アブストラクトデータ反中心方向 (l, b) = (186, +1) 8 平方度の領域で M0 - M1, M2 - M4, M5 - M8 巨星の空間密度を距離の関数として見積もった。493 星の赤領域対物プリ ズム、赤外と V 等級が使用データである。 密度 反中心方向での距離による数密度の低下は、 M0 - M1 星では、r = [1, 5] kpc で D(r) = 9.5 から 2.5 ×10-6pc-3、 M2 - M4 星では、r = [1, 5] kpc で D(r) = 4 から 2.5 ×10-6pc-3、 M5 - M8 星では、r = [2, 5] kpc で D(r) = 1.0 から 0.25 ×10-6pc-3 である。 |
1.イントロダクション銀河腕と赤色巨星密度は関係するか?Forbes 1985 AJ 90, 301 M5 より晩期型の巨星に関しては、 Westerlund 1959a, Westerlund 1959b, Westerlund 1965, Albers 1962, McCuskey, Mehlhorn 1963, Blanco 1965, Hidajat, Blanco 1968 により、その分布が銀河面に集中していることが明らかにされた。しかし、 銀河腕領域への集中は明らかでない。一方、 Neckel 1958, Sanduleak 1957 によれば、M2 - M4 型星の集中が銀河腕と相関しているように見える。 より多くのデータを提供する もっと多数の銀経分布データにより、赤色巨星の分布と銀河系構造の関係 を調べる必要がある。この論文ではその証拠の一片を提供したい。 |
観測領域の中心は (RA, Dec)1950 = (6h00m, 24.2°:), (l, b)
=(186, +1) で、b = [-1, +3] をカバーする 8 deg2 である。
McCuskey 1967
はもっと広い、 18.55 deg2 で OB-星と V = 12.5 等より明るい
B5 - M8 星の分布を調べた。この論文ではそれより狭い領域で
暗い M-型巨星の分布を調べる。
2.A.スペクトルフィルター分類に用いたスペクトルは Warner-Swasey Obs. Burrell Schmidt 望遠鏡 に 1-N 乾板/Wratten W89 フィルターの組み合わせで得た、 λ6800 - λ8800 A のものである。A-バンドでの分散は 1700A/mm である。 これは M5 より晩期用。103-F/OG2 で λ5900 - λ6900 を もっと早期用に撮った。限界等級は M2 - M4 で V = 15, M5 より晩期で V = 16 である。 分類基準 M型星のスペクトル分類基準は Nassau, van Albada 1949, Cameron, Nassau 1955, Nassau, Velghe 1964 に述べられている。今回は Nassau, Velghe 1964 の Burrell Schmidt スペクトルをしばしば参照スペクトルとして使用したので、分類は Nassau, Velghe の Case システムに則る事になった。Mt. Wilson 分類システムへの変換は Blanco 1964 に従って行った。一般には エラーは ± 0.5 サブクラスである。 光度クラスはこの分解能では定まらない。しかし、Blanco 1963 は この程度の広がりと深さでは 矮星、準巨星、超巨星の M-型星は 殆ど含まれないことを示した。従って、今回は全てを巨星として 扱う。 2.B.測光ショットの GG11 フィルターが V 測光に用いられた。そして、 8 deg2 観測領域内の V = 16.5 より明るい 493 M-型星と 16 炭素星の V 等級を測った。 内部エラーは 0.05 等級である。 |
![]() 表1.反中心方向 M 型星の見かけ等級分布。(a) は 8 deg2 領域、 (b) は 18.55 deg2 領域を指す。 |
