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観測手順書について(2) - CISCOの場合 -

ここでは観測手順書のコマンド部について、 CISCOの場合を例にとって詳しく説明する。

コマンド部とは

<Command>
##########  Set Up  ##########
SetupOBE $DEF_CISCO PATH="/home/messia/data/000000"
BootQDAS $DEF_CISCO
BootVGW OBE_ID=COMMON OBE_MODE=TOOL

##########  Shut Down  ##########
ShutdownOBE $DEF_CISCO MODE=ALONE
...
...
...
...
#without AG
GetStandard $DEF_IM2 $SAO120671 NFRAME=3 DITH=10.0
TelOffset $DEF_CISCO DX=0.0 DY=-20.0
GetStandard $DEF_IM2 $SAO120671 NFRAME=3 DITH=10.0
#
#with AG
GetStandard $DEF_SP4 $SAO120671 NFRAME=3 DITH=10.0
</Command>
がコマンド部となる。 実際の観測時に観測者が扱うのは、この部分である。

先のパラメータ定義部で定義されたパラメータは $パラメータ名で埋め込まれる。 たとえば、

GetStandard $DEF_IM2 $SAO120671 NFRAME=3 DITH=10.0
というコマンドがあるが、これは観測時には $DEF_IM2$SAO120671が展開されて
GetStandard OBE_ID=OHS OBE_MODE=IMAG_2 OBJECT="SAO120671 8.2 F5" RA=144822.818 DEC=+071306.48 EQUINOX=2000.0 PA=0.0 NFRAME=3 DITH=10.0
となってSOSSの画面に表示され、実行される。

また、 ''#''で始まる行はコメント行と解釈される。

それでは、個々のコマンドについて、その動作と意味するところを見ていこう。

CISCOのセットアップ

##########  Set Up  ##########
SetupOBE $DEF_CISCO PATH="/home/messia/data/000000"
BootQDAS $DEF_CISCO
BootVGW OBE_ID=COMMON OBE_MODE=TOOL

これらは、観測前に必ず実行しないといけないコマンドである。

行うことは、

  1. SetupOBE:
    CISCOのセットアップ。実行前に、 CISCOのローカルのワークステーション(OBCP)のセットアップが完了しているか 確認しないといけない。

  2. BootQDAS,BootVGW:
    OHS/CISCO,VGWのクイックルックなどに用いるSkycatの起動

CISCOのシャットダウン

##########  Shut Down  ##########
ShutdownOBE $DEF_CISCO MODE=ALONE
ShutdownQDAS $DEF_CISCO
ShutdownVGW OBE_ID=COMMON OBE_MODE=TOOL

これらは、観測終了後に必ず実行しないといけないコマンドである。

行うことはセットアップとは逆で、

  1. ShutdownOBE:
    CISCOのシャットダウン
  2. ShutdownQDAS,ShutdownVGW:
    OHS/CISCO,VGWのクイックルックなどに用いるSkycatの終了

ダークの取得

##########  Dark  ##########
GetDark $DEF_CISCO EXPTIME=2 NFRAME=24
GetDark $DEF_CISCO EXPTIME=5 NFRAME=24
GetDark $DEF_CISCO EXPTIME=10 NFRAME=24
GetDark $DEF_CISCO EXPTIME=20 NFRAME=20
GetDark $DEF_CISCO EXPTIME=40 NFRAME=10
GetDark $DEF_CISCO EXPTIME=60 NFRAME=24
GetDark $DEF_CISCO EXPTIME=100 NFRAME=12
GetDark $DEF_CISCO EXPTIME=200 NFRAME=12

ダークを取得したいときは、 このGetDark コマンドを使う。ダークの積分時間と取得フレーム数を変えたいときは、 それぞれ EXPTIMENFRAMEの値を編集すればい い。

CISCOの光軸チェック

##########  Outfocus Image  ##########

CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=2 FILTER="N204"
TelOffset $DEF_CISCO DX=0.0 DY=0.0
CheckFocus $DEF_CISCO EXPTIME=2.0 Z=!TSCL.Z

