RMS 天体の距離 Red MSX (RMS) 天体探査で同定された 1750 個の埋もれた若い大質量星 を用いて、最近の大質量星形成域の銀河面内分布を求めた。視線速度データ のない 800 天体の分子線観測を行った。文献にある距離決定で用いられた 方法を検討し、既存 HI データを用いて、太陽円内の約 200 天体の距離に 関する不定性を解消した。 RMS 天体の分布 距離から絶対輻射等級(∼ 104 Lo)を計算し、サーベイの 完全度を評価した。全部で 1650 天体の距離と光度を求めた。その 1/3 は サーベイの完全度限界より上である。サンプルの銀経、銀緯、視線速度、 中間赤外画像を調べた結果、 120 の集団が同定された。それらの位置は 既知の有名な星形成複合体、 G305, G333, W41, W43, W49, W51 に付随 していた。 |
腕に付随する分布 天体位置と銀河系の腕との相関を調べた結果、若い大質量星の分布 は渦状腕に沿っていることが明らかになった。全体としての天体表面密度 と表面輝度は分子雲の表面密度と良い相関がある。これは分子雲の単位 体積当たりの大質量星形成率がほぼ一定であることを示す。 銀河中心距離との関係 他銀河での大質量星と分子ガスの比較も類似の中心距離関係を示す。 埋もれた大質量星からの総光度は &sim: 0.76×108 Lo でその 30 % は最も大きな星形成域 10 個に含まれている。スケール高を 銀河中心距離の関数として求めた結果、4 kpc - 8 kpc の間では 20 - 30 pc からゆっくり増加するだけだが、その先は急速に大きくなる。 |
初期大質量星は雲の中 大質量星(M>8Mo)は集団で形成する(de Wit et al 2004) ことが知られて いる。それらは未だ数百等の分子雲減光に埋もれている間に主系列に達する。 このため、それらの大きなサンプルを得るのは困難である。 RMS 探査 Red MSX Source (Hoare et al 2005, Urquhart et al 2008b, Lumsden et al 2013) 探査は、十分によく選ばれた大質量 YSO (MYSO) と CHIIR, UCHIIR を探す 研究である。基本的にこの研究は、中間赤外カラーで選ばれた 5000 サンプルの 追尾観測と他のサーベイからの補足データとからなる。それらの他サーベイは、 2MASS, UKIDS, VVV, GLIMPSE, MIPSGAL, ATLASGAL, CORNISH である。 天体データベース その初期サンプルには多数の質量放出晩期型星が含まれていた。それらは 埋もれた若い星 と類似の中間赤外カラーを示す。しかし、追尾観測ではそれら を注意深く排除した。 |
データベースには全ての他波長観測データが含まれて
いる。http://rms.leeds.ac.uk/egi-bin/public/RMS_DATABASE.cgi
を見よ。
若い大質量星の選別が終了した 追尾観測と分類が終了し、約 1600 の YSO と HIIR を |b| < 5° 内に 同定した。若い大質量星のこのサンプルは以前の 10 倍の大きさを持ち、若い 大質量星の統計的に有意な研究を可能にする。 RMS 計画全体の記述は Lumsden et al 2013 を見よ。 前の部分サンプル研究の発展=全サンプル MYSO の小さなサブサンプルの銀河面分布に関しては以前に、Urquhart et al 2011a, 2012 で述べた。今回は RMS 全サンプルを使って大質量星形成領域の 銀河面全体での分布を調べる。その分布を渦状腕の予想位置と比べ、表面輝度 分布を調べる。 |
2.1.過去の観測RMS 計画のキモは分子線観測による視線速度の決定である。12CO は飽和しやすく、多成分など解析がしにくいので、13CO (1-0), (2-1) ラインを観測に用いる。それでも 60 %/2000 天体に多成分が検出されたので、 高密度部分からの CS(2-1), NH3 観測で補足した。2.2.追加観測: 13CO, CS(2-1), NH32.2.1.CS(2-1), NH3 観測CS(2-1), NH3 観測は以前 13CO 観測が行われた天体 で多速度成分を持つものに対して行われた。これらは高い臨界密度 104 - 105 cm-3 を持ち、分子雲コアに付随するからである。 CS 観測は 127 天体、NH3 観測は 499 天体に対して実施された。