AGB 変光星の視線速度曲線を提示する。それらは様々な変則性を示す。例えば、 ミラの典型的周期を持つセミレギュラー、振幅 2.4 等を越すセミレギュラー、 第2極大を持つミラ、長い二次周期を持つセミレギュラー。信頼できるヒッパ ルコス視差のある星を log P - MK 図上にプロットした。LMC と似た 図が得られた。そこから脈動モードを決めた。全てのミラは基本振動モードに 乗る。セミレギュラーは基本振動と第1倍音に乗る。基本振動のセミレギュラーは 光度大の星も小の星もある。そのいくつかは振幅の大きなミラよりも明るい。 | これは、光度以外の少なくとももう一つの パラメタ―、多分質量、が長周期変光星の不安定性に影響することを示す。 第1倍音星の速度振幅は大体 4 km/s である。基本振動星では速度振幅は光度 振幅と相関する。二つのミラ R Cen と R Nor は光度曲線に二つの極大を持つ ことが知られているが、速度曲線は互いに異なる。R Nor の速度曲線は二重 極大の証拠を持たない。これは真の脈動周期は交互の極小と極大の間である ことを意味する。R Cen 速度曲線には二つのコブがある。これらの星は質量 が 3 - 5 Mo と比較的大きいのではないか。 |
ちょっとおかしい性質を持つ変光星 大気速度の観測には近赤外が適している。この論文では、近赤外の視線速度 曲線をちょっとおかしい性質を持つ変光星で観測した。それらは、次のような特徴の 一つまたはいくつかを備えている: (1)ミラと重なる P ≥ 300 d 周期を持つセミレギュラー。 通常のセミレギュラーは 周期 30 - 150 d である。しかし、時々可視振幅 2.5 mag 以下で周期 300 - 400 d の星がある。それらは後で述べる、長い第2周期を持つセミレギュラーとははっきり 区別される。 (2) 振幅が 2.5 mag を超えるセミレギュラー。 GCVS にはセミレギュラーと分類 されているのに、記載されている振幅が 2.5 mag を超えているものが 57 星 ある。GCVS は振幅の最大値を載せていて、通常値とは限らない。これらは振幅 変動星かも知れない。 (3)周期の永年変化 ミラの中には、周期が系統的に長くなっていく、または短くなっていくもの がある。 Wood, Zarro (1981) はそれを最近のヘリウムフラッシュのせいと解釈 した。AAVSO の数十年の光度曲線はそれらの検出 Hawkins et al 2001 に役立つ。 (4)第2極大を持つミラ Keenan et al (1974) はこれらの星をミラの通常のスペクトル型対周期関係に載せる脈動周期は 実際には深い極小の間の期間のの半分である、すなわち一周期あたりに極大 は1つだけである、と論じた。同様の結果がFeast et al (1982年)により 赤外カラー対周期の関係から見出された。ミラの変光曲線の上昇部には小さく て不規則なコブが良く見られるが、これらのミラはこのカテゴリーには入れない。 (5)長い第2周期を持つセミレギュラー セミレギュラーの 25 % には長い、典型的には10倍の、第2周期がある。 Houk 1963 は太陽近傍で、大振幅の長い第2周期をもつセミレギュラーを カタログにした。MACHO サーベイその他からこの種の星が注目されるように なった。Wood et al 1999 はこれ等の星が周期ー光度図上で系列Dを成すこと を発見した。しかし、この周期の起源は謎である。 |
![]() 表1.サンプルの記述。第2列はその星を選択した理由。LP SRV = P≥300 の SRV. LA SRV = 振幅>2.5 mag. の SRV. var period = 周期変動型ミラ。 s max = 第2極大を持つミラ。LSP = 長い第2周期を持つ変光星。 第3列は GCVS 分類。周期とスペクトル型は GCVS より。W Nor だけは除く。 少し変な長周期変光星サンプル ここに上げた性質の一つ以上を持つ長周期変光星を 9 つ調べた。それらの 特性を表1に並べた。その上に典型的な南天の明るいミラを4つ加えた。 それらは視線速度変化データのあるミラを周期 500 d より先に伸ばした。 |