Exec OHS MODE MODE=ALONE
これは、保守用に入っているだけなので、観測者が使うことはない。

ここ に解説があるので、詳しいことはそちらを参照のこと。

フォーカス合わせ

##########  Focus  ##########

#FocusOBE
TelOffsetByVGW $DEF_CISCO
TelOffsetByQDAS $DEF_CISCO SKYSUB=OFF EXPTIME=2.0 FILTER="Kp" SLITX=135
CheckField $DEF_CISCO NFRAME=3 EXPTIME=2.0 FILTER="Kp"
CheckFocus $DEF_CISCO NFRAME=3 EXPTIME=2.0 Z=!TSCL.Z
FocusOBE $DEF_CISCO DELTAZ=0.08 Z=!TSCL.Z

#FocusAG
FocusAGSequence OBE_ID=COMMON OBE_MODE=TOOL Z=!TSCL.Z DELTAZ=0.07
FocusAG OBE_ID=COMMON OBE_MODE=TOOL Z=!TSCL.Z DELTAZ=0.07
PROBEOUT $DEF_CISCO

これらは焦点合わせのためのコマンドである。

焦点合わせには、オートガイダーを使う方法と、 CISCOの像を使う方法の二つがある。 #FocusOBE以下がCISCOの像を使い、 #FocusAG以下がオートガイダーを使う。 以下にそれぞれで行うことの解説と長所短所をあげるので使い分けてほしい。

FocusOBE

  1. まず TelOffsetByVGWで最寄りの V=13-14magの星に向ける
  2. 次に TelOffsetByQDASを実行して星を X=600, Y=600あたりに導入する
    (星がコドラントの境目に来ると、ちゃんとフォーカスできないため)
  3. CheckFieldでフィールドをチェックする。この時、焦点合わせをしたいフィルターが Kpでない場合、 FILTER="Kp"を他の値に変更しないといけない。
  4. 大きくフォーカスがずれていて、 どうずれているのかわかっている場合は CheckFocusをつかってフォーカスを直す。

    そうでない場合はこれは行う必要はない

  5. 最後に FocusOBEを実行する。

この方法は、CISCOでフォーカスするので信頼性が高い反面、 やらなければならない動作が多くて面倒くさいのと、時間がかかるのが欠点。 ただし、AGで焦点あわせができないとき (薄暮時やシーイングが非常に悪いとき) にはこちらを使わざるをえないこともあるかも。

FocusAG

  1. FocusAGSequenceを実行するのみ。 自動的に星の選択からフォーカス合せまでおこなってくれる。
  2. 望遠鏡オペレータがすでに星の導入を行っているのであれば FocusAG を行う。

この方法はコマンド一発でできることと、時間もそんなにかからないのが長所。 先にも書いたように空の状態が悪化すると弱いのが欠点。

基本的にCISCOのフォーカス位置とオートガイダーのフォーカス位置は 各観測ランのまえにサポートアストロノマーがチェックているはずなので、 FocusAGを標準で使おう。 だが、もしも FocusOBEFocusAGSequence の結果が系統的に違うようなら、サポートアストロノマーに知らせてほしい。

AG上でのスリット位置出し

#Probe Center
TelOffsetByVGW $DEF_CISCO
TelOffset $DEF_CISCO DX=0.0 DY=0.0
CheckField $DEF_CISCO NFRAME=1 EXPTIME=2.0 FILTER="N204"
PROBECENTER $DEF_CISCO
CATCHSAO $DEF_CISCO X=304 Y=188
PROBEOUT $DEF_CISCO
CheckField $DEF_CISCO NFRAME=1 EXPTIME=2.0
これも保守用コマンドなので観測者が使うことはない。

これは、CISCOのスリット位置がオートガイダーのどこに来るのかを 測定するためのコマンド群である。 これでテーブルファイルCATCHSAO の値を出す。

撮像観測 (目標天体)

## HDF Imaging
# Setup
ReSetupOBE $DEF_CISCO Filter="Kp"
SetupField $DEF_IM $HDF
GetSky $DEF_CISCO EXPTIME=20 FILTER="Kp" SLITX=135
TelOffset $DEF_CISCO DX=0.0 DY=50.0
TelOffsetByQDAS $DEF_CISCO SKYSUB=ON

# Kp
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=20 FILTER="Kp"
GetObject $DEF_IM9 $HDF NFRAME=12 DITH=10.0
TelOffset $DEF_CISCO DX=-20.0 DY=0.0
GetObject $DEF_IM9 $HDF NFRAME=12 DITH=10.0
# H
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=20 FILTER="H"
GetObject $DEF_IM8 $HDF NFRAME=4 DITH=10.0
# J
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=40 FILTER="J"
GetObject $DEF_IM8 $HDF NFRAME=3 DITH=10.0