2.2.2.13CO 観測RMS 天体の分類基準については Lumsden et al. 2013 を参照。基準が進化するにつれて、以前晩期型星として除去された天体が YSO や HIIR として復帰することが起きた。そこでそれらの 13CO 観測が必要となった。それらは 192 天体であった。2.3.観測手順とデータ整約2.4.既知天体との随伴星形成域との位置の一致GLIMPSE 画像を見ると、多くの RMS 天体が大きな星形成域に付随している ことが分かる。多くの場合、単一 RMS 天体は以前に同定された複合体に付随 するが、大部分の場合は複数天体が与えられた複合体に一致する。これを 確実にするため、随伴条件に既に分かっている星形成域の速度と 10 km/s 以内 に一致することとした。これら, W31, M16, M17 などの星形成域までの距離は 色々な方法で調べられている。 60 % は既知星形成域に 中間赤外画像の眼視と視線速度とによりこれら小集団を同定し、それらを 可能なら既知の星形成領域と随伴させた。こうして約 600 の天体を 120 の 星形成領域と随伴させた。これは、 RMS の YSO, HIIR 中の 60 % にあたる。 典型的な星形成複合体の性質 図2には 117 の星形成領域に随伴した RMS 天体の数の分布を示した。表2 には複合体のパラメタ―を示す。これら複合体の大部分は割と小さく、数個の 星形成領域が集まったに過ぎない。しかし、それらの星形成領域一個一個に 多分星団があると考えると、小さくともそれらの複合体は活発な星形成領域 と看做すべきである。もし、星形成複合体に数個の活発な局在星形成域がある のが典型的であるなら、もっと多数の RMS 天体が所属する複合体は規格外 のものと考えるべきである。 巨大複合体の選定(距離バイアス) 20 以上の RMS 天体を含む複合体は 6 つしかない。それは、 W51, Cygnus-X, W43, G 305, RCW 106, Vela 分子橋 である。それらは全て詳しく調べられてい る。注意しておくと、Cygnus-X (r=1.4 kpc) と Vela-分子橋 (r=0.7 kpc) は 距離が近く、RMS 天体は必ずしも明るいわけではない。それで、最も 明るい星形成複合体の性質を集めた表2から上の両者はおろした。 このように、複合体に属する天体数には距離のバイアスがかかる。したがって 天体数に基づいて何らかの結論を導く際には注意が必要である。 こうして天体 をグループにまとめ、星形成領域との同一化を進めた結果、視線速度を測る 必要があるの天体数を 500 減らした。しかしそれでも 1100 天体の距離を決める 必要がある。 2.5.銀経 - 速度 分布分子雲、モデル渦状腕、 RMS 天体の相関図3は複合体 ( と言うときは"分子雲複合体"では なくて、数個集まった点源を指しているらしい。速度に関しそれらをひとまと めにして扱うのは電波観測では分離できないためか?) と個々の天体の銀経と視線速度の分布を示す。背景は積分12CO 強度 (Dame et al. 2001). マップである。色分けした実線は HIIR の分布に基づいた4本の主な渦状腕 と局所腕の位置( Georgelin, Georgelin 1976, Taylor, Cordes 1993, Cordes 2004 を示す。図を見ると、内側銀河系 (|l| < 60°)分子ガスの分布と RMS 天体の強い相関が分かる。その 外側では相関が著しく弱まる。モデル渦状腕の位置と我々のサンプルの HIIR と YSO は強い相関がある。特にモデル渦状腕と分子線の対応が著しく弱い 外側銀河系でモデル渦状腕と RMS 天体との相関が強いことは興味深い。 外側銀河系の渦状腕は最も遠方にあるから、 RMS 天体と分子との相関が 弱いの原因は、 Dame et al. 2001 CO サーベイではビーム巾が 8′ あるので遠方の分子雲が薄まる ことが原因かも知れない。 |
