A Spitzer IRAC Census of the AGB Populations in Local Greoup Dwarfs II. IC 1613


Jackson, Skilman, Gehrz,Polomski, Woodward
2007 ApJ 667, 891 - 899




 アブストラクト 

 局所群矮小不規則銀河 IC 1613 の Spitzer IRAC 測光の報告をする。IRAC 3.6, 4.5, 5.8, 8.0 μm 観測と可視測光データを組み合わせて解析した結果、 IRAC AGBs の 43 % が可視で検出されず、さらに 11 % 追加分が誤認であるとわかった。 原因は星周ダストによる減光であろう。さらに、狭帯フィルター観測は AGB 星の 半分しか検出できず、 C/M 比を計算する際に全 AGB 星の 18 %しか考慮してい ないことがわかる。  AGB 星全体からの全マスロス量は (0.2 - 1.0) 10-3 Mo/yr である。 輻射等級とマスロス率の分布は他の近傍低メタル銀河と合う。IC 1613 の可視 検出完全性とマスロス率は局所群矮小不規則銀河 WLM と非常によく似ている。 特性と進化の歴史の類似性から想定されていたことである。


 1.イントロダクション 

 基本性質 

 IC 1613 は局所群の孤立メンバーで DDO Ir V 型矮小不規則銀河の典型天体 である。Wolf 1906 により発見され、D = 730 kpc, i = 38° b = -60° で E(B-V) = 0.025 で前景減光は弱い。数多くの研究が積み重ねられている。 

 星団がない 

 銀河はガスリッチで、大部分の性質はほぼ典型的な値を示す。ただ一つの例外は 星団が存在しない(van den Bergh 1979, Wyder et al 2000)ことである。それは この銀河の孤立した進化の証拠 van den Bergh 2000 かも知れない。

表1.IC 1613 の基本性質  


 2.観測 

 2.1.赤外・可視データと測光 

 赤外は IRAC, 可視データは OGLEII から採った。

 2.2.前景星 


図1.IC 1613 の DSS 14'x14' 画像。四角枠= IRAC 画像との重なり部。  



図2.IC 1613 の IRAC 画像。

 3.銀河の赤外線形態 

 図2に IRAC 画像を並べて示す。赤外天体が銀河内でほぼ一様に分布して いることが分かる。   それに加え、星形成領域の明るい星の集団が銀河の NE に見える。8 μm 画像にはダスト熱輻射か PAH 放射に起因する拡散光が見える。それは Hα に重なる。

 4.可視と赤外測光結果の比較 

 図3=可視 CMD 

 図3に示す可視 CMD (Udalski01)上で幾つかの系列が見える。それらは、

(a) 青い天体。大質量主系列星+ 非分解 HIIRs.
(b) AGBs.
(c) RSGs.
(d) sub-TRGB 星.

 Skillman03 が示したように、 可視 CMD は、最近の星形成星と非常に古い星を 含み、宇宙年齢に渡る比較的平坦な星形成史を示唆する。

 図4=赤外 CMD 

 図4は M3.6 - [3.6]-[4.5] CMD を示す。左は 3.6, 4.5 で検出 した星全て。右はそれに加え、 V, I の検出も揃った星を示す。図の AGB 限界 線は  Groenewegen (2006) の Te2650, 3600 K、Mbol =-7.1 のマスロス無し炭素星モデルの2点を結んで 決めた。マスロスが激しく、ダスト熱輻射が強い星ではこの上限線を越える可能 性がある。しかし、それらは同時に [3.6]-[4.5] も赤くなるはずである。その ような星は IC 1613 では観測されていない。図4右にはTRGB のラインも引いた。 これは図5=3.6 μm 光度関数の急落点から決めた。
 LF から決めたから水平線になる。 実際は右上がり?
 図4右中、青い sub-TRGBs は全て M3.6 = -6.2 ラインの下。 赤い方では TRGB ラインの上に赤四角が見える。これらは実際には sub-TRGBs ではなくて、マスロス AGBs であろう。
 TRGB ラインが右上がりとは認めず? TRGB より上にある赤い星は図3では(d)四方形の右側にある無定義領域の星 なのか?ムーン、いい加減でイライラする。

図3.OGLR II データによる I-(V-I) CMD. (a) 青い星。(b) AGBs (c) RSGs. (d) sub-TRGBs. この図の目的は, 図4の赤外CMD の解釈を助けることである。 TRGB は(b) と (d) の間隙の中央、 MI = -4 で決められる。
 この図で炭素星は? (d) の右 の I で暗くて赤い星はマスロスAGBs?



図4.IC 1613 の赤外 CMD. 左:3.6, 4.5 μm で検出された全天体。 実線=人工星テストで決めた 50 % 完全性。 右: それに加えて V, I 検出のある天体。分類は図3による。 黒星= RSGs. 赤四角=sub-TRGBs. 緑三角= AGBs. 青丸= 青い天体。


図5.実線= 3.6, 4.5 μm で検出された全ての星の光度関数。破線=さらに V, I で検出されて、TRGB の下と判定された星。  

図6.M3.5 - [3.6-4.6] CMD.  



