Properties of Evolved Mass-Losing Stars in the Milky Way and Variations in the Interstellar Dust Composition


Thronson, Latter, Black, Bally
1987 ApJ 322, 770 - 786




 アブストラクト 

 IRAS PSC からフラックスリミッテッドサンプルを調べた。IR 炭素星は 5.2 kpc-2、炭素星全体では 38 kpc-2となった。炭素星の 総数は 28,000(R/15kpc)2, R=銀河円盤半径 である。炭素星の数は 銀河中心距離に依存しない。一方 赤外 M-星は 47 kpc-2 である。 マスロス O-リッチ星は銀河系全体で 48,000 個である。進化した O-リッチ星 の数密度はスケール長 4 kpc の指数関数型の変化を示す。C-星と M-星の密度 分布のこの差は銀河面上での [C]/[O] 比の勾配が原因である。マスロス星の 種族構成が銀河中心距離により変化するため、星間空間に注入されるダストの 性質が変わり、その結果分子雲の加熱、化学、減光、初期質量関数など全てが 場所により変化する。  中間質量星からの総質量放出は 0.35 Mo/yr で、その内炭素星からの寄与は 10 - 50 % である。この値は銀河系のサイズによる。総マスロスは少数の 極端に激しいマスロスを行う星からの寄与が大きい。それらの星の多くは O- リッチである。サンプル中の炭素星の寿命は 2 105 yr である。 M-星も似たような値であろう。これは太陽近傍での炭素星誕生率= 5 10 -13 pc-3yr-1 を意味する。これは 3 - 5 Mo 星が主系列を離れる割合に等しい。それらの星が炭素星の母星であろう。 銀河系全体で炭素星が生まれる割合は 0.14 (R/15kpc)2yr -1 である。現存の mm-波輝線サーベイから得られる炭素星の 赤外二色図は炭素星全体からは偏っている。



( IRAS 2色図から(不思議なことに)隔離シェル炭素星ボックスを赤外炭素星領域として定め、そこにある 星のCO観測(KnappMorris 1985)を使って、炭素星の分布とマスロスを出して、銀河系全体の総数、マス ロス総量、炭素星寿命...と話を広げている。どうも不思議な論文。 吹きすぎ? )

 2.データ 


図1a.可視で同定された M-, C-型星。ボックス(図の枠のこと?)PSC サーチ 範囲。実線=BB.

 図1a = 可視で既知の O-、C-リッチ星各 250 個 

 炭素星は GCCCS からランダムに採り、そこに CO 観測から少数の O-リッチ星 をくわえた。図1a には、可視で既知の O-、C-リッチ星各 250 個を示す。
("modest sample of known oxygen-rich stars" は 250 個という意味になる。はっきりしなくてイライラする。 そんなに、特に O-リッチが、ないように見えるが。本当に同数?)
O-リッチ星(+)は図左側に縦に集まっている。 図中のボックスは主にシェル を持つ炭素星で占められている。実線=BBは左下 T=4000K から始まり、T=1000K でボックスをかすめ、 数百度Kまで伸びる。 Zuckerman, Dyck 1986b は我々と大きく異なり、 C-リッチ星が BB の左側に沿 って分布するとした。これは、サンプルの選択効果である。

 選択基準:炭素星 

(1)ボックス内にあり、12, 25, 60 μm で "high qulity" の天体 875 個。
(これって...本気?)
(2)Bright Star Catalog, GCVS, SAO で K-, M-型の星を除く。
(3)LRS でシリケイト放射帯のある星を除く。
半数の星はそれらのスペクトル情報を持たないが、サンプルに残す。こうして 619/875 星が残った。その約半数は GCCCS に載っていた。

図1b.CO マスロス率(Knapp, Morris 1985)で区別した M-, C-型星。 マスロス率は2色図上の位置と相関しない。

 混入評価 

 最初のサンプル中スペクトルが分かった星=約半数の 1/3 は O-リッチ だった。この割合が変わらないとすると、最初の 875 個中 O-リッチ星は 300 個くらいと期待される。そこから 250 個を既に除いたのだから、残っている のは 50 個、つまり 50/619 = 7 % が混入率である。

 O-リッチ星基準 

 我々の興味はマスロス炭素星にある。しかし、比較用にマスロス O-リッチ星 サンプルも作る。Habing et al. 1985, Zuckerman, Dyck 1986 によると、 log(F25/F12) = [-1, 0], log(F60/F25) = [-1, 0] は O-リッチ星領域である。
(これも???)
ここから赤外カラー温度 2000 K 以上=大抵はマスロスなしの K 巨星、を 除く。
(なぜカラー基準で示さない?)
こうして測光クオリティが良いサンプル 6175 個が残った。 O-リッチ星領域は先の炭素星ボックスを丸々含むから、其れを混入と見做すと、 混入率 = 619/6175 = 10 % である。



