The Large Scale Dust Lanes of the Galactic Bar


Marshall, Fux, Robin, Reyle
2008 AA 477, L21 - L24




 アブストラクト

 銀河バー内部のダスト帯は容易に観測されている。しかし、銀河系バーの ダスト帯に関する情報を得ることは難しい。銀河系中央部のダストとガスの 分布を比較して、バーの先行縁側に予想されるバー中央からずれたダスト帯 の性質を得たい。このため、観測 CO l-b-V 図から、力学モデルに従って、 ダスト帯からの分子放射を抜き出す。もう一方では、近赤外観測から作成した 3次元減光マップがダスト自身の追跡子として利用され、その正面図として ダスト帯が現れた。二つの独立なダスト帯検出結果を l-b 面上で比較した。  これら完全に独立な二つの方法を用いて、天の川銀河のバーの統一的な像を 描いた。ガスとダストの双方の像で、ダスト帯は銀河面から外れている。銀経 正の領域では銀緯が負、銀経負の領域では銀緯が正となる。しかし、ダスト の方がガスよりも銀河面に近い分布を示す。このズレを説明する二つの仮説が 考えられる。一つはバー衝撃波によるダスト破壊と下流側でのダスト再形成で ある。もう一つはダストとガスは共に傾いた同じ面上にあるが、分子ガスは 自身の強い磁場によりバー衝撃波のせん断応力に抵抗して、銀河系磁場から 離れるというものである。希薄ガスとダストは銀河磁場と結合したままで、 下流へ運ばれる。この仮説は最近棒銀河 NGC1097 の観測を説明するために 提案された。


 1.イントロダクション 

(Lopez 一派の仕事は全く 無視している。お互いか? )


 2. 減光マップに現れたダストレーン 

 今回のモデルの以前との違い 

  Marshall et al. (2006) は 2MASS と銀河系ブザンソンモデル(以下単に銀河モデルと呼ぶ) (Robin et al. 2003) から内側銀河系の3次元減光マップを作った。その研究と違い、 本研究の角分解能は一定ではなく、星密度によって変化する。 ここで示す銀河中心領域での減光情報は高星密度で 3.75、 低星密度で 15 である。また、銀河モデルも 2MASS データによる再調整を行い、 Robin et al. 2003 とは僅かに違っている。ここではバルジの恒星密度は Freudenreich 1998 から採った sech2 型でモデル化した。バルジはボクシーで 3軸不等楕円体、軸比 1 : 0.3 : 0.25 である。その軸角は 20° (Gerhard 2002) を採用した。

 減光構造 

 図1には視線に沿った減光分布の例を示す。十字が AKs(D)、 赤線はその微分量である。2 kpc 以下とうんと遠方の2領域では減光点の 間隔が広く、そこでの減光構造を検出するのは困難である。しかし、我々の 方法は銀河系バーを研究するには適している。図の例では、D = 9.5 kpc 付近 にダスト帯による減光構造が見えている。


図1.(l, b) = (356, 0.75) 方向の減光・距離関係。十字= AKs(D) は左軸。赤線=k(D)=dAKs(D)/dD は右軸。
 ダスト帯とバーの関係 

 図2は銀河面上のダスト分布を示す。恒星バーに沿って、しかし少し異なる 軸角で走る細長い構造はダスト帯によるものである。銀河の観測で見られる バーのダスト帯と同じく、ダスト帯はバーの進行方向前面にある。 (x, y) = (6, 1) kpc 付近ではダスト帯が分子リングとより合わさる。 遠い側のダスト帯の端は減光マップが不確定ではっきり分からない。




図2.銀河面 |z| < 300 pc の微分減光分布。四角=銀河中心。 実直線=バーの主軸。楕円=目で見て決めたダスト帯。太陽は (0, 0). l = -5 と l = 10 の二本の破線= CO 観測が示唆するダスト帯の端。 白色部= 2MASS PSC が込み合いのためデータ完全度が低く、減光マップ からバーが現れなかった領域。


 3. 分子ガス運動から導いたダスト帯 

 l-v 図上のダスト帯 

 図3a は CO l-v 図である。二つの黒枠は Fux 1999 により、バーに沿ったダスト帯に対応するガス構造とされた。l > 0 側の構造は "Connecting Arm" = "結合腕" とも呼ばれ、太陽に近い側のバー に沿っており、l < 0 構造は太陽から遠い側のバーに沿っている。

 ダスト帯からの CO 放射の抽出 


(1) 図3a の枠内の放射を選ぶ。これが |l| ≤ 1.5 の中心核リングと (l, V) = (-5, 100) のクランプ1を除去することになる。また、 l = 3 の クランプ2と l = 5.5 の大きな速度巾の構造も除ける。この二つは、 Fux 1999, Listz 2006, Rodriguez et al 2006 によると、太陽に近い側のダスト帯に飲み込まれつつある分子雲である。

(2) 結合枝ガスに含まれるガスの l-b 分布を図3b に示す。この図には、 l = [10.5, 3.125], b = [-0.125, 0.625] (図中の黒枠) に独立したガスが 見える。図3c を見ると、その l-v 分布は二つの構造を示す。この二つは 夫々が速度一定で、ダスト帯ガスの速度勾配と明白な対照を持ち、ダスト帯 に付随していないことを示す。これらのガスは除かれるべきである。