これで撮像観測1セット分である。

それでは、何をやっているのかを順に見ていこう。

フィールドのセットアップ

# Setup以下の部分でフィールドのセットアップを行う。

  1. 直前に分光観測を行っていたのであれば ReSetupOBEで スリットを開き、フィルターを Kp にする。このコマンドと次の SetupFieldを連続して実行しすれば望遠鏡を向けている間にこの作業を行 うので時間の節約になる。
  2. 次に SetupField$HDFで定義されている方向に望遠鏡を向ける。
  3. 次に GetSkyでフィールドチェックの時のスカイの引き算に使うスカイ画像を取得する。
  4. TelOffsetで望遠鏡を50ピクセル分(約5 arcsec)南に振って、
  5. TelOffsetByQDASでもう一枚画像を取って、その画像を元に望遠鏡を正しいポインティングに振る。 SKYSUB=ONになっているのでクイックルックには先ほど取得した スカイ画像が差し引かれた画像が表示される。
  6. このあと、もう一度 TelOffsetByQDASを実行しておこう。表示されたクイックルック画像が正しかったら、そのコマンドはキャンセルしてフィールドのセットアップは完了。

データ取得

# フィルタ名以下でデータ取得を行う。

  1. まず、 CheckFieldを必ず実行する。 これで、フィルターを変える作業と積分時間のセットを行う。 この結果でてきたクイックルック画像は必ず確認してほしい。 とくに、バックグラウンドがどのくらいあるかはフィルターと積分時間が 正しいかの重要な指標なので必ずチェックするようにしてほしい。 バックグラウンドの量はここに出てい る値くらいになる。
  2. 次に GetObject 実行すればディザリング観測を開始する。

  3. 更に積分を続けたい場合はこのGetObjectを繰り返せば良い。 その際、位置をすこし動かしたい場合はTelOffsetコマンドで行う。

撮像観測 (標準星)

## Standard FS201
SetupField $DEF_IM $FS201
TelOffset $DEF_CISCO DX=0.0 DY=0.0
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=20 FILTER="Kp"
GetStandard $DEF_IM4 $FS201 NFRAME=12 DITH=10.0
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=60 FILTER="H2(2-1)"
GetStandard $DEF_IM4 $FS201 NFRAME=4 DITH=10.0

標準星取得も基本的には同じである。

  1. SetupField で天体の方向に向ける。
  2. 次に CheckField で積分時間と視野のチェックを行う。

    この結果でてきたクイックルック画像はやはり必ず確認すること。 標準星の場合は星のカウントが適正かどうか(暗すぎないか、 あるいはサチってないか)が重要なので、skycat の pickobject コマンドでピークでのカウントが大きくても 10,000 ADU になるように積分時間を 調整する。 標準的なシーイング(00.5arcsec)で広帯域フィルタの場合、13.5等の星で5秒積分くらいがいいだろう。

  3. それが完了したら GetStandard で観測を開始する。

分光観測 (目標天体)

## B30930 Spectroscopy
# Setup
ReSetupOBE $DEF_CISCO Filter="H"
SetupField $DEF_IMV $B30930 I_BOTTOM=3000
AGCenter $DEF_CISCO
GetSky $DEF_CISCO EXPTIME=20 NSAMPLE=1 FILTER="H" SLITX=135
ProbeOffset $DEF_CISCO DX=0.0 DY=50.0
ProbeOffsetByQDAS $DEF_CISCO SKYSUB=ON
AGOffsetByQDAS $DEF_CISCO SKYSUB=ON

# JHGr, 0.5arcsec slit
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=5 NSAMPLE=1 SLITX=2.0
AGOffset $DEF_CISCO DX=0.0 DY=0.0
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=5 NSAMPLE=1 SLITX=0.5
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME=20 NSAMPLE=1 FILTER="JHGr"
GetObject $DEF_SP4 $B30930 NFRAME=1 EXPTIME=400 NSAMPLE=1 DITH=10.0