表1.サンプルの解析結果

 サンプルの信頼性 

 (我々の炭素星サンプル/IRAS で検出される炭素星) 比と、  (我々の炭素星サンプル/銀河系の炭素星) 比を調べよう。O-リッチ星に関し てはバイアスの少ない大規模カタログがないので、同様の操作はできない。 ランダム抽出で作ったサンプルの性質から、 PSC カタログ C-リッチ星の 25 % はボックス外と考える。従って IRAS で検出される天体数は 1.25 倍になる。 例えばもっともよく研究されている炭素星 iRC+10216 はボックスから僅かに 外れたところにある。
 完全性 

 GCCCS カタログから 101 天体を選んだ。内 67 % が PSC にあった。しかし 我々のサンプルに含まれていたのは 17 % であった。これは部分的には3バンド で QI が良いという要求のせいである。今後カタログ炭素星全体に我々の結果 を広げる際にはこの 1.0/0.17 = 5.9 というファクターを考える。例えば、IRAS 検出炭素星サンプルが占める体積内の炭素星総数は 619*5.9*1.25 = 4565 個 となる。
(これも無茶な議論だが、もういい。)
 



図2.サンプル炭素星の天空分布

 3. 解析 

 3.1.銀河系炭素星と酸素星の数 

 3.1.1.銀河系内の分布 

 炭素星は中心方向の数が少ない 

 サンプル炭素星の天空分布を図2に示す。銀河中心方向に強い集中は見られ ない。どちらかと言えば中心方向の数は少ない。これは部分的にはコンフュー ジョン効果の影響である。しかし、|b| > 10° でも GC 方向の炭素星数 は少ない。

 図3=L12 ヒストグラム 

 図3には Knapp, Moris 1985 天体の中で位置が記載されている星の L 12 分布ヒストグラムを示す。L12 = 3 109 Jy pc2 は大体の平均値である。 Claussen et al. (1987) は彼らが近赤外で選んだ炭素星サンプルの L12 がそれより1桁 低いと述べている。我々の考えではこれは我々の選択がマスロスの大きい星 に重みがあるためである。

 図4=分布 

 この平均 L12 を使って、図4を得た。酸素星は数を 1/10 に 減らしてプロットした。

図3.距離が記載されている Knapp, Moris 1985 天体の L12 分布。





図4.上:炭素星、下:酸素星、の分布。距離は 3.1.1.節で議論した一定光度 に基づく。円= 8.5 kpc 半径。2本の実線 l = 40, 320 の間ではコンフュー ジョン効果で天体数が低下していると考える。


図5a.サンプル 619 炭素星の銀経分布。

 面密度 

 図4の分布から、「炭素星」サンプルの近傍密度は 5.2 kpc-2 である。前に述べたように、ボックス外の PSC と PSC に載らない分を補正 すると 5.9 x 1.25 x 5.2 = 38 kpc-2 となる。
 IRAS 酸素星は、n(R) = 560 exp(-R/3.7kpc) でフィットされる。

図5b.サンプル 619 炭素星の銀緯分布

 図5=銀経・銀緯分布 

 図5にはサンプル星の銀経・銀緯分布を示す。図4から銀河面高度分布も求 まり、スケール高 300 pc を得る。これらは Claussen et al. (1987) の得た d = 200 pc に合う。また空間密度分布は、 IRAS 炭素星に対し 1.3 10-8 pc-3, IRAS 酸素星に対し 1.2 10-7 pc-3, 全ての炭素星に対し 9.6 10-8 pc-3 である。 Knapp, Moris 1985 は CO 炭素星に対し 1.5 10-8 pc-3 を得た。これは我々の結果に合う。また彼らは CO M-星に 1 10-7 pc-3 を得た。  Robin, Creze 1986 は種族ごとの星密度を調べた。彼らは M0-M10 巨星の数 が 5 10-6 pc-3 であるが、M5 より晩期では、 2 10-7 pc-3 になることを見出した。これは Blanco 1965 が晩期 M-巨星に対して得た 1 10-7 pc-3 に合う。




 マスロス酸素星/マスロス炭素星 

 IRAS によるマスロス酸素星/マスロス炭素星 の比は太陽付近で大体 9 である。 これは Knaapp. Moris 1985 が CO 星で見出した比 5 に近い。Stephenson 1986 は この比を 4 としたが、全く違う手法であることを考えると満足すべき一致である。