3.1.R Dor性質Bedding et al 1997 は全天で最大の星とした。周期 338 d である。 Feast 1996 はスペクトル型が晩期で SRV よりはミラに近いとした。 GCVS は M8IIIe としたが、 Crowem Garrison 1988 は M8 で 輝線が見えないとした。 Blum et al 2003 は非ミラ星の中では最も低温の AGB 星であるが、 H2O 吸収の証拠がないとした。 振動モード 変光振幅は通常のミラより小さく、変光曲線には乱れが目立つ。Bedding et al 1997 は R Dor はミラ型不安定帯の端にあるとした。この星は 支配的な振動モードを時々切り替える。 Bedding et al 1998 は 332 d = 第3倍音、175 d =第1倍音とした。しかし、332 d は Wood 2000 の LMC PL-関係の基本振動系列に上手く乗る。 激しい変動? Olofsson et al 2002 は様々な電波 CO ラインを解析したが、ラインプロ ファイルを標準モデルでフィットするのは非常に困難であった。彼らは そのマスロス時間変動が非常に激しいためでないかと述べている。図1に 見られるように光度曲線を単一の周期で表すのは難しい。JD 2,452,300 以降 の速度変化はその時起きた等級変化に対応しているようだ。Lebzelter et al 2000 はこのような振る舞いは SRV に典型的なものと述べている。面白いこ とに、 JD 2,452,200 付近の深い極小は視線速度には大きな変化を生み出し ていない。この特徴も他の SRV で以前に見られている。 |
![]() 図1.R Dor の上=VAAVSO と下=視線速度の時間変化。 |
3.2.VZ Velミラ?VZ Vel は SRV だが、R Dor と似て、317 d という周期、輝線、IRAS LRS はミラ的 (Kerschbaum, Hron 1996) である。最近の ASAS観測データ (Pojmanski 2002) は 2.5 mag を超える振幅を示している。 視線速度 図2の視線速度変化もミラ的である。ただし、ライン分化は見られない。 むかしは? しかし、 Payne 1928 の時代には振幅 2.5 mag 以下であった。何故そうで あったは疑問である。 |
![]() 図2.VZ Vel の上=VAAVSO と下=視線速度の時間変化。 黒丸=観測日データ。白丸= 317*n d ずらしたもの。 |
3.3.WW Cen周期と輝線GCVS では P = 304 d である。Gaposchkin 1952 は変光曲線に第2極大を 発見し、この星が約 150 d の第2周期を有するとした。AAVSO 観測からは周 期に関するはっきりした結論は出ない。GCVS には輝線の記載がないが、 Bidelman, McConnell 1982 は輝線を発見している。 視線速度 速度変化からは 304 d 周期が明らかに見える。しかし 150 d を完全に否定 するのも難しい。それは位相が完全にカバーされていないからである。速度 振幅は 5 km/s でその変化はサインカーブ的である。この特徴は SRV に 典型的である。 |
![]() 図3.WW Cen の視線速度の時間変化。 黒丸、白丸の意味は図2と同じ。 |
3.4.W Hya性質GCVS では P = 361 d, V 振幅 3.9 mag で SRV の中では特異である。 Hinkle et al 1997 はこの星を詳しく調べた。 視線速度 我々の視線速度観測を 1980 年代の観測と合わせて図4に示す。視線速度 にも 361 d 周期が明らかに現れている。視線速度曲線はほぼサインカーブ的 で、振幅は 15 km/s である。17 年離れた二つの観測はきれいに合致した。 なぜ SRV? 周期、振幅、変光の規則性はミラに良く似ている。しかし、速度曲線の 形がサインカーブ的であること、その振幅は明らかにミラと異なり、 この星をセミレギュラーとするのが妥当である。 |
![]() 図4. W Hya の視線速度の時間変化。黒丸= MSO で得た新しいデータ。 プラス印=それらを 361*n d ずらした。 |
3.5.T Cen性質T Cen は V 変光振幅 3.5 mag, 異常に早期スペクトル型の K0 を 持つセミレギュラーである。Lancon, Mouhacine 2002 は赤外カラーから有効 温度を 3600 - 4000 K と見積もった。Bidelman, Ratcliffe 1954 はこの星を ミラとした。通常のミラと同様、水素輝線が規則的に現れる。その 90 d 周期 は安定している。 視線速度 観測は6サイクルに亙ったが、極大と極小期に集中したため、視線速度曲線 の形は抜けがある。振幅は 14 - 16 km/s である。ライン分化は見えない。 |
![]() 図5.T Cen の上=VAFOEV と下=視線速度の時間変化。 |
