Dust Shell Models for LMOA Stars


Suh
2005 PKAS 38, 267 - 270




 アブストラクト 

 ISO などの観測から得た LMOA 星の SED を調べた 通常のシェルモデルでは、ダスト形成温度は 1000 K よりずっと低く、 ダストシェル内半径=27-41 Rs と遠方に離す必要があり、物理的に考えにくい。  しかし、超星風による密度超過領域を重ねると、高いダスト形成温度で 内径を星に近くおいても観測 SED にフィット可能となる。
(超星風帯が実質的に離れた内径シェルの 役を果たしている。高温内径部の貢献度は?)


 1.イントロダクション 

 1000 K よりずっと低いモデル 

  Suh (2004a) は LMOA の SED を標準的なモデルでフィットして、シェル内端温度として 400 - 600 K という 1000 K よりずっと低い値を得た。内端半径も 27 - 41 Rs という大きな値となる。これくらい離れた低密度領域でダスト形成が 本当に起きるのか、疑問である。
 密度超過帯 

 別解として、密度超過帯を加える手がある。 Suh, Jones 1997 はヘリウム シェルフラッシュに伴う超星風の影響を、密度超過帯を加えるという形で 表現して、調べた。超過帯の位置と大きさで、SED の形は大きく変動する。 この論文では様々な超過帯のモデルを計算する。


 2.モデル計算 


図1.モデルSED の例

 中心星 

 光度は SED レベルを上下させるだけで重要ではないが 104 Lo とした。星 SED は黒体とし、温度は 2500 - 2900 K を調べる。

 オパシティ 

 半径 0.1 μm のグレインを仮定し、非晶シリケイトのオパシティ関数は Suh (1999) から採った。

 シェルパラメター 

 連続密度分布は逆二乗型を仮定する。外側半径 Ro は内側半径 Rc の 10000 倍とする。数回の試行で、最適な Tc (と Rc) が決まる。Tc はダスト形成 (凝結)温度であるとは限らない。

図2.密度超過帯の例

 図1=モデルSED 

 図1にモデルSEDを示す。

 超星風モデル 

 熱パルスがマスロスレートに大きく影響するなら、ダスト密度分布は 逆二乗則から外れる。図2は我々が用いる密度分布である。密度超過帯は、 帯の内側と外側の半径 R1 と R2, 帯上での密度増幅率で特性付けられる。 詳細は Suh, Jones 1997 を見よ。





表1.SED 比較用の二つの星




表2.ベストフィットモデルのシェルパラメター

 3.SED 比較 


図3. Z Cyg の SED

 Z Cyg, οCet の例 

 図3に色々な位相における Z Cyg の SED をモデルと比べた。 上側実線は r = [5, 205] Rc で 10 倍の密度超過を付けた Tc = 1000 K モデルだが、破線の Tc = 553 K モデルとよく似ている。 図4にはοCet の例を示す。

図4.οCet の SED


しかし、これは密度超過帯の内端 r = 5 Rc での温度、多分  500 K くらいが実質的な Tc になっている連続密度モデルと同じなん ではなかろうか? r = 205 Rc まで伸びていてはその先は殆ど輻射に 効かないだろう。有効 Tc を下げる工夫という点は評価できる。


 4.議論と結論 

 低い Tc の問題 

 LMOAs の連続密度分布モデルから導かれた低い Tc = 420 -650 K と, 大きな Rc = 27 - 41 Rs は理解しがたい。特に、οCet の干渉計観測 Lopez et al. (1997) が、ずっと近くに高温のダストの存在を明らかにしているのでなおさらである。
 超星風による解決 

 PN 周りの多重シェルはマスロスの急増時期が何度か起きることを示す。 熱パルスは 104 - 105 年おきに生じ、数百年 続くだろう。超星風もそのくらいの間隔と期間で起きるのではないか?