![]() 図1.Mopra 天文台の観測例。 ![]() 図2.分子雲複合体に付随する RMS 天体数の分布。 渦状腕接線方向に RMS 天体の集積 以前の CO, HIIR, MIR サーベイは渦状腕の接線方向を同定した。北天の接線方向 は l = 30°(Scutum-Centaurus arm)、47°(Sagittarius arm) である。 RMS 天体の分布を眺めると、(l, b) 図上でその 2 接点近くで密度が高い。それぞれ、 W43, W51 星形成複合体の周りに集まっている。同様に、RMS 天体の集積が Sagittarius (283°), Scutum-Centaurus(308°), Norma(328°), 3 kpc(337°) arms (Bronfman et al 2000) に付随している。また G305 が Scutum-Centaurus, G282.0-0.12 が Sagittarius 接点にそれぞれ付随している。 局所腕との相関 渦状腕接点の外側、 l = [60°, 280°]、では RMS 天体の計数は低く、平坦 である。二つだけ例外があり、Cygnus X 領域 (l ∼ 80°) Reipurth, Schneider 2008, と Vela molecular ridge (l ∼ 268°) Netterfield et al 2009 である。このどちらも局所腕に付随し、従って比較的近いと考えられている。 これら二つの領域は図3で名前を付けてある。 これらはまた RMS 天体の集積箇所 でもあるが、それらは以前に述べた通り非常に大きな光度を有しているわけではない。 (光度の差が SED の形またはカラーに 現れるのだろうか? ) |
![]() Taylor, Cordes 1993 の表1.モデル渦状腕を決める基準点の座標。どう決めたかは 書いていない。 ![]() Cordes,Lazio 2002 の図6.実線=Taylor, Cordes 1993 の図1と同じ。 破線=4本の対数渦状腕(Wainscoat et al 1992 を少し訂正)。 ![]() Taylor, Cordes 1993 の図1. Georgelin, Georgelin 1976 の HIIR 分布の改良図。Georgelin, Georgelin 1976, Downes et al 1980 は Rgc=8.5 kpc に合わせて、距離を 0.85 倍にした。腕3の軸を太陽円内側では 少し縮小して Downes et al 1980 の改良された HIIR 観測と合うようにした。 Caswell, Haynes 1987 に従い、腕4の外側端は少し伸ばした。 円= HIIR. 斜線=熱伝播と H I 輝線の極大部。 渦状線=表1の位置を3次スプラインで近似。 ![]() Taylor, Cordes 1993 の図4.銀河面上の自由電子密度のモデル表示。最大値 は外側の腕2の ne=0.18 cm-3 と Gum Nebula (太陽のすぐ左の黒い四角) にある。 太陽付近は 0.019 cm-3. |
![]() Cordes 2004 の図1. 20 kpc × 20 kpc 枠内の log ne の灰色表示。太陽は局所星間空間の低電子領域を表す白いパッチの中にある。 ![]() Cordes 2004 の図4左.銀河面上から見た局所星間空間の成分図。 第3象限にある大きな楕円=Local Superbubble (LSB) 第1象限にある大きな楕円= Low Density Region (LDR)。 太陽を含む小さな楕円=Local Hot Bubble (LHB)。 斜線のリング=The Loop I = North Polar Spur。Gum Nebula と Vela SNR も斜線で示す。 ![]() Cordes 2004 の図4右.TC93モデルの研断。 |
3.1.距離の決定メーザーによる視差距離決定は本当に大質量の天体と近傍のそれほどでもない天体とを区別する 上で不可欠の作業である。MYSO と HIIR サンプルの距離決定は現在進行中である。 第1、第4象限の結果は Urquhart et al 2011a, 2012 で発表した。メーザー による視差決定は最も信頼できる方法である。星形成域のデータが集積しつつ ある(Reid et al 2009)。現在のところ、第1、第2象限の比較的近い部分の 天体が多く、我々のサンプルの一部(数 % )しかカバーされていない。 分光視差 HIIR 励起星の分光観測による分光視差はもし分類を間違えると不正確な 距離を与える(Clark et al 2009)。文献を総合的に調査し、距離の推定を改良 し続けるつもりである。 運動視差 残りの天体は運動距離を求めた。銀河回転モデルには Reid et al 2009 の θo=254 km/s, Ro=8.4 kpc を用いた。