3.6.L2 Pup振幅この星は 2.5 mag のミラリミットを超えるセミレギュラーとしては3つ目 である。GCVS では V 振幅 3.6 mag, 周期 141 d である。最近の AAVSO 変光 曲線を見ると振幅は 2.5 mag 程度である。Bedding et al 2002 の変光曲線は 104 d の間、振幅が 2.5 mag を超えたことはない。 減光? Bedding et al 2002 は 1994 以降 V 等級が一貫して暗くなってきていると 述べている。その期間に周期の方は安定していることから、彼らはこの光度 低下をダストによる減光に帰した。明らかにこの星はこの暗化から回復して いない。 非動径脈動 Jura et al 2002 は MIR 画像に広がった非対称な星雲を見出した。彼らは この星が非動径脈動しているモデルを提示した。 |
![]() 図6.L2 Pup の上=VAAVSO と下=視線速度の時間変化。 点線は電波観測(CO?)から決まる重心視線速度。 |
3.7.R Cen周期が 1 d/yr で低下している変光曲線は二重ピークを持つ。Feast et al 1982 は主周期 546 d, 第2周期 274 d とした。過去 50 年の間、主周期は漸減を続け、現在では 505 - 510 d Hawkins,Mattei,Foster (2001) である。彼らはこの 1 day/yr という減少率を最近の ヘリウムフラッシュの結果 Wood, Zarro (1981) と解釈した。周期だけでなく、主モード約 500 d の振幅も 5 mag から 2.5 mag へと縮小した。 視線速度 この大きな変化は視線速度にも反映される。ミラには珍しく、速度変化の 振幅は 8 km/s しかない。これはセミレギュラー並みの小ささである。 長期間にわたり速度変化のない期間が続き、光度増加の直前に急に上がるのは 極めて異常である。この速度の跳ね上がりは星に向かっての突然の落下を示し ている。それはミラでの速度不連続が衝撃波による物質の押し上げであるのと は反対センスである。R Cen ではライン分化のような衝撃波の特徴は見え ない。明らかにこの星では脈動に伴う異常な力学的変動が起きている。速度曲 線には、変光曲線と同様にコブのような兆候が見られる。 輝線 Keenan, Landi Dessy 1966 は極大全てに輝線を見出したが、Growe 1982 の データでは間隔 546 d での rising light に対応する極大でのみ H 輝線が見 えた。これは速度曲線がその時に速度パルスが生じるという事実と合う。 ( 速度パルスは下向きなので はなかったか?下向き衝撃波?) |
![]() 図7.R Cen の上=VAAVSO と下=視線速度の時間変化。 変光曲線は 500 d 付近の周期を示す。 |
3.8.R Norコブサンプル中で最も立派なコブを示す。残念ながら変光曲線データが完全でな い。図8上では ASAS の同時期の観測を示し、AAVSO の以前の平均光度曲線を 参考に重ねた。極小の深さが違う一因は ASAS が CCD, AAVSO が眼視測光で あるためだろう。第2極大がはっきりと現れている。 この星は実視連星である。伴星は V = 13.8 で、主星は V = 7.7 - 11.55 の変動を持つ。 フル周期が正しい 視線速度変化を図8に示す。しばしば、 R Nor や R Cen のような二重周期 ミラの "正常"周期は半周期、つまり R Nor では 253 d, ではないかという 提案がなされた。しかし、視線速度変化からはフル周期 = 507 d であることが 分かる。 速度勾配? ライン分化の証拠はないが、 JD 2,452,040 と JD 2,452,130 の間では クロス相関プロファイルはそれ以前より太い。この時期に、速度は急速に 変化し、おそらく内部から上昇する衝撃波により、落下運動が逆転する。 太い線巾は速度勾配が視線に沿って存在することを意味する。 |
![]() 図8.R Nor の上=V 変化。三角= ASAS データ。小さい十字= AAVSO の以前のデータから構成したカーブ. その時のデータがないから。 下=視線速度の時間変化。黒丸=実観測。507 d のシフト。 |
