A Downward Revision to the Distance of the 2806-20 Cluster and Assoiated Magnetar from Gemini NIR Spetroscopy


Bibby, Crowther, Furness, Clark
2008 MN 386, L23 - L27




 アブストラクト 

 星団 1806-20 (G10,0-0.3) の OB-星と WR-星に H-,K-バンド分光観測を行 い、星団距離を改訂し、ガンマ線リピータ SGR1806-20 マグネターからの 巨大フレアの relevance を得た。OB 星の4つは 晩期O/早期B 型超巨星と分か った。二つの WR 星は中間期 WN と晩期 WC 星という以前の分類と一致した。 B-超巨星と WR-星の絶対等級較正と NIR 測光から、星団 DM = 14.7 (8.7 kpc) を得た。  星団の星成分は年齢 3 - 5 Myr を指し示す。その年齢の等時線をフィットす ると、やはり D = 14.7 が得られる。この値はこれまでマグネターに対して 与えられてきた 15 kpc より大幅に低い。今回の距離を採用すると、 2004 年 12 月の巨大フレアのピーク光度はファクタ3小さくなり 7 1046 erg/s である。すると系外マグネターによる BASTE short gamma ray bursts へのコンタミは数パーセントになる。マグネターの前駆星質量は 48 Mo となり、 Westerlund 1 で得られた値と一致する。


 1.イントロダクション 

 マグネター 

 マグネターは回転の遅い、強い磁場の中性子星で、特異X線パルサー(AXPs) と 軟ガンマ線リピータ―(SGRs) に伴っている。現在までに 4つの SGRs が 知られている。それらは multiple 軟ガンマ線バーストで特徴づけられている。 加えて、巨大フレアがある。その一つが 2004 年 12 月 27 日 SGR 1806-29 から検出された。

 W31  

 SGR 1806-29 は W 31 複合体内の星団 G10.0-0.3 に含まれる。 しかし、この星団には 12 - 15 kpc という距離が与えられてきた。


 マグネター巨大フレアが短期 GRB と間違えられる  

 この距離を使うと、SGR1806-20 巨大フレアのピーク光度は 2 1047 erg/s となる。すると 30 Mpc 以内のマグネターは短期 GRBs と間違えられる だろう。実際、 BATSE が検出した短期 GRBs の 40 % は巨大フレアであろうと いう見積もりもある。  本当に 15 kpc? 

 この星団には OB-星、 WR-星、 LBVs が含まれている。もしマグネターがこの 星団に帰属し、星団距離が 15 kpc なら LBV 質量は大きくなり、マグネターの 前駆星も 133 Mo を越す。しかし、それは Westerlund 1 で見つかった AXP の 質量 40 - 45 Mo と食い違う。この論文では星団距離を調べる。


 2.測光 

 3.分光 




図1.1806-20 星団中の 4 OB-星と比較星のスペクトル。左=Hバンド。 右=Kバンド。2.06 μm ラインは大気吸収処理の不完全さのため。




図2.1806-20 星団内 SGR 星 Figer et al 2005 #1 と比較用 WC9 星 WR121 のスペクトル。上:H バンド。下:K バンド。



図3.1806-20 星団内の 星 Figer et al 2005 #2 と比較用 WNb 星 WR136 のスペクトル。上:H バンド。下:K バンド。


 4.1806-20 星団までの距離 


表1.B-型超巨星の絶対等級。

 4.1.絶対等級較正 

 Martins, Plez 2006 の O-型星 NIR 絶対等級較正は早期 B-型超巨星までは 及んでいない。そこで、 Conti, Crowther, Leitherer 2008 の B-型超巨星の 可視絶対等級に Crowther, Lennon, Walborn 2006 による合成 NIR カラーを 組み合わせて Ks 絶対等級(表1)を得た。WR-星に対しては Crowther et al 2006 の絶対等級を使用した。WC-星の絶対等級は散らばりが大きく、星周減光 もあり、距離決定には使えない。

 4.3.分光測光距離 

 観測された OB-, WR-星のカラーから星間減光を求めた。 AKs = 1.82 E(H-Ks) Indebetouw et al. (2005) を用いた。結果は表2に示す。平均して AKs = 3.0 である。 距離の平均は DM = 14.69, d = 8.7 kpc となった。   

 

  

 

  

 

表3.幾つかの 年齢と M(SGR) 質量の組み合わせに対する等時線フィットで 決めた #4 と #11 星の年齢と初期質量。

 4.3.等時線距離 

 この星団には OB-星, LBV, WN, WC が含まれる。これらの星を含む Westerlund1 星団は 4 - 5 Myr, Quintuplet 星団は 3 - 5 Myr である。 OB 超巨星 #4 (O9.5I) と #11 (B0I) の Ks, BCKs 等の観測値に 等時線フィットを行い、平均 DM = 14.7 を得た。



表2.1802-20 星団成員のスペクトル分類と等級。各星の減光と距離も示す。

 4.4.他の研究 



 今回得られた DM = 14.7, d = 8.7 kpc はこれまで言われてきた 15 kpc と 大きく異なる。 図4に、これまでの研究で得られた距離を比べた。我々の結果はこれまでの マグネター距離と星団距離との不整合を解消する。また、 OB-超巨星の He I 1.700 μm, Vlsr = 130 km/s から得られる運動近距離 6.8 kpc と 運動遠距離 8.9 kpc も遠距離で決着する。

図4.様々な研究で得られた 1806-20 星団の距離。  




 5.結論 

 星団 1806-20 までの距離は 8.7 kpc であり、マグネターと星団の間にあった 距離の不整合は解消した。 新しい星団距離は銀河中心から 1.6 kpc (Ro=8kpc?) の距離で活発な星形成 が起きていることを示す。  銀河中心から 4 kpc 以内には HIIRs が少ない Russeil et al. (2003) が、今回の研究はかなり活発な星形成活動がこの領域でも起きていることを 示す。星団質量は 3 103 Mo を超えると見積もられる。