運動距離にはストリーミングモー ションにより、視線速度エラーに ±7 km/s を見込むと、距離のエラー は ±1 kpc となる。もう一つ注意すると、視差や分光距離のある天体で 運動距離を比べると大きな誤差がある (Moises et al 2011) ことが知られている。 KDA = kinematic Distance Ambiguity 上述の距離不確定性が個々の天体の性質を決める際に大きな影響を及ぼすこと は確かである。しかし、より深刻なのは KDA = kinematic Distance Ambiguity 乃ち、太陽園内では視線速度に対して二種類の距離が可能という問題である。我々の サンプルの約 80 % がこの問題を抱えている。 接点距離と近距離と この問題を軽減するため、二つの処置をとる。 (1)接点速度の 10 km/s 以内の天体距離は接点距離にしてしまう。 (2)遠距離にした時に銀河面高度が高過ぎたら(z>120pc)近距離。 この措置で 100 天体減らせたが、まだ多数が残る。 KDA の解決策 KDA の解決に多くの方法が提案されてきた。 (1)連続光に対する HI 吸収(Urquhart et al 2012) (2)HI 自己吸収 (Green, McClure-Griffith 2011) (3)IR 暗黒雲とのマッチング (Ellsworth-Bowers et al 2013) これらのテクニックは多くの文献にあるので詳しくは述べない。扱われている 天体は我々のサンプルと重なるものが多い。そこで、それらの位置と速度を 較べ、一致が確認された場合はそれを採用した。一致しない場合は、最も良さそう な結果を採用した。はっきりした差がない場合はそのままにした。 HIIR の距離 明るい HIIR 全ては連続光に対する HI 吸収法で扱われた。しかし、200 天体は電波レベルが低すぎて HI 吸収が検出できなかった。それらに対しては SGPS 探査、VLA 銀河面探査からスペクトルを抽出した。もし相関が見つかった ら近距離が付与される。もし相関が見つからなければ、距離は決められない。 図4はその例を、表3は調べた天体の距離解を示す。 |
![]() 図4.雲に埋もれた RMS 天体の Southern Galactic Plane Survey (SGPS) HI スペクトルの例。太陽円の内側にあり、信頼できる距離は文献にはない。 天体速度 vs と接点速度 vt はそれぞれ、赤と青の縦線で 表した。灰色の縦帯は接点速度の上下 10 km/s をカバーしている。それで、 RMS 天体が接点位置にいるかどうかの判定が付きやすくした。上図=接点位置手前。 中図=接点より遠方。下図=接点位置。 1650 RMS 天体の距離 視差、分光距離を文献から、KDA 解を文献と我々自身の観測から得て、埋もれた RMS 天体 1650 星の距離を決定した。しかし、約 100 天体の距離は未決定である。 これは全体の 7 % に相当する。 |
SEDフィット 輻射光度は前節で議論した距離と総フラックスから決まる。総フラックスは Mottram et al 2011b のモデルでフィットした。非常に明るい天体と、 入り組んだ領域にある天体に対しては十分な数の測光点がない。そのような 場合は単純に MSX 21 μm を伸ばした。 光度関数 Mottram et al 2011b は RMS 天体の一部について MYSO と HIIR の光度関数 を求め、統計的寿命を定めた。その結果を再現するよりは、ここでは輻射光度を サーベイの検出完全度のチェックに用いる。 図5では光度の太陽中心距離分布を示す。これは 2 × 104 Lo 以上の若い埋もれた天体は 18 kpc まで完全に検出されていることがわかる。 (しかし、それは SED 次第 ) Lamsden et al 2013 には個々の RMS 天体の光度が載っているが、ここでは表2に 星形成域の光度を載せた。 |
![]() 図5.光度の太陽中心距離分布。濃い灰色線と薄い灰色帯は MSX 21Xμm の検出限界。MSX ビーム内に複数天体が同定された場合光度がそれら間で 配分されたので、下限以下の光度が現れた。 ( D = [2kpc, 5kpc] の密度が 高いように思える。太陽近傍が少ないのはなぜか?遠方も少ない。 ) |
