近傍のミラとセミレギュラーで年周視差精度が 20 % 以下、周期が良く定ま っている物を選んで周期光度関係を求めた。 K 等級を用いて、二本のよく決 まった P - L 系列を発見した。その一つは通常のミラ型星 P - L 関係。 もう一本はファクター 1.9 短周期側にずれている。ミラ系列にはミラ型星と セミレギュラーが混在するが、第2系列にはセミレギュラーのみ存在する。 | セミレギュラーの幾つかは二重周期を示す。そのそれぞれが二つの関係に乗る。 ホワイトロックの進化経路がデータに合うことが示される。これはセミレギュラー がミラの前駆天体であることを示唆する。二つの系列間の遷移は脈動モードの 遷移かまたは恒星内部構造の変化に対応する。ミラの大振幅脈動は AGB 先端光度 に達するあたりで起こる。 |
セミレギュラーとミラの進化上の関係 正確な進化関係は不明であるが、セミレギュラーはミラの前駆天体としばしば考えられ てきた。その場合、セミレギュラーは AGB 上ミラより下に位置するはずである。 Kerschbaum, Hron 1992, Kerschbaum, Hron (1994) は SR の中には物理特性がミラと同じだが、振幅 に関するミラの制限だけクリアできない星があると述べた。良い例が R Dor (SRb) で、 Beddibg 1998 はこの星がミラ的な変光と SR 的な変光を交互に繰り返すことを 発見した。この星はセミレギュラーからミラへの遷移期にあるのかも知れない。 しかし、セミレギュラーとミラが進化の前後関係にあるのではなく、進化の同時期 に併存するのかも知れない。 |
脈動モード Wood, Sebo 1996 による LMC の周期光度関係に二つの系列があるという発見 から、セミレギュラーはミラより高次の振動モードにあるのではないかという 推測がなされる。 ヒッパルコスのミラ van Leeuwen et al 1997 による近傍の 16 ヒッパルコスミラの解析から、 χ Cyg と R Cas 以外の 14 ミラは LMC と同じ P-L 関係に従うことを 見出した。彼らはこの P-L 関係は第1倍音に相当し、χ Cyg と R Cas は基本振動ではないかと示唆した。彼らのサンプル中に Wood, Sebo 1996 第2系列に相当する星はなかった。 |
選択基準 (i).視差精度 0.2 以下。 (ii).ヒッパルコス変光フラグ H6 ≥ 2. M-型矮星を排除。 (iii).ヒッパルコススペクトル型 H76 = M∗ or S∗ ヒッパルコス炭素星は Bergeat, Knapik, Ritily (1998) にある。 (iv).P > 50 d. を GCVS から選ぶ。 周期 ミラは GCVS から採ったが、他のセミレギュラーの周期は AFOEV と VSOLJ から選んだ。6個、 RX Boo, T Cet, RS CnC, AF Cyg, TX Dra, G Her の周期 は AAVSO から得た。こうして 6 ミラと 18 セミレギュラーを得た。二つの 星が GCVS では SRc に分類されているが、 SRb である。 平均等級 ミラの平均等級は vanLeeuwen et al. (1997) から採った。SRs の大部分は Kerschbaum, Hron (1994)、 IRC カタログ、Simbad から採った。R Dor は Bedding et al 1997, W Hya は Whitelock 1997 のデータを用いた。多くの SRs では単期 観測しかデータがない。しかし、ミラでさえも LMC PLR に対する 一回観測データの影響は 0.26 mag であるから、 SR に対する等級 散らばりの影響は 0.1 mag 程度であろう。 |
![]() 表1.長周期変光星サンプル |