![]() 表2.M-型星のサブグループ分布 M-型星の分類 表1には銀河系反中心方向 8 deg2 と 18.55 deg2 領域での M-型星の等級分布を示す。光度クラス Ia と Ib の4星は大領域から、 3つの特異星を小領域から除いた。M-型星は M0 - M1, M2 - M4, M5 - M8 の 3集団に分けて数えた。 Blanco 1965 は低分散スペクトルで M0 と M1 への サブ分類は難しいことを指摘した。しかし、スペクトルを広げ、103a-F を使用 することによりこの問題は改善されたので、M0 - M1 グループを統計に加えた。 しかし、解析の主力は M2 - M4, M5 - M8 グループを対象としている。 中間グループ星数の揺らぎ 表2は 8 deg2 と 18.55 deg2 領域とで 相対的等級分布を比べた。晩期 M-型星の比率は変わらないが、早期 M-型星の比率は異なる。Vlimit が上がると M2 - M4 グループが 増える原因の一部は低分散では M0 - M1 グループに分類することが難しい ためかも知れない。しかし、表1に見られるように Vlimit = 12.5 にして分類エラーを下げても M0 - M1 グループと M2 - M4 グループ の相対比の差は依然存在した。したがって、 M-型星種族の揺らぎが実際に この差に反映しているのであろう。 ( 揺らぎでなく、例えば b-勾配 が反映したのかも知れない。) |
![]() 表3.他の反中心方向探査との比較 他の探査との比較 表3では、 M2 - M4 星と M5 - M10 星の平方度当たりの数を様々な 探査で比較した。Sanduleak 1957 は低減光の小領域に限定した探査であり、 星密度が高いのはその結果である。しかし、それ以外の探査でも星数の 揺らぎは存在しているらしい。 |
![]() 表4.M-型星グループ毎の log A'(V)。 A'(V) = [V-1/4, V+1/4] 区間内の 星数/100 deg2. 見かけ等級関数の平滑化表示 表1の星数計数は A'(V) = ΔV 0.5 等区間内にある 100 平方度当たり の星数、に変換された。log A'(V) を V に対してプロットし、それを平滑化 したものを表4に示す。 平均絶対等級 表5には星の空間数密度を計算するために用いた平均絶対等級 (単位体積当たりとあるのが意味不明?)とその分散を載せた。値は Blanco 1965 とそれに Malmquist 1927 バイアス補正をしたもの である。 星間減光 Av Av の距離による変化は McCuskey 1967 から採った。Av(1kpc) = 1 mag, Av(5kpc) = 2.4 mag である。 空間密度 空間密度は Schwarzschild 1912 の解析的方法で求めた。この手法は Crowder 1959 によって採用されたものである。表6にその結果を示す。表の最後の 2列は使用する絶対等級を 0.5 等変えるとどう変わるかを示している。 直接計算した密度と較べる M5 より晩期の星の数は少ないので密度の決定精度は低い。数の小ささが どのくらい影響するかを見るため、個々の星の距離を決定して、密度を 直接に決めてみた。各星に Mv = -1 という絶対等級を与え、 McCuskey 1967 が決めた星間減光を適用して距離指数を計算した。こうして 81 星 を適当な距離区間に分布させ、密度を計算した。図1がそれである。 0.5 kpc おきに 8 deg2 と 18.55 deg2 に対して 密度変化が得られた。実線曲線は計算機で得た密度変化である。 両者の一致は大変に良い。 |
![]() 表5.平均絶対等級と分散 ![]() 表6.銀河系反中心方向での空間密度分布(星/106pc3) ![]() 図1.M5 - M8 星の数密度変化。実線=モデル。丸、バツ=個々星の距離 計算に基づく観測値。 |
![]() 図2.M0 - M1 星の空間密度変化。曲線 A は Blanco 1965 の表。 |
![]() 図3.M0 - M1 星の空間密度変化。データ点と実線=この論文。 破線 A = Hidajat, Blanco 1968. B = Blanco 1965.C = Neckel-Blanco 1965。D = Westerlund (1965). E = Wehinger 1965. |
M0 - M1 星の減少 M0 - M1 星と M2 - M4 星の反中心方向の密度は、太陽から 3 kpc 以内では 距離と共に著しく減少する。 M0 - M1 星の分類は不確かであり、したがって 密度の変化も誤差が大きいことを再度注意しておく。しかしながら、 太陽から 5 kpc までで M0 - M1 星の数が 1/4 に減ることに疑いはない。 M2 - M4 星の減少 M2 - M4 星は太陽から 2 kpc までは急速に減少し、その先では 2.5 stars / 106pc3 で一定になる。これは、 Westerlund 1965 が同じサブグループに対して得た値の約半分である。彼が調査した領域は 太陽近傍の渦状腕に沿った方向であった。反中心方向は局所渦状腕と 交差している。従って、早期 M-型星密度の急激な低下はそれらの星が 腕に集中する傾向を反映しているのかも知れない。同じことは、 Neckel 1958, Westerlund 1965 も述べている。 |