図7.図3の分類による星の位置分布。


図8.左:3.6, 4.5 μm で検出され、3.6 μm で TRGB より上にある星の中で V, I で検出された星の割合の [3.6]-[4.5] カラーによる変化。 右:カラーを光学的深さに変換。

 5.AGBs 


図10.マスロス率と輻射等級の関係。破線= Jura84 のモデル最大マスロス率。 実線= van Loon et al. (2005) の観測的上限。

表2.検出統計  





図9.M3.6 - [3.6]-[4.5] CMD. 黒点=IRAC 星。赤丸=Albert00  炭素星。右端の4星はかなりのマスロスを持つ。

 5.1.可視検出の完全性 

 5.2.炭素星 

 CN/TiO フィルター 

 Albert et al 2000 は CN/TiO フィルター観測を行った。彼らのデータは 我々のIRAC 天体の 50 % を含む。この割合は Udalski et al 2001 の V,I 観測より僅かに低い。彼らは二色図上で O-リッチと C-リッチを分けた。 彼らの R-I カラーが赤い方では分離ははっきりしているが、青い領域では 分離が不分明となる。そこで、 C/M 分類は R-I カラーの赤い領域でのみ 行われた。
 炭素星の数 

 我々の IRAC 観測領域内で Albert00 炭素星は 74 個である。彼らの C/M = 0.64 を仮定すると、 AGB 星の数は 190 となる。
(どうして、分類された M-型星 の数をそのまま使わないのか? )
こうして、カラー制限を掛けた分類では AGB 星の 18 % のみが C/M 比 の産出に使用された。図9には IRAC CMD 上に Albert00 炭素星を 示す。炭素星は比較的青い方を占めている。ただ、4炭素星は赤く、かなりの マスロスが予想される。


 5.3.マスロス率 

 シェルモデル 

 マスロスは Groenewegen (2006) のシェルモデルにスケーリングを施して求める。

 スケーリング 

Ψ = Z/Zo として、

 dM/dt ∝ Ri2Viρi
 τ ∝ RiρiΨ
 Ri2 ∝ L

なので、

 dM/dt ∝ Vi L1/2Ψ-1 τ

となる。
 不定性 

 メタル量に現在の値を使って良いのか? AGB 星の大気の値を使うべきで ないか、という問題はある。また、マスロス星のカラーは本来青い星が星周 層の赤化で赤くなったのか、マスロスゼロだが大気温度が低いため赤いのか、 縮退して判断が難しい。もっと大きな問題は O-リッチか C-リッチかの情報を 持っていない事である。

 図10=マスロス率と光度 

 図10にはマスロス率と光度の関係をプロットした。 星風の組成は仮に AMC = 85 %, SiC = 15 % とし、Teff は 黒丸= 2650 K, 白丸= 3600 K とした。比較のために、モデルのラインを示す。 最もマスロスの大きな星は最も明るい星のグループに属することが判る。

 総マスロス 

 総マスロス量は Teff = 2650 K の場合 2.4 10-4 Mo/yr, Teff = 3600 K の場合 4.3 10-4 Mo/yr である。この値は WLM の約半分である。しかし、マスロスの大部分が少数の高マスロス星 からであることを考えると、矮小銀河の総マスロス量は激しく時間変動 すると考えるべきである。


 6.まとめ 

 AGBs の可視検出完全性 

 Spitzer IRAC 測光を OGLE II V, I 測光と較べた結果、 IR で検出された AGB 星の 43 % は可視で検出されていず、さらに追加の 11 % は TRGB の下に ある赤色巨星と誤認されている。可視の観測でのこの不完全性は [3.6]-[4.5] カラーとの相関が強い。これは可視で非検出の AGB 星は星周物質の減光に起因 するのであろう。

 C/M 比 

 可視狭帯フィルター観測 Albert00 と比較すると、彼らの観測は全 AGBs の 50 % を検出している。かれらの C/M 比の計算は AGBs の 18 % を使用して いるに過ぎない。 Valcheva et al. (2007) は NIR 観測から C/M = 0.58 を出している。
 マスロス率と熱近赤外放射 

 AGBs からの全マスロス量(MLR)は (0.2 - 1.0) 10-3 Mo/yr で ある。値は仮定する星の有効温度と化学組成により変化する。個々星の Mbols と MLRs の分布はマゼラン雲での分布 van Loon et al. (2006) とよく似ている。熱近赤外放射の 85 % が AGBs と RSGs 起源である。

 WLM とよく似ている 

 IC 1613 AGBs の測光特性は WLM Jackson et al. (2007) と非常によく似ている。これは銀河特性が似ており、類似の進化史を有する ことが原因である。両者は dIrr 銀河の典型例である。