 全く異なる動径分布 

 図6には二種の星の動径分布を示す。サンプルが l = [-40, 40] の範囲を避けて いることを注意する。炭素星は平坦な密度勾配を持ち、一方酸素星は銀中距離と 共に低下する特徴を持つ。これは Blanco 1965, Fuenmayor 1981 が得た結果 である。ここ数年、酸素星密度が銀中距離と共に急減するのに対し、炭素星は 平坦か、むしろ増加する傾向にあることが議論されてきた。我々の非バイアス IRAS サンプルも同じ傾向を示す。

 3.1.2.銀河系内の総数 



 「炭素星」と「酸素星」の総数 

 図4と6から進化した星の総数を推定できる。我々は、IRAS「炭素星」の総数を 3700[Rg/15kpc]2 と考える。
(「炭素星」近傍面密度 38 kpc-2 が全銀河面で平坦とすると、5.2*π*152 = 3675)
「酸素星」= 2π*560*3.72 = 48,000 個となる。
(どちらの分布も研究の価値大 )

図6.炭素星と酸素星の表面密度の動径変化。各距離での値は図4を用いた。 比較用に σ ∝ 1/R2 と σ ∝ exp(-R/3.5kpc) のラインを示した。


 3.2.マスロス 

 研究目的=物質還流 

 我々の研究目的は「炭素星」、「酸素星」のガス/ダスト比を決め、銀河系 星間空間に還流される質量を求めることである。 我々のサンプルは大きく、遠方まで及ぶので、太陽近傍の値から外挿する不確 定性はない。
(吹きすぎ? )


 図7=IRAS カラーとマスロスの関係 

 図7から、IRAS カラーとマスロスの関係は明らかである。ベストフィットは、

   dM/dt|C = 4.5 10-510-0.084*F12/F60

   dM/dt|O = 3.6 10-510-0.1*F12/F60


図7.F12/F60 - (dM/dt) 関係。マスロスは Knapp,Moris 1985 による。「炭素 星」と「酸素星」のそれぞれにフィット線を引いた。



図8.「炭素星」の dM/dt と F12/F60 のヒストグラム。

 研究目的=物質還流 

 我々の目的は星間空間への物質還流である。図8と図9には「炭素星」と 「酸素星」からの寄与を示す。

 炭素星からの還流 

 図8の「炭素星」からのマスロスは 0.0039 Mo/yr で、MTC = 0.029[Rg/15kpc]2 Mo/yr になる。
(図8のサンプルが何なのか? )

図9.「酸素星」の dM/dt と F12/F60 のヒストグラム。

 図9=「酸素星」マスロス 

 図9には「酸素星」からのマスロスを示す。マスロスは 0.034 Mo/yr で、MTC = 0.27 Mo/yr になる。

 補正 

 低マスロス星の寄与、ボックス外の炭素星の寄与を補正して、最終的に
  MTC = 0.042[Rg/15kpc]2 Mo/yr
  MTO = 0.35 Mo/yr


 質量還流の検討 

 質量還流率 

 銀河系質量 2.6 1011 Mo, 光度 2 1010 Lo とすると、 還流率は、2-4 10-12 (Mo/yr)/Mo または、 2.5-5 10-11 (Mo/yr)/Lo となる。

 Knapp 1987 との比較 

 Knapp 1987 は「炭素星」と「酸素星」からの寄与はほぼ等しいとした。そ れは我々の結論とは違う。これは彼らの「炭素星」数が CO 観測に基づき 実際より多いためでないか。かれらのマスロスヒストグラムの形は「炭素星」では 我々と似るが、「酸素星」では平坦で我々の図9と異なる。これは我々が F60 を 使用し、低マスロス星に感度が低いためかも知れない。


 マスロスヒストグラムの比較 

 図8,9と似た図は Knapp,Morris 1985 の図22、 Knapp 1987 図5、 Claussen et al. (1987) 図10に見られる。全ての図で、dM/dt > 3 10-5 Mo/yr で星数が 急落する。しかし、総マスロス量はこれら高マスロス星が担っている。


 3.3.炭素星の寿命と誕生率 

 寿命 

  Knapp 1983 は炭素星は 2 Mo 星から生まれるとした。Aaronson, Mould 1986 は若い散開星団の研究から 2 - 5 Mo とした。炭素星平均マスロス率を 1 10-55 yr である。
 誕生率 

 「炭素星」はしたがって、誕生率 (5.2 kpc-2)/(2 105 yr) = 2.6 10-5kpc-2yr-1 となる。