太陽近傍の M2 - M4 星 図3を見ると、r = [0, 1] kpc では M2 - M4 密度は Hidajat, Blanco 1968 の値と合う。彼らの 5 星/106pc3 は Groningen-Palomar 変光星フィールド 1, 2, 4 (Plaut 1959) の M-型星 の研究から導かれた。一方、 Blanco 1965 は、Eggen 1960, Neckel 1958 の M-型星データを用いて、太陽近傍で 2.9 星/106pc3 とした。もっと様々な領域のデータ が揃わないとこの矛盾の解明は無理だろう。 銀河中心方向との比較 Wehinger 1965 は銀河系中心方向 2.25 deg2 の M-型巨星種族 の研究は銀河中心方向と反中心方向とをつなぐものである。彼のスペクトル型 決定は (B-V) - (V-I) 二色図上で Blanco 1964, Pascu 1964 に基づいて 行われた。したがって、スペクトルは撮られていない。V ≤ 16 の 範囲で彼は 96 M2 - M4 星と 65 M5≤ 星を得た。Mv = -1 とし、星間減光を 補正して得た空間密度は D(r=[2-3]kpc) = 5.3 星/106pc3, D(r=[3-4]kpc) = 3.0 星/106pc3 であった。これらの 値は図3の E で示されている。この D(r=[2-3]kpc) の値は反中心方向での 値より高い。D(r=[3-4]kpc) が低いのは検出の不完全性によるものであろう。 Westerlund 1965 が得た 6.5 星/106pc3 とは 整合する結果である。 |
M5 - M8 巨星数密度 図4には、 M5 - M8 巨星数密度の反中心方向距離依存を示す。 図中には他研究で得られた値もプロットした。大部分はシグナスー カリーナ局所腕方向に対する値である。 (それだと銀河中心距離では変わら ないが? ) 図から明らかなのは、r = [1, 4] kpc の間に急激な密度低下が起きている ことである。注意しておくが、 r = [1, 2] kpc での高い密度はサンプル数 を考慮すると不確実である。類似の密度の負勾配が M2 - M4 星密度 でも観察されている。N(M2-M4)/N(M5-M8) = 2(r=1kpc) - 7(r=4kpc) である。 Westerlund 1965 は渦状腕でこの比が 10 -1 と述べている。 r > 4 kpc では Westerlund 1965 によれば、 局所腕に沿っては M5 - M8 星の空間密度が r > 4 kpc でほぼ一定である。その値は D(r) = 0.2 - 0.3 星/106pc3 であった。反中心方向に関しては 遠距離で密度増加の兆候はない。 銀河系中心方向 Wehinger 1965 は、銀河系中心方向 r = [2, 5] kpc で、D(r) = 1.1 星/106pc3 (図4 B) とした。つまり、晩期 M 型星 の r = [3, 5] kpc での密度は、銀河中心方向では反中心方向の 2 - 4 倍大きいということである。 密度勾配 Hidajat, Blanco 1968 は M5≥ 星の反中心方向空間密度を 次の式で表した。 D(r,z) = [202/(R2+102)]exp(-5.1z2) ここに、(R,z) は銀河中心からみた円筒座標系(単位 kpc)である。 Ro = 10 kpc とした。表7の数字はこの式から計算した。 "Obs" 列は表6から採った。 明らかに反中心方向での密度勾配はこの式で計算されるより急である。 r < 2 kpc では上の式は Wehinger のデータ(図4B) と一致する。 もし、D(r=1kpc) = 2.3 という我々のデータを無視すれば、我々のデータも 合うと言ってよい。 |
![]() 図4.M5 - M8 星空間密度の反中心方向距離変化。実線=この研究。 A = Hidajat-Blanco 1968. B = Wehinger 1965. C = Neckel,Blanco 1965, 他の点 = Westerlund 1965. ![]() 表7.Hidajat-Blanco 1968 との比較。 |