Star Forming Complexes and the Spiral Structure of Our Galaxy


Russeil
2003 AA 397, 133 - 146

 アブストラクト

 星形成複合のカタログを作製した。含まれる観測量は Hα, H109α, CO. 電波連続波、電波吸収線 である。各複合体に、天体速度、運動距離、天体 距離を決定した。距離は同一の方法で決定し、データの一様性を高めた。 星の距離を決定する過程で回転曲線が得られ、 Brand, Blitz (1993) との良い一致が得られた。  回転曲線との残差速度は腕の領域で大きい。ワープも検出されたが、円回転 からのズレとの相関はない。節片形状が複合体分布に見られ、より大きな 背景構造を現わしているのか調べた。複合体の分布を2、3、4本腕でフィッ トした。4本腕が最も良く合う。我々の結果は Geogelin, Geogelin (1976) の研究を支持する。


 1.イントロダクション 

 HIIRsによる腕の追跡 

  Bok, Hine, Miller (1970) は Hα 線で運動距離の遠近を分離する方法を用いて、HIIRs によるカリ ーナ腕の追跡に成功した。この手法は Geogelin, Geogelin (1976) により全銀河面に拡大された。彼らは初めて銀河系が4本の腕を持つことを示 したのである。この研究のため、彼らは 268 HIIRs の Hα 視線速度を ファブリペロー干渉計で測り、360 個の励起星までの距離を決めた。 しかし、この装置で測れるのは非常に明るい HIIRs に限られるため、観測 フィールドの数パーセントのスペクトル情報しか得られなかった。
新しいファブリペロー干渉計 

 マルセイユ天文台で作られた新しいファブリペロー干渉計が南銀河面サーベイ に用いられている。この装置は前より暗い HIIRs も観測可能である。 そこで、銀河面の多波長研究によりカタログを作ることにした。


 2.星形成複合体 

 2.1.複合体の同定 

 表1=複合体の同定 

 幾つかの HIIRs と分子雲の空間的、運動学的つながりを複合体と呼ぶ。その 為には拡散 Hα 輝線の視線速度情報が重要である。マルセイユ天文台 ファブリペロ―干渉計による観測は第4象限で行われた。第1−3象限に関し ては、文献情報を集めた。表1はホームページから取れる。

 2.2.星の距離 

 各可視 HIIR に対して文献から励起星を集めた。それらは O - B3 型星であ る。それらにはスペクトル型、UBV等級が与えられている。一般には CDS データ の平均として等級を定めた。 表2には Mv-スペクトル型関係を示す。データは様々な文献から集めた。注意 しておくと、この絶対等級較正はヒアデス視差=3,28 を使い、ヒッパルコスで 決まった 3.33 ではない。星までの距離は通常の方法で求めた。
(「通常」と言われても困るが。 )

 2.3.運動学距離 

太陽運動 Uo = -10.3 km/s, Vo = 14.8 km/s, Wo = 7.3 km/s、銀河中心距離 Ro = 8.5 kp, LSR 回転速度 θo = 220 km/s を採用し、 Brand, Blitz (1993) の回転曲線から運動距離を求めた。

表2.Mv-スペクトル型関係


 2.4.励起パラメター 

 

 2.5.最終 

 




図1.破線=計算された回転曲線。実線= Brand, Blitz 1993 回転曲線。

 3.銀河系の運動学 

 3.1.回転曲線 

 HIIRs から作った回転曲線は図1に示すように、Brand, Blitz 1993 回転曲線 に非常に良く似ている。

 3.2.回転曲線からのズレ 

 図2から、腕の回転速度が回転曲線とずれていることがわかる。それは サジタリウス・カリーナ腕で 3.3 km/s, ペルセウス腕で -21 km/s, 外側(シグナス)腕が 17.4 km/s である。

表4.最近の回転曲線





図2.速度差 (θ-θrot) - l 関係。 丸=ペルセウス腕。四角=外側腕。三角=サジタリウス・カリーナ腕。 点=局所腕。斜線=GC と AGC 方向。

 4.銀河系の構造 


図3.上:複合体の分布。シンボルサイズは励起パラメター U を示す。 中:エラーバーを加えた。下:中央部の拡大図。  

図4.2、3、4本腕によるフィット。太陽位置は大きな星印


 4.1.大規模構造 


表5.モデルで得られた腕のパラメター

 2本?4本? 

  Drimmel (2000) は K バンドと 240 μm の銀河面輝度分布を比較した。 K バンドは2本腕 と合い、 240 μm は4本腕と合うことが分かった。そのような現象は銀河 でも見つかっている。K でグランドデザイン腕構造が見え、可視青画像には 羽毛状の模様が見えるのである。

 複合体の配置 

 図3には複合体を銀河面上にプロットした。単純に見て、全体に亘る腕構造 は見えない。これは銀河でも同様で、グランドデザイン構造はいつでも明瞭 なわけではない。図3では カリーナ(-6,6)、ペルセウス(3,10),局所腕と 他の切片 (-2,3.5), (-2,5.5), x=[0,10], y=[-6,0] のみがつながって見える。

表6.モデル毎の腕接点方向

 2,3,4本腕フィット 

 2,3,4本腕をフィットしてそれぞれを評価した。その結果、二本腕は 大規模構造を表現するには不足であった。3本と4本はよく似ている。主な違 いは3本腕モデルはノルマ切片をペルセウス切片に、スキュータム・クラクス 切片をシグナス切片につなぐが、4本腕ではノルマ切片をシグナス腕につなぐ だけであることである。この不明瞭さが生じる原因は、(-5, 1) 付近でノルマ 腕に星形成複合が欠けている点にある。

バーと腕 

 4本の腕のうち3本はバーの端から出ている。棒銀河では腕は通常バーの端 から発生する。銀河系でバーの端から腕が発生することは、 Lopez-Corredoira et al (1999), Englmaier, Gerhard (1999) が指摘していた。



図5.採用した4本腕モデル。シンボルサイズは励起パラメター U に比例する. 星印=太陽。(1)=サジタリウス・カリーナ腕。(2)=スキュータム・ クラクス腕。(1’)=ノルマ・シグナス腕。(2’)=ペルセウス腕。 長破線=局所腕。バーの方向と形は   Englmaier, Gerhard (1999) より採用。短破線=サジタリウス・カリーナ腕の対数らせん腕からのズレ。 実線= 3 kpc 腕に多分関連する構造。

 4.2.ワープ 


図6.ワープの表現。丸=円盤面の上にある複合体。バツ=下にある複合体。 サイズ=銀河面からの距離を現わす。はっきりさせるため銀河面から 1 kpc 以内の複合体は省いた。