MYSO と HIIR の分布が分かった 距離を手に入れたので、若い大質量星の3次元分布を調べられるようになった。 図6には MYSO と HIIR の分布を示した。背景は "artist's conceptual image" で、3.1 - 3.5 kpc 銀河系バー、半径 4.4 kpc で 銀河中心軸に対して 44° 傾いた "long bar" (Hammersley et al 2000, Benjamin 2008), 近遠 3 kpc 腕、 4本の主腕 (Norma, Sagittarius, Perseus, Scutum-Centaurus) が入っている。 腕の位置は Georgelin, Georgelin 1976 モデルに最近のメーザー視差と接点方向の 訂正値 (Dame et al. 2001). を加えて与えた。RMS 探査は内側 20°、つまり l = [350°, 10°] は除いている。そのため、中心から 3 koc 以内で起きている星形成に関しては この探査はやや不十分である。 腕間空間の RMS ? RMS 位置をモデル腕と比べると、RMS 複合体は腕間空間にはほとんどなく、 それに比べると単独 RMS は腕間空間にも見られる Stark, Lee 2006という 違いがある。単独 RMS の距離精度に問題がある可能性が高い。RGC < 10 kpc の RMS 面密度はほぼ一定で、この区域では星形成が同一である ことを示す。この結果は Benjamin 2008 が示した NIR, MIR 天体の星計数と 矛盾する。 銀河系は二本腕か? 彼らは星計数が Scutum と Centaurus 接点方向で増大すること を発見した。彼らはこの結果から銀河系は Perseus と Scutum-Centaurus の 二本腕銀河で、Norma と Sagittarius は古い星円盤の増強を伴わない可視で 見える腕なのだとした。図6で Perseus と Scutum-Centaurus の腕が濃く 描かれているのはこの見解( Benjamin 2008, Churchwell et al 2009 ) を反映している。 太陽円の内外 選出完全度限界より明るい RMS 計数では、北天に 47 %, 南天に 53 % ある、 また太陽円の内側と外側の天体数の比は 75 % 対 25 % で 南天、北天ほぼ 同じ比である。 ( 北天は赤緯が正の意か?それだと 銀河中心が南天にあるから上の比較自体がおかしいのだが。) 星形成率/分子雲質量 は一定 この比較は Brofman et al 2000 ) が 750 IRAS CHIIR 候補について行った、 67 % が太陽円内側で、33 % が外側 という結果と近い。 |
![]() 図7.赤線= RMS 天体数、青線 = 2×104 以上の RMS 光度 の累積銀河系中心距離分布。影領域は銀河中心で RMS 探査から除外されている。 (図6のコピペ? 3kpc 以内は データがないということか?) 縦線=太陽円距離。 これは図7にはっきりと示されている。総光度と星星数曲線 が似ていることは、太陽円の内外で平均光度が同じくらいであることを示唆する。 ( 直接示せる?。) それ以上に、分子雲の比率も太陽円の内外で光度、数係数とよく似ており、星 形成効率が内外で同程度であることを示す。これ自体は Snell, Carpenter, Heyer 2002 で示されている。これは太陽円外側の分子雲質量が内側に比べ 1 - 2 等 低いに拘わらずそうなのである。従って、内側と外側で星形成率に差があるのは、 分子雲の形成率の差なのである。 |
図8に銀河中心距離に対して、大質量星形成と光度の表面密度を銀河系中心
距離に対してプロットした。全体の分布には多くのピークが見える。それらの
ピークに対応する渦状腕の名前も図に示した。
4.1.1.天体計数中心距離ピークと腕の対応図8(上)を見ると、R = 3, 5, 6, 10 kpc にピークが見える。5, 6 kpc ピークは北天銀河系の Scutum-Centaurus と Sagittarius 腕 の一部と一致 する。しかし、北天銀河系の Perseus, Norma 腕に当たる位置にはピークが ない。双方共に外側銀河系に広がり、他の腕より大きな銀河中心半径区間、 Perseusu は [6, 10]kpc, Norma は [8, 13] kpc, に渡っているので均されて しまったのである。図8(上)に見える R = 3, 5, 6, 10 kpc ピークは全て 南天銀河面、図8(下)に見える。それらは、3 kpc 腕、Norma、Scutum- Centaurus、それに Sagittarius 腕である。 