 kpc, AKs 1.6 mag にシフト。破線=等時線上 Mi = 20, 30, 40, 45 Mo で、AKs = 0 - 3 mag の位置。四角=分光で確認された OB 星。白丸= WR-星。5角= Ofpe/WN9 星。 |
4.2.CMD図4には星団中心から 45" の星の CMD を示す。H-Ks = 1, Ks = 12 - 7 付近に星団系列線が見える。混入星の統計的除去は以下の方法で行った。 フィールド領域として、星団中心と同心で、内半径 2', 等面積の円環を考える。 次に、二つの領域の CMDs 上で ΔKs, Δ(H-Ks) 区間内の星を数える。 そして、CMD 区間からフィールド区間の星数をランダムに引いて、混入除去 CMD を作る。4.3.議論星団までの減光CMD 上でカルテット星は H-Ks = 1 の垂直線の周りに並ぶ。この垂直線から 距離に関係なく求まる赤化は AKs = 1.6 である。 図4の CMD では 4 Myr 当時線でフィットした。 WC9 星 例外は WC9 星でこの星の星周ダストの存在を示唆する。この星のカラーは H-Ks = 2.05 であるが、固有カラーが 0.26 なので、E(H-Ks) = 1.79 mag と なる。これは AKs = 2.65 に対応する。 つまり、星団星全体に対 する減光より 1 mag 大きい。WR 星のダスト形成は連星系における衝突風 によると考えられている。WC 星は銀河系内で 40 個知られている。 Ofpe/WN9 星 星団内にある二つの Ofpe/WN9 星は Mi = 25 - 60 Mo で、 RSG から WR への遷移期にあると考えられている。星団としては他に クインタプレットと GC 星団しかない。 |
![]() 図5.カルテット星団の (H-Ks)-(J-Ks) 二色図。シンボルは図4と同じ。 |
距離 Nos.6, 7 = OB 星を用いて距離を決めた。 Bibby et al. (2008) から O9.5 - B3 星の固有カラーと BC を仮定して, 分光測光距離 DM = 14, d = 6.3 kpc を求 めた。 ( ) |
|
![]() 図. |
![]() 図. |
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|
|