3.9.W Nor概説W Nor の変光は Pikering et al 1901 により発見された。この星の研究例 は少ない。この星には 1300 d という長い第2周期が付随する。これは主周期 135 d のほぼ 10 倍である。我々は長い第2周期をもつ SRV の代表例として この星を選んだ。シリケイト放射が Sloan, Price 1998 により報告されている ので、星周物質の存在は確実である。 速度変化 速度曲線の変動は明らかに主周期 135 d より長い。我々の観測は 1300 d 周期の 1/3 しかカバーしていない。図9の速度変動幅は 7 km/s であり、 1300 d 変光に相関するようである。 周期変化 ここでの変光からは周期変化は分からないが、もっと長い期間の ASAS 観測 からは周期変化がはっきりとわかる。我々の観測期間は長い周期の極大付近に ある。次の極小は 2,452,800 付近である。 http://www.astrouw.edu.pl/~gp/asas/asas.html を見よ。 |
![]() 図.W Nor の上=VASAS と下=視線速度の時間変化。 |
3.10.R Car概説R Car は小さなコブを持つミラである。このコブは 4.9 μm 観測ではより 大きくなる。現在の AAVSO データではコブは殆ど目立たなくなっている。 周期は安定している。星は実視連星である。 速度ジャンプ 図10の視線速度はミラ的だが、速度の非連続ジャンプがあるのかどうかは はっきりしない。 |
![]() 図.R Car の上=VAAVSO と下=視線速度の時間変化。 黒丸=実観測。白丸 = 周期シフト。 |
3.11.S Car低メタルミラで視線速度大S Car は中間メタル量の短周期ミラ Hron (1991) である。星が低メタルであることに対応して、その空間速度は 288 km/s と 大きい。 ライン分化 新川 1973 は S Car の 8000 A 付近での視線速度曲線を得た。いくつかの ラインでは二つの成分が見られた。同じ現象は Gillet et al 1985 も観測 した。図11には我々の速度曲線を示す。明らかなラインの分化が見られる。 その性質の解明にはより多くの観測が必要である。 |
![]() 図11.S Car の上=VASAS と下=視線速度の時間変化。 |
3.12.RR ScoRR Sco には明白な異常性はない。周期 280 d の変光曲線は対称的である。 速度曲線は典型的なミラのそれであるが、ただ振幅が 15.5 km/s とやや小さ い。JD 2,452,000 付近の相関ピークは非対称でラインダブリングがあるのか も知れない。大部分のミラと同様に、速度曲線が星の重心速度=星から見て ガスが停止、するのは位相 0.4 付近である。 |
![]() 図12.RR Sco の上=VASAS と下=視線速度の時間変化。 |
3.13.R Hor![]() 図13.R Hor の上=VAFOEV と下=視線速度の時間変化。 R Hor は南天で最も明るいミラの一つである。 Percy, Colivas 1999 はこの 星の周期変化を探したが、O-C 図上大きな散らばりを検出しただけであった。 図13の速度曲線はこの星が典型的なミラであることを示す。 速度振幅 23 km/s は大部分のミラと大体同じである。重心速度は CO 電波 観測から導かれた。 |
![]() 表2.サンプル星の視線速度曲線の特性。第3列は速度振幅、 第4列はライン分化があるかどうか。最後の列は速度曲線の 形。 |
図14=周期光度関係と速度振幅 ヒッパルコス視差の良いデータのある星の周期等級関係を図14に示す。K 等級は Bagnulo 1996 と Fouque et al 1992, Kerschbaum et al 2000, Whitelock et al 2000 を使用した。選択基準は π > 2 σ π である。球状星団 47 Tuc (Lebzelter et al 2005) のデータ も加えた。 47 Tuc 論文では初めて速度振幅を logP-MK 図上で 示した。この論文でも同じことを図14の右枠に示す。 系列BとC 図14の星全てを表3に示す。実線は LMC の B, C 系列 (Wood 2000) であ る。この二系列は基本振動モードと第1倍音モードに対応するらしい。 系列Cは Whitelock, Feast (2000A) が LMC P-L 関係とヒッパルコスから決めた ゼロ点を用いて導いた銀河系ミラの log P - K 関係と良く合う。 Lebzelter 2005 は 47 Tuc 変光星の研究から、速度振幅が系列Cに沿って次第 に大きくなるが、系列 B の振幅はもっと小さいことを示した。 系列Cを下回る 我々のサンプル星は二つの系列に良く沿っている。またこの2系列は速度振幅 でもよく分かれている。系列B(第1倍音)の星の速度振幅は小さく、 4 km/s 程度である。フィールド星と 47 Tuc 星の結果は大体合っている。