(3) 図3d には遠方側ダスト帯部分ガスの l-b 図を示す。この図には、 V = 0 km/s 付近の外側腕と (b, V) = (0, -75) 付近の 3 kpc 腕の放射が あり、これらはダスト帯とは異なる。従って、図の2本の線の間の放射は 全てダスト帯から省いた。


( Dame et al 2001 のデータキューブは入手可能? )


( 図3d はデータの l 範囲 が不明ですっきりしない。)

図3. Dame et al. (2001) 12CO l-b-V データキューブからバーのダスト帯に付随する CO 放射をどう取り出すか。
(a) |b| < 2.5 の l-v 図。黒線=ダストレーン部。近い側は結合腕。
(b) 近い側のダストレーンガスの l-b 図。
(c) 図b の黒枠内ガスの l-v 図。
(d) 遠いダスト帯ガスの b-v 図。(テキストではl-b となっている)黒線の 間のガスは外側腕と 3 kpc 腕のガスとして除く。
 




 4.結果と議論 


図4.上: Marshall et al. (2006) が発見した銀河系バー内の近赤外吸収ダスト帯の l-b 分布。 下: Dame et al. (2001) の CO l-v 図から、 Fux (1999) のモデルに従って抜き出したダスト帯に対応する CO 構造の l-b 分布。
双方の分解能は 7.5。破線:b=0。上図からは図2の 空白領域が省かれている。下図からは中心核分子円盤からの放射が除かれて いる。上図の等高線は AKs = 0.15. ダストでもガスでも ダスト帯が銀河面に対して、遠方バーが銀河面から浮かび、こちら側が 沈む方向に傾いていることに注意。


 図4=ダスト帯の l-b 投影分布 

 図4上にはダスト帯による減光の l-b 分布を示す。プロットされているのは 図2の楕円内部の減光である。図4下には第3章で議論した方法で抽出した 分子帯ガスの l-b 分布を示す。どちらの帯も銀河面(破線)に対して傾いて いることが判る。帯の遠い側が銀河面から浮き、近い側が沈んでいる。また、 この構造が |l| に限定されていることは、これが Calbet et al (1996) が主張するダスト帯とは別物であることを意味する。
(あくまでもスペイン派の仕事を 否定する構えなのね。しかし、FIRでは追跡できないのかな?)


 帯の傾き角 

 ダストに対しては AKs > 0.15 内の重み付き b 平均をとり、 ダスト帯の中央線を作った。ガスに対しても抽出分子帯放射の平均 b 値を 計算した。双方の平均線を図5に示す。ダストとガスの分布は僅かに分離して 見える。

 分からない部分。 

 見かけのズレは銀経正の方が銀経負よりも大きい。図3b に示した ...は意味がよく分からない。
ガスとダストの中央線がずれているのは視線効果かも知れない。

図5.バツ=ダスト帯の面中央。菱形=分子帯の面中央。破線:b=0. ダスト、ガス双方で帯の傾きが分かる。しかし、ダストの方が銀河面に寄って いる。

銀河でのズレの例1 

 ダストとガスがずれている例は銀河にも見られる。例えば、M 83 の東側渦状 腕において、ダスト減光と CO 放射は横に 700 pc もずれている。説明として、
(1)若い星の UV で CO が加熱。
(2)CO が低エネルギー宇宙線で加熱。
(3)重力波ポテンシャルに対する応答が違う。
銀河系バーに関しては、バーに沿ってせん断力で星形成がない   Rodriguez et al 2006 、 また、バー先端の星形成で出来た星はバーに沿って流れて行かない Cole, Weinberg 2002 などの理由で (1) はない。宇宙線説は はっきりしない。(3)に関しては、ダスト帯はショック面に 沿った狭い帯で、分子雲は腕の尾根に広く分布することが考えられる。 しかしこれは図4の観測と反対である。

 ズレの例2 

 Beck et al 2005 は NGC 1097 の 3.5 cm, 6.2 cm 偏光観測を行った。 総放射強度はショックに沿って強いが、変光放射は下流で起きている。 大規模磁場から分子雲は離脱してすり抜け、一方ダストは磁場に巻き付き こうしてガス・ダスト分離が起きると彼らは考えた。

 説明3 

 衝撃波面に当たったダストと一部のガスが銀河面に落ちるのかも知れない。 その結果、垂直方向の分離が生じる。

 ダスト位置の不定性 

 ダスト位置=視線に沿っての距離 には約 500 pc の不定性がある。図1を 見よ。また、減光マップは銀河系モデルの不定性の影響を受ける。


 5.結論 

 減光マップと CO 放射の双方でバーに沿ったダスト帯を同定した。 どちらの成分も大規模の振る舞いは同じである。双方中心線の傾きを示す。 (l, b) 面への投影で二つにはずれがある。いくつかの原因が考えられ、 それらを検討した。  ガスとダストそれぞれ独立に出した分布が一致したことは、 Fux (1999) によるダスト帯を CO, HI l-v 図上の構造に対応させる解釈が正しいことを支持する。