これで分光観測1セット分である。

それでは、何をやっているのかを順に見ていこう。

フィールドのセットアップ

# Setup以下の部分でフィールドのセットアップを行う。

  1. 直前に分光観測を行っていたのであれば ReSetupOBEで スリットを開き、フィルターを Kp にする。このコマンドと次の SetupFieldを連続して実行しすれば望遠鏡を向けている間にこの作業を行 うので時間の節約になる。
  2. まず SetupField$B30930で定義されている方向に望遠鏡を向ける。 この時、引数に$DEF_IMではなくて $DEF_IMVが入っていることに注意してほしい。 これは、オートガイドのセットアップも同時に行うための引数で、 を観測者が行わなければならない。
  3. 次に、 AGCenter でAG星をCCDの視野中心に載せかえる。

  4. GetSky でフィールドチェックの時のスカイの引き算に使うスカイ画像を取得する。

  5. ProbeOffset で望遠鏡を50ピクセル分(約5 arcsec)南に振って、

  6. ProbeOffsetByQDAS でもう一枚画像を取って、その画像を元に目標天体がスリット位置 ( X=524)に持ってくる。(あるいは、参照天体を動かして目標天体がスリット位置に来るようにする。) SKYSUB=ONになっているのでクイックルックには先ほど取得したスカイ画像が差し引かれた画像が表示される。
  7. ProbeOffset はプローブの駆動精度でしか動かないので、さらに AGOffsetByQDAS を実行して位置の微調整を行う。 このコマンドは、CCDのピクセル精度で駆動する。

  8. 天体をスリット位置に載せ込むにはAGOffsetByQDASを数度実行する必要があるだろう。 あと、注意しないと行けないのは 一旦 AGOffset* 系の コマンドを実行したら、それ以降 ProbeOffset* 系のコマンドは実行してはならない ということである。これは、AGCenterコマンドでちょっと変なことをしているためで、 これ以降もしProbeOffsetを実行してしまうと SetupField を初めからやり直さないといけなくなるので 注意してほしい。

データ取得

# グリズム名、スリット幅以下でデータ取得を行う。

  1. まず、 CheckField でスリットを 2arcsec にまで閉じる。

  2. 対象天体が明るくて CheckFieldで見えていて、その位置を変えたい場合は AGOffset で位置を変える。

  3. 次に CheckField でスリットを目標の幅まで(今の場合 0.5arcsec) にまで閉じる。 ここで注意してほしいのは、スリット幅 1arcsec 以下の場合、実際の幅が入力通りにならないことが 多い、ということである。 必ず画像上でスリット幅をチェックしてほしい。 ちなみに画像上でのピクセルスケールは NsOpt副鏡で 0.111 (arcsec/pix)、 赤外副鏡で 0.105 (arcsec/pix)である。

  4. 最後に CheckField でフィルターをグリズムに変える。

  5. GetObject 実行すれば観測を開始する。

分光観測 (標準星)

## Spectroscopic Standard SAO120671
#Setup
SetupField $DEF_IM $SAO120671
CATCHSAO $DEF_CISCO X=304 Y=188
SetupField $DEF_IMV
AGCenter $DEF_CISCO
CheckField $DEF_CISCO EXPTIME= NSAMPLE=1
AGOffset $DEF_CISCO DX=2.0 DY=0.0
CheckField $DEF_CISCO

#Get Standard
GetStandard $DEF_SP4 $SAO120671 NFRAME=3 DITH=10.0

分光標準星(割り算星)の取得は、目標天体取得後スリットを開かず、グリズムも 変えずに行う。

フィールドのセットアップ

# Setup以下の部分でフィールドのセットアップを行う。

  1. まず SetupField$SAO120671で定義されている方向に望遠鏡を向ける。

  2. 次に、 CatchSAO でAG星をCISCOのスリット位置まで誘導する。

  3. SetupField を天体の引数を入れずに実行し、 $DEF_IMVなのでオートガイドは開始する。もちろん観測者がAG星の選択やCCDの設定などを行う。
  4. AGCenter でAG星をCCDの視野中心に載せかえる。

  5. CheckField 一枚画像を取って、スペクトルの明るさをチェック。

  6. AGOffset でスリット幅の半分だけ望遠鏡を一方向に振って、

  7. 再度CheckFieldでスペクトルの明るさをチェックする。

    この時、明るくなっていれば更に同じ方向に望遠鏡を振る。暗くなっていれば逆方向に振る。

  8. 以上の AGOffset と CheckField を繰り返してスペクトルがもっとも明るくなる場所を探す。

データ取得

フィールドセットアップが済んだら、 GetStandard で標準星の取得を行う。


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Kentaro Motohara : kmotohara@ioa.s.u-tokyo.ac.jp