双極型原始惑星状星雲 IRAS 17250-3224 の WFPC3/HST 撮像を行った。二つ の反射耳たぶ状星雲の上に同心形状で重なる複数弧状構造を発見した。外見は AFDL 2688 と似る。AGB 期には繰り返しマスロスが一般的な現象ではないか? | 弧の形が円弧に近いのは AGB マスロスが球対称であり、双極構造が AGB 期 が終了した後に発達したことを予想させる。 |
Kwok (1993)
と Hrivnak98 は、IRAS カラーがPNs とAGB 星の中間にある天体と
して遷移期天体を選んだ。それらの多くは以下の性質を備えている: 1.強い赤外超過。CO 線。 2.有効温度が中間型。スペクトル型 F か G で光度クラス I. 3.双峰型 SED. 4.エッジオンで見える場合、星雲は散乱光で見える。 | 最後の場合には形状が直接見えるので有用である。 Kwok 1982 や Frank, Mellema 1994 は星風の相互作用が PNs の形を作り上 げると主張した。PPNs は通常見かけが小さい。地上望遠鏡ではその形態を細かく 調べることは難しい。HST はその点で優れている。この論文では WFPC2/HST による双極型 IRAS 17150-3224 の観測を報告する。 |
双極星雲 IRAS 17150-3224 = AFGL 6815S は van der Veen, Habing, Geballe (1989), Volk, Kwok (1989) により、 PPN 候補とされた。この星は V = 14.5 で、FIR は T 190 K の輻射 で占められている。CFHT の可視光撮像は 16"x9" の双極星雲を示す。見かけは AFGL 2688 と似る。 V-I カラーマップを作ると星周円盤がはっきりと分かる。 可視の双極耳たぶは散乱光であることが示唆される。AFGL 2688 と同様 CO も 受かっている。 |
距離 距離は未定である。総フラックスから、光度は 3 (D/kpc)2 |
![]() 図1.(a) フィールド星の PSF.drizzle 前。 HST 観測は中心波長 606 nm の F606W フィルターで行われた。 HST の PSF は優れているが、WFCPC2 検出器がアンダーサンプルなので、折角の 分解能が生かせない。 |
![]() 図1.(b)フィールド星の PSF drizzle 後。 それを克服するために、新しいテクニク "variable-pixel linear reconstruction" を使用した。 図1には drizzling をする前と後で PSF がどう変わるかを示す。 |
4.1.ローブ![]() 図3.リング位置を示す図。 HST 分解能は地上観測の10倍よい。図2a にはローブがいくつかの明るい 泡に分解して見える。ローブの縁は極めて鋭い。北西ローブは 3".3x2".4, 南東ローブは 3".2x1".6 である。その明るさは, 北西ローブが 14.75 mag, 南東ローブが 15.62 mag である。南東ローブは向こう側で減光を受けている のかもしれない。それは不透明領域が赤道円盤に限定されず、広がっている ことを意味する。 |
![]() 図4.主軸に沿った強度輪郭。スケールは 1 ピクセル=0".023 4.2.アークSahai 1998 が AFGL 2688 で示したようなアークの重なりがこの天体にも見 られるが、より同心円状である。アークはローブを越えたはるか遠く、中心星 から 4".7 まで広がっている。アーク間の間隔は内側 5 個間で 0".51 (22 ±2 pixels)、外側 3 個間で 0".69 (30±1 pixels) である。 実距離では内側アークで 0.0025(D/kpc)pc に相当し、時間に直すと、 240 yr(D/kpc)(V/10km/s)-1 である。 図4には主軸と平行、ただ し主星雲を避けるため 0".7 ずらした直線に沿った強度変化を示す。 アーク間の時間間間隔は AGB 熱パルス間隔に比べずっと短い。したがって、 これは Latter et al 1993 や DSahai et al 1993 が考えたようなマスロスの 盛り上がりの現われであろう。Willson, Bowen 1985 は脈動の変化が 100 年 タイムスケールであり得ると考えた。 |
![]() 図5.南東ローブのリング F 付近の3半径での強度断面図。位置角ゼロは星 雲の対称軸、半径中心は二つのビームの交差点とした。 4.3.ビームAFGL 2688 の場合と同じく、二対の「サーチライトビーム」が見える。 図5に位置角方向にカットした強度断面図を示す。ビームの開き角は 27° である。4.4.ハロー図6は淡いハローの存在を示す。グレースケールの画像の上に等高線を描い た。ハローは 13".8x5".8 の広がりを持ち、AGB マスロスが 3000(D/kpc) (V/10 km/s)-1 に遡れることを示す。 |
![]() 図6.ハローの広がりを示す等高線図。9x9 ピクセルの平均強度を使い、背景 を差し引いて等高線を引いた。レベルは、 22.45, 21.70, 20.50, 19.75, 19.20, 18.44, 17.35, 16.70, 15.50 mag arcsec-2 である。二本 のビームは赤道沿いのダストから脱出する光の開口角を示す。 |
双極星雲の形成 IRAS 17150-3224 のアークを AGB 期のシェルが天球に投影されたものだと 解釈するなら、 AGB マスロスは球対称であったと結論できる。双極型星雲は、 星が AGB を離れてから数百年以内にある種の非対称性が発達したことを示す。 この形態変化は高速風が原因かもしれない。もし AGB 星風に小さな密度勾配 が緯度方向に存在するなら、高速風はその緯度変化を利用して、低密度方向で 大きな膨張を産み出すだろう。高速風で開けられた空泡は散乱光を逃し、双極 星雲の誕生に導く。 PPN と PN とでは可視光の起源が異なる 注意すべきは、 PPN と PN とでは可視光の起源が異なることである。 PPN の可視光は散乱光であり、高密度領域を表現しているわけではない。 実際 AFGL 2688 の NICMOS 画像は赤道面に沿った高密度ダストの繭を表して いる. IRAS 17150-3224 と AFGL 2688 の場合、可視ローブに含まれる質量 は分子、ダスト成分よりずっと小さい。 一方可視の双極性ローブは空泡と見做せる。対照的に、 PN の可視像は 輝線で、その光度は放射メジャー=ne2V に比例する。 天体の形態=見え方は電離が開始されると大きく変貌する可能性がある。 Sahai et al. (1998b) |
若い PN 双極型 PPNs の特徴の一つは水素分子輝線である。若い PN NGC 7027 は 強い水素分子輝線を示し、双極型 PPN AFGL 2688 や IRAS 17150-3224 の直系 子孫と考えられる。傾斜角が異なるので形状を直接比較することはできないが 形態の関連を考察することは意味がある。高速星風が大量の AGB 星風物質を 掃き寄せてシェルを形成するので、シェルの密度は高く、電離は部分的である。 シェルの膨張速度は極方向で大きいので、星雲は細長く伸びる。密度の高い 赤道帯では星雲は絞られて狭くなる。その結果星雲は楕円体状で、短軸の 両側に輝点を示す形になる。これは多くのコンパクト PNs の電波画像に見える 構造である。 |
IRAS 17150-3224 の双極構造は極方向に開いた穴から出た光の散乱光である。 少なくとも 7 つのアークが見えた。AGB 期の周期的なマスロスの盛り上がり に対応するのであろう。これは双極型形状は数百年という短期間に生じ、星風 相互作用がこの時期に既に発生していたことを示唆する。 | PPN の可視像は散乱光により、 PN は輝線によるので、PPNs の双極型形状が PNs の双極形状に直接つながるわけではない。 |