![]() 図1.MK - log P 関係。四角=我々のサンプルミラ。菱形=我々のセミレギュラー。 実線= LMC PLR ( Feast (1996) で、十字=それに使用されたデータ。アステリスク= Wood, Sebo (1996) の LMC 星団 LPVs. 点線=ホワイトロック経路を 0.8 mag 上げたもの。 図1= PLR 図 図1は我々のサンプルの PLR 図である。実線は Feast (1996) による LMC ミラ型星の PLR MK = -3.47 log P + 0.91 (DMLMC = 18.56) 我々のサンプルは LMC に現れた二つの系列にうまく乗っている。 図2=ズレダイアグラム 図2はミラ標準 PLR からの我々のサンプルの垂直方向差ヒストグラムを示す。 ズレ=0のピークは標準 PLR を、ズレ= 0.9 mag のピークは Wood, Sebo (1996) の第2系列の存在を示す。その上サンプル星の幾つかは標準系列の約 1 mag. 下に位置する。6個のミラは標準系列に乗るか、その下になる。標準系列より 上にくる星は皆 SR であった。 二重周期星 7個の二重周期星に関しては、5個は長い方の周期が標準ミラ型星の標準 関係に乗り、短い方がセミレギュラー関係に乗る。 |
![]() 図2.ミラ標準 PLR からの我々のサンプルの垂直方向差ヒストグラム。 ![]() 図3.我々のサンプルによる PLR. 星の名前を付けた。 |
進化経路? Whitelock 1986 は球状星団中のミラとセミレギュラーは PL 図上で ミラよりも緩い傾きの系列を作っていることを示した。各星団内で、ミラは この系列と PLR との交点に位置する。この新しい系列はホワイトロック経路 と呼ばれ、進化系列の第1候補である。その傾きは Vassiliadis, Wood 1993 の進化計算と一致する。 Mbol ホワイトロック経路 ホワイトロック経路は Mbol でしか定義されていない。これを Mbol に変換するため、我々は Whitelock 1986 から 47 Tuc と NGC 5927 のデータを 採った。この二つは同じくらいに高メタルで、ミラ型星も多い。これらの星に 対し、我々は Mbol ホワイトロック経路を次のように定めた。 Mbol = -1.37 log P - 3.05 計算 Vassiliadis, Wood 1993 ではこの傾きは M < 2.5 Mo ではほぼ一定である。 その終点は若い星ほど高光度となる。 |
運動学からのサポート 図1の点線はホワイトロック経路を 0.8 mag 上げて、SRs を通るようにしたもの である。この経路は PLR 上の最高密度点を結んでいて、この経路の進化上の意味合い を強めている。我々のサンプルのセミレギュラーはしたがって、周期 300 日以上の ミラの前駆天体と考えられる。これはまた、セミレギュラーの運動学 Feast, Woolley, Yilmaz (1972) は周期に無関係な小さな速度分散を示す。これは、長周期ミラのそれに近い。 短周期ミラは大きな速度分散を示し、それらが古い種族に属することを示唆する。 我々のサンプルのヒッパルコス固有運動はそれらの結果と一致する。 (セミレギュラーの大部分は中間質量星 ということか?また小質量星はSRを経ないでいきなりミラになるという意味か?) モード切替? PLR 上に SR が塊り、PLR 2系列の中間にない理由は不明である。これは 進化が連続的ないことを示唆する。二重周期星が両 PLR 系列上にまたがる ことは、二つの系列が別の脈動モードにあることを示唆する。この解釈では 星の光度はまず SR 系列に沿って連続的に上がって行き、突然脈動モード が切り替わって周期が伸び、その後はミラ系列に沿ってまた連続的進化が 続く。この仮説には何の証拠もない。別の可能性は、周期変化は内部構造の 調整の結果というものである。その場合、二重周期星の短い側の周期が SR 系列に乗ったのは偶然と言うことになる。 |
1.ミラ PLR 上のセミレギュラー SR のかなりがミラ PLR に乗る。それらはミラと同じ脈動モードで 振動していることが示唆する。 2. 残りの SR は第2の PLR 系列を形成する。その傾きは同じで、短周期側に 1.9 分の 1 にずれる。ミラ PLR 上に落ちる SR の大部分は第2周期が SPR の上にある。 周期比は 1.76 - 1.9 である。 |
3.ミラ=AGB 先端 ミラの大振幅脈動は主に AGB 先端部近くで起きる。 4.ホワイトロック経路の意味 ホワイトロック経路の勾配はデータと良く合う。これは SRs が Miras の前駆 天体であることを示唆する。二つのグループへの分離は脈動モードの違いか、 内部構造調整の結果か分からない。 |