天体分布 太陽円内側にあるピークは以前 RMS 副サンプル(第1、第4象限 Urquhart et al 20111, 2012) で報告された。全体の分布は Bronfman et al 2000 の 分布と非常によく似ている。似た模様はメタンメーザー(Green,McClure-Gri ffiths 2011), HIIR (Paladini, Davies, De Zotti 2004), ダスト熱輻射 (Dunham et al 2011)、分子ガス (Rathborne et al 2009) でも見られる。これ らの相関は銀河系の4本腕モデル Georgelin, Georgelin 1976, 中西、祖父江 2006 と合致する。図8には 中西、祖父江 2006 の CO 観測から 導いた H2 表面密度を比較のために示した。分子表面密度は ∼ 5 kpc で頂点に達し、その先ではスケール長 2.5 kpc で指数関数に従って 減少していく。興味深いのは、太陽円内部の腕部分では天体数表面密度は 5 - 6 kpc-2 で大体一定であることだ。つまり、腕に沿っては 単位面積当たりの星形成率はかなり一様である。 |
天体分布は広く見ると分子ガスの分布と似ている。天体数のピーク位置は 星形成効率または星形成が盛んな個所である。これは Misiriotis et al 2006 による COBE/DIRBE 1.2, 2.2, 60, 100, 140, 240 μm 観測の結果と一致する。 サジタリウス腕 サジタリウス腕の第4象限部に付随して、R = 10 kpc での星形成域密度の ピークは特別に考察する必要がある。ここでの星形成域表面密度は太陽円内部 渦状腕部での密度の半分くらいである。しかし、それはずっと低いガス表面密度 の面上にある。これはつまり、この渦状腕は単位ガス質量当たりでは高い 星形成域を持っている。 R = 9 kpc 付近の天体密度の極小 最後に述べるのは R = 9 kpc 付近の天体密度の極小である。この極小位置は 南天と北天で図8では1ビンだけずれているため、全体分布では幾分 薄まっている。Lepine et al 2011 はこの極小をメタル量の階段状低下と 結びつけている。彼らの説ではそれは corotation のため運動学的なバリアー が生じているのである。 |
4.1.2.輻射光度星の光度が中心距離と共に上がる光度分布には6つのピークがあり、4つは天体数分布のピーク、 3, 5, 6, 10 kpc に一致する。星形成域の表面密度は太陽円内側の腕部分では 等しいのだが、表面輝度は銀河中心からの距離と共に強くなっていく。 つまり、埋もれた星の光度が中心距離と共に上がっていくのである。 RMS は全体の 7 % MYSO/CHIIR 全体の光度は 0.76 × 108 Lo となる。この値は Bronfman et al 2000 の半分である。彼らは IRAS を用いていて、その大きなビーム 径はフラックスを多めに見積もり勝ちである。銀河系全体の遠赤外光度は 2 × 109 Lo だから、大質量星の光度はその数パーセントにしか ならない。表2には最も明るい複合体を示しているが、そのトップ10だけで 全体の光度の 30 % を占める。 複合体がピークに寄与 複合体の幾つかは非常に明るい。それが図8のピークに関与している可能性は ある。例えば、北銀河の 6 kpc ピークには W 51 の寄与が大きい。この複合体は 銀河系中で最大であり、 RMS 光度の 7 % を占めている。7, 8, 9 kpc ピーク にはそれぞれ、G 305, W 49, NGC 3603 が付随している。 |
4.1.3.サジタリウス腕サジタリウス腕は目立つ図8で最も明るいのはサジタリウス腕で、例えばペルセウス腕よりずっと はっきりしている。また図11に見られるようにスケール高でもピークを 示す。 サジタリウス腕の地位は? 図6ではサジタリウス腕は二次的な地位を与えられていた。しかし、 上の特徴は、そうではなく、サジタリウス腕は銀河系の主要な要素 であることを示唆する。これは Benjamin 2008 が GLIMPSE から 導いた結論に反する。GLIMPSE が古い種族をトレースすることを 考えると、腕の星形成は変動性なのかも知れない。 |
![]() 図10.RMS 天体の銀河面高度分布。 |
![]() 図11.RMS 天体の銀河面からの平均オフセット。 |