一方で、系列 C(基本振動)に乗る星は振幅が 10 km/s を超える。フィールド星の大部分は系列 Cの少し下に位置する。 R Cas と R Leo がその中でも極端な例である。その 理由として二つ考えられる: (1)視差のエラーが大きい。いくつかの AGB 星ではその視直径は視差より大きい。 (2)H2O とダストの吸収が K バンドに効く。 系列Bの星にはこのような効果が現れていないので、第2効果が大きいのかも 知れない。C 系列の星は低温で、星周層が厚いからである。それは特に R Cas に当てはまる。この星は極小期に M 10 と非常に晩期で、強い水吸収を示す。 今後の議論では速度振幅が大きい星は、下側に居ても系列Cに属すると仮定する。 |
![]() 表3.図14の星リスト。 |
輝線 サンプル中長周期セミレギュラーには R Dor, VZ Vel, WW Cen, W Hya が属 する。それらは全て周期 300 d を少し超す。 R Dor と W Hya はヒッパルコス 視差が有意で図14に載せた。どちらも系列Cに属する。つまり、これらは基本 振動であるが、光度と速度の振幅がミラより小さい例である。かなり光度が高い のに、なぜ振幅が小さいのか不明である。しかし、長周期変光星の一般的傾向と して、質量が増加すると不安定度が下がる (Fox, Wood 1982)ので、これらの星 は典型的ミラよりも質量が大きいのかも知れない。これ等の星の振幅はミラより 小さいのであるが、4星全てが輝線を発す、または過去に発している。これは 衝撃波の存在を意味する。恐らく振幅が時には大きくなることがあるのでないか? (輝線検出と変光振幅の同時観測? ) 個々の特徴 R Dor は系列Bに属する第2周期を持つ。現在、その成分の振幅は 4 km/s でそれも系列 B に合う。二つのモードの相対比は時間と共に変わる Bedding et al 1998. WW Cen も第2周期を持ち、R Dor と似て、主周期の半分に近い。 VZ Vel の現在の速度曲線は形も振幅もミラ的である。恐らく過去の振幅が小 さかったのであろう。 |
振動モード切替 これ等の星は複数の振動モードを持っているようだ。それらの進化ステージ は第1倍音から基本モードへの切り替わり期なのかも知れない。47 Tuc 変光星 の二つの系列に沿っての分布は、切り替わりは第1倍音から基本モードへであって、 その逆ではないことを示している。なぜなら 47 Tuc の最も明るい星は全て系列 Cにあるからである。切り替えが起きる周期と光度は星質量と共に上がって行く。 逆もある しかし、多くの星で逆の切り替え(Kiss et al 2000)が報告されている。これは 切り替えが恒星進化のみで引き起こされるわけではないことを意味するのかも 知れない。 |
概説 このグループには、L2 Pup, T Cen, W Hya が属する。W Hya は 前の節でも出てきた。GCVS によるとこれ等の星の V 振幅は 3.5 - 3.9 mag である。しかし、L2 Pup の最近の振幅はそれよりずっと小さい。 AAVSO データによると W Hya と T Cen の現在の振幅は 3 mag を上回る。 速度振幅はそれぞれ 14, 12, 14 km/s でサインカーブ的な変動を示す。その 他の大振幅セミレギュラー X Oph (Hinkle et al 1984) と SV Cas (Lebzelter et al 2000) は参考文献を見よ。それらの速度振幅は 12 - 14 km/s である。 ( GCVS ではなぜ SR にしたのか?輝線?) 系列C? L2 Pup と W Hya は図14に載っている。二つの光度は大きく 異なるが、どちらも系列C近くに位置する。従ってこれらは基本振動している のではないか。ただし、速度曲線に衝撃波による切断が見られないことは、 脈動がそれほど強くないことを意味する。 速度振幅の2グループ 図15には速度振幅が文献に載っている長周期変光星の振幅ヒストグラムを 示す。通常のセミレギュラー=V等級振幅が 2.5 mag 以下で、系列Bの第1倍音 脈動星全てを形作る+系列C下部にある少数の基本モード脈動星、は速度振幅 が 10 km/s 以下である。ミラは 23 km/s をピークとする大振幅側を占める。 それらに対し、大振幅セミレギュラーはミラの振幅領域の下部を占める。 長周期セミレギュラーと同様に、これらの星が基本振動にあっても通常のミラ よりも振幅が小さい理由は、基本振動セミレギュラーの質量が高いせいかも知れ ない。 |
![]() 図15.速度振幅ヒストグラム SRa+SRb 中 7 % 変光振幅が 2.5 mag を超える GCVS セミレギュラー(SRa, SRb) は 57 個ある。 これは全 SRa, SRb の 7 % に当たる。それらの周期は 90 - 400 d に亘るが 平均すると 250 d でミラに近い。これらの IRAS カラーを振幅 2.5 mag 以下の セミレギュラーと較べたが、差はなかった。 |
5.3.第二極大を持つミラ概説RC Cen と R Nor がこのグループに属する。RC Cen は振幅 2.5 mag, 8 km/s で小さい。図7の速度曲線は通常のミラと異なり、可視変光曲線をなぞっており、 セミレギュラーと似ている。R Nor は 7 mag と 15 km/s で RC Cen よりは大き い。その速度振幅はミラの振幅分布の下端にある。 2-to-1 共鳴 LMC では系列Cの上方に二重極大を持つミラが存在する (Wood et al 1999)。 これは、二重ピークを持つミラが 3 - 5 Mo であることを示唆する。高質量は 比較的早期のスペクトル型からも示唆される。なぜなら、高質量星の赤色巨星枝 は暖かいからである。それらの星の変光曲線にあるコブはセファイドのコブと 似て、 基本モードと第1倍音の間の 2-to-1 共鳴の結果である。 5.4.通常ミラ位相 0.4通常ミラに属するのは S Car, R Car, RR Sco, R Hor の4つである。VZ Vel もここに入る。RR Sco と R Hor の重心速度は CO 電波観測から得られた。多くの ミラと同じく速度曲線がこの値と交差するのは位相 0.4 の時である。 |
中間種族ミラ S Car は中間種族に属するという点で特異である。他の中間種族星は Lebzelter et al 1999 で論じた。これ等の星は古典ミラよりも短周期で早期型スペクトル という特徴を持つ。それらの空間速度は古い円盤種族に属することを示す Hron (1991) 。 Lebzelter et al1999 はこれらの星の速度曲線は古典ミラのそれと区別できな いことを示した。したがって、その振動モードも同じであろう。 コブ 変光曲線の上昇期に現れるコブは多くのミラに見られる。 R Car はその一つ である。T Cas と T Cep のコブ (Hinkle et al 1984) も報告されている。 Lockwood, Wing 1971 はそれらを付加的に励起された第1倍音と見ることに 疑問を呈した。彼らはそれらがこの位相での温度上昇と半径収縮の間の相互作用 で生じる現象と考えた。 5.5.長い第2周期を持つセミレギュラー長い第2周期を持つセミレギュラー W Nor の速度変化は明らかに長い周期に 支配されている。これは他の星でも確認されている。Hinkle et al 2002, Wood et al 2004. 我々の観測期間は短すぎて、完全な周期をカバーしていない。それで 振幅の下限しか決まらないが、それでもその値はこのグループの他の星の振幅と 似ている。 47 Tuc の V 13 はそれらの中で最大の 12 km/s を持つ。 |
系列BとC 近赤外視線速度を手掛かりに、ミラとセミレギュラーの境界での 様々な現象を調べた。我々のサンプル中、信頼できるヒッパルコス視差を持つ フィールド星は大体の所 LMC logP-L 関係に沿っている。系列B(第1倍音)の ほぼ全ての星は良く似た数 km/s の速度振幅を示す。系列C(基本モード) の星の大部分はずっと大きい速度振幅を持つ。我々の結果は以前 47 Tuc で 得た結果と合致する。 小振幅の系列C星 周期 300 d 付近のセミレギュラーと様々な周期を持ち振幅の大きなセミレ ギュラーとはどちらも基本振動を行っているが、速度振幅は通常のミラより も小さい。それらの速度曲線にはミラに特徴的な速度のジャンプが見られ ないが、いくつかの星には輝線が観察される。これら、系列Cにあって、 振幅の小さい星は系列上の同じ位置にある通常ミラに較べ、質量がやや大きい のではないだろうか。 |
第2極大を持つミラ 変光曲線に第2極大を持つミラの R Nor は速度曲線には何の第2極大も示さ ない。これは、第2極大を持つミラの真の脈動周期は第2極大間の間隔である ことを意味する。 (意味不明 ) LMC の類似星は 3 -5 Mo で明るい。第2極大は倍音と基本モードとの共鳴に よる現象ではないか。 熱パルス例 AGB を上昇する星は第1倍音から基本モードに切り替えを起こす。ただし、 R Cen は周期が減少し、変光曲線の変化は基本周期から第1倍音への遷移を 示唆する。これは熱パルスの効果かも知れない。 |